『風に乗って』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
風に乗って
風に乗ってどこかに行きたい、逃げたい。
そうやって思う。
自分の向かうところがわからないからだ。
時々思う、風に乗ってみたい
「飛ぶ」のではなく「乗る」
海で漂うみたいに空に浮かんでみたい
何も考えずにふわふわと宙に浮いてみたい
そうしていればいつかどこかで
「自分でなにかをしよう」という気持ちになれそうだから
風に乗って
カ ビ が 飛 ぶ よ
喉 が 痛 い よ
あぁこれがカビなのね
小学校で教えておくれよ(愚か)
#1『風に乗って』
懐かしい香りがして、ふと顔を上げた。
夕暮れ時の往来は仕事帰りの働き人や買い物袋を下げて小さな子どもと手を繋ぐお母さん、友達と笑い合う学生で賑わっている。
左手に持ったスマートフォンには上司からのメッセージ。
来週の会議に関する打ち合わせ、クライアントとのあれそれ。
ここ最近仕事に追われていて、心の余裕がなかったなと気がつく。
春の夕暮れ、風にのって香ってきたのは優しい味噌汁の香り。
懐かしく愛しい、母の愛情の思い出だ。
【276,お題:風に乗って】
風の手のひらの上で、ふわりふわ
温かい日差しの中で、ふわりふわ
やがて風が地面に下ろし温かい地面で、すやすやり
雨が、ずざぁずざぁと降り注いで
お日様が、ぽわぽわと包み込んでくれる
そして、にょきにょきぐんぐん育ったら
新しい誰かが顔を出す
みんな同じ世界で育っていく
何もかもが遠いので、私は泣くしかないのです。
時の流れも、互いの場所も、思いの在処も、何もかもが遠く遠く離れてしまって、私の思いはどこにも行き場が無くなってしまいました。
私の願いはかなわない。私の思いは届かない。
私はそれを受け入れなければならないのに、未練がましくただ泣くしか出来ないのです。
「·····歌うのが良いでしょう」
そう答えた男の声こそ、まるで歌うようだった。
「貴方が歌えばきっと声は届くでしょう」
「歌とはそういうもの。時を超え、距離などまるで無いかのように、誰かの胸を響かせる」
そう言った男の視線は、隣で涙を流す男ではなく、ここにはいない遠い誰かを見つめている。
「風に乗って届いた声は、きっと誰かを動かすでしょう。それがいつか、巡り巡って貴方に届く。たとえ命が尽きたとしても。歌に乗せた思いというのは、消えずに残っていくものだから」
「――」
涙を流していた男は微かに目を見開いて、口元だけで小さく笑う。
「歌とはそういうものだから」
「そうですか」
小さく答えた男の声は、同時に鳴ったピアノの音にあっという間にかき消されてしまう。
それでもいいと、男は思った。
END
「風に乗って」
「風に乗って」
たんぽぽの綿毛の季節
娘にたんぽぽの飛ばし方を教える
まだ幼いからかなかなか飛ばないので、私が結局デコピンで綿毛を飛ばす。飛ばずに殆ど落ちていく
ふうと吹けばフワッと風に乗って飛んでいくのが理想
『風に乗って』
夕方の住宅街は匂いに溢れている。
カレー、焼き魚…。
風に乗って、家々から漂ってくる匂いは何かを考える。
この匂いはやきそばだろうか。
ソースの焼ける良い香りがする。
やきそばの匂いは夏祭りを連想させる。
今年はあの人と一緒に行けるだろうか。
それぞれの家から、それぞれの夕飯の匂いがする。
それぞれの家に、それぞれの家庭がある。
今日もそれぞれの食卓には、それぞれの夕食が並ぶ。
カレー、焼き魚、やきそば…。
風に乗って、それらの匂いは運ばれる。
今日の夕飯はなんだろうか。
心の中で呟いたその問いに呼応するかのように、腹が鳴いた。
風に乗って
今のままでは駄目なんだ!
もっと自分に自信を持って前に進まなければ!
少しでも良いから、私に勇気をください。
そうすればもう少し悔いの残らない人生になるのかな…、
この『風に乗って』そのまま歩み続けたい。
最近全然泣きたくもないのに……
涙が溢れて流れる……。
空を見てぼーっとしてる。
ため息多い日々。
寝れなくてお腹も空かない……。
これが私の望んでいた幸せじゃない……。
風に乗って飛んで行けたら
どこまでも行けそうなのに
波に乗って漂っていたら
いつまでも願いは叶わないような
そんな気がする
何が違うかは分からないけれど
風に乗って
幸せに、と思いを込めた風船が飛んでいく
どこまでも、いつまでも、願いを乗せて
景色も人も変わりながら割れるまで飛び続ける
風に乗って
行くあてもなく ふわふわと 飛んでいって
辿り着いた先で しばらく暮らす
どこにも 所属しないって どんな感じだろう?
風に乗って靡く葉に、切に、願う。
私の生が、無駄にならんことを。
【願い】
どこか遠くへ行きたい
風に乗って
流れていきたい
鳥になって
飛んでいきたい
無理だとわかっていても
願うぐらいはいいでしょ?
