『香水』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
香水
何時も乗るバスで、今日もいい香りがしている…微かに香り乍ら、鼻腔を擽る…少し俯いた顔は、長い黒髪に隠れて、一度も拝めない…毎朝同じ席に座り、外の景色を見たり、文庫本を見ている彼女の顔は、気になるけれど、後から乗る僕は、何時もつり革に掴まり先に降りるので、その香水の香りと黒髪からしか、思い描くしか無くて…
誰かがあの香水の香りだと言ったから、少しでも、少しだけでもあなたの事を知りたくて。あなたの解像度を上げたくて、匂いがキツいと近寄りもしなかった香水のコーナーに足を踏み入れた。
聞いただけのメモもしていない香水の名前を探して、一番小さいサイズが表記されているカードを持ってレジに向かった。店員が持ってきた瓶は想像より小さくて、想像より重たかった。
お店を出て、すぐにパッケージを開ける。サンプルで嗅いだ匂いはほかの匂いと混ざってよく分からなかったから、きちんと匂いを嗅いでみたかった。
重たいガラスの瓶からしゅっ、と出て空気と混ざる。風に乗ったその香りは、好きでも嫌いでもなかった。
友達から誕生日プレゼントにもらった、レモンの香りの香水。それから逃げるようにベランダに出て、煙草に火をつける。煙をくゆらせて、焦げた匂いで鼻に残っていた酸味の香りを誤魔化した。
あの人は、微かにレモンの匂いがする人だった。
「香水?柔軟剤?」と尋ねても、「何もしてない」と困ったように笑う人。爽やかに透き通っているような人。その人の匂いを嗅ぐと、自分も明るくなれた。
だから私も、レモンの香りが好き、だった。
棺で眠っている彼と出会った時、もう私が好きなレモンの香りはなくなったのだと悟った。それからは、煙草の臭いで自分の中を汚していった。彼はもういないのだと言い聞かせるように。レモンは腐ってしまったのだと言い聞かせるように。
美味しいはずの煙草が、何故か苦く感じて興ざめになる。ベランダの床に置いてあった灰皿に、煙草をぐりぐりと押し付けて、頭を掻きながら部屋に入った。
机の上で、ふわりとレモンが香る。何年も蓄積された汚れが、さらりと簡単に流されていく。
それが気持ちよくて、でも苦しくて、涙が止まらなかった。
花のやわらかな香りや、石鹸の清潔な香り。時には紅茶のような落ち着く香り。
人それぞれ好みがあって、香水自体苦手な人だっている。
私はそれでも、香水を付けるのは意味があると思う。
香水は自分のイメージだ。人は1度嗅いだ匂いは記憶に残ると言われているし、何より付けてるってだけでなんだか大人っぽく感じる気がする。
ふとした瞬間、大切な人の香りを嗅ぐと安心した気持ちになるように。
あなたの香りを探して、身にまとって欲しい。
きっと、それは誰かの記憶に残るから。
#香水
ある程度大人になってから
色々吟味して
今は定着しているわたしの香水
ずっとレギュラーで使用している
今の香水は
よく人からいい香りと言われる
不快感を与えない
爽やかな大人の香り
嗜みのひとつとして使用しています
だって
やっぱり
自分の匂いが気になるんだもん
シトラスのようにスッキリしていて、
バニラのように甘い香り。
あなたとすれ違う度に香る匂いは、
あなたと話してみたいと思わせる。
いい香りですね。つい声が出てしまった。
あなたは、恥ずかしそうに頬を赤らめ
いい匂いでしょ?と可愛らしくはにかんだ。
なんだか照れくさく、恥じらいを誤魔化すために、
外を眺める。
ガラスに映る自分の姿に、照れくささと
心地よい高鳴りを感じた。
柑橘系の香水を纏い、あなたに近づきたいと
今日も
容姿をを磨く。
通るたびに香る匂い。
君が通った場所には君の匂いが微かに残る。
だからね、何処にいても見つけられるんだ。
# 109
「この匂い好きかも」
そう言って私の胸に顔を押し付ける
落ち着くと言って離してくれない
あなたの好きな匂いを選んだの
これ、あなたの浮気相手と同じ香水だよ
「香水」
香水はちょっと苦手かな
ほのかなシャンプーの香りとか、清潔な素肌の香りにグッとくる、なんて
あっ、ええと、つまり君の香りが好き
て言うか、君が好き
あれ? そういう話じゃないか
ゴメンゴメンw
何年経っても、あなたが消えてしまっても、私が死んでしまっても、永遠に思い出してね。
そう呪いを込めて、今日もあなたが好きだと言ってくれたこの香りを纏って会いに行く。
【香水】
初めて知ったその隠微な香り
貴女から感じる甘い女の匂い
