『鏡の中の自分』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「最近、笑えていないなぁ…」
職場から自宅に戻りある程度片付けてから風呂に入る。
一通り頭や体を洗い終わると湯船に浸かった。
今日のお供の入浴剤はリラックス効果があると有名なラベンダーの香りのするものだ。
その他、疲労回復・肩こり・むくみにも効くらしい。
湯船に浸かりながら先程吐き出した言葉をもう一度ボソリと誰に言うわけでもなく言った。
「…笑えてないなぁ…」
周りの友達のほとんどが結婚、出産をしている中、自分だけ会社の駒で。
相変わらず脂ぎったてっぺんハゲの上司からは怒鳴られるしお局様的な社員にはくどくどくどくど小言を言われる。
学生時代は、もっと笑えてたのに。
就職したては大きな希望と夢を持ってたのに。
「あー!!でも、それが現実かぁ!!」
ヤケになって風呂場で叫ぶ。
大人になると言うことはこんなにも楽しくないことだったのか。
「もー、この歳になると夢も希望も無いっつーの!」
そう言って、一息ついた。
風呂に入り始めて45分位は経っただろうか。だんだんとのぼせてきた感覚が出始める。
湯船から上がり栓を抜く。
お湯がどんどん流されて湯船からただの浴槽へと変わっていく。
「…私みたい」
時間だけが過ぎて、何者にもなれないまま最期を迎える。
なんて滑稽なんだろう。
キャミソールとパンツ、頭にはタオルを巻いて脱衣所をでる。
一目散に冷蔵庫へ向かい500ミリの缶チューハイを取り出してそのままゴクゴクと喉に流し込む。
「っかー!生き返るー」
そしてベットにダイブする。
スマホを手に取りSNSを起動する。
そこにはやはりフォローしている友達の幸せそうなメッセージや画像が貼ってあった。
「……」
格の違いのようなものを見せられた気がしてすぐにスマホの電源を切って枕元に置いた。
そのままグダグダしていると普段は全然気にしていない本棚が目に入った。
ベッドから降りて誘われるように本棚へ歩いていく。そして一冊の冊子を手に取った。
【○○高校3年4組卒業アルバム】
少し色褪せている卒業アルバム。
パラパラとめくっていくと自分の書いたページが出てきた。
思わず次のページに行くのをやめて読む。
当時の自分が書いた夢や希望、なりたいものはキラキラと輝いていてアルバムに物理的効果があるのなら目眩を起こしているかもしれない。
その中の"習慣にしているところ"という項目が目に入った。
高校生らしい丸文字でこう書いてあった。
{毎日、鏡を見て、鏡の中の世界にいる自分を見つめて笑っていってきますを言うこと}
鏡の中の世界。
そうだ。当時の自分は鏡に映った自分、そしてそれに応えるように鏡の中の世界からこちらをしっかり見てくれる自分と向き合っていた。
鏡に映っているのは自分なのだから、鏡を見ていれば同じ動作をするのは至極当然、当たり前の話だが高校生の頃の自分は反抗期真っ只中で周りに味方がいないと思っていたから、せめて鏡に映る自分は味方にしようと鏡の中に自分という味方がいる世界を作った。
登校前に鏡の中の自分に笑いながら「いってきます」を言ってなんなら「今日もラッキーな日になるといいな!」なんて言ったりして家を出ていた。
いつのまにかそんな事はしなくなったけれど。
アルバムを閉じて机の上に乗っていたハンドミラーを見つめる。
いつのまにか笑うことも忘れた自分とそれに呼応するように悲しみに染まったような自分が鏡の中にいた。
あぁ、そんな顔は見たくない。
もう一度やってみようか。
毎朝、鏡の中の世界の自分に行ってきますを言って家を出るのを。
最初は無理に笑えなくてもいいから。
「…うん。そうしよう」
ーーーーーー
「それじゃ、会社に行ってきます!私!」
やる気に満ちたキラキラとした瞳で鏡の中の自分に挨拶をする。
鏡の中の世界の私が行ってらっしゃいとでも言うようにキラキラとした瞳で見送ってくれた。
鏡の中の世界
完璧な笑顔であなたを見送れたはず 鏡の眼は赤かったけど
題-鏡の中の自分
きれいになっていく
鏡の中の私
変わっていくのと同時に
自分に自信もついてくる
不思議ね
魔法をかけられたかのよう
