『鳥のように』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
世界一賢いを自称する奇妙なカラスがいた。
人同様に話し、思考し、人をからかうのが大好きなカラスはいつものように公園で菓子パンを食べる中年男性からそれを拝借していた。
無気力な男は昼になるとここに来て人気のないベンチに腰掛けるとこのカラスに餌をやるものだから、ある日を境に話すせることを暴露する中になるまでそう時間はかからなかった。
ある日の折、男は徐ろに大きなため息を吐いた。人の不幸は蜜の味、カラスはケタケタと笑いながら不幸話を笑い飛ばしてやろうとした。
「君と同じになりたい」
ところがどっこい、男が溢したのはこれまた奇天烈な夢であった。
「カラスに? 冗談だろ、オッサン」
カラスは野生の苦悩を熱烈に彼に伝えてきたものだから、いまいち彼の言葉を理解できなかった。
カラスは知っている。人間が生きるのに戦う必要なんてないことを。毎秒毎に死が過る瞬間も、震えて眠れぬ夜も、朦朧とする昼も、なにも。
「自由になりたいんだ。翼が生えて、どこまでも飛んで」
カラスは空いた口が塞がらなかった。
飛んでどこに行くのだろう。この空に自由なんてない、あるのはただ寒いだけの場所だ。
夢見る男は微笑み語るが、賢いカラスは、何も語らなかった。つくづく幸せな夢の泡を割る趣味はこの黒い鳥は持ち合わせていないのである。
テーマ:鳥のように
タイトル:賢人の見る景色
鳥のようになりたいと言った彼は公務員
鳥のように自由な彼は売れないバンドマン
翼の使い方を知らない鶏と
どこまでも自由な雀
鶏肉のバジルを完食して彼から貰ったCDを止めて、自宅を出る
どこからともなく忌々しい鳥の声
今日も地上から、鳥を見下す
私が1番嫌いな動物
だってどっちも私を幸せにはしてくれなかったから
#鳥のように
鳥のように。なれたらいいねと何度思ったことか。
いつの時代も人は鳥に憧れるのかな。昔の人はその憧れをヒントにして飛行機を発明したし。
思い立った時すぐ鳥に変身できて飛び立てたらいいのに。こんなことが人間にできるようになったら世の中大混乱だけどね。多くの人が仕事やらなんやら投げ出して帰ってこなくなる。社会が回らなくなる。まー大変。
新幹線とか誰も乗らなくなっちゃうね。移動手段にお金つかう必要なくなるし。というか運転士も仕事投げ出して飛んでくか笑
もうね、あるよ。何もかも投げ出してどっか行きたいって思うこと。しょっちゅうある。アテもなく電車乗って適当に降りてまた乗って、知らない街をどこまでも歩いて。自分がこういうことしたらどこに行き着くかなーと思ったりもする。
だいぶ前にヨーロッパに行った時、ツアーバスで片田舎を走ったことがある。家が点在してるぐらいでなんにもない、町人(村人?)もいないのどか~な所だった。少し寂しげにも見えた。
そんな風景を車窓から眺めながら、もし自分がここに雲隠れしたらきっと見つからないんだろうなと思ってた。日本から遥か遠く離れたこんなへんぴな場所なら、たぶん見つからない。楽しい旅行ではあったけど、ふとそんな寂しい気持ちになることがあった。
昔から心のどこかで常に思ってたのかも。逃避行してしまいたいって。現実を楽しんでる自分とは別の自分がいたのかも。今もいるのかも。
もう消えたいなって思うこともあるけど、消えるぐらいならそれこそ鳥になってもっといろんなものを見たいよなと思う。海外にも国内にも行きたい場所はまだある。会いたい人もいる。
こう考えると消えるのは惜しいか。消えたくはないかやっぱり。
でも鳥も同じ場所を飛んでるだけじゃないか?
渡り鳥はたぶん毎年同じコースを飛び、そうじゃない鳥も生息地の同じエリアにしかいないんじゃない?知らんけど。だから自由に飛び回ってるように見えて実際は違うのかも。そのエリア内なら自由だけどって話なんじゃないかな。
翼を持つ鳥はいつでも飛び立てる。好きに空を飛んでるように見える。だから鳥=自由だと勝手に人間が認識してるだけだとしたら。
要は人間としての自分の頭脳と経験値はそのままで翼だけ欲しいってことだね。鳥のしがらみとかは関係なくて、ただ鳥の自由そうな部分だけが欲しいと。都合良いねー人間。
なんも考えてなさそうな鳥だって実はめちゃめちゃ考えながら飛んでるかもしれないぞ?
