冬風

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題 遠い日の記憶

今日の報告を終え、目の前にいる若き上司の…そう、若くして大尉の立場まで成り上がった黒髪の少女が目を伏せ、少しゆったりとした姿勢で言った。

別に……今の環境が好きではないと言うわけではないけれど、やっぱふとした時に思い出してしまうよ。遠い日の記憶を…

そう言って少し顔を上げ、こちらを見て…いや、見ているようで実際はその向こう側を見ているようだ。何を考えているのか分からないその目を見て、次の言葉を待った。

私ね、とても大切な人がいるの。この国よりも、誰よりも大切な人。

その人は…

どのような人かと聞こうとしたが、鋭い目線により言葉が詰まってしまった。…この目は自分の敵になるのか確かめる時の目だ。
それにしても、この立場で「この国よりも」と言うとは…
少し沈黙があり、少女はふっと笑う

幼い頃にその人とよく、家の近くにあった森の中で遊んでいた記憶。そりゃあ楽しかったね。いや…こんなことを話している場合では無かった。この話は終わりにしよう。

7/17/2024, 11:29:39 PM