『香水』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#64 香水
「いい香りね」
誰にともなく呟いてしまった、仕事の帰り道。
今年の夏は暑すぎて、
エアコンの効いた社内の空気すらも汗ばんでいるように感じる。
人のにおいは苦手。
リフレッシュにと思い、寄ったのは香水屋さん。
爽やかなシトラス。
華やかなフローラル。
目の醒めるようなウッディ。
甘いバニラ。
どれも素敵。だけど…
(自分につけても分からなくなっちゃうんだよね)
自分で分かる程に香る場合、香水をつけ過ぎているので注意、ということは。
つまり自分で香りを楽しむものではないんだろう。
他人へのアピール、フェロモンのような。
(そうじゃないんだよなぁ)
冷やかしになってしまって申し訳ないと思いつつ、
電車に乗るため、店を出た。
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香りから自分自身に対して効能を得ようとするアロマとは目的が違うんだよなぁ、ということで。
何気なく立ち寄ったアンティークショップ。
私はそこで綺麗な香水の瓶を見つけた。中身はまだ残っている。
試しにほんの少しだけ手の甲にかけてみる。
鼻を近づけるが、何の香りもしない。
不思議に思っていると、店長がぼそりと呟いた。
「その香水は自分以外の人にかけるものだ。その人にとって最も幸せな記憶に結び付いた香りがする。香水を使用したものにしか香りはわからないがね」
まるで都市伝説のようだなぁと思いつつ、私は興味をひかれて香水を購入した。
試しに、学生時代の友人の手に香水をかけてみる。
友人は首を傾げていたが、私にはシャンプーのような香りがした。
この香りには覚えがある。もう亡くなってしまった、彼女の愛犬の匂いだ。
店主の話はどうやら本当らしい。
それから、私の毎日にちょっとした悪戯が加わった。友人や職場の人にそっと香水をかけてみるのだ。
家の独特の匂い(実家かな?)、高級な香水の匂い(彼氏からのプレゼントかな?)、美味しそうなトマトソースの匂い(レストランかな?それとも手作り?)…。
その人の大切な思い出を勝手に覗き見るようで良くないことだとも思うが、それがまたスリリングで楽しかった。
ある日、私はいつも明るいムードメーカーの後輩くんに香水をかけてみた。
いつも楽しげな彼の幸せな思い出ってなんだろう。想像を巡らせながら彼の香りを探す。
しかし、彼にかけた香水からは、何の香りもしなかった。
こんなことは初めてだった。どんな些細な思い出にも匂いは必ずつきまとう。
なのに、彼からは何の香りもしない。
彼には幸せな記憶がないのだろうか。
仮に、今まで幸せな思い出がなかったとしても、今ここに存在していることも幸せではないのだろうか。
この楽しげな笑顔も、彼の仮面にすぎないのか。
興味本意で覗いてしまった彼の心は、虚無が続く底の見えない深淵だった。
それ以来、私はあの香水を使うことをやめた。
香水
夜にだけ行われる祭り。夜祭。
暗闇の中、黒い着物を着た女性たち。
黒い団扇を手に輪になって踊っている。
誰も一言も発しない。
静かに聞こえてくる、乾いた下駄の音。
カタカタ。
一緒に見に行った友人がいた。背が高かったと思う。
参道に吊るされた提灯。文字が書いてあるのは分かるが、ぼやけて読めない。
友人の顔を見ようと目を凝らして見上げる。
だがろうそくの灯りでは、彼の顔はどうしても見えない。
体の周りに充満する、たくさんの人と、人以外の気配。
目も鼻も口も体全部を、大きな影が覆いかぶさってくるようだ。
それらに圧され、思わず彼のコートに触れた時、ぱっと漂ってきた香り。
その記憶。
祭りの。
夜の。
香水か。男だから縁がないな。臭い対策するにしても精々ファブリーズで十分だろ。
てか女性でも香水つけてるのって少数なのでは?接客業してるけど香水つけてる客はほとんど見ないな。夜勤だから言うほど接客しないけど。
香水じゃないけどアロマオイルは興味あるんだよな。ああいうのって寝る時に使うとよく眠れるって言うけど本当なのかね。
前に興味あったから色々調べたけど結局やらなかった。理由は当然金だ。貧乏人はアロマオイルを試すことすら悩むし金がかかるからという理由でやらないのだ。
匂い関連だと入浴剤もあるな。これは試したことがある。でもあまり効果を実感できなかったから続かなかったな。
入浴剤も金があれば毎回使って効果を実感できたのかもしれないけどちょっと使ってみて効果がなければやめちゃうよね普通。
結局世の中金がすべてなんだよね。体験は金がなければできないし継続も金がなければ続けられない。つまり世の中くそってことか。わかってたことだな。
お店の匂いを知ってるかい?