結局人間がいいよなと思うんだよね、きっと。
『さよならを言う前に』
「さよならを言う前に、嘘でもいいから愛してるって抱きしめて欲しい」
少しいびつに微笑む君の涙を拭って、僕は静かに抱きしめて嘘をついた。
他の誰かに閉じた想いを抱えてる僕に、それでもいいからとあの人と瓜二つの君と付き合い始めた。
それから二年半。周囲からそろそろ結婚か?と言われることが多くなった秋の終わり、僕の勤め先であるスーパーにあの人が買い物に来た。
服の中にスイカでも隠しているのかってくらい大きなお腹を抱えて、ゆっくりとカートを押しながら。
青果コーナーでの品出し中、何故か冷や汗が止まらなかった。どうか見つかりませんように……そんな後ろ暗い気持ちしか湧かなかった。
その日の夜、アポも取らずにあの人と瓜二つの君に会いに行った。
どうしたの? と迎え入れてくれた君を強引に抱いた。あの人の残像が重なって、ひどく淋しくなった。
隣ですやすやと寝息をたてる君を見ると、罪悪感が渦巻く。この二年半ずっと思ってた、好きになれればいいのにと。
だけど、心の奥底にまだ残ってた。純粋に消し去れないものが――。
だからもう手放そう。このまま続けていても変わらないし、変えられない。
週末金曜日の仕事帰りに公園で待ち合わせする。夕暮れの公園には何組かの恋人たちが思い思いにデートを楽しんでいる。
そんな彼ら達を避けてベンチに座る。キョトンと何かを待ち構える君に一言だけ告げた。
「もう会わない。別れよう」
「…………そう」
ぎこちない仕草でスカートの皺を伸ばす君が「最初から分かっていたから、気にすることないよ」と淋しげに笑った。
綺麗な言葉を欲しがって、君のぬくもりに甘えて、そのくせ愛すことは惜しがったくせに、ごめんの一言で失くすことを悔やみかける僕はなんて卑怯な人間なんだろう。
どんなにキスしたって、抱き合ったて君の心に繋がることさえしなかったくせに。
最後にワガママ言わせてと、君はゆっくり立ち上がる。
「さよならを言う前に、嘘でもいいから愛してるって抱きしめて欲しい」
少しいびつに微笑む君の涙を拭って、僕は静かに抱きしめて「愛してる……」と嘘をついた。
オレたちが自由だなんて
誰が言い出したんだ?
空を飛べるからって
自由な訳じゃない
ちょっと考えりゃ
解ることだろ?
自由の象徴みたいに言われるのは
いい迷惑ってもんだ
なあ
そうは思わないか?
―――自由と不自由
#49【鳥のように】
鳥のように羽ばたけたらと そう願ったのは幾度か。
それは けして叶うことのない夢であって,だからこそ失うことのない希望のようにも思う。
濡れた雲に羽が重くなることも,蒼穹が汚染されているという事実も 嫌なこと全て見ないで済むのだから。
『だから私は,羽ばたけたらと空想するの』
そう言って微笑んだ少女がいた。夢を夢のまま抱え込むことを選び抜くそんな子が。
とても澄んだ瞳と洗練された思想を持つ少女だった。汚れなきその在り方は故に現実を隔てた。誰よりも現実に生きてどこまでも夢を愛して,真っ直ぐに視線を上げながらいつまでも瞼を伏せ続ける。
それはとても哀しくて気高く美しい生き様だったと 何故だかそんなことを思い出した。
誰もいない空間
空っぽな自分とただただみんなを照らす空
空高く飛ぶ鳥に釘付けになる
夢中で追いかけた
そこになにかが待っているのかもしれない
自分を満たしてくれる物があるかもしれない
そうやって追いかけた
しばらくすると そこに足場はなかった
落ちた衝撃と共に目を覚ます
またか
そうやって生きている
今日も空っぽな自分だ
【鳥のように】
