『雫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雫
雨の日は偏頭痛に悩まされる。
今日も雨が降った。
最近始めたレジのアルバイト。
仕事はとっても簡単だけど、正直たいへん。
子供も大人も嫌いになりそう。
ただでさえ人見知りなのに余計人間が嫌いになりそう。
他人の顔を伺いすぎる自分も悪いけど、、
何年も続けてる先輩は超人だと思った。
(__あぁ、あたまがいたい)
雨が強くなったみたい。
(ああもう、ほんとに痛い!)
久しぶりの大雨警報の予感。
あの時から少しは強くなったけど、
まだ普通の人のようになれないみたい。
私の雫は流れてこない。流れようとしても流れてこない。いつからここまで枯れ果てたんだろう。雫のような想いに今自分は何を思うのか。
君の部屋の
窓を伝う雨の雫さえ
愛しく思う
君への恋心が
芽生えし頃
# 雫
一粒の雫に
こぼれるほどの想い
こんなに重たい水滴
重力に逆らう方が難しい
※グロテスクです。
ぽたり、と雫が落ちた。それは彼女の心の器が許容量を超え、感情を溢れさせたことの証左だった。彼女がそれに気がついたことを皮切りに、まろい頬を伝う雫が量を増してゆく。ぽたり、ぽたり、ぽたぽた、ぱたたたた。涙をこぼす彼女はしかして、表情をピクリとも変えない。ジッと硬直して動かない。彼女の瞳はピタリと彼に縫い付けられたように向けられたままだ。
「どうして」
能面のような顔をした彼女が口を開く。それは問いかけだった。何故このようなことをと。如何してこんなに酷いことが出来るのと。
「どうして。どうしてそんな事いうの」
彼女は責めるふうでもなく、ただ如何して、と彼に問いかけていた。ほんとうに分からなかったから。信頼し、愛し尽くした彼が、凶行に走りその果てに既にずたずただった彼女の心を言葉と云うナイフで滅多刺しにした。けれど彼女はその理由が、原因が、それを行える心が分からなかった。
彼は、血の海に沈む肉塊を爪先で拗ねたようにつつきながら答えた。
「だって、僕よりこれが大事って君がいうから」
彼がつついている肉塊は、かつて彼女の可愛い弟だったものだ。頼もしい父だったものだ。優しい母だったものだ。心から愛する家族だったものだ。だから、彼の答えに唇が痙攣して二の句が継げなかった。そんな彼女に目もくれず、彼は続ける。
「僕だって、大事にしたかったんだよ?君の夫になるのだから、おじさんもおばさんも悠くんも僕の家族になるものね?
……だけどさぁ、君、僕が、今すぐ会いたいって言ったのに、……言ったのにさぁ!この、この!ただ君の後に生まれただけの餓鬼が?熱出したからって!?ただ君を産んだだけの女の帰りがほんの少しだけ遅いからって!!そんなくッだらない理由でッ!僕に!会わないッて!会えないッて!!言ったじゃない!?
……そんな邪魔なモノ、僕らの間には必要ないでしょう?だからこうして処分してあげたんだよって。きっと君も迷惑かけられて心底邪魔だったでしょう?処分したらさ、そしたらさ、君は解放されたんだよって教えてあげないといけないでしょう?ね、そういうことなんだよ。わかった?」
彼は段々と興奮してゆき、口から濁流の如く言葉を垂れ流して喋り続けた。息が荒くなって、頬がうっすら桃色に染まる。だん!だん!と彼女の家族だったモノを踏みつけながら憤怒の形相でやまぬ怒りを吐き出す。そしていきなり停止して、のろのろと顔を上げた。そこでひとつ息を吸って、彼女を見たその顔は、いつもの優しい彼の顔で。そうして彼は、出来の悪い教え子を諭すように告げた。
悪魔だ、と思った。これは人の皮を被った悪魔なんだと。とうに限界を迎えていた彼女の精神は、けれど今この時迄は辛うじてその形を保っていた。でももう無理だ。耐えられなかった。歪んでへこんで、金槌で殴った強化ガラスのようにひび割れた彼女の心は、その一撃をもって砕け散った。怖かった。気持ちが悪かった。信じたもの全てが、世界が、ペラペラな紙1枚に描かれた落書きのように思えた。
