『遠くの空へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
遠くの空へ
決して、現実逃避ではない。
自分を取り巻く呪縛から、逃れたい時がある。
遠くの空を見つめている自分がいる。
煙草を吸いながら、いい考えを探している。
浮かぶ時もあれば、浮かばない時もある。
浮かぶ時は、即実行する。
浮かばない時は、諦めて切り替える。
そうやって、なんとか生きてきた。
遠くの空へ行きたい気持ちを切り替えて、
踏ん張って、やり過ごしている。
人生ってそんなもんだ。
少々古ぼけた風貌をした書店の片隅。
店内でも奥まった位置の棚端から、数センチの隙間に擬態する細い背表紙が見え、何故だか強く目を引いた。
「長く飛ばせる紙ヒコーキの作り方。それが今、あなたのお手元に!」
「さあ、キミも一緒に折ってみよう!」
その影を抜き取ると、なにやら奇妙な語り口をするキャラクターが表紙を飾っている『謎のハウツー本』を発見してしまった。
ついでに付け足せば、指先の薄いザラつきに加え、四つ角も若干曲がっている状態だ。
これも一つの縁か、と興味のまま少しだけ中身をパラリと覗き見てみる。
──が、まさか考えていたより丁寧な手順を踏み、小粋なコラムすらも載せている一冊らしい。
思わず幼少の頃を振り返ってみると、あまり手の凝った折り方も出来ず、同じくキレイに飛ばせた記憶も無い。
……ならば、本当に“それ”が出来るのだろうか?
手ぶらの時間も終わりを告げ、自分の足は自然とカウンターに向かったのは言うまでもない。
【遠くの空へ】
わたしは今から
深い眠りにつくのだ
わたしの意識は
遠くの空へ
遠い空はつながっている
遠い宇宙はつながっている
気持ちは遠いところにとばせない
機械を通してとばせても
わたしの気持ちは伝わらない
わたしの心の声は
深く深く
とても深いところにあるのでしょう
見えないものが
一番こわい
ねぇ神様、僕の願いは聞き入れてくれますか?叶えてくれますか?
何度も何度も僕は願いました。そろそろ僕の番じゃないですか?
一生に一度のお願いです!僕の家族を生き返らせてください、、
そうやって『遠くの空へ』願いを飛ばした
青い青い、快晴の大空を見る度に昔から思う。
あの空の向こうへ、飛んで行きたいと。
飛んで行った先が曇りや雨、雪、嵐だとしても。
【遠くの空へ】
折り紙が好き
ただの紙だったものが色んな形に変わっていくから
鶴は平和の象徴
こんなふうに意味があるものもあれば
実際に遊べるものとか
沢山の可能性に溢れてる
そんな折り紙が好き
中でも1番好きなのは
紙飛行機
……………私に似ているから
本物の飛行機は自分の力で飛べるし
自分が通った航跡も残すことができる
でも紙飛行機は
人の手によって投げられなければ飛べやしないし
飛べたと思ったらすぐ落ちてしまう
風が少しでも吹けば方向が乱れまっすぐ飛べない
私と同じ
1人では何もできない私と
いつになったら飛べるようになるかなぁ
どうしたらまっすぐ飛べるのだろう
飛行機と紙飛行機を見比べる
いつか私も遠くの空へ飛び立ってみたい
誰かの力じゃなくて
自分自身の力で
いつか
いつの日か
私もあの飛行機のように
誰かの道標になるような航跡を残したい
今はまだ誰かに支えられていても
すぐに落ちてしまっても
いつか必ず
私は遠くの空へ飛び立ってみせる
遠くの空ヘ
遠くの空へ 思いを馳せる
キラキラ輝いて見える
過ぎ去った日々は
美しく残る
遠くの空も
見上げた真上の空も
同じ空
k
「アサダヨ、アサダヨー」
座敷の奥で、羽毛をむくむくと動かしながら、ヨウムが鳴く。
「おはよう」
私は、目覚めたばかりのヨウムの、くすんだ銀の鱗のような羽を撫で付けながら、笑いかける。
今や一人(一羽)きりの同居仲間のヨウムに、餌をやる。
「イタダキマス」
カタコトでお行儀よく答えるヨウムと共に、朝ごはんを食べて、私は立ち上がる。
朝日がゆっくりと、軒先に差し込んでいる。
私はいつも通り、縁側に座ると、庭を眺める。
今日は快晴。庭の木々は若い芽を出し、ところどころに美しい花が咲いている。
日向ぼっこには最適な、暖かい朝だ。
朝日を浴びながら、私は抱えていたものを膝に置き、撫でる。皺が寄って乾燥した私の手が、白い翼を撫でる。
空は真っ青に晴れきっている。
どこからか飛んできた飛行機が、白い線を描きながら飛んでゆく。
ねー、ママ!こっちこっち!
