『雨に佇む』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雷雨が続く空の下、傘もささずに立ち尽くす。
服が水を吸って重くなる。肌にはりついたそれは全身から体温を奪っていく。顔や手を雨粒が流れて落ちていく。
今にもすぐそばから「バカ、風邪ひくぞ」という声が聞こえてきそうなのに。
こんなことをしても、誰にも咎められない。
咎めてくれる人は、もういない。
俺の唯一だった人間が死んだ。その事実を受け入れろと言わんばかりに、雨はさらに強くなる。
俺より先に死んだら許さないって言ったじゃん。
分かった、って、俺が怒ると怖いから気を付けるって、お前も言ってたじゃん。
なのになんで俺より先に逝くんだよ。
真っ暗な空を見上げ、「うそつき」と呟く。掠れた声しか出なかった。
【雨に佇む】
「雨に佇む」
雨は嫌いじゃない。
シャワーの様な雨の中
傘を差さずに歩いたんだ。
信号待ちで佇む。
何も考えずにいれたら。
残業を終え帰宅する
帰り道、
高層ホテルのエントランスPの脇で
『雨に佇む』車が一台
高級車だ
少し古く
程度のよい
白い4ドアセダン
ワックスの効いたトランク周りの
ディテールが素敵
その造形は
水滴をまとい
ホテルの煌びやかな照明を
自分のものにしている
斜め後ろから見た姿は
ステキすぎる
車好きなわたしも
ほんの数秒間だったが
雨に佇む
まー
そう言って最後に穏やかに微笑み、彼の手の中で魔王は息を引き取った。
周囲を囲み立っていた魔人たちは、順にそれを感じ取った。
魔王が死んだ。
あの幼く、生意気だった王が──マナに還った。
ある者はうつむき、またある者は唇を噛み──彼らはそれぞれに王の消失を噛み締めた。
分厚い雲の下、数百人におよぶ魔人たちは一言も喋らず、ただただひたすら立ち尽くした。
時間が止まったかのように彼らが佇む中──最初に動いたのは、翼の折れた翼竜だった。
魔王の、いちばんの側近。
魔王の、いちばんの話し相手。
そして──魔王の、魔人の、いちばんの裏切り者。
彼はいつもの眠そうな目のまま、腰の細剣を静かに抜き放ち天に掲げた。その先端を中心として、大きな魔法陣が天を覆う。
「雨魔法《レイン》」
魔法陣から放たれた水が灰色の雲を突く。そして雨となり地上へ戻ってくる。
雨粒が当たり、髪が濡れ、服がジトリと重くなった頃──ようやく、氷が解けたかのように他の魔人たちも動きはじめた。
次々に武器を、あるいは手のひらを掲げ、天へ向かって魔法を撃ち出していく。この国特有の、死の悼み方。
そして魔法を撃ち出した者は帰っていった。
ある者は泣き腫らして、またある者は少しだけスッキリした顔をして。それぞれに心の整理をつけ、その場に背を向け去っていく。
そうしてひとりまたひとりといなくなり──ルイテンだけが取り残された。
魔王のいちばんの側近で、話し相手で、裏切り者の彼だけが──いつまでも、いつまでも、自分で作った雨に打たれていた。
出演:「ライラプス王国記」より ルイテン
20240827.NO.35.「雨に佇む」
雫の舞う世界
傘もなく雨に佇む
誰かの代わりに
天が泣いている
雨に佇む、夏休みの終わり頃皆の気持ちが
鼓動するかのように雨が止まない。
いつだって最初の一歩は辛いものだ、
耐えきれずに楽な方へ楽な方へと堕落する人もいる。
人生を捨てて楽をしてしまう人もいる。
大人に成ろうと自分を大きく見せた結果、
立ち止まれなくなってしまった。
楽な方へと流される様は大人どころか子供よりも
幼稚な存在であると認識させられてしまった。
私から殻を取ってしまったら何が残るのだろうか、
私は自分が怖い、ガランドウであることを認めたくない
そうしてまた私は殻を重ねてしまった。
終わることの無い地獄が私の人生を苦しめる、
この殻が積み重なり耐えられなくなったら、
私はどうなってしまうのだろうか?
天に佇む。
通り雨だから
と言って
傘がない
君と一緒に
佇む時間
雨って嫌い。
癖毛で髪はくるくるになるし頭は痛くなるし
でも雨の音って落ち着く
濡れた髪をかき上げる姿がたまらなくセクシーだから
傘をさすのは我慢して
#雨に佇む
夕立に
蝙蝠持つる
影一つ
見知った顔で
佇むは君
「雨にぬれながら、
佇む人がいる。」
三善 英史の歌を思い出す。
わかる人は、
おそらく 同世代。
雨に佇むこともなく
この歳になってしまった。
それは、
ちょっと 寂しい気がする…。
こらっ!
おまいら! この災害級の大雨ん中で
なに気取って ろまんちっくに
佇んでやがる!
とっとと避難しないと
胃の血を落とすぞ!
