高く高く
君は飛んだ。蝋の翼で、自由に、太陽を目指して。
私はそれを下から見上げる事しかできなかった。遠ざかる君が眩してくて、私は思わず顔を顰める。恐ろしくて、寂しくて堪らなかった。君がいなくなってしまうのではないかと。
溶け始めた蝋が、私の頬を涙の粒のように伝った。やがてそれがボタボタと雨のように降り注いで、呆気なく君は墜落した。
壊れかけの玩具のように呼吸する君を抱きかかえ、心の底から安堵する。もうどこにも行かないでと。
やがて蝋が固まり始めた。
10/15/2024, 1:58:09 AM