「えー……お祖母様のこと?」
上を向いた視線が、左から右へきょろりと動く。
「自己肯定感の高さも、半端ないよ。強くていいよね、色んな意味で」
グラスの氷を、ストローでぐるぐるとかき混ぜるだけかき混ぜて、ため息をつく。
「『鳥のように自由に生きたかった』とか! 言うけど! いやいやいや……好きなことやってストレスフリーだよ。周りにいる人間のこと、なんも考えてない。迷惑だって気づいてない。お姫様も大概にして欲しいよ。大した家柄でもないのに。時代錯誤もいいとこ」
つけつけ言って、さっぱりしたのか、グラスのアイスティーを一気に飲み干す。
「ごめん、いつもいつも。お祖母様のことになるとダメだ」
「いや、聞いたのこっちだし」
「で、なに? ラスボス、攻略するの」
半ば冗談で尋ねると、苦笑いが返ってくる。
「まったく、倒せる気がしない」
「だよね〜」
ボヤくと、「『お祖母様』って言うのな」と面白そうな顔になる。
「あぁ、そこ? 本人の希望なんだよ。外にいてもついクセで。でも、攻略されたらされたで、悲しいかな」
「しないって」
空模様
くるんと回ると、スカートの裾がふわりと広がる。
そのままくるくる空と大地の狭間で踊ると、ふっと身体が宙に浮いて、そのまま空の中で踊り始めた。
煌めく星のリボンで髪を結い、夜明け色のブラウスと、空模様のスカートを身につけて、水たまりみたいな靴を履いた、空の少女は、くるくるくるくる踊り続けた。
夕焼けも夜更けも朝焼けも超えて、飽きる事なく踊り続けた。
くるくるくるくる登り続けて、そのうち空に溶けて消えた。
鏡
「世界で一番美しいのはだあれ?」
「それは私です」
「……んっんん。もう一度聞くわ。世界で一番美しいのは」
「私です」
「何でよ」
「世界で一番美しい人が私の前に立ったら、私にその人が映る。ということは、私が世界一美しいということです」
「同率一位じゃん。ていうかあんた鏡でしょうが」
「鏡としても世界で一番美しい自信があります」
「人間では?」
「私です」
「じゃあ鳥なら?」
「私ですね」
「ずっる! 全部あんたじゃん!」
軽やかな思考になる
鳥のように
ふんわりと柔らかな
鳥の羽のように
優美になる
大空を舞う鳥のように
風の流れに身を任せ
羽ばたいていこう
鳥のように
まだまだこれから
何も恐れることはない
前だけ向いて飛んでいこう
鳥のように
弟しては、鳥の様だと表現されたのが、癪に障ったのだろう。
『私には翼は無い!彼ら
私は、生き物が好きだ。
動物園の香りは苦手だが、世間の言う『キモい』に該当するような見た目でも普通に可愛いと思って見れる。
今回のお題は、『鳥のように』。
みんなは、鳥と聞いてどう思うだろうか?
鳥、というと、空を自由に飛んでいる姿を想像する。
将来は、空を自由に飛ぶ鳥のように、のびのびと生きてみたいものだ。
この世界には制約が多すぎる。
必要最低限、人をやったりとかはしないよう、ルールを設ける必要があるが、本当に必要最低限だ。1日くらい、『これだけはないと困る』って法律だけで生きてみたい。
まあ、私は政治家になるつもりないんですけどね。
コンクリートが砕けてボコボコになった道。
辺り一面の田んぼ道をゆっくり歩く。
時折、髪をなびかせる風が吹く。
ふと空を見上げる。
昔、空を飛んでみたくて、
家の裏でこっそりと
ホウキにまたがってみた事を思い出す。
あの時は、黒い服に黒猫がいなかったから
飛べなかったんだ!
と、少女のような事を考えながら
心地よい風を感じている。
あー、私も鳥のように空を飛べたらなぁ…
もう一度、ホウキにまたがってみようかな?