そうして彼女は嘔吐して、狂乱して酷い叫び声を上げて、そして彼に飛びかかって押し倒し、馬乗りになった。彼は酷く詰って抵抗して、彼女の美しい顔や体に酷い傷をつけたけれど、もう何も痛くはなかった。
彼女は手始めに彼の右の目玉を抉り取って、左の目玉を潰した。カエルの尻にストローを突っ込んで、膨らませて破裂させる遊びをした時にカエルがあげたような声が股の下からして、酷く愉快だった。
次に、彼女は取り上げた右の目玉と家族だった肉塊を彼の口に詰め込んだ。なぜなら、彼女の愛する母は「無用な殺生はいけません!」「私達の糧となった命には、きちんと感謝して頂くのよ」と言っていたから。だから彼女は、家族の死を無意味な死では、無用な殺生ではなかったことにしなくてはならない。彼女は彼が飲み込むまで、鼻と口を押さえつけてジッと見ていた。
───そして、そして、そして、暴虐の限りを尽くしたあと。彼女は全てを、全てを腹におさめて、スックと立ち上がると台所の包丁を取ってきて、それで首を掻き切って死んだ。たった半日あまりの出来事だった。
「雫」
雨が降る。
私のなき声は、誰にも届いていない。
この瞬間にも同胞たちは、誰にも知られずいなくなっていく。
降りしきる雫が、地面に落ちる様に。
私は今日も空を見上げている。暗い狭い路地裏で。
今にも街に呑まれてしまいそうなほど小さい翼。
次第に灰色の雲が立ちこめる。
雫が1つ、また1つと落ちてくる。
それでも、上を見上げる。狭い空に、同胞の姿。
黒い翼を広げて、雨など諸共せずに駆けていった。
いつかの日を思い出す。
…あれほど、引き留めたのにあの人は行ってしまった。
悔いなきその微笑みが、こびりついている。
大空をかけていくその背中は、
とても勇敢で、憂うものなどないようだった。
彼らの最後は知っている。
誰にも知られずに朽ちていくと。
私もその1部になる、それが許せない。
でも、でも。もっと許せないのは、
この狭い路地で独り、あの人に置いていかれたまま、
朽ちていくこと。
次第に空が晴れる。
私は少し大きくなった翼を広げて、飛び出した。
空がオレンジ色に染まって、太陽が眩しく輝いていた。
ここにいるよ。ってあの人に届くように鳴く。
私の鳴き声は、届いているだろうか。
朝露が一粒落ちて、私は起きる。
朝一番に群れを飛び出していく。
あの頃の私とは、見違えるほど大きな翼を羽ばたかせた。
最後にあの人がいたのは、この山だと聞いた。
あの背中を追ってここまで来た。ただそれだけの理由。
突然の雨。
これまで何度も同胞の死に際を見てきた。
今回も看取ってやるだけの話だったのに。
横たわった「その人」
私の泣き声は、誰にも届かない。
こんなに呆気ないものだったなんて。
涙が雨に消えていく。命も、消えていく。
それでも私は、飛んでいく。
最後に朽ち果てるその日まで。
雫
誰しもの雫はしょっぱくって心を埋めるには不適で愛に飢え渇いている人の味方なのは傘を楽器にする大雨だけなのだろう
なみだがながれた。
本を読んで。
両親を思い出した。
罪悪感。
申し訳無さ。
何もしてやれなかった。
そして今は、自分にも何もしてやれない。
【6日目】雫
頬を伝い静かに流れてきたものは
淋しさや懐かしさや悔しさ
あの日に戻ることが不可能だからこそ
今をより大切にしなければと思う
だけどあの時にしかできないことがあった
キラキラと光輝けなかったのは
自分のせいでもあるけれど
もっとよい環境だったらとか
もっとよい出会いだったらとか
目からたくさん雫をだしたら
思いは昇華できるかな
ぽたりぽたりと
つららがのびた
ぬくもりのなか
つららがとけた
ふゆのおわりに
はるがはじまる
戦いは要らない
争いは要らない
こころがいたい
ぬくもりのなか
とけたつららは
だいちにかえる
ぽたりぽたりと
はるがはじまる
平和をください
『雫』
どうしてこうなってしまったんだろう。
私の胸に馬乗りになった君が包丁を握りしめている。
嗚呼“今日”はこんな結末なのかと、満面の笑みを浮かべる君に、私は慟哭した。
どうすれば良いのか、どうすれば良かったのか、もう私には分からない。
この現象の始まりの原因も理由も、私にはもう分からなかった。
