『高く高く』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
近くにある神社で秋祭りがあった。
お神輿 露店が出る
子供の頃は楽しみだった。
涼しい風と澄んだ青空 空高く舞う赤
トンボ…
何故か今はお神輿 お囃子が騒々しく
感じてしまう…
季節を楽しむのが難しくなったのか、
私に余裕が無くなったのか…
高く高く
ただ金と
時間は金なり
ぼられた時間は
高くつくのみ。
高く高く
魔法が使えるなら、何を望みますか?
私は空を飛んでみたい。
ほうきに乗って高く高く自由に飛んでみたい。
幼い頃見た、赤いリボンの見習い魔女のように、ほうきに乗って知らない国に行ってみたい。
パスポート?ビザ?言語?ミサイル迎撃システム?
そんなの魔法でどうにかなりますよ、多分。笑
「物価と、高層建築物と、煙と正確性と、ゲームソフト単品の価格と……?」
天高く、朝の寒さが気になり始める秋。「高く高く」など何のネタで物語が書けようか。某所在住物書きは天井を見つめ、今日も今日とて途方に暮れた。
相変わらずである。いつものことである。
アプリのお題をこなすごとに、「書きたい」の質が、己の納得するレベルがインフレを続け、今では書いて消して書いての寄せ波引き波。悶々である。
「……オークションも段々、高く高くよな」
ところで緑茶は、抽出温度を高く高く、100℃に近い状態にすると、渋味がでてしまうらしい。
事実だろうか。 素人なのでよく分からない。
――――――
同じ職場の同僚に、付烏月、ツウキっていう、お菓子作りが最近トレンドなひとが居るんだけど、
今日は職場のデスクで神妙な顔して、時折スマホを見ては誰かにメッセ送ってる。
たまに、素っ頓狂に口開けて、首を傾ける。
あるいは高く高く、視線を上に向けて、天井のどこかを見てる。 どうやら何かあったらしい。
「いや、うん、『何か』っちゃ『何か』かなぁ」
付烏月さんは言う。
「なんか藤森のやつ、昨日の夜からダルいって」
藤森先輩は付烏月さんの友人だ。
そして今年の2月まで私と一緒の職場だった、私の長い長い仕事上の付き合いの先輩だ。
昨日の夜からダルい?
最低0℃でも眉ひとつ上げない先輩が?
「寒暖差疲労」の「か」の字も匂わない先輩が?
「ダルいらしいよ。寒さ耐性マックスな藤森が」
「風邪?インフ?」
「風邪もインフルも、コロナも完全陰性だって」
「じゃあ、やっぱり寒暖差?」
「それも違うって。今はダルさが落ち着いてるから、近所の稲荷神社に向かってるって」
「ふーん。
……いなりじんじゃ?」
「昨日、車にはねられた狐に手を合わせてから妙に肩が重くて、髪が引っ張られてる気がするって」
「くるまにはねられたきつね」
「狐憑きって、ホントにあるんだねー」
「きつねつき」
ピロン、ピロン。 付烏月さんのスマホに、藤森先輩からのメッセと思しき通知が来る。
そのたび、付烏月さんがカックリコックリ、首を傾けては信じられないって顔をする。
きつねつき、狐憑き。
先輩は花が、特に日本在来・固有の花や山野草が大好きで、近所の稲荷神社にちょくちょく、センブリとか野菊とかを撮りに行ってる。
その稲荷の匂いに、はねられちゃった狐の幽霊がくっついてきたとか? いやまさか?
今は科学万能説の黄金時代な令和だよ??