近くの商店街の八百屋さん
見慣れたスーパー
駅の近くの100円ショップ
ちょっと良いものを買おうと出向いたそのお店
通ると香るカレー屋さんの匂いまで
ほら、思い出してごらん
貴方が思えばいつでも感じるその匂い
私の鼻は、便利だから
よく嗅ぐ匂いは覚えちゃうの
その場の雰囲気、その日の思い出、
だからね、
貴方の匂いだって、
その香水の匂いだって、
すぐにわかる、
季節はずれのその大きなダウンジャケットでさえ、
着れば貴方に包まれる
もう会えない君へ
なぜ、私を離してくれないの
便利な私のその鼻が、君を思い出させてくる
花に吸い寄せられる蜂のように
酔った私を抱きしめて
#香水
香水にアレルギーなのか
いつもお店に行くと鼻水が止まらない
君がいつも香水をつけるせいで
毎日ケンカばかりだった
それでも今涙が止まらなくて
鼻水が止まらないほど
君の香水が
ただ恋しいよ
《香水》
#64
若い頃は柑橘系のサッパリとした香りが好きだった。
サボンもよかったけど、独特の甘ったるい匂いが肌にまとわりつく感じがして好きにはなれなかった。
今はもう香水なんていらない。
だって部屋の中で咲く小さな花々の優しい香りと水をたっぷり含んだ葉や土のホッとする匂いに包まれているから。
自然の香水が今の私のお気に入りなの。誰にも真似できない私だけのものってなんだか素敵でしょう。
【題:香水】
香水
君からすごくふわっといい香りがしてきたんだけど…、シャンプー?、香水?かなって思ってるんだけど違うかな?
あ、香水だったのか。なんの匂いか当ててっていわれてもなぁ…(;´_ゝ`)
うーん、なんとなくせっけんの匂いな感じもするような?あとみかんの匂いも混じってるから二個匂い入ってたりする?
あ、二個入ってるんだ!しかも当たってるじゃんか!やったぜ!俺すごくね?
せっけんとみかんがほんのりいい香りしてたんだな。君ってやつはかわいいなぁ!
俺も香水つけてみようかな?
終わり
香水
ふいにきみから香るカオリ
無邪気なきみと香水
アンバランスで興味深い
いつもどの香水なの?
怪訝なかおでぼくを見るきみ
なんの匂いがしてるんだろう
シャンプー
入浴剤
ボディソープ
洗濯用洗剤
候補をあげていくきみ
既製品の香水ではないようだ
きみのカオリは手に入らない
それが答えか
残念
香水。それは人によって好き嫌いが分かれるものである。多くの人は匂いをつけることでいい匂いと感じるがその匂いで体調不良に陥る人もいる。私は体調不良に陥るタイプだ。だから香水をつける時は少し考えてつけてほしいと常日頃思っている。
僕が好きなあの子はいつも金木犀の香りがする
甘くてでも、どこか儚げな香りが。
君はいつも僕に言う
「私、金木犀みたいな女性になりたい。謙虚でおしとやかな金木犀みたいに。」
そんなことを言う君が好きで。
今日僕は君に金木犀を渡すよ。
君との未来のために。
ずっときみを愛するってここに誓うよ。
いつか
叶うものならば
夢も見続けていましょう
いつか
届くものならば
想いも抱き続けていましょう
いつか
何かが変わる日が
必ず来ることを
遠い気持ちで待ちましょう
いつか来る
その日を信じて
いまは
時に流されて行きましょう
☆ いつか… (262)
好きな人がいる。
彼はみんなに人気者で、いつも誰かと一緒にいる。
私はそのなかの一人というわけで。
だけどそれだけで終わるつもりなんてなくて、彼の唯一になりたい。
どうすればいいかな。
真偽不明の恋愛必勝法が載っている雑誌をめくって、そのなかの一つが目に入った。
『魅力的な香水でさりげなく!』
中身を熟読して、これだって思ったの。
同じ香水をつけ続けて、標的のそばに居続ける。
あの人が街を歩いていて、似た匂いがしたら私を思い出すくらい。
彼に意識してもらうことができたら、もう私の勝ち。
さっそく買った甘い匂いの香水を、さりげなくさりげなく、注意しながらうなじにつける。
香水と私の匂いがまじって、世界にたった一つの香りができあがる、らしい。店員さんの受け売りだ。
彼はいろんな人と仲が良くて、どんな小さなことでも気付いてくれる。
どんな反応してくれるかな。
楽しみでスキップしそうな気持ちで道を歩いて、大学の敷地内に入る。
「あっ」
さっそく見つけた彼に、運命ってものを感じる。
