『鳥かご』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あなたの腕に包まれると、
一生ここで暮らしたいわ、なんて思うの
どこまで行っても
私達は捕らわれたまま
家を出ても
国を出ても
世界を出ても
宇宙を出でも
3次元から
4次元に行ったら
やっと何か変わるかな
現代よりも高度な文明や思考を持つ
別世界に行ったら変わるかな
人それぞれ鳥かごの
大きさが変わるだけ
いつまでも出られることはない
その中で起こりうる
幸と不幸を繰り返すだけ
【鳥かご】
昔、小学生くらいかな。
生き物を飼いたかった。
まぁ家族が犬猫好きじゃないから即却下だったけどね。
自分としては犬猫じゃなくても良かった。
魚、亀、うさぎ、鳥。
とりあえず「飼う」ってことをしてみたかったんだ。
まぁ実現しなかったんだけどね。
大きいショッピングモールにはたまにペットショップが入ってるからよくそこで時間を潰していた。
見るだけ。
幼い自分は我慢できなかった。
んでどうしたと思う?
鳥かごを貯めたお金で買ったんだ。
鳥なんて飼ってないのに。
買った後に「自分アホやなー」って気付く。
こんなこと親に話したらいやーな顔されるだろう。
もちろん隠す。
ありがたいことに部屋に無断で入ることはない親だったから部屋に。
その鳥かごは数年経ってもまだ部屋にある。
引越し、進級、卒業、入学捨てるタイミングはあった。
でもこれはいらないものでは無いから。
自分の数少ない思い出がこの鳥かごでは飼われている。
鳥かご
カエルくんのは空を眺めるのが好きでした。
明るく光る太陽。刻々と姿を変える雲などの空模様。カエルくんはまるで空は自分の心のようだと思っていました。また、この大きな空は世界中と繋がっていてと思うとワクワクしました。世界中の誰かも同じ空を見上げてる。みんなどんな思いで見ているのでしょうか。悲しい気持ち、楽しい気持ち、どんな空模様。きっとみんな違うけれど、自分と同じ一続きの空を見ている。なんだか、カエルくんには、それがとても幸せなことのように思えました。そしていつか世界中を旅して、いろんな生き物たちと仲良くなりたいと思っていました。
そんなカエルくんは空を飛びたかった。鳥が風を切って優雅に飛ぶ姿がとても好きでした。それでカエルくんは小さな鳥カゴに小さなミツバチを入れて飼っていました。
カエルくんの飼っているミツバチもカエルくんのように、よく空を見上げています。てもカエルくんと違ってとても寂しそうです。
カエルくんは思いました。きっと思いきり、この大きくて素敵な空を思いっきり飛び周りたいのだろうな。仲間と一緒に居たいのだろうな。
カエルくんは小さく、ごめんねと言いました。
でもカエルくんは大きな声で言いました。
「外は危険がいっぱい。君は小さいから直ぐに食べられちゃうよ。だからここに居るのが安全で一番良くて幸せなんだよ。」
カエルくんのは胸がチクリと痛みました。針が刺さったみたいに痛みましたが、気にしないようにしました。だってミツバチがいなくなるなんて、寂しすぎるから耐えられないからです。
今年の夏はとてつもなく熱く、カエルくんが狩りに出ても獲物が見つかりませんでした。幸い、ミツバチに餌の花はたくさんありました。
ミツバチは元気でしたが、カエルくんは痩せ衰えてゆきました。
このままでは、カエルくんは死んでしまいます。鳥かごの中のミツバチは言いました。「私を食べたら、きっと元気になってこの厳しい夏を乗り越えられるわ」
カエルくんは言いました。
「駄目だ、君は食べない。大切な存在だから。君のおかげで、今まで寂しくなかった。ありがとう」
