『遠い日の記憶』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
子どもの頃に見たアイドルは眩しかった。
きれいな服を着て、たくさんの光を浴びて、大きな歓声に包まれていた。
ああなりたい。
いつか遠い未来に、絶対。
「遠い日の記憶」
記憶はあいまいなことが結構多い。
大まかにはあっていても、なかなかきちんと覚えていない。
例えば日記などに書いておいてあとで読み返しても、
実際にある記憶と合わない部分もある。
日々の出来事を全て記憶していないし、
記憶しておく必要もない。
だからか記憶はぼんやりとしている。
でもそれでいいと思う。
記憶にはいいことも、いやなこともある。
遠い日の記憶くらいでちょうどいい。
遠い、という表現が。
題 遠い日の記憶
今日の報告を終え、目の前にいる若き上司の…そう、若くして大尉の立場まで成り上がった黒髪の少女が目を伏せ、少しゆったりとした姿勢で言った。
別に……今の環境が好きではないと言うわけではないけれど、やっぱふとした時に思い出してしまうよ。遠い日の記憶を…
そう言って少し顔を上げ、こちらを見て…いや、見ているようで実際はその向こう側を見ているようだ。何を考えているのか分からないその目を見て、次の言葉を待った。
私ね、とても大切な人がいるの。この国よりも、誰よりも大切な人。
その人は…
どのような人かと聞こうとしたが、鋭い目線により言葉が詰まってしまった。…この目は自分の敵になるのか確かめる時の目だ。
それにしても、この立場で「この国よりも」と言うとは…
少し沈黙があり、少女はふっと笑う
幼い頃にその人とよく、家の近くにあった森の中で遊んでいた記憶。そりゃあ楽しかったね。いや…こんなことを話している場合では無かった。この話は終わりにしよう。
遠い日の記憶…
未だに言っちゃうんだよね…
J
U
S
C
O
ってさぁ…
遠い日の記憶
学生時代好きな人がいた。
その人のおかげで進級出来た。
熱出して送ってもらった時のこと忘れられない。
大人になれば、忘れるのかな…
遠い日の記憶
中学の英語の授業で、最近の休日にしたことを英語で発表しなさいって当てられて教壇に立たされたことがある。
中学生らしい英語で「映画館行って…」とか言っていたのだが、まぁ30人と集まればクラスには当然お調子者もいて、発表中に「誰と?」と言い始めた。
隣のクラスの子と付き合ってるのが半ば公然だった自分は黙ってた事実に少し口をつぐんでしまった。
無視して続けようとするも仲いい友達までもが「with〜?(誰と?)」とか言い始め、煽られるのが人生で初めてだった私は顔が赤くなっていくのを感じた。
そして、顔が赤くなるのを見られるのはマズいという思考に至って、教壇の下に一時避難したのだ。
…なんで?
いやでもその時はそれ以外に顔を隠す方法が思い浮かばなかったの。手で隠すのは違うし。
女子からも「かわいいー!」などという言葉が飛んだ日にはもう。やってしまったことを自覚しつつ男にかわいいって言うなとキレつつ。この時点で様子見に徹していた女子も煽る側に回ったことと、人生で今最も顔が赤くなっていることを感じた。
「え、なになに?」と事情が全くわからない新人女性英語教師と、頑なにちょっと待ってのポーズで教壇下顔を隠す私と、煽り続けるクラスメイト。
「そして家に帰って寝ました!」と自分が事態を収拾するのに10分くらいかかった。先生も止めてくれよな…。
五百円玉を落とさないように持っていった
あの駄菓子屋さん
カラフルなゼリーに
占い付きのガム
チョコレートに
スナック菓子
あそこは夢のような場所なのを覚えている。
あの日行った駄菓子屋は
今はもう無くなったらしい。
今空き地で子供のたまり場になっているんだって
あの駄菓子屋は私の遠い日の記憶でしかないけれど
