『鏡の中の自分』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#鏡の中の自分
君に触れたい
触れない
消えたい
誰か綺麗な現実を破壊して
鏡の中に王国があると幼い頃信じていた。
不思議の国のアリス。その中に鏡の国というフレーズがとてつもない印象があったのだ。
同じく童話で誰が一番美しいか鏡に問いただしていたこともあり、鏡の中はよく似た別世界であるとすら捉えていた。
どんなとこだろう。
ここより綺麗なお洋服やアクセサリーがあるかもしれないという期待で毎日鏡を覗いていた。周りの大人はそんな私をおしゃまさんだといって深く気にも止めていない。
ところがある日、祖母のお家に飾ってある大層豪勢な鏡が割れたのだ。
私は火をつけたように泣いた。
その鏡は私の知る限り一番の鏡だったのだ。鏡の国に行けるのはこの鏡しかないとすら信じていた私にとって一大事である。
粉々に割れた硝子の前で泣きじゃくる。大人が危ないからと私を抱き抱えようとお構いなしだった。
そうこうしている間にすっかり片付き壁にはうっすらと日焼けのあとがあるばかり。もう鏡の国には行けないのだと希望を閉ざした。
あれから新しい鏡が来てもまったく見向きもしない。鏡の国は閉ざされ、鏡のなかの私は死んだ。
いま写っているのは別人しか思えない。私によく似た私。
今では脈絡のないお伽話だと言える。それでも当時の私にとっての世界。だからどうしてもここに書き残したくなったの。最後まで読んでくれてありがと。
良い夜を。
『鏡の中の自分』2023.11.03
鏡の中の自分が一番、ありのままの自分のように思える。
寝る前と起きた時の二回しか、ありのままの自分を見ることはないが、その短い時間が好きなのだ。
真っ赤なカラーコンタクトを入れていない、素の自分。日本人には珍しい純粋な黒い瞳。
カラーコンタクトを入れているのは、別にもともとの瞳の色がコンプレックスというわけではない。むしろ、好んですらいる。
なのになぜ、そうしているのかというと、若気の至りというやつだ。二十代の頃、髪を派手な色に染めたときにせっかくだから、瞳の色も変えてやろうと思ったからだ。
瞳の色が赤かったらかっこいいんじゃないか、というそれだけの理由でカラーコンタクトを入れている。
目立つしインパクトがある、ということは自分のような職業のものには大いに役に立つ。しかし、逆にそのイメージがついてしまうので、おいそれと変えることができなくなる。メリットでありデメリットだ。
そういうわけなので、カラーコンタクトを外した自分というのは本当の自分というわけだ。
寝る前と起きた後。鏡の中の自分を見て、まさしく自分だなと確認することで、切り替えができる。
その二回の行為が、自分を自分たらしめる儀式というわけなのだ。
すごく、できるのか。
すごく、怠惰なのか。
はたまた、変わらないのか。
”鏡の中の自分”は、いつだって比べられてばかり。
きっと、言いたいこともあるんだろうな。
でも、自分だからなんとなく想像はできるんだけどね。
鏡の中の自分
#52 鏡の中の自分
――君、僕のこと好きでしょ。
隣に並んだ彼が突如断言した。
手を洗っていた俺は驚いて、元々何も発していなかった口を、さらに固く閉ざした。
水色の正方形が並び、作られた柑橘類の臭いで満たされた学校の男子トイレなどと言うこの空間は、美しすぎる彼にはあまりに不釣り合いだった。
そんな場所で、銀色の蛇口からこぼれ続ける締まりの悪い水道水は、俺の隠せない動揺のようだった。
「ど、……」
「当然だから」