ほわい、じゃぱにーずコンコン?(こやーん)
「まぁ、都会の中で哺乳類のロードキル見るなんて、しかも自分が写真撮りに行ってる神社の眷属のを見ちゃうなんて、そりゃ心も沈むよね」
しゃーない。しゃーないよ。
付烏月さんは席を離れて、急須にリーフタイプの紅茶を入れて、熱湯をダイレクトにイン。
「藤森は特に優しいから。ショックだったのかも」
精神医学的な効果は少ないだろうけど、あいつの心がお祓いで、少しでも落ち着くと良いねぇ。
付烏月さんはそう言って、デスクに戻ってきて、私にスマホのグルチャ画面を見せた。
稲荷神社の神職さん兼先輩がよく行く茶っ葉屋さんの店主さんが言うことには
ロードキルされた狐の霊が先輩にしがみついてて、
髪で毛づくろいごっこしたり「おなか空いた」ってギャンギャンくぅくぅ甘えたり、
高い高い視線から見る世界が珍しくて無理矢理先輩の肩に乗っかるから、先輩は今ダルいらしい。
先輩。せんぱい。 令和に戻ってきて。
悪い宗教に勧誘される前に戻ってきて。
まぁ、先輩自身は神主さん兼茶っ葉屋店主さんのハナシ、話半分程度にしか聞いてないらしいから、
先輩が突然私や付烏月さんに、稲荷コンコンじるしの壺を売りつけたり、先祖霊ガーとか言い始めたりは、確実に、しないと思うけど。
でも、先輩。 令和に戻ってきて。
「お祓いと弔い中の藤森、お見舞い行く?」
付烏月さんが、紅茶の入ってる急須を、高く高く掲げると、琥珀色のいい香りがマグカップに落ちた。
「パス」
私は断ったけど、藤森先輩の様子を稲荷神社に見に行った付烏月さんが証言するには、
狐の霊はちゃんと稲荷の神様のところに昇ってったし、藤森先輩は嘘みたいに元気になったし、
神社宿泊者向けに用意された料理はバチクソ美味しくて心魂の疲労にバチクソ効く気がしたし、
なにより、そこそこの、お値段だったとか。
なお隣のお座敷がすごくお酒くさかったし、どんちゃん騒ぎになってたらしいけど、
誰と誰が大宴会をして、どれだけの量を飲んでたかまでは、分からなかったらしい。
君と行った映画の半券を
急な突風のせいにして
空に飛ばしてやった
空高く舞い上がる紙切れを
ただぼんやりと眺める数分間
きっとどこかに落ちるけど
今はまだ空を舞っている
『竹』
高く高く伸びる竹
どこまでもどこまでも
太く柔らかく瑞々しく
蒼天に突き上げる
雨風に負けない強さと
力をいなすしなやかさ
そんな竹のような生き方をしたい
最初は笑うと褒められた。少し経つと当たり前になった。
次は立つと褒められた。少し経つと当たり前になった。
ずっと高みを目指さなければいけない人生。何十年も経つと超えられなくなった。褒められなくなった。リタイアしようと思った。私は下に落ちた。
苦しい。
生きていくって苦しい。
永遠に整わない人生なのかな。
このままどんどんおかしくなるのかな。
高く高く
あなたと一緒にいられるならば、どんなに高いところでも平気だと思えるよ
高く高く
君は飛んだ。蝋の翼で、自由に、太陽を目指して。
私はそれを下から見上げる事しかできなかった。遠ざかる君が眩してくて、私は思わず顔を顰める。恐ろしくて、寂しくて堪らなかった。君がいなくなってしまうのではないかと。
溶け始めた蝋が、私の頬を涙の粒のように伝った。やがてそれがボタボタと雨のように降り注いで、呆気なく君は墜落した。
壊れかけの玩具のように呼吸する君を抱きかかえ、心の底から安堵する。もうどこにも行かないでと。
やがて蝋が固まり始めた。
魔法のほうきがあったなら、秋の心地よい風に乗って遠くまで行けるだろうか。
羊雲の群れに乗って、たなびく雲の一部になる。
胸の内がドキドキして、高く、もっと高く!