けれど、彼の隣。いつもいつもそこを陣取っている後輩のあの子。ナマイキな後輩だって言うあの子の先輩兼彼の友達が逆隣にいて、話しかけるタイミングを見失った。
結局、講義の合間に少し話しただけ。
でもさりげなくって書いてあったし、初日はこれくらいかな。
そう思いなおして、明日に備える。
少しずつ少しずつ、私を刻みつけるの♡
****
「不愉快」
「なんでえ」
「ジョーネンの臭いって感じ」
「ジョー……?あぁ情念。おまえよくそんな言葉知ってたなあ」
「あなたは変なのに好かれやすいんだから気をつけてくださいよぉ」
「おまえも含めてな」
「オレは相思相愛だからいーの。フロ行こ。臭い落とさないと抱き心地サイアク」
「へーい」
お題「香水」
香水
香水をつけるのをやめた。
いい香りでいることより、いい香りの場所にいたいのだと気づいたから。
部屋にアロマを焚いた。
オレンジ、ベルガモット、サンダルウッド、ローマンカモミール。
和香油もいくつか試した。
紫陽花、蓮、水、桜、桃、柚子。
ああ、やっぱり。
私がいい香りでいるより、いい香りの場所を身近に作っておくことの方が気持ちいい。
甘い香りがした。
「あれ、なんか今日はいつもと違う匂いだ」
「ふっふーん! よくぞ聞いてくれた!」
彼女は、今日の私はいつもと違うんだぞ!と自慢げに胸を張る。
その動作ひとつで、ふわりと香る匂い。いつもの彼女とは違う匂い。
「今日はね、香水を付けてみました」
どうやら、調香師の元へと赴いてオーダーメイドで作ってもらったらしい。
何故わざわざ……とか、高かっただろうに……とは思うけど、今日のために準備してくれたことが只純粋にうれしかった。
「だって、特別な日だからさ。今日くらいは許されるかな~って」
「あはは、そうだね」
なんたって、今日は僕たちの初デートの日だ。
「あーあ、きみも香水付けてみたらいいのに。匂いが違うと雰囲気も変わるんだって、調香師さんも言ってたよ~」
「それ、いま言わなきゃダメ?」
もっと早くに言ってくれれば僕もちゃんと準備できたよ? と髪をいじくりながら唇を尖らせる。そんな僕を見て、彼女はひどく可笑しそうに笑った。
ああ、僕はしあわせものだなぁ。
「仕方ないなぁー、次行くときは一緒に行こっか。きみも絶対に楽しめるよ!」
「そう? ……じゃあ期待しとこうかな」
「うんうん!」
それじゃあ行こうか。
僕たちは、柔らかくしっかりと手を繋いで、少し歩いた先にある映画館を目指した。
▶香水 #1
イイニオイがした。オレはアルファなのでつがいのみにおいかもしれない。匂いのほうに歩いていくとうっそうとした森を通り木々が開けた瞬間、そこは崖で僕は落ちていった
香水
シオンノーレ、オスマンティウス、金木犀の香り。秋の香り。
フランス、マルセイユを思い出し、美しい少年達の愛の物語。
ジルベール。
「風と木の詩」
同性愛、虐待、迫害、全てが衝撃的で夢中で読んだ。
ジルベールの美しさに魅了された。
ジルベールの香水、シオンノーレ。秋の金木犀の香り。ジルベールの香り、、、。
先月、祖母が亡くなった。
私は葬式にも出なかった。
どころか、ここ数年会ってすらなかった。
容態が悪いということは聞いていた。
私は不孝者である。
記憶すら曖昧で、どんな顔だったか、どんな景色だったかも思い出せない。
大した思い出すらない。
強いて挙げるなら、何かの拍子に匂った時、それが祖母の家の匂いと同じ時に、同じと気づくことが出来るくらいだろうか。
祖母の家の匂いは何によるものか、名前を知らない。それが分からないほど幼い頃しか会っていない。ただ、その匂いがあればすぐ気づく、というだけの話。
香水、ではなかったろうとおもう。
香水は名前のある匂いだから。
名前があって、付け替え自由な匂いだ。
祖母の家の匂いはいつも祖母の家の匂いとしか言えない。
こんなことしか思い出せない。
ねえ。
────。
香水
匂いがしない。なんで?
母は顔をほころばせ、
ずっと洗ってなかったから洗濯したのよ〜
悲しくなり本音をボヤく
えー、いい匂いだったのに
母は恥ずかしいような、照れくさいような
声色と表情で
1ヶ月くらい洗ってなかったんだよ〜?
と呟きながら台所へ戻る
薄くなった母の香りが鼻にかすかに残っている
仕方がない、
また いっかげつ 待つことにしよう
洗濯しないでねー!
母に駆け寄った
香水
この香水は苦手だ
僕の未練をよみがえらせる失恋の香り
すれ違いにまた香る