鏡よ鏡…
うん、今日の私もきれいになったね
さぁ最高の私に変身して
あなたに会いに行くわ
待っててね
【鏡の中の自分】
「人間関係は鏡である」とはよく言ったものである。
ようは自分を大切にすれば自ずと相手も大切にできているということである。
少し自分語りをすると、私は結構人に嫌われる。それは私の態度であったり行動であったりまぁ他にも性格などに難があるからだと思う。昔っから好きな人にはお節介を焼いてしまう癖があり結構ウザがられてた記憶がある、5歳ほどだったか。
依存してしまいやすいのでそれを隠すために色々取り繕っていたら本当の自分が分からなくなった次第である。
他人のことが分からなくて当然なら自分のことが分からない今の状態がベストなのだろうか。いやしかし分からないなりに理解しようと歩み寄ることが私には美しく見えるのだ。相手を分かろうとする気持ちは本当に繊細で、なさすぎたら無関心、ありすぎると決めつけであったり救ってやろうなどという気持ちが出てきてしまうように思う。
私は私、あなたはあなた。
奇妙だ。実に奇妙。
人間というものが私には酷く恐ろしいのだ。
私というものが人間には酷く恐ろしいのだ。
気持ち悪い。
鏡の中のあなたへ
「この間、親友と絶交してきたんだ。」
果たして親友なぞいるのかという風貌で性格の彼が、壮絶な舌戦の後にそんなことを言うものだから、やっと落ち着いて飲むことが出来た紅茶を吹き出してしまった。
「君友達いたのかい?!紹介してくれよ!君に対する愚痴を語り合いたいからね!」
高校から大学へと同じ道を共にしてきて、私は彼の絶交するような関係性にある人の話を聞いたことも見たこともない。
「あの子はもういない。私がお前に話そうとしているのは親友と絶交した話と言うより、親友が生まれてからの話だ。」
そういう彼の顔は普段の仏頂面ではなく、どこか哀愁と儚さを漂わせていたので、先程の言動を少し反省した。
紙ナプキンでこぼした紅茶を吹き、姿勢を正す。
「聞かせておくれよ、君の親友の人生を。」
親友とは言っても世間一般でいう正当な友人ではなく、いわゆるイマジナリーフレンドと言うやつだ。事の始まりについてはあまり良く覚えていないが、私の幼少期というのは不安定で両親も共働き。ふと生まれた心の隙間を埋めようとしたのだろう。
彼は鏡の中に住んでいた。今ならば、鏡像を別人と捉えたのだと思えるが、当時の私にとって彼は全くの別人で、貴重な同い年の友人だったんだ。お前の言う通り、私は幼い頃から仏頂面で付き合いと口が悪かったからな。
「でも、イマジナリーフレンドって多くは子供のうちに消えるって話だろう?多くの子供の大切な友達で、そのうち正体に気が付かれ消えて忘れ去られる。」
「あくまでも多くは、の話だ。青年期から大人にかけるまで残る場合もある。私の場合はそれだった。つい先日まで、鏡を見れば幼い彼がいて、普通に会話をしていたんだ。」
彼の親友は、少し赤毛のアンの登場人物に似ていると思った。ケティ・モーリス。戸棚のガラスにうつった自分に別の名前をつけアンの友人になった鏡像。
彼女は多くのイマジナリーフレンド達のように正体に気が付かれた訳ではなく、アンが別の家庭に移動することで戸棚から離れることになってしまった故に別れを告げる。
きっと、アンの心からケティが忘れられることはなかったのだろう。最後まで、気がつくことなく友達でいられたのだ。
会話をしていたんだがな。やっぱり大学生ともなると分かってしまうんだ。いや、本当はずっと前から分かっていた。彼は単なる私の想像で、実在しない。子供の寂し紛れのおもちゃで、大人になれば捨てなければいけないと。
「それで、絶交したの?そんな義務感からサヨナラを告げたのかい?」
おもわず口をついて出てしまった言葉に、彼は顔を顰めた。素直だと言われる悪癖が出てしまったと後悔する。
それでも、思ったことは本当だと思い直して、言葉を続ける。
「君のことだから、親友君と議論でもして大喧嘩になったのかと思っていたからさ。」
「それでも、本当に、大人になったから別れるなんてもったいないと思ったんだよ。私もその子と友達になりたかったから。」