叶うならもう一度行ってみたかったなんて思ってしまう
─────『遠い日の記憶』
人差し指を向けてぐるぐる回したら蜻蛉なぞ簡単に捕まえることができるぞ、そう言って貴方は指先から魔法をかけた。もう戻らないあの夏の思ひ出。
『遠い日の記憶』
君が笑って
私も笑って。
遠い日の記憶。
いつかまたそんな日々がくるのかな。
〜遠い日の記憶〜
蘇るあの日
私は何をしていたのだろう
ただあの感情は
他のどこにも無いそこだけにあった
その気持ちを今抱きしめて
前を向いて歩いていく
ぼんやりと覚えてるのは
母が作ってくれたオムライス
お店みたいなふわふわ感も
ソースもない
パリパリの生地のそれが俺は好き
だった。
あぁ、たまにはあのオムライスが
食べたいなぁ
遠い日の記憶/夜凪
基準はどこにあるのかな
あなたの昔はどこから
掘り起こす作業は永遠に
無い記憶が隙間に入り込んで
本当の自分はどこにあったのか
それもわからなくなって
いまの自分は自分だけど
大事にしていたものって
一体なんだったんだろう
遠い日の記憶
夏休みのプールの匂い
ラジオ体操で眠そうな友達
暑い図書館で読む推理小説
何をしても初めてだった
遠いけど鮮明に思い出す
あの日の記憶
あのとき向日葵畑の向こうで笑っていた君が、
今は私と並んで道端のひまわりを眺めている
あれは夏休み。
隣の家の幼なじみと駄菓子屋でアイス食べたな。
色黒な肌さえ懐かしい。
あんな日々はもう戻ってこない。
遠い日の記憶
記憶力がいい人間ではないので
基本的にはあまり何も覚えてない
特に楽しかったとか幸せだった記憶は
その感情は何となく思い出せるけど
何が、どんな風に、はほとんど思い出せない
苦い記憶はいくらでも勝手に出てくるのに
苦い記憶を消せたら
ラクになるのかな、とも思ったけど
私からそれを消したら
私の半分、下手したらそれ以上が消えるような気がする
それはもはや私なのか?
結局
それありきの私なのだろうな
苦味を楽しむには
もう少し時間が必要そうだけど
今でも、鮮明に蘇る
もう何処にも居ない、貴方と過ごした思い出が
---二作目---
貴方と出逢った日の事
貴方と笑いあった日の事
貴方と出かけた日の事
貴方と手を繋いだ日の事
貴方に告白した日の事
それから、それから
溢れだしてくる、貴方と過ごした日々の記憶。
今も時々思い出す
もう隣に居ない貴方の事を思い出すなんて
私は案外未練がましかったんだなぁ...
#遠い日の記憶
361作目
一周年記念まで...あと3日
《巡り逢うその先に》
第2章 ⑦
主な登場人物
金城小夜子
(きんじょうさよこ)
玲央 (れお)
真央 (まお)
椎名友子 (しいなともこ)
若宮園子 (わかみやそのこ)
東山純 (ひがしやまじゅん)
向井加寿磨 (むかいかずま)
ユカリ (母)
秀一 (義父)
桜井華 (さくらいはな)
高峰桔梗(たかみねききょう)
樹 (いつき)
柳田剛志 (やなぎだたかし)
横山雅 (よこやまみやび)
京町琴美(きょうまちことみ)
倉敷響 (くらしきひびき)
葛城晴美 (かつらぎはるみ)
犬塚刑事 (いぬづか)
足立 (あだち)
黒鉄銀次 (くろがねぎんじ)
急な坂道を300m程登ると屋敷が見えてきた。
外壁を塗り直し、玄関周りはサイディングを施し花を植え明るく迎えてくれる。
大きめの玄関ドアを開けるとタイル貼りの床に左側はシューズインクローゼット、右隅には観葉植物がある。
1階には20畳のLDKに8畳の和室6畳の書斎にトイレ洗面所バスルームがあり、2階には3ツの洋室があり、その一室が僕 向井加寿磨の部屋だ。
崖っぷちに建っている僕の部屋からは街の全てが見渡せる。
4年ぶりに見る景色は以前のままだった。
加寿磨は都内の大学の法学部へ入学が決まり、この崖っぷちの家に戻ってきたのだ。母は2年前に向井秀一と再婚し、秀一の仕事の都合で都内に引っ越すこととなったので、ユカリはこの崖っぷちの家に戻りたいと頼んだのだ。