俺が何か言葉を放つ前に被せて言い切った彼は、キッチリと三角の蛇口を締めた。そして、カッターシャツの脇に挟んでいた高級そうなハンカチで手を拭いた。
その間も、彼の視線は鏡の中の己に熱く注がれていた。艶めき整ったその髪型だけじゃない。薄く化粧を施したような、俺たちの年代にはあり得ない肌理の細かさを持った肌も、入念に堪能しているようだった。
「僕なんだ。当然だろ」
今度は、澄み渡り、自信と自己愛に満ちた視線で俺を射抜きながら言う。生粋の一人称“僕”遣いの日本男児が、ここには存在している。クエスチョンマークをただの一度も使用したことのない日本男児が、ここには存在している。
「そうだね……」
「フッ」
俺が完全に陥落した、説得力のある肯定の四文字を落とすと、彼は満足気に鼻で笑った。
そして言った。
「僕はお前を好きじゃない。だけど、心底知ってみたいと思うんだ」
何を? そう俺が問い返す前に、彼は放った。
「死にたくなるくらい自分が嫌いな人間の気分」
その言葉が持つ暴力的なまでの素直さに、俺は今度こそ絶句した。あまりに衝撃的だったが、傷付いたわけではなかった。
やっぱり彼が好きだ、と。無様にそう思うだけだった。
俯きがちで、前髪のチラつく俺の狭い視界の中にも、彼はいつもレッドカーペットを歩く母親想いのハリウッドスターのように颯爽と入り込んできた。
教室に満ちた読みようのない空気も移動教室先の机に並んだ恋愛のポエムも、勉強した形跡の残らない新品のような教科書も誰にも貸したことのない英和辞書も。学校や同級生に纏わる何もかもを見たくない俺が、唯一、見たいと思うもの。見たいという欲求を抑えられないもの。それは、神様の最高傑作である彼だ。
見透かすような目で、見透かされていたのだと知る。だけど、それでも彼は理解できない。死にたくなるくらい自分が嫌いな人間の“気分”。気持ちじゃなくて、気分。
誰もいなくなった空間に、水音はまだ響いている。
俺はそういう“気分”になって、梁に縄をかけるように、風呂上がりの薄暗い洗面台でしか行わない儀式を、白昼の男子トイレで決行した。
恐る恐る、顔を上げる。
震える指先で、前髪を払う。
鏡の中の自分を見つめる……。
フッと、悲鳴の代わりに、荒いため息が吐きこぼれた。
ニキビで埋め尽くされた顔には、線で書いたような釣り上がった目が二つある。
盛り上がった頬骨と、げっそりと尖った顎。
そこに張り付く乾いた厚い唇。
それを見た瞬間に心と脳を支配する、この“気分”――。
俺は慌てて、掻き毟るように前髪を戻した。
目に水の膜が張って、呼吸が浅くなった。
嫌な高鳴りを見せる心臓を抑えながら、俺も知りたいと思う。狂気に囚われそうになるくらい自分が好きな人間の気分を。
俺は吐き気を覚えて、男子トイレの個室に駆け戻った。
鳴り響くチャイムの音を聞きながら、意味もなく、激しく頷きたくなる。
そう。俺だって見透かしているんだ、彼のことを。
彼は、鏡の中の自分しか愛せない。
それは殺したくなる程羨ましい、理解のできない悲しみなんだろう。
鏡の中の自分
至る所に存在する鏡
その存在は咎めでもある
私が彼女を見つめれば、彼女も私を見つめ返す
彼女は無言で問うてくる
「君は今、幸せかい?」
「君は皆に、好かれているかい?」
「君は賢いかい?」
「君は必要かい?」
苦虫を噛み潰したような表情
長く垂れる髪の毛
全てを見透かす其の瞳
私も又、濁った瞳で問いただす
「お前は、誰だい?」
鏡の中の自分
ー鏡に映った姿は反転した姿。
成績優秀、容姿端麗、いつも明るく、クラスの人気者。
鏡の中の自分がこちらの世界に出てきたら、私はそんなふうになれるだろうか?
はたまた、逆に私が代わりに鏡の中に入ってしまうのだろうか?
