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俺の願いは、鳥のように空を飛ぶことだった。
未来の人生に希望をもてずに、自棄で行った悪魔召喚--何故か成功してしまった--で確かに言った。
鳥のように空を飛びたい、と。
「それで何で俺が人面鳥になっているんだよ!?」
そう、俺が呼び出した悪魔は「お前の魂を支払うなら、その願いを叶えよう」と頷いた。
そして俺を、人の体から鳥の体へと変容させた。--そう、体、だけ。
人間でいることにも心底嫌気が差していたから、人外に堕(お)とされるのは別に構わない。
だが、体も足も鳥のそのものなのに、顔だけは人のままで残した!!
いっそのことまるっと鳥そのものに変えてしまうとか、若しくは天使や悪魔みたく背中に何らかの羽をつけるだけでもいい。そうして欲しかった。
「えー……」
先程の大仰な態度は何処に行ったのか、営業用の仮面が剥がれたのか、不貞腐れたように悪魔は言った。
詳細な指定が無かったので、前回の仕様を参考にしたとのこと。
前回は人魚になりたいという依頼だったので、体半分を魚に変えたらしい。
しかも詳しく聞くと、下半分を魚に変えたのではなく、上半分を魚に変えたらしい。
いや、人魚じゃなくて、それじゃあ半魚人だと俺は突っ込んだ。
「とにかく依頼後の返品や変更は承ってないんで」と言い残し、悪魔は還(かえ)っていった。
「……」
呆然とする俺だけが、一人残された。
「…………一先ず、飛んでみるか」
理想図とは若干違うとはいえ、鳥の体は手に入ったのだ。
鳥のように飛んでみようと試した結果、……実際の飛行までは契約の範疇外らしく、飛べなかった。
どうやら自己努力が必要らしい。
現在俺は日々羽ばたく練習を必死に行ってる。
……自暴自棄だった人間であった頃より、飛翔の未来を目指し、日々努力して前向きに生きてるのは気のせいではないような気がする


8/22/2024, 9:51:02 AM