いのちをまもりにおうちにかえろ。
本格的な雨宿りが必要な程ではないけれど、
君ともう少し話を続ける理由にしてもいい。
/「雨に佇む」
雨に佇む
いつまで経っても…
あの人はこない
涙溢れて…
雨に佇むあなたを
思い浮かべる
胸が痛くなります
雨に佇む 詩
土砂降りの雨の中に佇む一人の少女
少女は俯いて静かに雨に打たれている
服もびしょ濡れだ
土砂降りの中一人の少年がやってきた
少年は何も言わずに少女に傘を差し出した
そしてこう言った。僕がいるから大丈夫
もしも君が行き場のない
悲しみに暮れているなら
自然と傘を差し出せる
あの少年のように
傍でそっと寄り添ってあげたい
君の隣でいつまでも
雨に佇む
雨が振りランニングができなくなり佇む自分
でもこれはきっと休憩して違うことをしなさいという合図かもしれないし今日はそんな回り道をする気分なんだなって感じる!
きっと人生はうまくいく
今無職で佇む自分だけど今自分と家族を大事にしてるからきっとうまくいく!
そう信じている!
私は雨に佇んでいる
なぜかって?
悲しいことを決断したから
決断したのに
それから動けずにいるから
佇んでいる
あなたに会って話さなきゃ
だけど…
あなたはどこにいるの?
探したいのに
怖くて動けない
だから私は
雨に佇む
僕には
僕の部屋は大きな庭だった。
隅の木陰に隠れれば、誰からも干渉されなくてすむし、毎日手入れされて綺麗だけど、誰も見向きもしない。時々お客さんが外廊下から横目を流すだけ。
御屋敷の内側は、僕の部屋なんてない。なるべく人目につかないように、隠れて居なくちゃいけないから。気に障ると、大きな蔵に閉じ込められる。真っ暗で怖い。牢屋みたいなところがあって、昔一度だけ、人がいるのを見たことがある。忘れろとお父様に言われた。その頃はまだ家族がいたのかな?
でも、たぶん僕のいられるところなんてない。
お家はあるのに僕の家族はいない。
ある日突然、僕の部屋がなくなってしまった。
御屋敷からも遠く離れた。
もうあの綺麗な庭にいられないなんて、少し寂しと思ったけど、それよりもずっと嬉しかった。
家族のお家ができると思った。僕に内側の部屋ができるかとわくわくした。
新しい僕の部屋は山だった。前よりも大きな木と広い空間。荒れてはいるけれど、静かで心地良い。
建物は、大きな御屋敷から、小さな小屋になったけど、僕にはあんまり居心地のいいところではなかった。
やっぱり僕には内側は似合わない。居てはいけないんだ。
家族の家ってなんだろう?
僕の庭のすぐ下に、一軒だけお家があった。
僕ぐらいの年の女の子が一人と、大人の女の人と大人の男の人が住んでいるみたい。
その女の子は、時々女の人に外に引っ張られていくのを見る。
女の子は泣いてドアを叩いてた。
なんでだろう?内側よりも外側の方が居心地が良いのに。
悲しい思いをしなくていいのに。
あんまり酷く泣くものだから可哀想で、話しかけに行ってみた。
僕を見て、泣きやんだ。と思ったら今度はもっと酷く泣いてドアを酷く叩き始めた。
するとドアがあいて、女の人が出ててきた。
一瞬驚いて、すぐに僕を睨んで、女の子を抱きしめた。
僕に言った。
「うちの子に何したの?!あんた誰よ!どっか行って!!!」
怒鳴り声が耳に残った。
僕はただ、僕の庭に来ないか?と聞いただけなのに。
それから、女の子は外に引っ張られることはなかった。
女の人が洗濯を干したり、女の子が男の人と楽しそうに遊んだりしていた。
僕はふと思った。
あれが家族というものなのか?あの女の人がお母さんで、男の人がお父さんなのか。
お父さん。
昔、僕のお母さんは僕に言った。
「お母さんはお父さんに恋したの。愛されたの。愛したの。そうやって幸せになるのよ。」って。でもそのお父さんはお母さんを牢屋に入れていた。お父さんはたくさんの子供がいて、いつも綺麗なドレスを着た、女の人のそばにいた。
お母さんは愛をもらったけど、愛があれば家族じゃないの?
お母さんのもらった愛は、なんだったんだろうね。
僕は何なんだろう。
【雨に佇む】
私は傘をさすのが好きじゃないので、ちょっとやそっとの雨なら傘をささずに歩く。
ちょっとやそっとじゃない雨なら合羽を着る。
雨のなかで傘をさして立っていたら「誰か待ってるのかな」と思うけど、傘もささずに立っていたら「雨に佇む」ように見えるだろうか。
もっとも、人間以外の無機物は傘もささずに雨のなか佇んでいる。
すべり台も、ポストも、大型トラックも。
もみの木も、犬小屋も、港の見える丘も。
みんな雨に佇む。
【追記】
もみの木は無機物じゃないな。
小さい頃からずっと1人で小2から母さんがバイトし始めて本格的に独りになって、傍にいるのは親じゃなくて生涯共に過ごしたぬいぐるみで、寂しくてもっともっと一緒に親といたくて