シオン

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(現パロ)
 ふと彼女が隣の席に座った時甘い香りがした。
 香水なんてつけるタイプだっただろうか? いや、そんなはずはなかった。昨日までの香りだってこんなシトラスのような香りではなかったし、もっともっとフローラルなまるで柔軟剤のような香りをしていたのだ。
 そんなことを思ってから我ながら気持ち悪いなと、そう思ってしまった。いくら好意を寄せている人間とはいえ、クラスメイトになったばかりの隣席の少女の香りを覚えているだなんて、まるで、不審者のようじゃないか。
 そんなことを自虐的に考えてしまったとしても、とにかく気になることは気になるもので、まるで、彼女に誰か彼氏でもできたんじゃないかなんて、思考がぐるぐると回った。
 それでも尋ねることはできない。それはさっき、自虐的に考えてしまったということも片棒を担いでおり、そこまですごく仲良くない異性から『今日は、香水つけてるんだ。珍しいね』などと、急に言われるのも甚だ、不審者のようにしか見えないだろう。そんなわけで、結局真実も知れないままモヤモヤすることしかできなかった。

「…………あれ、今日香水つけてない?」
 友人にそう問いかけられた。
「……ああ、うん。なんとなく」
 そんな下手な誤魔化しで友人は納得してなるほどねー、なんて言葉を呟いた。
 意味のない行動はしないとは言えないけれど、少なくとも、香水はつけてきたのには、理由があって。
 姉から押し付けられたこの香水はどうやら恋を叶えてくれる作用があるらしい。それで、まぁ恋をしている隣席の彼にジンクスが作用すればいいなんて淡い期待と共につけてきた。彼がどう思ってるかボクには分からないし、それを問いかける勇気もないけれど何も言ってこないってことは嫌じゃないのかもしれない、なんて、ポジティブな思考回路を無理やり回した。

8/30/2024, 2:34:54 PM