はやくー!早くあそぼ!
近くに住む子供たちの元気な声が聞こえる。
私は、膝上の紙飛行機に目を落とす。
真っ白な皺ひとつない翼。軽くて、紙にしては少し硬いその紙飛行機を、私の皺だらけの手が撫でる。
目を細める。
私が紙飛行機を好きになったのは、こんな晴れた日のことだった。
あの日。もう七十年前のあの日。
その日、私は家の都合で、どうしても幼い妹の面倒を見なくてはいけなくなった。私は、みんなと遠足に行けなかった。
妹の世話で疲れ切った私は、友達と今日を過ごせなかった失望で、すっかり荒んでいた。
その時だ。
その時に、家の土塀の向こうから、紙飛行機が飛んできたのだ。
その紙飛行機は羽を水平に広げ、悠々と、私の家の庭に着陸した。
その様子が、私にはまるで遠い空からの贈り物に見えた。
ドキドキしながら紙飛行機を広げてみると、手紙だった。きっと、私のクラスメイトからだろう、手紙。
正直に言うと、手紙の内容はお世辞にも巧くはなかった。
「私がいなくて残念だった」とか、「おつかれさま」とか、そんな気休め程度のお手紙。
でも、その筆跡は、馴染みのないものだった。
筆跡を憶えていないほどの関わりでも、私を気にかけてくれた、手紙の主がいた。
胸が熱くなった。
その日から、私は、紙飛行機を飛ばすようになった。
遠くの空へ、どこまでも、かつて私に届いた紙飛行機のように、悠々と飛ぶ紙飛行機を私も作りたかった。
そして、いざという時に誰かに届けられるようになりたかった。
紙飛行機を探求している間に、いつのまにか私はこんな歳になっていた。
紙飛行機にだけ異常に詳しい私を、近所の若い子たちは、“紙飛行機の魔女”と呼ぶようになった。
あの紙飛行機には宛名も記名もなかった。
だから、こういう日に、空を見上げながら思い出を漁っていると、時々こんな疑惑が胸を掠める。
あれは私宛のものではなかったのではないか
でも、そうであったとしても、そんなことはどうだっていい。紛れもなく、あの紙飛行機は私を良い方に変えたのだから。
だから、こんな晴れた、風も凪いだ、紙飛行機日和には、私も紙飛行機を飛ばすことにしている。
一番飛ぶ折り方の紙飛行機を、遠くの空へ。
どこか遠くの誰かの心に届くように、遠くの空へ。
「トベトベ、ヒコウキ!」
三十年連れ添った相棒の言葉と風に、私は紙飛行機をそっと乗せる。
紙飛行機は白い翼を水平に広げ、遠くの空へ、飛んでゆく。
書くことがめんどくさくなる時がある。
そんなとき、遠くの空を眺めたりする
何を書こうかな、過去の自分よりどんな成長をしたかな。
あぁなにがあるだろ
遠くの空へといかける。
詩『離島殴打事件』
(裏テーマ・遠くの空へ)
俺は、遠くの空へ、叫んだ。
「犯人は絶対にー、捕まえてみせるからなー!」
恋人はドクターヘリに乗せられ病院に運ばれた。
頭の傷は深く出血も多いことから生命の危険があることは俺にもわかっていた。しかし、刑事である俺は犯人を捕まえることを優先した。
離島だが最近は人気で観光客も増えていた島だった。
そこに恋人は、女友達が怪我して行けなくなったから代わりに俺と二人で行かないかと相談されたのだ。すべてのチケットは購入済みでタダでくれると言うことだった。
その日は俺たちは久しぶりのデートの約束を前からしていた。俺には珍しく二日も休みがあったのだった。
事件は、島に向かうフェリーで起こった。
二人で座っていたが俺がトイレに行って戻ったら恋人は床にうつ伏せで倒れていた。
俺たち以外は、船長と乗客が三人。
恋人らしき男女と一人旅の男だ。
この四人の誰かが犯人か?