誰も見たことのない景色をみたい。
見上げるは青空。
今空へとときめく心よ。私を空へと連れていけ。
高く。高く。
【高く高く】
ずっと燻っていた違和感が
きみの音で殴られて本当にやりたかったことに
形を変えた
どん底から這い上がって
やっと海面に顔を出したところだったけど
きっとまだまだ上があって
あの澄み渡る晴天の空に手が届く時がくるのなら
まだまだ高く高く手を伸ばしていたい
やっと覚悟が決まったから
2024-10-14
高く高く
高く高く澄んだ空に、今浮かべた綺麗なだけの感情を持っていってほしかった。
日々家
高く高く
バレーボールは飛ぶ競技だ。
だから、私は飛ぶ。高く。高く。
限界なんて見るな。飛べ、仲間を自分を信じて。
地面を踏ん張って、大地をけって、上を向いて。
勝利を掴むために。
私は憧れた。地面を蹴って飛ぶ姿に。空中てボールを叩き生み出される凄まじいスパイクに。
だから飛ぶ。高く高く!
“飛べ!!”
あの鳥みたいに、高く高く飛びたい。
私が15歳だった夏。ふとそう思ったことがある。
半袖の制服で、それでもまだ暑くて。
友達と「海行きたいね」、と笑った日。
ひとり帰り道を歩いている時、何故かそう思った。
今でも何故かは分からない。
けれど、あの日私が飛んでいれば。
今みたいな幸せな日々は来なかったかもしれない、そう思うのです。
ゆれる触手が わたしを捕らえる
締め上げられるほどに 苦しくて 口の端から
嗚咽が漏れる
指の先からシビレが 身体の中心を溶かしながら
やさしくわたしを だめにする
息をしたいの このままでは死んでしまうの
わたしの意識は 身体をおいて たかくたかく
のぼっていく
光をまとった蝶が 巨大な木の下を 飛び回る
静かに ひそやかに 誰かを待っている
高く高く
なにかが空に昇っていく、あるいは手が届かないほど高い場所にあるなにかをテーマにすればいいのかな?
そうなると前者で思い付くのは風船、たこで、後者は飛行機、星かな。
しかしそのどれもいまいち書きたいという気がしない。だから今日は別のことを書くことにする。
最近電子レンジの音がやたらとうるさい。いつからかはわからないけどいつの間にか電子レンジの音がうるさくなっていることに最近気付いた。
買った当時はもっと静かだったと思うんだけど少しずつ音が大きくなっていったんだろうな。最近までうるさいのが普通だと思っていた。
でも本当につい最近ふと、あれ?なんか電子レンジが異常にうるさくね?と気付いた。それまで全く気にならなかったんだから慣れって怖いね。
それで今の電子レンジをいつ買ったのか調べたら大体十年くらい前だった。それは異音がするようになってもしかたないか。
なので電子レンジを買い換えることにした。まだ電子レンジとしては使えるからちょっともったいないけどね。
昨日通販で買ったから届くのは明日になる。電子レンジを買い換えるなんてそうないからどのくらい音が静かになるか楽しみだ。
それと新しい電子レンジは消音機能があるからそれも楽しみ。今のやつは温めが終わったらピーピー、早く取り出さないとピーピーとうるさい。
でも新しいやつはこのピーピーという音を消せるらしい。あのピーピーはいらないと思ってたから消せるのは本当に助かる。
︰高く高く
嫌なこと、やめてほしいこと、言いたくても怖くて言えないと口を噤んできた。
「何が悪かったのですか」
「どこが間違っていたのですか」
「目を背け続けたツケが回ってきたのですか」
涙ながらに問いかけたってそんなの全部NOだ。
私だけに罪はなかった、私だけの選択ではなかった、私だけが背負うものではない。皆が皆を見捨てた、これは自分だけの責任ではない。
生まれてきたことを呪うか?なら私を産んだ親も生まれてきたことが間違いだったのか?親を産んだその親もか?先祖を呪うか?タイムマシーンにでも乗って過去に戻って代々続いている負の連鎖の根源でも探しに行くか?根っこなんぞ探して血筋全て根絶やしにして全てなかったことにするか?