君は覚えているのだろうか、そう問いかける間もなく“今日”は終わってしまった。
嗚呼、また、始まってしまう。
君を助けることが出来ない“今日”が、また――。
テーマ「雫」
【雫】
あなたの頬に流れる雫を
見るのはわたしだけでいいと思ってしまった
そんなくだらない独占欲にどうか気付かないで
出先で雨が降りコンビニに並べられた傘を買う時
なんとも言えない敗北感を感じるのは私だけでしょうか。
店について傘を閉じ、ほっとしたのも束の間
屋根から滴る雫にうなじを冷やされる。
こういう些細な出来事で“なにやってもうまくいかねー”と
自暴自棄になることがあるので
そんな時は
お家に帰って温かいご飯を食べるのが吉でしょう。
旬の果物なんかも買っちゃいましょう
小さな幸せを沢山抱いて今日も眠りにつきましょう。
【雫】
美しい名の菓子のこと想いつつ髪の雫をぬぐう丑三つ
[雫 ]
雨の下にいる。
水滴が、
自分をつたって大地へと
流れている。
星空の下、勇気を出して
マール・アストレアへと心を伝えた
通話の向こう、静寂が流れ
告白は風に乗り、遠くへ消えていった
夢見た瞬間、希望の光
しかし現実は、甘くなくて
虚空に響く、一方の声
愛の言葉は、届かずに散った
それでも心、折れずにいて
失敗はまた、新たな道への一歩
マール・アストレア、美しい星
その輝きに、再び恋をするだろう
「僕なんか」
その言葉が口癖になる理由は、人生のどこまで遡ればわかるのだろうか
「僕なんか」
そうは言っても、他人に愛されたことがないわけでも、認められたことがないわけでもない
それなのに出てくる言葉は
「僕なんか」
「僕なんか」
「僕なんか」
黒い雲が立ち込めていくような感覚に、呟く度に襲われていく
「僕なんか、僕なんか、僕なんか、僕なんか………」
「僕なんか、誰も気にしてないんだから、好きにやっていいんじゃない?」
ぽとり、と黒い雲から一粒落ちてきたようなそれは、天啓か、僕の心からあふれたなにかだろうか
お題「雫」
彼女は僕のことが好きじゃないかもしれない。
ふと、そんなことを思った。
敵対している、というものはもちろんのことで、それを要因として冷たい態度を取られるのも当たり前のことで。
でもなぜだか最近本当に本心からそう思ってるんじゃないかと危惧する事態が増えてきた。
僕の演奏は好きだけど、僕自身のことが嫌いだ、なんて言われたことがある。その時は僕が敵だからある程度敵対心を出すために言っているのか、などと可愛らしく思っていたけど。
今よくよく考えてみれば全く違いそうで。
そもそも僕の演奏というものは、迷い子を元の世界に返せる能力を持っている。つまり、その演奏が好き、というのは『迷い子を元の世界に返せる能力』を容認している羽目になる。それは彼女の立場上全くもっておかしい。
つまり、彼女がわざわざそれを口に出したということはそれは紛れもない本心ということになる。
ということは『僕自身のことが嫌い』というのは本心なわけで。
と、そこまで考えた時、手の甲に雫が落ちた。
視界が滲み出す。
この世界に雨は降らない。僕は汗をかくほど疲れてないから、この雫の発生源は一つしかなくて。
あるかどうかも分からない妄想みたいなものでこんなにも心が動かされるなんて思ってなかった僕は少し動揺した。
教室の窓から見える
上の階のベランダから滴る雨粒
寝る前のベッドの上で
雨音と風音を聞いた次の日の朝
家の前の花にのった露
入道雲を遠くに望むような
蝉の声が響き歩くのも億劫になる
夏の日に買ったコーヒーの結露
ふとしたときに目に留まる
気を抜いた時に限って
真珠のことを「月の雫」と表現した人に、
この世の全ての命名をお願いしてしまえばいいと思う。
得体の知れない綺麗な球体が、遥か遠くの月から海に
まで落ちてきた、雫なんだと。
そう思える世界は、どんなに綺麗だろう。
それはきっと、音もなく静かに沈んでいくんだろうな。
真珠が月から海に落ちるときの光は、きっと流れ星より
も繊細に違いない。なんて、そんな風に考えている時が
私のいちばん綺麗な孤独。
#8 雫