「……悪かったな。もう居ないんだ。家の鏡は、全て割ってしまったから。もう、どこにも、居ないんだ。」
彼のコーヒーの水面が揺れて、模様を刻む。きっと、忘れ去る前に愛する親友の役目を終わらせたのだろう。その手で、繋がりを壊してしまった。
紅茶を口に含んで、窓ガラスを見つめた。そこにいるのは、私と彼だけだ。鏡の中のあの子はもうどこにもいない。
もしも鏡の中のあなたへ私の声が届くのならば、どうか彼の元へ帰ってきてくれないだろうか。私も仲直りする手伝いをするから、絶交を撤回して、もう一度話してはくれないだろうか。私もあなたに会いたかったんだ。
なんて、不毛な願いを抱きながらやっと運ばれてきたショートケーキのいちごにフォークでとどめをさした。
たった今にだってあんたとサヨナラできるんだからねと思いながらまた明日も同じように睨みつけて背を向けるのだろう明後日もその次の日も意気地なく
── 鏡の中の自分 ──
”鏡の中の自分”が、一番可愛いと思ってた
橋本環奈さんよりも、クレオパトラさんよりも、この私が一番可愛いと思ってた。
この画面を閉じて、真っ暗になった画面で私の顔面を直視するまでは。
君は誰?と問いたくなる
それに答えることはできない
何者でもないからだ
自分のアイデンティティもあやふやな私は
いつも虚無感に襲われる
だから鏡を見ることは苦手だ
#鏡の中の自分
朝、顔を洗いながら鏡の中の自分を見る。
明らかに童顔で、少し中性的だから〝かわいい〟と言われてしまうのは分かっている。
でも俺は男だから、せめて恋人には格好いいところを見せたい!
「格好よくなりたいなぁ……」
「格好いいですよ?」
小さく呟いたのに、たまたま通りかかった恋人にそう返答された。
「そんなこと思ってないでしょ?」
「え? 思っていますよ」
「かわいいってよく言うじゃん」
「それはかわいいからです」
「格好よくないじゃん!」
「格好いいんですよぅ」
俺は納得いかなくて頬をふくらませる。すると空気の入った両頬に彼女の手が添えられた。
空気を吐き出して、唇を尖らせると彼女はくすっと笑ってくれる。
「かわいい」
「ほら、格好よくない」
彼女は頬に添えられた手を首の方に伸ばして俺を抱き寄せる。自然と耳が彼女の唇の近くなった。
「格好いいところは、私だけが知っていればいいんです」
少しだけ悔しい気持ちはあるけれど、彼女だけは俺のことを格好いいって思ってくれるなら、それでいいや。
そう思って彼女を抱きしめ返した。
――
「お仕事している姿は誰よりも格好いいのに……。なんでそこに気が付かないのかな? ……でもそこがいいからナイショにしておこ」
おわり
一七一、鏡の中の自分
<鏡の中の自分>
俺とお前は鏡
こうして向きあったとき
初めて自分が何か分かる
「さぁ、始めようか!」
―お前は俺と戦う理由はできたか?―
お題「鏡の中の自分」(雑記・途中投稿)
……前に書いたっけ、高校一年の国語で最初に習ったのが、小児麻痺を患った作者で全身鏡が嫌いって話だったって。
めちゃくちゃ書いた気がするなぁ。
投稿を辿ったら「鏡」のお題で書いていた。
鏡の中の自分……COVID-19の頃、夏に日焼け止めをサボっていたらでかいシミが二箇所もできてショック受けたし、元から嫌いな鏡がもっと嫌いになった。
でもお風呂場に鏡は必要だから百均のカードサイズの小さい鏡は買って貼っている。
なんで必要だと思ったんだっけ? と考えたら、たまにがっつりアイメイクとかした日に、ちゃんと化粧が落ちたかを確認するためだ。
最近がっつりアイメイクとかしていないなぁ。今度イベントだから、教えてもらったピンク系のアイシャドウとか買ってみるか。
・鏡の中の自分
見つめないと会えない"私"。
目を逸らしたら会えない"私"。
視界に入らない限り会えない"私"。
もし私が見てないうちに私以外の姿になってたらどうしよう。
それとも、もともと私以外の姿で、私が見た時だけ"私"になってくれるのかしら。
だとしたらこの鏡は相当"私"の事が好きなのね。
もちろん私も、私が大好きよ。
「きさらぎ駅」っていう異界駅が都市伝説として結構有名らしい。なんか知らない駅から必死こいて帰るみたいな…らしいけど。
「なんそれ?」
いや知らん。知ってる?