黒い服を着て…
#鳥のように 8/21
鳥のように
綺麗な羽を広げ
愛の唄を歌い
あなたと共に空を舞ったら
どんなに幸せだろう
先に旅立ったあなたと
もう一度ワルツを踊ろう
七つの海を渡ろう
その先にある宝を目指して
船は要らないさ
私たちには翼がある
#鳥のように
「鳥のように」
今日も鳥は元気に、うるさいほどにさえずっている。
辛い仕事が終わり、帰宅ラッシュの満員電車も乗り越えて、俺は最寄り駅に到着した。その最寄り駅では毎夜街路樹に鳥の大群が群がっていて、俺はほとほと辟易している。数えきれないほど多くの鳥を含んでいる街路樹は、その真っ黒い影をゆらゆら揺らめかしていて不気味だ。鳥は迷惑だ。まず、うるさい。次に、朝出勤しようと駅に来ると道がフンでびっしりになっていて汚い。あと、なんかむかつく。
俺は毎日、死にてー、とつぶやきながら仕事を頑張っているのに、鳥はきっと死にたいなんて思った事は無く、自由に飛んで、さえずって、フンをしている。俺は人にどう思われているのか気になって仕方ないのに、鳥はそんなこと全く考えていないだろう。そのことがむかつく。そして、これは憧れでもあるんだろう。俺も仕事なんてしないでただ本能に任せて、何も気にせず、鳥のように生きられたらよかったのに。人間なんて全くくそくらえだ。世の不条理さに腹が立って、怒りのままにずんずん歩いていると、石に躓いてすっころんだ。かたくて鳥フンだらけの道に頭から落っこちる。
「いってぇ~……」
ぱっと起き上がれないくらい痛かったが、口から出たのは小さな悲鳴だけだった。こんな時でも、急に叫んだら変な人だって思われるかなぁ、なんて人の目を気にする自分に笑いが込み上げる。痛いときくらい思いっきり叫べよ。どうせ誰も俺の事なんて気にしてないだろ。現に人ごみの中でこんなに思いっきりすっ転んで痛そうなのに、みんな見て見ぬふりじゃないか。恨み節を吐くうちに、だんだん意識が遠くなってきた。どうも悪いところを打ってしまったようだった。人々の喧騒が聞こえなくなっていく。ああ、誰か俺のことを心配してくれればいいのに。そう思ったのを最後に、俺の思考はぷつんと途切れた。
「おーいこんないい天気の時に寝てんじゃねえよ、お前は誰が好きなんだよ!」
突然キンキンとうるさい声に怒鳴られ、何か硬くて細いもので腕を殴られて目が覚めた。
「うるさいな寝かせてくれよ、忙しくて恋なんてしてる暇ないんだよ」
イラっとして反射的に言い返してからぱちりと目を開け、俺は信じられない光景を見た。
まずここ、めっちゃ高い。俺は三階建てのビルくらい高いところにはってある細い糸の上に立っているのだ。こわ!そして周りは鳥だらけ。胸焼けするほどに鳥がいる。最後に殴られた腕を見てみると、そこに腕は無かった。あるのはふわふわした茶色い羽毛である。
「おい黙ってんなよ。お前それでも鳥か?鳥は一秒も休まずにしゃべってるもんだぜ」
俺に話しかけているのも鳥。どうやら俺は鳥になってしまったようだ。とんでもない事だが、俺は妙に冷静だった。多分これは夢だ。
「俺の一推しはあの子だな、ほら、あのひときわ毛並みのつやがいいメスだよ」
諦めずに話しかけてくる鳥が遠くを指さす。確かに他の鳥に比べてつやつやした鳥がいる。
「ああ……まあいいんじゃないの」
われながら気のない返事だ。でも俺は恋バナに全く興味がないのでしょうがないだろう。恋する気持ちは、つらくてたまらない仕事を何とかこなしているうちにどこかに行ってしまった。
「そんな返事ねえだろぉー⁉つまんねえな。お前は誰が好き……ってあっ、美味そうなもん見っけ!」
いうやいなやばさばさと飛び立った。やれやれ、忙しいやつ。鳥ってみんなこんな感じなのか。
俺はしばらくぼーっとしていた。俺がいるのは電線の上らしかった。鳥たちはあわただしく飛んで行ったり戻ってきたり、誰かと話していたかと思えば違う鳥と話し始めたりとせわしない。最初は引き気味で眺めていたが、どうせ夢なんだから俺も自由にやろうと思いついた。
とりあえず飛んでみる。思ったよりも気持ちがいい。次にちゅんちゅんと鳴いてみた。周りがうるさいので、心置きなく鳴ける。鳥たちは俺の事なんて全く気にしていなかった。かと思えば、初めて会う鳥がいつの間にか隣を飛んでいて勝手に競争になったりもした。相手がちゅんちゅんと話しかけてくるから少し話す。そしてまた違う鳥と話す。何をするにも自由な鳥の生活は気楽だ。