そしてカエルくんはミツバチの居る鳥かごの扉を開けました。それでもミツバチは外の世界が怖いのか外に出ません。
カエルくんは言いました。
「さあ、外に出て仲間のところへ行くんだ。鳥かごの中にいても、鳥かごの外の世界にいもいつかは死んでしまう。一度しかない人生、大好きな仲間と一緒暮らして幸せになるんだ。鳥かごの外には危険もあるけど、幸せもいっぱいあるのだから。」
そう言うとカエルくんは意識を失ってしまいました。何日経ったかわかりません。石の上にいたカエルくん。ようやく意識を取り戻した。そんなカエルくんの身体の水分を生暖かい夜風が奪います。優しい月の光さえ今のカエルくんには辛いのです。カエルくんは近くの沼に這っていきます。思うように身体が動きません。
カエルくんは泣きました。でも涙が出ません。涙を流せないことがこんなに辛いとは思いませんでした。やっとの思いで、一雫の涙が出た時、口の中にとてつもなく甘いねっとりとしたものを感じました。
目を開けて見上げたカエルくは驚きました。
なんと目の前にカエルくんが
飼っていたミツバチがたくさんのミツバチの仲間といます。手に蜂蜜を持っていて、その蜂蜜をカエルくんの口に入れています。
カエルくんは、ありがとうと言いましたが、声にはなりませんでした。そしてミツバチは蜂蜜の入った壺を残して、ミツバチの仲間夜空に消えました。
それ以来カエルくんはミツバチにあっていません。それでもカエルくんは冬眠中の暖かい部屋の中でミツバチとの思い出
を胸に素敵な夢見るのでした。
"鳥かご"
僕は幼い時から両親と3人で暮らしている。
生まれた時は本当の母と暮らしていたが、気づいたら僕は一人、施設にいた。
だからもう、小さい頃の記憶はない。
施設から助けてくれた今の両親にはとても感謝している。
でも、気になる点があるんだ。
この家に来てから、ずっと、僕だけ檻のような場所で暮らしている事だ。
最初は何も思わなかったけど、月日が経つにつれ段々気になるようになった。
ある日聞いちゃったんだ。
『あの子を野生に返そう。』
『そうね、もう立派な雄だもの。』
僕は野生のカモっていう鳥だった。
鳥かごの中を幸福という概念で推し量っても
鳥はそんな概念の下に生きてるかはわからない
自由を論じて幸か不幸かを見定めてしまう
不自由さは鳥かごではなく人かごの中にある
非物理的で何重にもある人かごの中
概念のかごに人は収監されている
幸せに固執せずに幸せなりたい
自由から離れて自由になりたい
いくら願えど矛盾してしまうように
言葉は言葉から逃がしてくれない
んー
堅苦しい文体はもういいや
言葉で考えるの疲れちゃった
もういっそ幸せも自由も不法投棄して
言葉を知らない鳥にでもなってみたいよ
あー 人間しんどいよー
あー 呑気な鳥になりたいなー
(最新の研究では鳥にも言語があることが判明してます)
鳥かごの中の鳥に自由はない
食べ物と安全な住処はあるけど自由に羽ばたけない
でも鳥かごの外に安全はない
飢えと危険に満ちている
一度外に出ると帰れない 苦しくてもすぐに天には召されない
だから鳥は鳥かごの中でじっと耐えている
心臓が鼓動を止めるのを待っている
「鳥かご」
鳥かごに硝子の心を閉じ込めて
◆
銀色の鳥かごに主無しの冬
◆
放たれた自由を再び鳥かごに閉じ込めて
ずっと囲われていた子は
もう、出しちゃダメなんだよ
『鳥かご』
鳥かごの中に入っているか
鳥かごを外から見るか
餌をもらうか
あげるか
守られるか
守るか
狭い世界か
広い世界か
子供か大人か
今の立場を決めているのは
私自身である
鳥かご
僕の世界に生きている鳥は存在しない。
それでも、鳥らしき姿をした空を飛ばないものはいる。