事件は同僚の捜査で一気にすすむ。
恋人にはストーカーがいて、お金に困っていた女友達にそのストーカーは近づいて、俺たちを島に呼び寄せたのだ。
俺の眼の前で犯行を見せつけ、俺に勝ちたかったようだ。
実は犯人はトイレに隠れていて俺が行くのを待っていた。
俺がトイレに行き、そこで交代して入れ替わった男がストーカーだった。犯行後は海に飛び込み泳いで島まで辿り着いたようだ。
他の乗客たちも他人に興味はなく犯人の存在に気づかなかったようだ。俺以外は。
そう、刑事の俺を馬鹿にしちゃいけない。
チラッとすれ違っただけでも顔を覚えられるんだ。
その顔が船にいないので、必ず島にいると確信して俺はドクターヘリに乗らずに、すぐに島中を探したのだった。
翌日には俺は病院に駆けつけた。
絶対安静の状態だったけど恋人がニコって笑ったから、俺は涙が止まらなくなる。
そして看護師さんの目を盗んでキスをした。
ちょっと気晴らしに病院の屋上に上がる。
離島のある、遠くの空へ、叫んだ。
「ざまぁーみろー!くそったれー!ばかやろー!」
そして、
「◯◯◯、大好きだー!」
みんなが振り向いて見ているので、俺はダッシュで逃げだした。
『遠くの空へ』
飛行船が遠くの空へ飛んでいく。
「あんな風に自由に遠くまで飛んで行けたらいいのにね」
彼の声がして、僕は仕事の手を止める。
彼は屋根の上から、遠くの空を飛ぶ飛行船を眺めていた。
でも僕は知っている。
それが叶わない願いである事を。
「いつか、お金を貯めて世界を見てみたいんだ」
親に売られて、朝から晩まで煙突掃除。
そんなに働いても、お腹いっぱい食べることも出来ない。
そんな毎日なのに、彼は変わらない。
初めて会った日からいつもキラキラした瞳で夢を語る。
「その時は一緒に行こうよ」
彼が細い腕を差し出す。
僕はすすで汚れた手で彼の手を取り、煙突から屋根の上へと降りた。
「そんな事より仕事だろ、今日の仕事はまだまだあるんだぞ」
「……そうだね」
彼は少しだけ淋しそうに笑った。
なぜかその顔が妙に記憶に残った。
ーーー
登る煙をただ見上げる。
「……良かったな、これで自由だ」
焼けて、煙になれば何処へでも行ける。
空腹に苦しむことも、仕事をすることもない。
きっと夢見てたように世界だって見に行ける。
僕だけはまだ、この毎日を繰り返す。
「ゴホゴホ……ゴホッ」
でもきっと、もうすぐ行くから。
その時は今度こそ言うよ。
本当はずっと僕も一緒に行きたかったんだって。
赤く染まった手を、遠くの空へとのばした。
手紙を書いた。
真っ白な、ごくごく平凡な便箋に。
何処の誰に届くかも分からない手紙を。届かないかもしれない手紙を。
ほんの些細な事。ただの気紛れ。
ペンを置き、封筒に入れる。
何時か何処かで見た。手紙を風船に付けて飛ばし、遠い国の誰かへと手紙を送る場面。
出来心で真似してみた。
案外簡単に浮かぶものだ。
遠くの空へと浮かんでいくそれを、ただただ黙って見送った。
手を伸ばしても届かない
だから叫ぶ
産声のように
本能のままに
どこかの誰かが気づいてくれますように
“遠くの空へ”
「遠くの空へ」
ここではない、遠くの空へ。
自由に飛んでいけたらどんなにいいだろう。
ああ。遠くの空へ飛んでいきたい。
“遠くの空へ”
海の向こうにいるあなた
いつも頑張っているあなた
みんなの前ではいつも笑顔でいるあなた
みんなの前では泣き顔も見せないで
あなたの笑顔でみんな幸せです
でもね、
時には思いっきり泣いて下さい
”苦しい、辛い“って言って下さい
あなたが壊れる前に
私があなたに出来ること
私の小さな幸せをわけてあげる事
あなたがいる遠くの空へ
あなたに届くように
この心地よい春の風にのせて
私の幸せの紙飛行機を飛ばします
“届け!私の思い”
遠くの空に心を飛ばす
守ってくれてありがとう
そばにいてくれてありがとう
どうかそばにいてください
その光で包んでください
照らし導いてください
心からありがとう
アサギマダラ という蝶を知ったのは
北アルプスに出かけたとき
浅葱色の美しい蝶は
時に1000キロも海を越える
渡り蝶ときいた
この蝶は
北アルプスの空だけでなく
遠くの空へ 舞い飛び
たくさんの空を知っている
美しく たくましい蝶に憧れる
土地によって 見える空の色も 違う気がする
私も いろいろな空に 出会いたい
遠くってどこまでだろうね
想像つかないや
見える範囲だけでも
時間や天気によって
姿や色が移ろう
せわしない空
いつか自由に飛んでみたい
「遠くの空へ」
#33【遠くの空へ】
空はいつも空いている
そこになにかを 埋めてみたい
空はいつも空いている
だからいつでも行けるはず
空はいつも空いている
なのにずっと眺めてる
空が空いていても
僕らはいつまでも掴まない
だからいつも 空いている