題 君の声がする
「隊長、そろそろ行きましょう。」
その言葉に「分かった、すぐ行くから待っていてくれ」と答えて、辺りを見渡す。
別になんとも無い森の中にいる。何にも無いが、戦術にはうってつけの場所だ、私達はここを死守しなければならない。
早く皆と合流しようと思い足を進めると、はて?いないはずの子供の声が聞こえる。もしかしたら疲れで幻聴が聞こえるようになったのかもしれない。
タッタッタ
走る音も聞こえる、この軽さ的にはやはり子供だ。2人はいるだろう。
音が聞こえた方を向くと、半透明の子供達が見える。
ついには幻覚まで見えるようになったのか。
しかもその姿は黒髪の少女と金髪の少女ではないか、なんともタチの悪い。
少女達は此方を向いてこう言う。
「あと少しだから頑張ってね」
何があと少しだと言うのか。
本当に疲れている、帰ってあの子に甘えるとしよう。
題 ココロ
お前に…人のココロはあるのか!?
それは愚問だ。今は戦争中なのだ、人のココロなんてものは捨てなければならない。
どうだか…最後の言葉はそれでいいのか?
もうこいつは瀕死だ、たとえ自分が何かをしなくても死んでいくのだ。
すると瀕死の男が写真を取り出す。
ああ…妻よ…娘よ…約束を守れなくて…ごめんな……
帰ろう、こんな血生臭いところは嫌だ、そんな事を考えながら男の最期を見る。
人のココロがあるのか、だって?
無かったらよかったなぁ?こんな虚しい気分になるぐらいなら。
題 星に願って
あ、ほら見てよ!
約束していた通り2人で星を見ていたら、金髪の少女が一つの星を指差す。
あそこにあるのが乙女座でー、左上にあるのがうしかい座。その右にあるのが、かみのけ座。
かみのけ座?そういうものもあるんだね。
他にも面白い星座があるんだ!例えばカメレオン座とかー、さんかく座とかもあるよ!
さんかく座。夏の大三角形とか関係あるの?
いや?私の知っている限りだと、特に関係なかった気がするなー。
へー、そうなんだ。
彼女はとても物知りだ。自分もよく本を読むのだが、こう言ったような本は全く読まない。面白そうだから今度彼女に頼んで、貸してもらおうかな。
あ、そうだ!何か星に願ってみようよ!
それって流れ星にやるんじゃないの?
まあまあ、細かいことは気にしない。ほら、何かお願いしてみて!あ、口に出したらダメだからね。叶わなくなっちゃう!
お願い事…これからもずっと一緒にいれますように、とか?もし、私が願うなら…
ねえ!見て見て!
声が聞こえた方向を見てみると、金髪の少女が走って来ていた。どうやら両手いっぱいに何かを持っているようだ。
そんなに走ってどうしたの?
これなんだと思う?
息を切らせながら、見せて来たのは大粒の砂だ。
砂だね。
うん、砂だよ。
でも私が知っている砂よりも大粒みたい。
やっぱり____もそう思う!?これ、星のかけらみたいじゃない?
言われてみればそう見えるかも、だけど本当に言われないと何も気づくことは無かっただろう。
…彼女の感性にはいつも驚かされる。
だから、今夜一緒に星を見に行こ!
何がだからになるのか甚だ疑問に思うが、一緒に星を見るのは良い案だ。良いよと即座に返事をする。
すると金髪の少女がこんな事を言う。
____って星みたいにいつも輝いているよね。
よく分からないが、それを言うなら寧ろ、金髪の少女の方が輝いているだろう。
題 過ぎた日を想う
人って過去を懐かしむ度に、心苦しくなる事が多いと思うんだ。
私だってそうだ。何度、あの頃に戻りたいと思ったか。
大人になったことによって自由が増えた。その代わりに沢山の責任が付き纏うようになった。
もう子供の時のように無邪気に過ごすことは出来ない。この世界を純粋に見ることは出来ない。
あの頃に戻りたい、あの子に会いたい。
ああ、最悪だ…
最後にあの子の名前を呼びたかった。
そうしたらこんなに後悔をする事は無かったのに。