若い男子が好きなのは可愛らしい守ってあげたくなるような見た目のものだ。年齢が上がると落ち着きと家族となれる判断出来るものに変わって行く。
女子が好きなのはかっこいい、強そう、利口そうだ。
やはり年齢があがると強さと家族を守る意志があるかなどに変化していく。
厄介なのはこちらの感情がそれに出てしまう事だ。
だから若い男子は時折デート中に往復ビンタを食らう。
年齢の既婚の先輩は浮気をしたとやはり…。痛い。
女子はかっこいいに群がるけれど、すぐに現実に目を向けていく。
どこかにきれいな模様が現れる地味なものも人気がある。確かにたくさんいれば十人十色となるのもわかる。
最近、増えてきたのが獰猛なものだ。男女問わず。
せっかく、一人一人に生まれた時から鳥かごの中に本質が見えるように具象化してきたのに、また争いが起こるのか?見えないから疑心暗鬼となったから、解決策がでたのに、見えるからまた争うのか。
今度は鳥かごから解放した方がいいのかもしれない。
解放したら自分の本当のレベルがわかるから。
【鳥かご】
鳥かごに囚われた鳥たちは囚われたまま
そこからの出方も分からず
外の世界を知らない
何をするにも主人の許可が必要で
自由に動くことはできない
そんな子たちが自由に羽ばたける日はくるのだろうか
鳥かごに囚われた鳥たちは
誰にも見つかることなく
ただそこにいる
外の世界を知らないから
出たいとも思わない
なんて可哀想な子たちなのでしょう
鳥かごに囚われた鳥たちは
今日もまた主人のいいなり
自分を捨てて笑っている
いつか鳥かごから逃れられたとき
彼らが素晴らしい人生を歩めますように
鳥かご
人かご とかねぇーかな?
一週間位 窮屈ながら一通りの生活必需品が、なかなかオシャレに揃えられてる
綺麗な人かごに閉じ込められて
綺麗なおねぇさんに飼われてみたいな?
飼い主のおねぇさんに 色々ぜーたくな注文付けたり、不平不満をぶちまけたり、おねぇさんの素行やファッションチェックして 点数評価したり
時には 彼氏と上手く行ってるか?とか
よけいなお世話焼いて喧嘩になって餌を一食抜かれたり、たまには悩み事の相談受けて、気の利いたアドバイスしてご褒美貰ったり、・・・・
一昔前に流行ったゲームソフトのシーマンの人間盤だな? [マンマン]かよ!
デコピンされたり、くすぐられたり、
楽しそーだろ?
ヤバイ! 書きたいことたくさんおもいついちゃった!
長くなり過ぎるから この辺でやめとこう。
バイバイ🤚
ねぇ、どう?そっちの世界は。
わたしはね、ぼちぼちやってるよ。
でも、貴方が居ない夏はどれだけの月日が経っても
不思議な感じがするよ、、。
貴方が鳥かごのような小さな世界から飛び立って、
何度夏が過ぎたかなぁ。
あの夏、貴方を止めなかったのには訳があってね。
でもね、相対して言う勇気がわたしには無いみたい。
だから、来年の夏には言えたらいいな。
その頃に一瞬でいいからこの小さな世界に戻ってきてね。
わたしは貴方がいつでも戻ってこれるように常に準備万端だよ。
...それじゃあ、またね。
「鳥かご」
鳥かご
(本稿を下書きとして保管)
2024.7.25 藍
(鳥かご)
あなたは鳥かごを使ったことがありますか
どんな‥鳥の、かご なのだから
鳥 かごとして
あなたは今 鳥かごの話を聞く。と思っていらっしゃるでしょうか
私は今朝、虫かごにお別れを告げて、市の指定、可燃ごみの袋の中に入れました
鳥でなく。ごめんなさい、虫かごのことを思い出します
あれは 4年くらい前。 うちの子が小学校3年生の時 きっと 100円ショップ あたりで買いましま
虫 かご
虫が入った記憶はほとんどないから、短期間だったんだろうな 今日 お別れするまで裁縫道具が入っていました
向こう10年一昔前までに思いを馳せて
