『逆光』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
"逆光"
「みゃーう」
皿の中を空にしてそう鳴くと、水を数口飲んで窓辺に飛び乗り、窓の外に視線を向ける。
──食い切るの早……。
そう思いながら手に持ったお握りと机の上の、剥がされたお握り二つ分の包装と四分の一程減ったペットボトルの麦茶を見る。
食べ始めたタイミングがほぼ同時で、診察室のパソコンと共有しているファイルを開いて確認、時折麦茶を飲みながら食べていたのにもにも関わらず、その時点ではようやく一個食べ切った所だった。
ちらりとパソコンの時計を見て逆算する。時間に換算すると、五分か十分くらいだろう。
子有り余る体力とは言え、睡眠や食事等で回復する必要がある。その上育ち盛りだ。人間の子どものようによく食べよく寝て、少しでも身体を大きくさせる事が仕事のようなものだ。けれど、そうだとしても……。
──もうちょいゆっくり食え……。
開けたばかりのお握りを一口齧って咀嚼しながら、窓越しに外を眺めるハナを見る。
はらはらと舞い散る雪を背景に外を見ているハナ。ハナの小さな身体に、舞いながら降ってくる雪の影が写る。その様がとても幻想的で、気付けば手を止めて引き出しの中からスマホを取り出して──仕事中は居室の卓上の引き出しの中に入れている──、電源をつけてカメラを起動していた。
──そういえば、ハナの写真、まだ一枚も撮ってなかった。
画面にハナと窓を写した時に気付く。
ならばこれからシャッターを押して撮る写真は、ハナとの大切な思い出の、最初の一枚になる。
──もっと大きくなれよ。
願いを込めながら、シャッターを押す。今撮った写真を確認する。
「あっ……」
外は綺麗に写っているが、肝心の被写体であるハナが逆光でシルエットのようになってしまっていた。かろうじて輪郭周辺の白い体毛部分は青白くなっているので写っているのは動物で、それとシルエットが相まって猫である事は認識できる。
──けど、幻想的な雰囲気で、芸術作品のようで、綺麗。
そのままスマホの電源を切って、机に向き直って卓上の引き出しの中に戻し、残りのお握りを食べ始めた。
カメラで写真を撮ると上から撮りたいので逆光で陰になっちゃう。
悲しい
雪が1日中降って、午後から晴れた冬の日。
積もった雪に太陽の陽射しが反射して眩しい。そして、その逆光の影に溶けた君の姿も美しく見えた。
4日目、お題が気になって来る。
2024/01/24㈬
照花は、古い苔むした岩の上に登った。
俺は太陽をまともに受け、眩しそうに、手をかざしながら見守っている。
「さあ、始めましょう。」
逆光のなか、照花が立ち上がるさまが見えた。
巫女と神官、という立場でなければ、真っ先に君に思いを告げるのに。
【逆光】
【180,お題:逆光】
私は写真を撮るのが下手で、よく光の方向を間違えてしまう。
被写体の後ろに光源が来たら、逆光になって写りが悪くなるなんて当たり前なのに
仕組みを理解することと、それを実用することはまた違った努力が必要だ。
「平気だよ」
表情なんか読まないで
「それなら良かった」って言って
_逆光
夢が溢れる場所に終わりなんてない。
感情のメリーゴーランド。
気分のジェットコースター。
お題:遊園地
夢を見たんだ たぶん君の夢 話をしていた
でも君の顔は 逆光で暗くて
それでも君の 声に安心した
夢の中で君は 大丈夫と笑う その顔を見た
でも君の声が 聞こえなくて
それでも君の 笑顔が眩しい
ああ、また逆光だね
2024/01/24_逆光
逆光
写真撮影をする際に特に気をつけるのが逆光である。
どのような被写体であっても真っ黒になってしまうからだ。しかし、意外なことにこの黒が塩梅となってよい物が撮れたりする。