まるで甘い蜜が重なり合い
僕の躯に絡みついて
ゆっくりと僕の胸を焦がしていく
濃厚なその香りは僕を狂わせて
底知れぬ深い快楽をもたらし
香水のような残り香が僕を惑わせる
この愛が沈み切るまで…僕を狂わせて
貴女の躯に僕が染み込むまで…僕を愛して
#70【香水】
幼い頃、母の化粧台の引き出しに
宝石と一緒にしまってあった香水が好きだった。
Bal a Versailles
幼い私、読めず。
歳を重ね、それが「バ ラ ベルサイユ」と読み
「ベルサイユ宮殿の舞踏会」という
意味だと知った。
確かに高貴な香りがした気がする。
もう記憶は微かなのだけれど
甘い甘い、大人な香りだった。
今は廃盤になってしまったけれど
特別な時にだけ纏っていた母の香り。
小さな瓶に揺れる、私の憧れ。
あいつがよく淹れる紅茶の香り
俺が前あいつにプレゼントした、薔薇の香水の香り
身体がどんなに疲れ切っていても、あいつに抱き着いて
方に顔を埋めれば、身も心も癒えていくような感じがしたし抱き着くと、それがダイレクトに伝わって来て
俺はその感覚が凄く心地良かった。
そして何より、あいつが今近くにいると実感できて、安心できるからだ。
だから俺は、あいつの特有の匂いが好きだった。
#香水
43作目
夜のヒノキの 匂いきえない
て は 橋
へ 台
分 へ
野 ら 柵
わ
た
の
忘れないものよ
ただ思い出せなかったの
あの香りが
ふとしたときにやってくる
あの音楽、あの場所、
見えない残り香
#香水
「香水」
香水はつけない
あなたの胸に顔をうずめたとき
あなたの香りだけをかんじて
覚えていたいから。
あなたには
私のほんとうのかおりだけを
覚えていてほしいから。
「香水」
香水
「ラベンダーの香りだよ」
「気に入ってるんだよね」
ある日、彼は香水を使い始めた。
今までそんなお洒落なものはそんなに手を出さなかったのに。
使い始めた香水は、こっそり調べてみたらいわゆる
“モテ系”なタイプのものらしかった。
かくいう自分も、こそこそ調べるなんてらしくないことに
今までは手を出さなかったのだけれど。
でも、彼は決して“異性にモテたい”とあからさまに発信する
タイプではないことはよく知っている。
ならば、誰かに好意を寄せていて
そのアピールとして使い始めたのだろうか。
その相手は誰かなんて、分かるはずはない。
その相手はいつか、ラベンダーの香りに引き寄せられて
彼の好意にいつか気づくのだろうか。
好意に気づいて
いつか彼と同じ香りを漂わせて
自分の前に現れたりするのだろうか。
自分も同じ香水を付けて
彼の前に現れてやろうか。
それともあえて彼の前には現れずに、
彼の周辺の友人の前にでも現れて
「え、相手はお前だったの?」とでも言われてやろうか。
柄にもない姑息な手口を頭の中で浮かべ続けていたある日
彼は言った。
「ラベンダーの色はあなたの誕生色、ラベンデュラ。
花言葉は「あなたを待っています」「期待」「幸せが来る」だよ」
その香水が柄でもない自分の一部となったのは
それから間もないことだった。
Fin.
香水
人が行き交う街中で、思わず振り返ってしまったんだ。
ふわり、と香ったそれは、君のはずがないのに、懐かしさで涙が出そうになって。
まだ忘れられなくて、君の笑顔も、君との約束も、頭の隅にずっと居座っているんだ。
「君の、笑顔が好きだよ」
そう言ってくれた君が心配しないように、ぐっとこらえて笑みを浮かべる。
まだそちらへ行くことはできないから、だから待っていて。
いつか、必ず君の元へと帰るから。
だって、死はすべての人に平等に与えられているのだから。
君の香りがした。
あったかくて、心地いい。
君がいるのに、きみの香りがしない。
君は、白い服を来ていた。
相変わらず君は甘ったるい香りをさせているね。男を誘うように媚びてるみたいな香り。そのためにつけてるわけじゃないって言うけどそうにしか思えないくらいなんだよね。
量をつけすぎてるとかそんな感じ。もう少し薄くてもいいと思う。
そう言うと君はそうかなぁ…と悩みだす。別につけすぎてるとかそんなわけじゃなくて、私がただ君が変わっていくのが許せないだけだった。
甘ったるいのは私の方だ。君を取られたくなくてこんなことして。私に押し倒されてまんざらでもない顔をしてる君を見て調子に乗ったりなんかしてる私は、本当に醜い。
香水の代わりに私の匂いをつけておけばいいんだ。
そうして私は君の首筋に噛み付く。上ずった声を上げる君を好き勝手するために。
44.『香水』