私と鳥かごのお付き合い
私と 虫かごのお付き合い
かごに固有名詞がついていたとしても
その子の住まいや 居場所として
活躍 本領発揮 できる かご ではなかった
どんな固有名詞、入れ物も、
どう使うかは私次第ですね
あなた次第 ですね
私と、鳥かごとのこれからは、
私の能動的行動より、パートナーたち、とりさんたちが与えてくれるだろう環境要因かしら。と想像しています
・鳥かご
本当は自由なのに、「周囲の目」という鳥かごを自分の周りに作っている。より正確には、「(私が想像する)周囲の目」という鳥かごだ。本当は自由なのに。
鳥かご
小さく、そして頑丈で、綺麗で壊れにくい。
あとその中は、世界一安全なのかもしれない。
でもその中を出なければ、何も知ることができないことを、
知るべきだ。
鳥かご
私は、いつの頃からか自分の名前というものが嫌いになっておりました。私の名は『二郎』。こちらはご両親に頂いた名ではございますが、何分不自由な次男という立場を強調する名前でございまして、私を捕えるかごのようでございます。
ある日、たまの贅沢にと家業の合間に、茶屋へと伺いました。店先でカナリアの鳴くそちらのお店は質素な佇まいながらも客足の途絶えぬ茶屋でございました。兄は珈琲などというものを好むそうですが、そのようなものにはお目にかかったことがなく、私は平凡なお茶と団子を頼むのでした。
ああ、こんな時間ばかりであればどれほど良いことか、と考えていると、年の頃10といったお嬢さんがお茶と団子を運んで参りました。どうにもこちらの娘さんにお給仕を手伝わせているようです。私よりも幼い彼女の丁寧な所作に、いたく感心いたしました。
それからというものの、私はこちらの茶屋へと通い詰めることとしました。カナリアのさえずりと娘さんの成長に迎えられる一服は至福の時でございました。
何年かして、私に縁談がやって参りました。母上のご親戚の娘さんだそうで、そちらの婿養子に、とのお話です。今や常連となった私の話を聞いた茶屋の娘さんは私の話を聞き、頬を紅潮させ、僅かに震えた声で話します。「私もじきにそのようなお話をいただくでしょう。してお客さんはご決断なされたのですか?」
跳ね打つ心臓に私の頭は掻き乱され、一つ、また一つと、松明の点くような心持ちでございました。娘さんに「断るつもりだ」と言い、茶屋を出ました。
父上に縁談を断ることを伝えると、父上は「ならば仕方がない、三郎を行かせよう」などとおっしゃいました。この時ばかりはこの「かご」に感謝したものです。
私は現在、茶屋でご奉仕しております。大きくなったお腹を撫でる娘さんが、私に笑顔を向けており、私の心は晴天の虹に向かって羽ばたく鳥のようでございます。
カナリアのいなくなった鳥かごを見つめ、「私もまた鳥かごを作るのだろうね」などと考えるのでした。
:鳥かご 続編
1年前に書いたものも一番下に載せています。
「こんな小さな鳥かごの中より、君はもっと広い空へ飛び立つべきだ。君が僕のもとから離れるというなら僕はそれを肯定しよう」
「俺は、貴方のことが好きですよ」
その優しさが苦しい。
■
15分程前に遅刻の連絡を受け取ったが、そろそろスマホをいじっているのも飽きてきた。先に注文したアイスティーは既に汗をかいている。カラカラとストローを回して氷を鳴らした。すぐ来るだろうと思って二人分のドリンクを注文しようとしたが、辞めて自分の分だけの注文にして良かった。
外は太陽が照って、木が濃い影を伸ばしている。その木に張り付いた蝉が元気良く鳴いていて在りし日の夏を思い出した。一緒に肩を並べて笑いながら登校した数年前を。
「あ〜〜……! おまたせしました、すみません! 仕事が長引いちゃって……」
