『香水』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
(香水)
朕にその香水を売ってくれぬか
この声は、
この香りは、
わずかな記憶を結びつけ、物語を紡ぐ
(現パロ)
ふと彼女が隣の席に座った時甘い香りがした。
香水なんてつけるタイプだっただろうか? いや、そんなはずはなかった。昨日までの香りだってこんなシトラスのような香りではなかったし、もっともっとフローラルなまるで柔軟剤のような香りをしていたのだ。
そんなことを思ってから我ながら気持ち悪いなと、そう思ってしまった。いくら好意を寄せている人間とはいえ、クラスメイトになったばかりの隣席の少女の香りを覚えているだなんて、まるで、不審者のようじゃないか。
そんなことを自虐的に考えてしまったとしても、とにかく気になることは気になるもので、まるで、彼女に誰か彼氏でもできたんじゃないかなんて、思考がぐるぐると回った。
それでも尋ねることはできない。それはさっき、自虐的に考えてしまったということも片棒を担いでおり、そこまですごく仲良くない異性から『今日は、香水つけてるんだ。珍しいね』などと、急に言われるのも甚だ、不審者のようにしか見えないだろう。そんなわけで、結局真実も知れないままモヤモヤすることしかできなかった。
「…………あれ、今日香水つけてない?」
友人にそう問いかけられた。
「……ああ、うん。なんとなく」
そんな下手な誤魔化しで友人は納得してなるほどねー、なんて言葉を呟いた。
意味のない行動はしないとは言えないけれど、少なくとも、香水はつけてきたのには、理由があって。
姉から押し付けられたこの香水はどうやら恋を叶えてくれる作用があるらしい。それで、まぁ恋をしている隣席の彼にジンクスが作用すればいいなんて淡い期待と共につけてきた。彼がどう思ってるかボクには分からないし、それを問いかける勇気もないけれど何も言ってこないってことは嫌じゃないのかもしれない、なんて、ポジティブな思考回路を無理やり回した。
香水
不意にただよう甘い香りに振り返る
同じ香水を使っている人がいる
ただそれだけなのに
人混みの中君を探してしまう
どこのメーカーの
どんな名前の香水なのか
最後まで聞くことができなかったのに
この香りだけは忘れることがない
突然の別れからもう三年
君の顔さえおぼろげなのに
たまに街中でこの香りに会うだけで
君のことを思い出して
胸が苦しくなるんだ
蚊取り線香の匂いがした。
そっか、もう夏だもんな、とひとり頷きながら、そおっと自分のとなりを盗み見る。
すると、向こうもこちらを見ていたようで、ばっちり視線がかち合った。
──あ、睫毛ながいなぁ。
そんな言葉がさっと頭のなかをよぎって、だけどあの子が眉尻を下げたのを見てハッとした。
いけない、この子は自分への視線の意味に鈍感だから、きっと無視をされたと思わせてしまう!
そう考えて、私もにっこり微笑み返してみる。
あの子は、満開のひまわりを彷彿とさせる笑顔を見せてくれた。
嗚呼よかった、嫌な思いはしていないみたい。
たくさんの虫が鳴いていた。
リーンリーン、リンリンリン、ピィッピィッ。
彼女は元気にしているだろうか。
辛い思いはしていないだろうか。
悲しいときそばで寄り添ってくれる存在はあるだろうか、寄り添える存在はあるだろうか。
ふと左手の甲に伝うやわい感覚に目を遣る。
なにもない。ただ、夜の闇が足元を照らすだけ。
「……───」
そっと目を閉じる。
私は、いったい何を考えていたのだろう。
線香花火はとっくの昔に落ちたのだ。
蚊取り線香など、もう片付けてしまったのに。
▶香水 #78
香水
何故だろう…君とすれ違う度に、いい香りがする…香水とかは、多分、使っていそうにないのに…
ふわりと長い髪が揺れると甘く優しい香りが漂ってくる…シャンプーの所為なのか、判らないけれど…
言葉を交わす事も無いけれど、儚げな君の横顔と、この仄かな香りが、ずっと、僕の中に満ちていて…気が付くと、君の姿を追っているよ…
#香水
月が空高く昇ったころ、小さな貝殻の形をした容器をそっとわたしに握らせて、彼女はささやいた。
薔薇の練り香水なの。
ほんの短い時間、ごく仄かに香るわ。
眠る前に喉のくぼみにつけてね。
きっと良い夢がみれるから。
