少々古ぼけた風貌をした書店の片隅。
店内でも奥まった位置の棚端から、数センチの隙間に擬態する細い背表紙が見え、何故だか強く目を引いた。
「長く飛ばせる紙ヒコーキの作り方。それが今、あなたのお手元に!」
「さあ、キミも一緒に折ってみよう!」
その影を抜き取ると、なにやら奇妙な語り口をするキャラクターが表紙を飾っている『謎のハウツー本』を発見してしまった。
ついでに付け足せば、指先の薄いザラつきに加え、四つ角も若干曲がっている状態だ。
これも一つの縁か、と興味のまま少しだけ中身をパラリと覗き見てみる。
──が、まさか考えていたより丁寧な手順を踏み、小粋なコラムすらも載せている一冊らしい。
思わず幼少の頃を振り返ってみると、あまり手の凝った折り方も出来ず、同じくキレイに飛ばせた記憶も無い。
……ならば、本当に“それ”が出来るのだろうか?
手ぶらの時間も終わりを告げ、自分の足は自然とカウンターに向かったのは言うまでもない。
【遠くの空へ】
4/12/2024, 1:48:55 PM