ああ、したいな。できることなら皆生まれてこなければいっそ良かった。
違う形で出会えていたら良き友人くらいにはなれていたんだろうか。違うふうに生まれていたら笑いあう過去も現在も未来もあったんだろうか。
たらればが叶うのは創作の中だけ。嫌でも逃げ出したくても我々は現実に生きているのだ。握り拳つくって時に踏ん張って、耐えられなくて時に潰れて、辛くなって時に死にたくなって、未来を思い描いて時に希望に縋る、時に深呼吸をするそんな現実。
高い高い壁をずっと越え続けるのが人生というらしい。したくもない苦労をして、したくもない思いをして、したくもないのに壁を越えなきゃいけないなんて、そんなのできない。
だからってこのまま何もかも受け入れることが正解って言うんかよ。何もできねえことをそのまま受け入れてその後待っているのは「何をしても無駄」という無力感だけ。受け入れると諦めるを履き違えてそれで楽になれたのか?今楽しいのか?
人間らしい営みとは食って排泄して寝ることだけか?それだけが人の営みだと言うほど脳無しになったのか。それも「仕方がない」と言う方が楽なのか。
「怒鳴られたくない、詰られたくない、キツい口調で責め立てられたくない、嫌だ、やめてほしい、でも怖くてやめてって言えない」と高い高い壁を見上げて泣くのなら、そのまま泣いて死んでくれ。唇を噛んで痛むならそのまま噛んで死んでくれ。
何もしたくない何かしたいというなら腹縛りまくって内臓破裂するまで括ってくれ。自分の為に私が死んでくれ。壁を乗り越えてなんていかずその場で蹲っているのも血液の巡りが悪くなってきて痺れてきたというのなら私がここでくたばってくれ。嫌なことは一切言わない空気を読む都合のいい柔らかい心を持った私はここで口を噤んで死んでくれ。
カナ
どうか愛しいままの私はここで死んでくれ。
どうか過去の素敵な思い出だけを抱えて死んでくれ。
地獄に逆戻りすることになるだろう。今の平穏に安堵したところで所詮仮初の平和。脆く危うくいずれ崩れる、早いか遅いかの違いなだけで。
幼い頃たくさん可愛がってもらった。口元にスプーンをもってきてくれてご飯を食べさせてくれた。靴下と靴を履かせてくれ。上着のジッパーを閉めてくれた。手を繋いでくれた。しゃがんで目線を合わせてくれた。抱っこをしてくれた。布団をかけてくれた。クリスマスはツリーに飾り付けをしてプレゼントも貰った。覚えてる、一番上にお星様を飾ったことも。
お世話をしてもらった、たしかに私は愛してもらった。だからもうそれだけで十分だ。
だからもうちゃんと向き合って戦える。
向き合えるだけ救いがあるだの本当に無理な場合縁切るしかないからだの、赤の他人は色々言ってくるさ。事情も知らねえ上っ面の言葉なんてなんの役にも立たない。他者と私では前提が違う。貴方には貴方だけの不幸がある、痛みがある、事情がある、やり方がある。私には私だけの不幸があって痛みがあって事情があってやり方がある。ただそれだけの話だ。同じ人生を歩んでいるわけではないから。ある面から見れば恵まれているように見えるだろうし、ある面から見れば恵まれていないように見えるだろう。見る視点によって何もかも変わる。良いことも悪いように言えるし悪いことも良いように言える。世の中結構適当だ。
アンタも、アンタも、アンタの不倫相手も、アンタも、なかったことにはできない、見逃したりなんてもうしない。泣き寝入りなんてもうしない。
暴力も、ヒステリーも、お前らのメンタルケアも、一番幼かった私が対応すべきことではなかった。できなくて当然だった。できなかった私を私はもう許す。私はできなくて当然だった。地雷を踏めばヒステリーを起こされ、自分の感情は抑圧させられ、相手の顔色伺って。私にそうさせていたアンタらがおかしかった。私はアンタらの恋人じゃないし精神科医でもねえ。