そうして、カーミラのように怪しく微笑んだ。
・9『香水』
姪っことお茶をしながら迷いインコの名前を考えた。
姪っこはインコに「名前をいってごらん?」と話しかけていたが当のインコは首を上下に振ってはピィ!ピィ!と気まぐれに鳴くだけだった。
水色の香水瓶のよう、という理由で「コースイちゃん」ということにとりあえずなった。
【続く】
【香水】
香りと記憶が結びついている、というのは有名な話だ。
香りというものは海馬に直接刺激を与えるらしく、記憶と香りは一緒に脳に収納されていることがある。
昔嗅いだことの匂いで芋づる式に記憶が蘇ってくるのは、そんな仕組み。
フランキンセンス、という香りは知っているだろうか。
昔から宗教的な儀式や神聖な場で使われることが多かったその香りは、別名『神の香り』とも言われているらしい。
スパイシーとウッディ、あとは柑橘系。暖かさと冷たさが混じり合うような香り。
緑が深い森の中でふと人工物を見つけたような、そんな感じ。
普通なら混じり合うと異質で気持ち悪いなものだが、妙に綺麗に合わさっていて美しく感じる。
複雑なのに、嫌悪感がない。不思議な香り。
嗅いだこともない匂いなのに懐かしさを感じた、なんて経験はないだろうか。
こんな香り知らないはずなのに、なんだかノスタルジックで。
心がざわざわして、その香りと紐づく記憶を呼び起こそうとしているのに。
あぁ、思い出せない、こんなにも懐かしいのに。
そんな感情。
フランキンセンスの香りを初めて嗅いで、懐かしさを感じた人はいるだろうか。
神の香りと呼ばれているフランキンセンスを懐かしく感じるのなら、あなたはいつの日にか神と呼ばれるモノにあっていたのかも?
なんてね。
記憶にありもしない懐かしさが事実を教えてくれるのなら、それは、
上品なおば様達は
薔薇に顔を近づける
微香 中香 強香
強香と立札にあれば
嗅ぎたくなるのは本能
香水も素人には
判断できない
個性的で凝った形の瓶に
入ってはいるが
テスターを
試してみるのが先だ
見た目で判断できない物に
より詳しい説明を
それでこそ
購買意欲はそそられる
白い毛をした猫さんは
夜は月の雫
朝は朝露
昼はひなたの香り、
ひまわり畑の花の香り、
猫じゃらしの揺れる草むらの香り
を纏って歩いています。
「香水」
デパートのトイレはいい匂いがする
だから、大きくなって綺麗な女性になれたら、
尿も芳しくなると思っていた
「香水」
香水
香水ではありませんが、フローラルの香りの汗吹きシートが、お気に入りです。ひんやりシートで、汗を抑える効果もあって、爽やかな気分になります。
フローラルのように、ほのかにさりげなく香るものが良いです。
突然のことだが、バイトの先輩の家に泊まることになった。
夏休みシーズンを終えて繁盛期のピークを過ぎた日とはいえ、まだまだ忙しくて。バイトを始めてそろそろ一年、今日もギリギリだけどなんとか業務も終えられそうだと安心していた。
しかし、閉店時間直前になってトラブルが発生した。あたふたする私の隣で先輩が解決してくれたが、いざ帰ろうとする頃に天気が荒れて電車が止まってしまい、帰れなくなってしまった。
金曜日だからか、同じような人がたくさんいて、近場で一泊出来そうな場所は満杯だった。そも、今日は大学とバイトしか予定がなかったから大して持ち合わせもなかったが。
そこで、同性だし嫌じゃなければと、先輩が一人暮らしする部屋にお邪魔することになったのである。
先輩の部屋は、概ね予想通りというところであった。
ワンルームの真ん中にあるローテーブルの上に、ノートパソコンと何冊かの本、隅っこに畳まれた布団と充電器がほっぽってある。窓際の小さな棚に日用品がしまってありそうな箱やビニール袋が並べられている。
お盆も、クリスマスも年末年始もシフトに入っていて、内心、ふぅん、遊びっ気がない先輩らしいと思った。
大学生が四年間一人暮らしするための部屋なんて、まあこんなものかもとも。
先輩はというと、念の為と私の母と電話している。一応成人済みなのに、子ども扱いされているようで恥ずかしいが、後から心配されるよりはましだ。
母の電話番号をメモし、私にスマホを返した先輩は、お風呂の準備するから適当に座ってていいよ、充電器使っていいからねーと言いながらいなくなってしまった。