息を切らしながらドサドサと荷物を落とす慌ただしい到着に、思いを馳せようとしていたところで我に返る。
「構わないさ。仕事の合間を縫って来てもらってるんだし、むしろこちらの都合に合わせてもらって申し訳ないよ」
「それこそいいんですよ! 俺から会いたいって言ったんですし」
謝罪もそこそこに「俺も飲み物頼みますね」とメニューを見始めた。「今日はこっちにしよう」と呟いたから、なるほど今日はレモンティーにするのかと思った。
「アイスコーヒーをお願いします」
「え」
「え? アイスコーヒー頼みますか?」
「いや、ううん、ごめん」
僕はストレート、君はミルクティー砂糖入りでアイスならシロップ入り、たまに味を変えるとしても僕がコーヒーを飲むか君がレモンにするだけ、これが定番だったのに。よくよく考えてみれば数年経っていれば味覚だって変わっていて当たり前だ。なのに僕は、君が変わっているだなんて。
「……コーヒーは苦くて飲めないんじゃなかったの」
「あ〜、そうでしたねぇ。昔は苦くて飲めなかったんですけど、眠気覚ましに飲むようになってから意外と美味しく思えてきたんです。あ、でもお砂糖を入れるときもありますよ?」
「そっか」
もう僕の知ってる君じゃないんだと突きつけられている。そうか、そうかやっぱり君は最初からもっと自由になるべきだったのに、僕が無理矢理捕まえて無理矢理決めつけていたんだ。
己が招いたことだというのに心臓の裏側が炙られているみたいで息苦しい。これじゃまるで被害者ヅラをしている。
「君とこうやってお茶をするなんて懐かしい気持ちだよ」
「そうですねぇ。あれからいち、にぃ、さん、し……わぁ、7年ぶりですよ! もうそんなに経ったんですね」
「それで、今日は僕にどんな要件で?」
ふわふわ嬉しそうにしていた顔が固まって、視線を外して、目を伏せた。
「ん〜…………昔のこと、を、話したくて」
カラン、と氷が崩れる。
「それって……学生時代の」
「そうですね」
ついにこの時が来たんだ。処刑台の刃が落とされて僕は首を刎ねられるだろう。
■
図書室で本を読んでいた。その日は青空が広がって窓辺には柔らかい陽光が降り注ぎ、ゆったり本を読むには良い日だった。君が今日図書室に来るだろうと踏んで。
しばらく本を読んでいると扉が開いて君が入ってきた。「あれ、図書委員は今日お仕事かい?」とあたかも偶然を装って聞いたら「こんにちは。今日は仕事じゃないんですけど、時間のある時にやっておこうかなぁと思いまして。お邪魔してすみません」と予想通りの回答だった。大丈夫だよと言って手伝う為に本を閉じて立ち上がる。
本の整理をしながら鳥かごの話をした。君に似合いそうだって。自由に羽ばたける羽をもぎ取ってでも欲しかった。一生檻の中で飼い殺すくらいじゃないと満足できないと思っていた。
「一緒に座りませんか」と言う優しい声と優しい笑みを見たら堪らなく幸せに感じた。
幸せの青い鳥がいたら鳥かごに入れたいと思うだろう? だから捕まえた。騙したようなものだ。「鳥かごが似合いそうだね」と言ったとき「俺、そんなに弱っちく見えますかね〜」「だって鳥かごに入ってる鳥は捕まってるわけじゃないですか」なんて言うからバレたんじゃないかと肝が冷えた。それとなく誤魔化したけど、間違ってなかったよ。表面上はニコニコ愛想良く笑って相手の警戒心を下げて近づいて捕獲なんて、れっきとした犯罪者だ。気持ち悪いクソ野郎だと罵ってくれ、見損なったと言ってくれ、勝手な話だがそう思っていた。君なら伸ばした僕の手をちゃんとはたき落としてくれるだろうなんて思って。
君、なんて言った? 「いいですよ」って僕の手を取ったんだ。馬鹿じゃないのか、馬鹿じゃないのか、馬鹿じゃないのか!