加寿磨は初めてできた友達と別れたくなかったので、高校を卒業するまでは祖父の家で暮らすことにした。
そして今日、崖っぷちの家に戻ってきた。
その頃、高峰樹は引っ越しの荷造りをしていた。
樹は、小学生の時に両親を殺害され、その時に知り合った桜井華(警察官)の家に、姉の桔梗と共に暮らしていた。
「樹、お姉ちゃん達と離れて寂しくないの?」
「姉ちゃん、俺18だよ。それに加寿磨と一緒なんだから大丈夫だよ」
「明日お姉ちゃんも一緒に付いて行ってあげようか?」
「姉ちゃん明日仕事でしょ。警察官がそんなことで休んじゃダメでしょ」
「だって、加寿磨君の家でお世話になるんだからご両親にちゃんとごあいさつしなきゃいけないでしょう」
「いいよ、もう子供じゃないんだから」
そして華が帰ってきた。
「桔梗、明日の有給休暇OKだ」
「ありがとう華さん」
「姉ちゃん、マジで付いてくるのか」
「樹、私も一緒だ」
「華さんも一緒!警察ってそんなに暇なの?」
「そうじゃないさ、私達は樹の親代わりだからな、当然の有給休暇が認められただけさ」
翌日3人はほとんど遠足気分で加寿磨の家に向かった。
「いらっしゃい。まぁ皆さんご一緒で、どうぞお上がりください」
「お久しぶりですユカリさん。これから樹のこと、よろしくお願いします。言うこと聞かなかったら遠慮なく叱って下さい」
「樹君は加寿磨にとって大切なお友達ですから、一緒に居てもらえるなんて感謝しているんですよ」
「そう言っていただけると嬉しいです。ちょっと樹のお部屋を見させていただきますね」
「はい、遠慮なくどうぞ」
2階に上がると樹は加寿磨の部屋にいた。
「加寿磨は、ここから紙飛行機を飛ばしたのか、中学校は?」
「あそこだよ」加寿磨は左前方を指差した。
「凄いな、300mくらいあるんじゃないか?、あそこまで飛ぶなんて、それだけでも奇跡だよ」
桔梗と華はふたりの話しを聞いて窓に近づいた。
「どれどれ、本当だあんなに遠くまで、しかも、それを彼女が見つけるなんて宝くじレベルだよね」
桔梗と華は窓から街並みをながめていた。
「これからどうやって彼女を探すんだ加寿磨?」樹が加寿磨に問いかけた。
「あの時、彼女に連絡をとってくれた椎名友子さんを探す」
「その子の住所はわかるのか?」
「いや、わからない。でも椎名さんもあの中学校出身だから、近くに住んでるはずだ」
「わかった、俺も手伝うよ。写真はあるのかい?」
「いや、ない。僕も4年前に2回会っただけなんだ」
「そんなんで、本当に探せるのか?」
「大丈夫、奇跡は必ず起きる」
加寿磨の意志は揺らがない。
そう、それが加寿磨なのだ。
桔梗と華は次の日が仕事なので、早々に帰って行った。
一方、金城小夜子はサイクルショップ田中2号店の経営も安定してきたので、アルバイトを雇うことになった。
小夜子より2才年上の大学生で東山純だ。ふたつ上だが、今年大学に合格して、高知からここ福島に単身で越してきた。
「よろしくお願いしますね、東山さん」
「こちらこそよろしくお願いします金城店長さん」
「小夜子でいいですよ」
「じゃあ、ボクのことはジュンと呼んでください」
ふたりはとても相性がよく、1週間もすると自分のことをいろいろ話すようになっていた。
「ボクは高校2年生になってすぐに病気になって1年間休学していたんです。友達がお見舞いに来てくれた時に言っていたのですが、球技大会の卓球で足の悪い1年坊主が、卓球部員を負かして優勝したらしいんです。ソイツは1年ほど前まで歩けなかったみたいで、おまけに卓球を初めてやったらしいんですよ。
ボクは見てないので、どこまで本当なんだかわかりませんけど。
そんなことがあったので、学校ではちょっと有名人になったみたいで、噂によると高校入学前に引っ越して来たらしいです。