「いや知らん。いっぺんググるべ」
ヒットした〜?
「ちょい待ち…あ、出た。福岡県の遠いとこにあるらしいね。滅多に人行かんから…なんか初めて知ったし…」
めっちゃ有名。都市伝説の駅。行ってよ
「ヤダよ」
ごめんて。
「でもまぁ界隈では人気かもよ。…駅かぁ…あ、「山崎駅」て知ってる?」
待ってググる。…普通に出た。京都の駅だね。
「なんかかたす駅から行けるとかいう都市伝説の駅なんだって」
フーン…
「興味無いでしょ」
だって興味ないんやもん。
「示せや」
都市伝説か〜。洗面台で喋る方が都市伝説っぽくね?
「まぁでも、誰でも喋ってるかもよ?秘密にしてるだけで」
たしかに。何となく秘密にしてるもんね。てかドッペルゲンガーって会っただけでそのうち死ぬらしいじゃん。ウチら大丈夫なん?
「あー…まぁ同じ世界線では無いし大丈夫じゃね?」
ん。じゃあそろそろ学校行く時間だし切り上げっか。
「ん。またね」
ちーっす。やべ〜学校行きたくねー…前科者いるし…
「こっちにも居る。アイツまた傘振り回すんかな…今日雨だし」
ヤダなー…
鏡の中の自分
愛媛「鏡を見たら、ウットリしちゃったわ。まるで美しいあたしがもう一人いるみたい」
右顎あたりが疼くなと思って、鏡を覗いてみると、吹出物ができている。
もうね、ニキビとか言えるお年頃ではないのだよ。
原因を調べてみたら胃腸機能、腎機能などが低下しているとか、ホルモンバランス崩れているとか、マスク着用による摩擦だとかなんとかかんとか。
全部当てはまってる気がするなあと思いつつ。
「お疲れのご様子だねえ」と、鏡の中の自分に向かってそっと呟いてみた。
『パントマイム✋️』
鏡の中の私は、上手く自分やみんなと仲よく出来ていますか??
私は、制服のまま、朝の身支度をしながら歯を磨いていた。いわゆる、ながらですね(^_^;)
キレイな色した歯磨き粉。お気に入り🌟
昨日、ハローウィン🎃メイク💄をしたせいで、肌荒れしている(;´д`)トホホ…
ビフォナイトメィア・アクリスマス。の女のコのマネしてアイライナーで、イソイソお絵描きした。_φ(・_・
カンヴァスが私、だから。代わり映えはしないけど。
ハローウィン🎃は大好きな文化🎃👻
泣き腫らした眼に、ハローウィン🎃メイク💄で、口の周りがただれてる。左眼は、ちょっとだけ、まだキズがある。
鏡の私は正直だ。今日orどっちが、ハローウィン🎃なのだろうか……。ヒドイカオネ。
ふと、鏡の中に真夜中のマリアが現れた。ニヤリ。休む??と、訊いた。
いいえ、昨日のハローウィン🎃👻は、私は、充分にハローウィン🎃👻を楽しんだから。!!
『休まないわ。!!』
姿カタチのない、まやかしの杜のあなたなんかに、負けない。まるで、自分に言い聞かせるように。
ハローウィン🎃👻は、私もお化けの仲間入りです🎵
コンビニのカボチャプリン🍮食べて、父と母に、笑われたメイク💄だけれども、私のお気に入り🎵
想先生や、みんなに笑われも、( ・∀・)イイ!!