その法則は実生活でも生きるのでは?物語でも生きるのでは?と考えてみた。
逆光があるなら、その被写体が黒いのなら反転してみると
実は逆光側、つまるところ順光側もその様になるのではないのかと。光と影は表裏一体。裏表も当然あるのは然るべきこと。
自分が逆光側だと思い、見直してみると…意外と?順光側で光を浴びるものかもなどと。これは物語でも使えるのだと気づいた。
あくまで、可能性の話に過ぎなくて。
あくまで、そういう分岐点なのかもという
誰か一人の予想に過ぎない。
君は眩しい
僕が進もうとする道に
必ず君が前にいる
振り向いて
手を伸ばしてくれる
でも君からは光が溢れ出している
逆光が眩しく映るんだ
でも
その光が暖かい
だから好きなんだ
君のことが
お題『逆光』
【逆光】
逆光とは主に、背後からさす光のことだ。
写真を撮るときなんかは、輪郭ははっきりするものの被写体が暗くなってシルエットに見えてしまうこともあるので、なかなか避けられるものである。
僕もさすがに写真で逆光は嫌だけど…でも、「逆光」って言葉じたいはけっこう好きだ。
だって、逆光はまぶしくないんだ。
どんなに輝かしい光でも、まぶしければ僕はどうしても不快感を感じてしまう。でも、後ろからさす光は、目には直接届かない。だから、顔をしかめず、目も細めず、ずっと光を浴びていられるんだ。
真っ正面の光と比べたら、ずいぶん楽なもんだろ?
それなのに、ちゃんと周りを明るく照らしてくれるんだ。だって、「光」なんだから。
ほら。
逆光って、近くにいてもぜんぜん苦しくないんだよ。
だから僕、逆光って好きなんだよな。
自分が撮ると
毎回逆光になる
最近は慣れた
【逆光】kogi
“逆光”
台所のカウンターの上に
カーテンから溢れる優しい光を浴びて佇む
頼りなげなでも毅然とした
ほかほかの柔らかいシルエットを見た
きみは長く生きたヨモネコ
お日様とレースの波長で
何でも知っている顔をして
いつもの場所で黙って座ってる
妖精のようなヨモネコ
「あーはやくはやく。喉カラカラすぎて吐きそう。冷たいのな冷たいの熱かったらすぐ飲めないだろ、ああ〜はやくしろよ、命かかってんだぞ!」
風船のような大男、油でテラテラピカリ輝いている顔の贅肉をぷるぷる揺らしながら、自販機の前でまくし立てる。
大男の隣でスクッと立つスレンダーな女は、ミネラルウォーターを買った。
「それじゃ、仮に渇死したって自殺ね」
ガラッ、落ちてきたペットボトルを女よりも身軽にしゃがみこみ、グジャッと潰れるくらいの勢いで握る。
ただならぬ激しい動きでキャップを外し、ゴギュゴギュ〜ッ!喉に流し込んだ。
唇のはしから滴る水、キラキラっと瞬き大男の首元へたどり着き、やがて襟へ吸い込まれ……
美味そうに飲む大男だったが、すぐさま唇から飲み口をツパッ、と離し、フツフツと汗を沸かし始めた。
「ぼくがおしゃべりだって言いたいのか!」
尋常でないハツラツとした怒声をあげ、また1口飲水、女はフフと笑い、頷く。
「しょうがないだろ、ぼくは今にも死にそうで死にそうで、死にそうだったんだぞ!」
ズリッズリッ!靴底を鳴らして女の方へ向き、眉を釣り上げる。
「じゃあなんだ!君は死ぬ直前でも一ッ切!
一切騒がずいられるのか!」
顔と唇を真っ赤に染め上げて、大男は怒っている様子だ。しかし女は変わらず笑っている。
「あなた、いつもひとりで喋ってるんだから。
私は黙ってるしかないのよ」
女は、白蛇じみた鼻筋と、しっかり伸びた背を、左へ向け、大男の手を取り、歩き出す。
「もう喋り疲れたでしょ。行きましょうよ」
「でも、電車の時間はまだまだあとのハズだろ」
昼下がりの陽光、逆光眩しく、女は細く目を縮めながら言った。
「お腹、減ってきたんじゃない?」
「えっ……!