それにどうやら、小・中学校には行ってなかったらしいです。
それなのに成績は学年トップなんですよ。
世の中には凄い奴がいるもんですよね。
小夜子さんと同じ歳ですよ。
小夜子はその話しを聞いて、もしかしたらカズ君じゃないかと思った。
年齢も引っ越した時期も学校に行ってなかったことも一致する。
「ジュンさん、その人の名前はわかる?」
「向井だよ」
小夜子の祈りは一瞬で打ち砕かれた。
「どうしたんですか、知り合いだと思ったんですか?」
「うん、でもそんな偶然ある訳ないよね。あったら奇跡だよね」
「奇跡と言えば、もうひとつ話しがあるんですよ。でも、さすがにこれはデマだと思いますけど。なんでも引っ越してくる前の場所でラブレターを書いて紙飛行機にして飛ばしたら...?どうしたんですか小夜子さん、急に泣き出したりして、大丈夫ですか?」
「それ、私なの」
「何がですか?」
「その手紙受け取ったの私なの」
「えっ!マジですか?」
「でも、名前が違うのはおかしいわよね」
「それは、向井が1年生の時にお母さんが、再婚したからですよ。旧姓は何て言ったかなぁ珍しい名前だったんだけど?」
「鬼龍院」
「そう、そうです鬼龍院です。って、この話しって本当だったんですか?しかも、相手が小夜子さんなんですか?」
小夜子は溢れる涙を止めることができなかった。
やっとカズ君を見つけた。
「ジュンさんはカズ君の住所は知っているの?」
「残念ながらボクにはわかりません。帰ったら地元の友達に聞いてみます」
「お願いします」
そしてその夜、ジュンから電話がきた。
「小夜子さん、すいません。向井のヤツ地元ではない大学に受かって引っ越してしまったようなんですよ」
「どこの大学だかわからない?」
「そこまでは知らないようなので別の友達に聞いて、連絡くれるって言ってました」
「ありがとう。連絡がきたら教えてね」
やっと手にした細い糸。必ず手繰り寄せてみせる。
つづく
遠い日の記憶
何を見ているの?
柔らかな声はとても落ち着く。視線を声の方へ動かしながら腕を伸ばし指先は先ほどまでの視線の先へ向ける。
昔、あの海の向こうにいたような気がするから、どんな所だったかなと考えてた。
それを聞いて興味が湧いたのか、そちらをジーッと見ている。
水平線しか見えない。海の向こうって外国?
やや不満げにこちらへ視線を戻す。
外国?あぁ、そうかもしれないけど…。
けど?何それ?そんなに曖昧なんだから、小さい頃?
心地よい風が吹き、会話が少し途絶える。
ずっとここで立ったままこうやっているつもり?
喉乾いたし、立ったままで疲れるから行こう?
心地よい声だけど少し不安そうな感じがする。うなづくと手を繋ぎ、引っ張り少し先に見えるカフェへ行く。
アイスコーヒーとフルーツパフェを頼むとテラス席から海の方を見る。
また見てる!
え?ごめん。
パフェに乗っている桃を口に入れると嬉しそうに頬を緩ませる。
美味しい!やっぱり桃サイコー!
そしてスプーンをブラブラさせる。
気になるなら行けばいいじゃない?待っているから。海の向こうの外国に。
真面目な顔で見つめてくる。クリームついてるが。
行かない。いや、行けない。もうそこはないから。待たせる事もない。ほら、クリームついているから。
慌ててナプキンで口の端を拭っているが、すぐにまっすぐにこちらを見てくる。
教えて欲しい。どんな所だったのか。国がなくなるなんて考えられない。そんな哀しい記憶思い出したくない?
ちょっと、驚いた。そんな事言われるとは予想していなかった。鮮明によみがえる。遠い昔に海に沈んだ国が。
,
君と初めて出会った日の
微かなときめきは
グラスに注がれた水に
ほんの 一滴
青いインクを落としたように
揺らめきながら
溶けながら
淡く
淡く
わたしの恋心を
染めていた
# 遠い日の記憶