どれだけ私を思ってくれていたとしても言動に現れてないなら思ってないのと同じだ。汲み取ってすすりとってきた愛情ってやつはクソほど虚しかったぜ。私が大事だと言うなら向き合ってくれ。向き合ってくれないなら死んでくれ。心一つズタズタになってくれ。
地獄でいい。これは捨て身じゃない、自暴自棄でもない。逃れられない現実、どうにもならない現実ってやつに、ちゃんと向き合わずしてどうやって楽しく生きていけるっていうんだ。後ろ暗さ後ろめたさをなんとか押し潰して生きていくのか?それができないからアンタも私もキレて歪んでるんだろアダルトチルドレン。これは希望だ。
許す許せないの話ではない。向き合わなければならないこと、逃れられないこと、これはそういう類のものだ。だってお互い、なんにも話してない。
壁からは逃れられないってアンタが教えたんだ。逃れられないんだよ。たけぇ壁乗り越えもせずぶち壊しもせず壁の内側で蹲って逃げて甘え続けて自分で自分を苦しめてる者同士、私達お似合いだ。両刃の剣も承知の上、共に苦しんでくれ、共に刺されてくれ、どうか傷んでくれ。
はは!半分本気だけど半分嘘だ!!
私だけが可哀想扱いだなんて嫌だ。不幸なんて嫌だ。なんの恩恵も受けてないなんて嫌だね。
私という愛らしい屍の上に成り立っているアンタらの幸せや恋人との間にある愛情はさぞ蜜の味がするだろう。アンタらがそれで美味しい思いをしているなら私もアンタらからうまい蜜を吸い上げないと割に合わないだろう?
落とし前はきっちりつけてもらわないと。あるべきことをあるべきところへ戻すだけ、責任ってやつをちゃんと元ある場所に戻したいんだ。アンタらが責任転嫁してきたコレをちゃんと戻す。私になすり付けたまま逃げさせたりなんてしない、底の底の地獄まで、高い高い天国まで、とことん追いかけてお前らの人生全部賭けさせてやる。
ずっと不幸でいてほしいなんて言ってないよ。一回だけバキバキに心をへし折れたらそれで十分だから。人間には治癒能力があるからね。大丈夫、きっと私達お互い幸せになれるから。だから一旦不幸になって死んでくれ。
人生のこと人間のこと世の中のことなんにも分からないけど私は私のしたいことをするの。人は勝手だから、人はわがままだから、それが基本だから、人は自由だから、だから私はのびのび生きる。それが不自由と言われても与えられた人生で与えられたカードで戦うしかないから。そんなことできないって言ってたって死ねないから。
大丈夫じゃない、だから武器を持つの。優しさで全てが解決するなら私は今頃救われてる。正しい優しさも正しくない優しさも分からない。ただ私が思う優しさでは太刀打ちできない。塞ぎ込んで病んでばっかじゃ苦しいだけなら、戦う勇気を持つしかない。
茨の道でも道があるならそこを歩けばいい。どうせ全部苦しいならとことん傷んで暴れてやるさ。満足するまで、スッキリするまで、それを後悔するかしないかなんて未来にならないと分からない。やってみないと分からない。戦ってみないと分からない。
逃げて逃げて苦しいなら今度は戦う。戦って駄目ならまたそのときに考えればいい。逃げるも戦うも苦しいなら、どちらにせよ怖くて辛いなら、今は暴れてやる。傷ついてボロボロ状態ならどれだけズタズタにされても一緒さ。
同じことをやった人に同じように返すことが悪だって、それを言うやつの方がよっぽど悪魔みたいで笑えるぜ。
愛してくれてありがとう。育ててくれてありがとう。見て、ここまで大きくなったよ!