なんだ、さすがあっちゃんだなあ!」
【逆光】
私から見れば光は逆ではない。
対象物を主体として見たときに、逆光という言葉が浮かび上がる。
対象物からすれば私は直光である。
不思議な言葉だなぁと常々思うのだ。
主に写真を撮影するときに使われる言葉だ。
それ以外で使ったことはあっただろうか?
記憶にはない。私は忘れっぽいのだ。
写真というものがなければ、このような言葉もなかったのではないだろうか。
「そち、逆光だからちこうよれ。」
などと使われるはずはない。
逆光は片面が明るく照らされ、反対側は暗い様子である。
これは人間にも言えることだ。
誰しも明るい面、つまり良い面と
暗い面、つまり悪い面があるのだ。
私には悪いところしかないと嘆くのは間違いで、光の当て方を変えれば誰しも良いところがある。
どんな人間にもこの両面は存在している。
そりゃあ私もなれるものならピカピカの聖人君主でありたい。
なんの欠点もなく、誰もが憧れる人間に。
でもそれは太陽と同等で、数えきれない総数の中のたったひとつなのだ。
何よりそんな人間はたぶんつまらない。
ヘドロのような真っ黒な奴もいるが、そんな奴はゴミ同然なので無視するのが一番である。
何が言いたいかというと、大概のものは皆自分を蔑む必要はないということだ。
ヘドロ以外はな。
太陽が真上にくれば逆光はなくなるんだがね…。
上手いこと言おうと思うとすぐこれである。
逆光
逆光が嫌いだ。私には眩しすぎるから。眩しすぎると何も見えなくなってしまう。逆光が嫌いだ。眩しすぎるから。愛しい貴方をも見えなくしてしまうから。
「何が恐ろしかったのか、ようやく分かった気がする」
「恐ろしい? 何がです」
「·····あの男だ」
「貴方は彼を恐ろしいと思っていたのですか?」
「今考えれば、だ」
「·····そうですか」
「あの男が私にはいつも眩しかった」
「·····」
「私が持ち得ない全てを持ち、それでいて誠実で、決して驕ることは無かった男」
「貴方だって不実なわけではないでしょう。その方向性が違っていただけで」
「人の心の奥底をたやすく掬い上げる男」
「彼はそういうの、得意ですからね」
「私には出来ない事をいとも簡単にやってのける男」
「貴方に出来て彼に出来ないこともあるでしょうに」
「いつも·····光を背負っているように見えたんだ」
「光、ですか」
「王宮でも、戦場でも、どこで見てもあの男は光を背負っていた。·····宵闇の中でさえ」
「宵闇·····」
「あの男が背負う光が眩しくて、恐ろしかった」
「そうでしたか」
「光を背負って立つあの男の、顔がまともに見られなくて、どんな表情をしているのかが分からなくて··········恐ろしかった」
――笑っているのか、嘲っているのか、見下しているのか、哀れんでいるのか。それともそのどれでもないのか。
逆光に目を細めていたようなものだ。
「·····彼はきっと、貴方が背負っている光も見つけていると思いますよ」
――そうなのだろう。だが私には、それこそが恐ろしい。
これは誰にも言えない秘密。
END
「逆光」
【逆光】
光が眩しいと周りが見えなくなるもの。
私にとっては推しがばかみたいに眩しくて
リアルそっちのけだしな笑
でもそんな日々が愛おしてくて本当に大好き。
でも、その逆もまた然り。
辛い、苦しい闇が深くなると
そんな大好きな推しが見えなくなる。
いつだって隣り合わせの光と闇。
でも闇はカメラを向けないと気づけないほど
普段の私は笑ってても笑えてないんだよ。
ねぇ、知らないでしょう?
だからこそ推しとの時間を何よりも大切にしてるの。
眩しき日食。
どちらかと言えば、いま逆境。
______________________________
【47】逆光