羽をもぎ取って血まみれにした。僕にはそう見えていた。流石の君も嫌がるだろうと思ってみれば、血まみれのまま嬉しそうに笑ってこちらに手を伸ばそうとしてくる。「ハグがしたいんです」って、「貴方のことを大事に思ってるから」って。怖くなった。否定されると思っていたのに受け入れられたのが心底理解できなかった。
だからある時言ったんだ。
「こんな小さな鳥かごの中より、君はもっと広い空へ飛び立つべきだ。君が僕のもとから離れるというなら僕はそれを肯定しよう」
卑怯な言い方をした。僕はずっと卑怯者だったけれど。
「俺は、貴方のことが好きですよ」
僕だって、なんて言えなくて蹲った。滑稽だろう。滑稽すぎて目も当てられない。僕もそう思う。
■
「僕は君にごめんね、なんて言うつもりはないよ」
良いように使って、捨てるようなことをした自覚はある。それでも今更過去を悔やんで謝罪なんてしたところで、それはただ僕が許しを乞いたいだけだ。
「あはは、もう、勝手に思い込んで先走りすぎです。謝罪が欲しいなんて思っていませんよ」
どうしてそんなことが言えるんだろう。僕はずっと君に……君に? 僕から手を伸ばしても掴むのは空気だけで、指先が君にかすることすらなかったのに。
「気になりますか?」
「『気になる』って……僕は、昔のことなんて……」
柔らく微笑みじっと見つめてくる目や顔から怒りや悲しみが感じられない。僕を責め立てるような棘がない。それどころかむしろ柔らかく包み込もうとしているみたいなのは、僕がそう思いたいからなのか。
「…………君みたいな人が僕を置いて行くなんて意外だと思っていたんだ。これは僕の慢心だったのだろうけれど」
どうにか憎まれ口を叩く。そうでもしないと君は怒ってくれない。……責められたいのだって、僕がそれで楽になりたいからじゃないか。
「それは……」
「いや、いい、答えなくていい、口が滑っただけだから」
「君が蹲っている時、俺が必要だとは思えませんでした。君を支えてくれる新しい人がきっと君のもとに現れるんだろうって、そんな気がしたんです」
「喋るのかい?」
「ふふ。それに当時の俺はもう貴方にとって用済みなんだと思っていましたから。あ! 今はそんなこと思ってませんよ! 今も、今でも、貴方と友達になりたいと思ってるんです」
「…………そう」
相変わらずお人好しだと思う。頭の中がぼぅっとしてきた。いつ裁かれるのかそればかりが気になって話が入ってこない。いっそ早く君の口から否定の言葉を聞きたい。
「むしろ、貴方みたいな人が俺を逃がそうとする方が意外でした。そんな気全然なかったんでしょう? 天邪鬼なんですから」
「でも……君はちゃんと逃げたじゃないか」
「そうです。貴方から解放されて自由になった。俺は俺の青い鳥を探しに鳥かごから飛び立ちました」
「……それじゃあ、君は自分の青い鳥を見つけたからそれを報告しにきたってことかい」
君の幸せなんて聞きたくない。もはや気力がなくなって手持ち無沙汰になってきた。氷が溶けて薄まったアイスティーを手に取る。
「そうです、だからこうして貴方のもとに来たんです。ねえ、貴方は後悔とか執着心が強いですし、まだ解消しきれていないのかもしれないけど……むしろそれで良いんです、物語は終わりを迎えていませんから」
幸せそうに目を細めて、告げる。
「俺は俺の幸せの青い鳥のもとに帰ってきたんです」
頭が重い、視線が下がっていく。蝉がうるさい。
「貴方のもとに」
ストローを噛んだ。
あの時の君と重なって見えた。首を傾げて、差し込む光に照らされ艶めく髪。ふわりふわりと風で服の裾が揺れていて、今にもその青空へ飛び去ってしまいそうだった。それでも「一緒に座りませんか」とそう僕に言って、優しく笑いかける、君の顔と。
カランカランと氷の音がして顔を上げる。
「俺はコーヒーが飲めるようになって嬉しいんです。貴方と同じものを飲めるようになったんですから」
苦しい。
お題:鳥かご 2023/07/26
君は鳥かごが似合う。必ず。