目を逸らさせたりなんて絶対にしない。
たとえ貴方が、高く高く、
手が届かない場所まで行ってしまったとしても。
いつか、その背に追いつけるように、
肩を並べて歩けるように、
努力し続けていくから。
だから、
遥か高みでまた会いましょう?
営業成績は棒グラフによって高く高く積み上げられていく。私はこの棒グラフを虚しい気持ちで眺めていた。
同じ社員と競争しているように見せられて、毎月の結果に一喜一憂して、果たして給与明細の数字はここ5年間で何千円増えたというのか。棒状に積み上げられたものはダルマ落としの要領で崩すことができる。このオフィスが入っているビルもなかなか細長い棒である。どこかにいい槌はないだろうか。ウチの建設機械の技術ならそれくらい作れるんじゃないか。
ああいかんいかん。現実逃避破壊衝動終末思想がすぎる。私が疲れている訳ではない。この国のサラリーマンは一様に朝から疲れすぎている。よし、すべての疲労を国に転嫁できたところで気分がリセットした。
ゲームを途中でやめて最初からやり直すというこの比喩を肯定的に使うようになったのはいつの頃からか。どんな事象も否定から肯定に多数派が切り替わる瞬間はあるもので、市民権を得るまでにどんな苦労があってもやり続けることに意義はあるものだ。かつては不良のカルチャーと呼ばれた文化のどれだけが、今の日本でメインカルチャーになっているだろうか。
英文の日本語訳のように思考を続けるのはやめよう。水平思考をいくら続けても、営業成績が垂直方向に高く積み上がることはない。
「それではみなさん、今日も一日、元気にがんばりましょう!よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします」
朝礼を全く聞いていなかった。聞いても聞かなくても同じ朝礼なら毎朝全員の時間を拘束してやる意味があるのか。しかも始業時間前だぞ。この無為な朝礼こそが朝から疲れている原因の一つに違いない。
「タケヤマ、ちょっといいか」
部長から話しかけられてビクリとなる。
「はい。なんでしょう」
小さな会議室に促された。
「タケヤマ、いつも良くやってくれてありがとう。営業成績は毎月独走でトップだな」
あの縦軸の棒グラフを見て“独走”を連想するとは、部長はなかなか想像力が豊かなようだ。
「君に昇進の話がある。もちろん簡単な昇進試験もあるんだが、君なら心配ないだろう」
そうだ。営業成績を積み上げた先には昇進がある。さらなる高みへという訳だ。さすがに会社命令に逆らったら処分されるだろうし、昇進試験なんか目をつぶっていてもできるようなものをわざと落ちるのもすぐにバレそうだ。いっそ上にあがってこのくだらない会社の文化をぶち壊してやろうか。
そうか、その手があったか。すべての文化ははじめは否定される。私が変えればいいのか。やってやる、私はやってやるぞ——
「それではこれより、新たにCEOに就任されましたタケヤマ様より、ご挨拶を賜ります」
「みなさま、お集まりいただきありがとうございます。堅苦しい挨拶は抜きにして、こちらをご覧ください」
会場の大型スクリーンに巨大な機械が映し出される。キャタピラの上にドデカい鉄槌が水平に取り付けられている。会場から嘆声とざわめきが起きる。
「こちらが我が社の技術の粋を結集して作った次世代建機『超高速回転鉄槌〜ダルマ川落としPG〜」くんです」
ざわめきが激しくなる。
「この機械は高速に回転することで最大限のパワーとスピードを手に入れて、ビルの1階部分を安全にぶち抜くことが可能になりました。これにより、建ててしまったビルのレイアウトが気に入らなかった場合、2階を1階にすることができます。すべての階をぶち抜けば、カセット形式で自由に上下を入れ替えることも可能です!」
映像の中のダルマ川落としPGが高速で回転し始める。
「早速、我が社の新社屋から、1階をぶち抜いていきましょう!あはははは!」
ダルマ川落としPGは、社屋に向かってまっしぐらに進んで行った——