貴女の魂は軽やかに、風に乗るように、この世界を駆け回ってきました。
ある時は貧しい家の子に、ある時は裕福な商家の子に、ある時は母さえ分からない孤児に生まれ、貴女はその生で自分に出来ることを精一杯やり切ろうと生きてきました。
貴女は、今の自分はそうやって全力で生きていない、なんて半端で卑しい人間になってしまったんだろう、とご自分を責めていますね。
そんな風に考える必要はありません。貴女は自由に、ご自分の心の求めるように生きてくだされば良いのですよ。これまではそれが結果的に、風に舞うように軽やかに、楽しげに世界を駆け回ることになることが多かった、ただそれだけのことです。
ええ、何度でも言いましょう。俺たちは、貴女が為すことを評価して、貴女を愛しているのではありません。貴女が貴女だから、貴女を愛しているのです。そして、俺たちの愛の対象は、かつて俺たちが出会った時の貴女と一続きの存在である、「今ここに生きている貴女」なのです。
全力で走り続ける貴女を支えることも、ゆっくりと穏やかな時間を楽しむ貴女を見守ることも、俺たちにとってはどちらも幸福なことですよ。
どんなことをする貴女も、どんなことをしない貴女も、等しく尊いのです。
風に乗って
様々な音が流れ、運ばれてくる。
喜びや悲しみ、でもいちばん聞こえるのは怒りだ。
あの声の人はいつも怒っている。念には念をいれて友人に声真似でもして、柄にもなく注意喚起とかやってみるか…。
人の噂は風に乗ったかのように広まる。
「風に乗って」
彼女が好きだった香りが、した。
思い出は優しく、少し甘酸っぱいが、
幸せでいてくれたらと思う。
ふわっとした君。風に乗られて何処かに連れて行かれ消えてゆく。
興味本位で流れに乗ってみる。思考を放棄し風の気まぐれのままに進んでいく。
老人ホーム、カラオケ店、地下街、温泉、映画館…と次の目的地へ行こうとする君を呼び止める。
「どこへ行くの?そこは流石に行くべきでは無いと思うけど。」
「あるさ。だってここも風の終着点なのだから」
「……」
なんか腹が立ったので一発頬を打ち君を床に撃ち落とす。今日は帰ろう。早歩きで。
そうして、無料案内看板を背中にし、帰路につくのだった。
『風に乗って』
風に乗って、雨の匂いがした。
今は晴れているが、もうすぐ雨が降るのだろう。
雨が降る前に全部終わらせよう。
「さて、この事件の犯人がわかりましたよ」
探偵がコツコツと部屋を歩きながら、話をはじめた。
部屋に集められた皆は驚愕の表情を浮かべる。
「お前、何言ってんだよ!?」
「これは立派な殺人事件です」
怒りやすい長男が探偵に食って掛かる。
しかし探偵は冷静に話し続けた。
「ではまず事件を時系列ごとに整理しましょう」
昨晩22時頃、屋敷の主人が体調が良くないとはやめに就寝。いつも通り、寝室は内側から鍵がかけられた事を寝室まで薬を運んだメイドが確認。
翌6時、メイドがいつも通り主人の起床時間に合わせて寝室に向かうも応答なし。執事がマスターキーを使って寝室解錠、室内で主人が死亡しているのを発見。
その際、メイドの悲鳴で私含め家人5名が集合するも奥方が不在。
7時頃、皆で奥方の部屋へ向かうも応答なし。鍵は同じくマスターキーにて解錠し、室内で奥方が死亡しているのが発見される。
続く衝撃でメイドが気絶。執事が部屋へ送っていくこととなり、一時解散。
9時頃、空腹により長男が食堂へ移動。そこでコックも兼ねていた執事の死体を発見。皆の無事を確認するため長男がそれぞれの部屋へ向かうもメイド、長女、長女の旦那、次男、が死亡していた。
「と、概ねこんな所ですかね」
コツコツと部屋を歩き回りながら話していた探偵の足が止まる。
長男は両拳で勢いよく机を叩く。
「もう残ってるのは俺たちしかいないだろうが」
「えぇ、だから簡単な推理でしたよ」
犯人は貴方だ、と探偵は私を指差す。
それまで努めて平静を装っていたけれど、もう我慢が出来なかった。
「そうですよ、私が全て殺したんです」
可笑しくて可笑しくて笑ってしまう。
鳩が豆鉄砲くらったような驚き顔の長男なんて本当に見ものだわ。
そのまま私はエプロンの下に隠し持っていたナイフで
長男の胸を一突き。
ついでに探偵にもナイフを投げた。
「なぜ、こんな事を……」
探偵ならこれくらい躱せるかとおもったけれど、見事命中。
最後まで話す前に絶命。
実に呆気ない。
興醒めね。
時計が12時を告げる。
しとしとと雨が降ってきた。
「はぁ」
つまらない想像はおしまい。
春は嫌ね。
私は駆除した害虫の後片付けをしながら、掃除のため開けていた窓を閉めた。