首を傾げて、差し込む光に照らされ艶めく髪。ふわりふわりと風で服の裾が揺れていて、今にもその青空へ飛び去ってしまいそうだ。君は人気者。君は自由。
「一緒に座りませんか」
――今だけはその目、僕を見ているんだ。
図書室の本を整理しようと扉を開ければ珍しく先客がいた。窓辺に設置された椅子に座っている彼は柔らかな陽光に包まれている。ゆったりとページをめくって優雅に本を読んでいるようだ。今日は天気がいい。青空を視界の端に見ながら読書をするのはとても心地良いだろう。
「あれ、図書委員は今日お仕事かい?」
「こんにちは。今日は仕事じゃないんですけど、時間のある時にやっておこうかなぁと思いまして」
お邪魔してすみませんと言えば彼は大丈夫だよと微笑んで本を閉じ立ち上がった。どうやら手伝ってくれるらしい。
「バラバラになった本を順番に並べ変えて、それから……あった、これです。この紙に本の有無を記入していくんです」
「お安い御用だよ」
「助かります」
コトンコトンという本の音と柔らかな陽光に自分以外の息づかい、穏やかな空気に包まれている。今日彼がここに居て良かった。
同じ本棚についたとき、彼はこちらを見て唐突に言った。
「君は鳥かごが似合いそうだね」
「鳥かご?」
とても嬉しそうな顔をしているものだからそんなに似合いそうですかと問いかけた。彼は満足そうに頷き「うん。とても」と目尻を下げる。
「俺、そんなに弱っちく見えますかね〜」
「弱いだって?」
コトン、スー、コトン、コトン。この本は表紙が弱っている。
「ええ。だって鳥かごに入ってる鳥は捕まってるわけじゃないですか」
「うん、そうだね」
コトン、ス、コトン、コトン。ここの棚は滑りが悪い。
「餌に仕掛けられた罠に掛かって捕まったんですよね。だから、小さくて弱いのかなぁって」
コトン、コトン、コトン。この本はシリーズ物なのに2巻目が足りない。
「ねえ、鳥を飼う時、君は野生の鳥を捕まえるの?」
本棚に入れようとしていた本を中途半端に止めて彼を見上げた。とても真剣な眼差しだった。
「そんなわけないじゃないですか。法律違反ですよ〜? 買うんですからペットショップに行きます」
「そう、綺麗に飼われた鳥を買いにいく。それから鳥かごに入れる」
「あれ、じゃあ俺、おぼっちゃまとかに見えてるんですか」
「ふふ、確かに君は世間知らずの箱入りおぼっちゃまだ。鳥かごに入れて、お世話をして、美しい羽を保たせて、それから毎日眺めて君を見つめるのはさぞ満たされるだろうね」
コトン、コトンと、彼は順調に本を入れ始める。
「なんだか褒めてもらってる気分です」
「君が綺麗なのは事実だよ」
「だから鳥かごが似合うって思ったんですね」
「決して弱いだなんて思っていないよ。君を見下しているように聞こえた?」
「いえいえ! そんなことありません」
「そうかい?」
「優しく丁寧にお世話して飼うっていうのもありますもんね。鳥かごのイメージが、拘束とか捕獲とか、そういう過激なイメージがあっただけです」
コトン。抱えていた最後の一冊を入れた。
「少し休憩にしましょうか」
随分埃っぽくなった部屋の換気をしようと窓を開けると、ぶわっと強い風が教室に吹き込んでくる。心地良い。陽の光も、青い空も。
風が気持ちいいですよ、と声をかけようとしてやめた。彼はさっきの場所で立ち止まったままだ。
「……間違ってないよ」
(彼は何か言っただろうか)
「僕は欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる口だ。それこそ野鳥を捕獲するのが違反だとしても。自由に羽ばたけるその羽をもぎ取ってでも、僕は欲しい」
(彼が鳥を飼ったら、頬杖をついて、うっとり眺めるんでしょうか。ちょうど今みたいな目で)
「お世話をして可愛がるだけの生温いものなんて満足できない。拘束して捕獲して、鳥かごに閉じ込めて、一生檻の中で飼い殺すくらいじゃないと」
(あ、今、いいアイディアが思い浮かんだんでしょうか。とても楽しそうな顔……こんなに遠い)
「一緒に座りませんか」
今度こそ声をかけると彼は一等優しく微笑んだ。