「あの、大丈夫ですか?頭思いっきり打ってましたよね。救急車呼びましょうか?」
気づけば、人のよさそうな、少し頼りない顔をしたスーツの若者が俺の顔をのぞき込んでいた。人間だ。やはり鳥になったのは夢だったのか。頭はまだずきずき痛んだが、気を失った時のようによくないところを打ってしまった感じはしなかった。
「大丈夫です。すみません、ご心配をおかけしました」
「いえいえ、無事ならよかったです。仕事終わりって疲れますよね。僕も何もないところでつまづいたことありますよ」
屈託なく笑う若者を見て、俺のすさんでいた心が澄んでいく。いたんだ。俺を心配してくれる人。
もしかしたら俺が人を拒んでいたのかもしれない。どうせ誰も理解してくれないし、変なことをしたら指をさされるって。でもそうではないことを鳥たちとこの若者が教えてくれた。
「そうなんです。疲れたのか、鳥になった夢を見ましたよ」
「あはは、いい夢ですね」
知らない若者とする世間話は意外と楽しかった。世界は思ったより悪くない。
鳥に憧れている。
羽を広げ大空を舞う、そんな存在に心底夢を見ていた。
何にも囚われず空を飛び、海も、時に山すらも越える
その姿は自由そのものを表しているように感じていた。
鳥になりたい。と私は切実に思った。
人間関係や社会の理不尽なルールなど全て投げ出して
逃げてしまいたかった。
結局、そんな想いは実現する事は無かった。
残念ながら、そんな私は今日も変わらない日を
相変わらず過ごしている。
鳥が群れを率いて、空を飛んでいるのが目にみえた。
まるで見せつけられているみたいで、自分が惨めに
思えた。
鳥になりたかった、それが夢だった。
私は鳥に憧れている、否、憧れていた。
眼前に広がるのは抜けるような青空。真綿のような白い雲が風にのってゆっくりと流れている。この時間ならまだ人もたくさんいるのだろうが、人々のざわめきはまるでさざ波のようで、時間がゆったり流れているように感じられる。
ふと、歌が聞こえた。耳を澄ませてみる。
『翼をください』だ。
『この背中に鳥のように 白い翼付けてください』
『悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ行きたい』
私は思わずクスリと笑ってしまった。
「悲しみのない自由な空の上」へゆくために、私は自分の白い翼を捨てようとしているのだから。
なんて皮肉なんだろう。
屋上のフェンスに寄りかかりながらクスクスと笑っていると、不意に涙が溢れた。
目の前を小鳥が通りすぎていく。小さな翼を動かして。
ねえ、鳥さん。
時には強い逆風が吹き嵐が訪れることもあるこの空を、どうしてそんなに一生懸命に飛んでいるの?
いっそその翼を捨てて「悲しみのない自由な空の上」へゆきたくはないの?
ああ、今日も教えてくれないんだね。
鳥のように
「あなたはねー、小さい頃何になりたいかって聞いたら鳥って答えたのよ。
まさか人間以外を選ぶなんて想像してなくてびっくりしたし面白かったわよ。」
夕食の時間、お母さんが思い出すように言った。
「鳥って言ったの?私!」
だとしたら小さい頃私はなんで鳥と言ったのだろうか。
でも、鳥になれたらいいなぁ。
人の目も気にせずに自由に飛べる。
気を遣わなくてもいいし、のびのびと過ごせる。
今の私にとってそれは何よりも羨ましく、望んでいることだった。
親や先生に従わないといけない毎日。
友達なんて気の合う人とだけ一緒にいたい。
お金なんか気にせず自由に生きたい。
どれも私のわがままでこんなこと無理だってわかっているけど自由に過ごしたい。
そう思う気持ちは止められなかった。
「今は何になりたいの?」
「うーん、公務員かな。」
「え〜、いいじゃない公務員!大変そうだけどお金に困らなさそうね。」
嘘だよ、お母さん。
本当は鳥みたいになりたい。
将来何になりたいかなんてわからないよ。
ただ、鳥のように自由にありのままに過ごしたい。
完
人は鳥に憧れて
いつからなんだろうか?
多分人が自由を無くしてしまった頃からだろうか?
何も無い空を飛びたい
自由への憧れは人の本質なんだろうか?
わからない
人はどうして自由を求めてるのに翼がないんだろう。
進化という神の仕業は我らに自由を許さなかったか?
僕は鳥になりたい
なるんだ。