こちらの自分とあちらの自分。どちらも自分なのに。
ーどうしても、本当の自分が暗くて、嫌になる。
無理矢理作った、仮面のような笑顔は、
鏡の中で反転して、まるで本当に私が、
楽しそうに、嬉しそうに、微笑んでいるように見えた。
鏡の中の私は、何にだってなれる、スーパーヒーロー、お姫様、悪役、お医者さんだって。でも、それはこの場所でも同じだ。私はここに出てくる私を創れる。時には悲劇のヒロインに、はたまた正義のヒーローに。
鏡の中のの自分は時々私に語りかける。「お前は何にもなれないんだな」と。
言い返す言葉もなく、下を向く。あの頃に憧れてたものにはもう遠い。
いや、そうして諦めただけだろうか。近いことに気づけてないままだろうか。
鏡の中の自分に一矢報いたい。明日はなにかチャレンジをしてみよう。
きっとなにか変わるはずだ。
2023/11/03「鏡の中の自分」
鏡の中の自分
鏡の中に正直者の私がいる。
そのままの顔色で
そのままの表情で
あまりにそのまま過ぎて
ブサイクで好きになれない。
なのに娘は、たまにたまに
私を可愛いと言う。
そのままの私を大好きと言う。
あなたのなかにわたしが映る。わたしのなかにもおそらくあなたはあなたを見出している。そのなかの互いにまた私たちを映し出す。その瞬間を繰り返していく。知らないことがまだこんなにもある。その幸を赦せ。
鏡とは何か…。鏡とは自分を写す。自分の顔、姿、欲望の全てを映し出す。醜い者は醜く映り、美しい者は美しく映る。自身が醜いと思えば、より醜く映る。美しいと思えば、美しく映る。鏡はどんなものよりも、自分をあるがままに…どんな姿にも映し出す。たとえ、鏡が曇っていようとも、綺麗であろうとも…。どんな人、物をあるがままに鏡は映し出す。 猫
『鏡の中の私』
鏡の中の私 人知れず歩いてく 知らない街の知らない通り 知ってるようで知らない看板 きっとどこかでみたであろうカフェテラスの朝食 交わることは無いけれど ほんのちょっぴり似てるんだ どこか双子のようで可笑しいな
『鏡の中の自分』
鳥も鳴かない真っ暗な中、私は目を擦り体を起こす。
静かにベッドから降り、朝食などの身支度を済ませる。
体はまだ寝ていたいと訴えている。
仕事が無ければ本能に従っていただろう。
そして姿鏡の前に経つ時には私は社会人としての私だ。
身なりが整っているか最後の確認を終え玄関を後にする。
数時間後帰宅し同じく姿鏡の前に立つ私はもうただの女だ。
社会人という枠に囚われないただの人だ。
私の中で鏡というものは何かスイッチのような役割なのだろう。もしかしたら鏡の中にもう1人の自分がいて…なんて馬鹿げた事を考えているくらい疲れているらしい。
今日はもう休もうとベッドへ体を放り投げた。
久々に、鏡の中の自分を見る。相変わらず酷い顔だ。自分の顔も、心も醜くて、嫌いだ。私は自分が好きだ。でも、自分の心は嫌いだ。
なにいってるのか自分でもよくわからない。私は泣きながら笑った。真後ろにいる、過去の私がこちらを向く。
「ねぇ、今日何するの・・・」
私は、なにも言わずにに、笑って振り向いた。
「今日は、最期の私のお誕生日だよ。」
「ねぇ、あの子、死んだんだってw」
鏡の中の自分
風呂上がり、洗面台の鏡を見乍ら、ドライヤーをかける…時々鏡に写る姿に、少し怖い時がある…鏡の中の自分に見られている…ひょっとしたら、今いる自分は、オリジナルでは無くて、鏡の向こうの世界が、本物なのではないか…そして、鏡に写る姿が、果たして自分の姿なのか…そういう取り止めない事が頭の中で、ぐるぐる巡り続ける…
【 鏡の中の自分 】
自分の顔がキライ。
大きな瞳も、高い鼻筋も、魅惑的な唇も、何も無い。
かといって、理想の顔に作り変える勇気も無い。
周りは皆、個性に溢れたステキな顔をしてる。
表情豊かで、生を謳歌してるのが伝わってくる。
そんな中に自分もいるけど、本当にいていいのかな…?
自分のことを、皆は邪魔に思わないかな…?
「ワタシはキミの顔、好きだな」
本当に…?
「だって、どんな顔も作り出せるじゃない」
…そうか、そうだ。そうなんだ。
鏡を覗き込んでも何も無い、何のパーツも存在しない顔。
変える必要なんてないんだ。
好きな時に、好きな顔にすればいい。
のっぺらぼうで良かったと、心から思えたよ。
洗面台の鏡って、なんか3割増しくらいに映る気がするんだよね
「おっ、今日けっこうイケてるかも」って思って、ほかの場所で手鏡見て、「あれっ?」みたいな
親元を離れて寮で生活する私は毎晩、洗濯掃除を済ませて机に向かうと鏡の私と目が合う。疲れ果てた私を見てもう一人の私が労ってくれる。
「今日もお疲れ様。おやすみ」
今朝も、起きて学校の支度を済ませる。ネクタイを結ぶために鏡に向かう。すると、もう一人の私が疲れた顔でこう言う。
「いってらっしゃい。今日も頑張って」
私たちはお互いに励まし合いながら生きているのだ。
まだ熱いと思って待っていたのに、すぐに冷めてしまったホットコーヒー。
強い日差しの下で鬼ごっこをしていたあの頃に思いを馳せながら雨の音を聞く。
鏡の中の自分
鏡にうつる、自分の姿。
自分の目には、人の目には、
どんな風にうつっているのかな。