もう見るところもなさそうな部屋をもう一度見回すと、小さな棚の一番上にあるリボンが巻かれた香水瓶に目を惹かれた。
香水とか持ってるんだ! と、失礼なことを思いながらそれをみつめる。いや、普段飲み会こないし、いつバイト行っても大体いるし。遊びのためにドタキャンした子の代わりに大体すぐ来てくれるし。
この香水、去年の冬にインスタでみた。『¥5000以内1でできる彼女へのプレゼント10選〜』みたいなので。
「それ嫌じゃなきゃあげるよ。 一回しか使ってないし」
後ろからの声にびくりと振り返る。
「え、でもプレゼントですよね、これ……」
「いらなかったら捨てていいらしいからほんとにあげるよ、引っ越す前に捨てるよりありがたいし」
「引っ越すんですか?」
「就職先の社宅にいくよ。 荷物減らすのにこの間は鈴木君に漫画あげちゃった」
「鈴木君と話すんですね……」
「週一くらいはシフト被るからね」
タオルにライブTシャツとスウェットと一緒に、はい、これクレンジング。と手に握らされ、お風呂場に押し込められた。
そして、友達が置いてった寝袋出してくるねーと、先輩はまたいなくなった。
二ヶ月もしないうちに、先輩は引き止める店長に構わず、バイトを辞めていた。みんながテスト期間が近く、そろそろ休みたがるタイミングだったのもあって、少し大変だった。
あのとき、お風呂から上がったあと、お礼を言うべきところを、私は真っ先に、あの香水欲しいですと先輩に言ったことは後悔していない。
【香水】
香水
私はあなたが宣伝したり付ける香水が嫌いなの。なんでかって?その香水のせいでほかの女達があなたの周りに集まったり、同じものを買ったりするの。それがほんとに腹立つの。深い嫉妬よ。
うん。え?何?あー。推しのアイドルグループの話だけどね。
題【香水】
(登場人物⇒すみれ、葵、ふうま、ひなた)
「ねぇすみれ。好きな人の匂いって、なんか覚えるよね。香水とはまた違う匂い。」
「どうしたのですか、急に?」
「あのね、ひなたの匂いは何て言うか、優しい感じの…、て、ごめんねすみれ、こんな話しちゃって。」
「そっか。ふうまの匂いは、守ってくれそうなゆうかんな匂い、ですかね?」
「え~!すみれも分かる!?」
「まぁ、他の人よりは鈍感ですね!すぐ分かる気がします。」
「だーれだ?」
この匂い…、あっ!
「ひなたくんだね。」
「おっ、正解です!葵。」
「やった~!」
って、待て待て私、当てちゃった!
気持ち悪いって思われてないかな?どうしよ。
「だーれだ?」
「ふうまですね!」
「即答!さっすが~、俺の彼女!」
「止めてください!恥ずかしいです。」
「仲良いな、相変わらず!」
「もう~(笑)」
「あっ。そろそろ下校時刻過ぎちゃう!」
「本当だ!ばいばい。」
「じゃあな。」
「はい!さようなら。」
「あっ。すみれ!今日も一緒に帰らない?」
「はい!」
「じゃあ、俺らも一緒に帰ろ?葵。」
「えっ!あ、はい。」
「香水」
匂いって武器だと思う。
記憶に残りやすいから。
同じ匂いを嗅いだら、思い出される。
あなたの優しかった香水の匂い。
そんな切ない思い出なんてまだない私は、
香水の匂いが強ければ、( ᷄ᾥ ᷅ )ウッ……ってなるから。
匂いは物理的な武器にしかならない。
なんだか悲しい。
─── 香水 ───
人工的な香りが好きじゃない
自然のままが一番好き
ある程度は仕方がないと思ってるけれど
洗髪剤に柔軟剤に化粧品に香水に
混ざりに混ざったクラスメイト達のにおい
正直くさい
纏まりがないだけじゃなく
本当に重なりまくってたから
冬のあの空間は地獄でしかなかった
香水なんて使ったことがなかった。
使いたいと思っても
何を使えばいいのかわからない。
そんな状態が高校生まで続いてた。
そんな私でも使い続けてる香水がある。
石けんのようなシャンプーのような
優しくて爽やかなこの匂いがする度に
彼との思い出が蘇る。
まだ空から見守っていてくれてるかな。
香水 良い臭いがする
好きになる、気になる臭いもあるし
香水って不思議だね~
臭いに敏感な人多いしね!
夜中にいきなり浮気した彼が尋ねてきた。急に抱きしめられフワッと香りがした。何か思い出のある匂いだ。わたしと彼が初めてデートした日に買ったハナミズキの匂いの香水。「あぁ、忘れようと思ったのに」