真夜中の中のマリアが、ため息をついて、ーーせめて、泣き腫らした眼をタオルで水で濡らしてから、眼にあてて冷やすといいわよ。と、ビブラートの聴いた声で言ったの。
私は、『……ありがとう。』と、拍子抜けした。
少し、長めの前髪をハーフアップに結んだ。
真夜中のマリアは、『いてら』と、高いトーンで、私に言った。母が、昨日のヒルナンデスのビデオ見ていた。丁度、真夜中のマリアの曲がかかっていたの。
私は、あなたは、有名ね🎵と、鏡に向かって言った。ふふふと、笑って消えて行った。
ダメな今日の私も、昨日の続きなのーー。頑張れないけれども、頑張るしか勝たん❢
せっかくだから、タオルを水に濡らして絞り、目元にあててみたの。ーー冷たいーー(。>﹏<。)ひと月前なら、心地がよかったのになぁ〰️。
夏から🍉、秋になったのね🍁✨️
紺色のバレッタを髪の毛に、止めた。カチッ。
『ちょっと泣き腫らした眼だけど、肌荒れした口元💄、あんまりよくないはないけれども、……陽葵ちゃんには、負けるけれども、私もカワイイ〰️💛✨️』
口のミントの息を確認ーー。私も鏡の私に向かって『いてら✋️』と、言った。
フレンチトーストのイイ香りがする🎵😍
終わり
鏡の中の自分
起きた瞬間から眩暈吐き気と酷い悪寒でダウン。
こんなに気持ちのいい秋晴れの日になんてこと。
明日は目の下のクマを隠して出社せねば。
毎朝の化粧は楽しいけど、面倒だとも思う。
でも、クマを退治した顔を見るとしてよかったと思う。
ということでまた明日。
end
鏡の中の自分
鏡の中の自分とは自分自身を映し出す鏡だ。
内面的な自分を見つめ直す鏡
(……もっと、綺麗な色だったらな…。)
小学校の手洗い場の鏡を見て、少女はそんなことを思う。彼女の髪の臙脂色は十分 綺麗な色ではあるが、それでも図工の教科書で見つけた"綺麗な色"への憧れは、彼女に色眼鏡をかけさせるのだ。
そんな少女の思念を、鏡の中の世界に棲むカゲが取り込んだ。
カゲは少女の姿をとり、ニセモノの少女となった。声も思考も振る舞いも、全て少女と瓜二つ。
ただ唯一、その髪だけは、少女とは異なる色であった。
「センパイの髪って綺麗っすよねー。ちょっと羨ましいかも…」
「あら、そう…?貴方の茶色の髪だって、十分綺麗だと思うわよ…?」
「ふは、ありがとうございます。どーも隣の花は赤く見えちゃうもんで」
高校からの帰宅路。すっかり成長した少女は、後輩と楽しげに話しながら歩いていく。路側帯の際を自転車が颯爽と通り過ぎると、その風に乗って彼女の薄紫色の髪がなびいた。
壊されかけた廃校の、忘れられた鏡の中の世界。
ボロボロとなってしまった内装を、鏡越しに覗く存在がひとつ。それは小学生くらいの大きさの、臙脂色の髪を持つカゲだった。
(『向コウ岸』―ホンモノになったニセモノと、ニセモノにされたホンモノ―)
朝、髪をセットするとき。
出かける前のビジュアル確認。
お風呂の姿見に映るとき。
思い返してみると、私は一日に何度も鏡をみている。
鏡の中の私は実際よりも細く見えるし、思ったよりも可愛く見える気がする。
だから、ついついじっくり眺めてしまう。
そんな明るい気持ちで出かけても、街には美人があふれかえっていて、自信をなくしそうになる。
学校に行っても、周りには可愛い子ばかりだ。
そういうときに私が思い出す言葉がある。
〝どうせブスなんだったら愛想が悪いよりは良い方がいい
どうせブスなんだったら勉強はできないよりできた方がいい〟
この言葉はもしも自分がブスだったらと仮定して考えてみたとき、人に好かれるにはどうすればいいかを考えた人のものだ。私はこの言葉を聞いてから、人と話すときできるだけ笑顔でいるようにしている。
もともとの顔を変えられなくても性格や頭の良さは自分自身が変えられると思う。
鏡に映る姿ばかりを磨くのではなく、鏡では見ることができない中身を磨いていきたい。