『逆光』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
未来には絶対に希望の光があるから、なんて必死に信じて歩いているけれど。
その光があまりにも遠く、眩いものだから。
目の前にあるものが真っ暗で何も見えなくて、怖いんだ。
そんなに遠い場所で輝かないでくれ。
僕のこの手元を、ほんの少し照らしてくれるだけでいいんだよ。
〝逆光〟
「逆光」
きっと私達は 互いの顔が見えていなかった
背中に当たる光を言い訳にして
見ることに 見せることに怯えていた
さよなら
一緒に光の差す方へと歩いていける
そんな人とあなたが出会えますように
怒りを込めて歌を唄ったら、君は嬉しそうにしていた。
「この歌好き?」
「あんたの感情が好き」
「そう」
彼は、私が喜怒哀楽とか憎悪とか見せると喜ぶ。どういうシュミ?
逆光で顔が見えない。
その中でも唯一わかる。
君の笑い声。
目だけじゃない。
耳でも感じ取って。
逆光
逆光といえば、ONE PIECE FILM REDの歌ですね!
ーよく頑張ったねー
君は辛いことがあっても自分で解決しようとする
それはとっても立派なことだ
でも今の君は、考えることもできなくなってるでしょ
自分のことも受け入れられなくなっているでしょ
息をするのも重たくなっているでしょ
それは十分に頑張ってきた証拠だよ
もう休もう
人は疲弊した心を回復させるのには
思っている以上に時間がかかるの
君はもう苦しむ必要ないよ
上を向いて深く深呼吸してごらん
涙も流していいんだよ
またね、と言った僕の顔は夕陽の悪戯のおかげで
きっと君には見えてなかっただろう
果たせるかも分からない約束を
守ることに必死で僕は生きている
また、病気と副作用に身体が蝕まれていく
次はいつ会えるのか
カレンダーを眺め、深い深いため息をつく
「逆光って不憫よね」
そういう彼女に、はぁ、と返事をする。彼女はどこか遠くを見つめているようで、俺の事など眼中にもないようだ。
「考えてもみてよ、逆光ってあまり良いと思う人が少ないじゃない。撮り方が上手じゃなきゃ、失敗したも同然よ。それに、逆境や脚光に間違えられるの。ちょっと、検索してみてよ、調べる度に不憫に思えてくるわ。」
コーヒーにシロップを入れながら彼女は話す。逆光に対して俺は感情を抱かない。彼女の横顔を見ながら、俺は適当な相槌をうった。
「でも、私は逆光が好きよ。逆光を浴びている物や人を見ると、言葉にできない神々しさや、懐かしさが湧き上がってくるの。」
「例えば、今の君とか?」
彼女は、クスッと笑った。
「嬉しいこと言ってくれるじゃない。でも、それはあなたもよ。だって私の隣にいるんだから。」
彼女の顔はよく見えなかった。ただ、何となく美しいと思った。彼女をもう少し見ていたくて、俺は彼女を見つめながら言う。
「俺も、逆光好きだよ。」
「それは、なぜ?」
彼女がこちらに顔を向けた。少し眩しそうに笑っている。
「逆光を浴びている物や人を見ると、言葉にできない神々しさや、懐かしさが湧き上がってくるからかな。」
彼女は適当な相槌をうった。俺は、彼女と顔を見合せて笑う。幸せな時間が、ゆっくりと過ぎていった。
光にかざすと
透けて見える
葉脈みたいに
あなたの気持ちが
見えたらいいのに
あなたは光を背に受けて
微笑んでいるけれど
わたしには
あなたが見えていない
わたしがもっと
光ったなら
もっといろんな顔
見えるようになるのかな
#逆光
「大丈夫ですか?」
中学生時代、後ろ指をさされ笑われる俺のことを助けてくれた、唯一の存在。
その時も、いつもみたいにいじめを受けていた。誰もが見て見ぬふりをし、嘲笑う中で、彼女だけが俺に手を差し伸べてくれた。そんな彼女は飄々としていて、周りの人たちは呆気に取られたような顔を浮かべていたことを覚えている。
少し籠ったような高い声。
いじめっ子たちにメガネを取られていたからというのもあるけど、何よりも眩い逆光に照らされていたから、ぼやけた輪郭しか視認できなかった。
名前も学年も、顔すら知らない人。逆光にぼんやり縁取られた輪郭とあの声だけが、俺の記憶に色濃く残っている。
俺はあの時、恋に落ちた。
恋人のいる奴らは、浮気だの束縛だのよくほざいていた。一時の昂り、いつか消えてしまうそんな恋情に踊らされて、支配欲が湧くなんて馬鹿馬鹿しいと思う。そう思っていた。
奴らの感情を理解出来てしまう状況がくるなんて夢にも思わなかった。
支配欲。独占欲。依存。劣情。背徳感。高揚感。
今や彼女を想わない日はない。彼女のことを、何も知らないくせに。感情だけが一人歩き。
この虚しさを埋めるために…俺は彼女のストーカーになった。
我などとうに忘れ、自制心も失われた。そんな俺にはもう、彼女のあとをつけるくらいしか、それしか生き甲斐が。
天誅だろうか。程なくして彼女は、どこかも分からない遠い遠い場所へ、引っ越してしまったのだ。
……
「お疲れ様です」
同僚に挨拶をして職場の裏口のドアを開ければ、少しひんやりとした風が髪を靡かせた。
夏といえど八時近くにもなれば、街頭を頼りに歩きだす程の薄暗さに街は包まれる。スマホをバッグに仕舞い込み帰路につく。
今日は気配、感じないな。
気のせいであって欲しいが、一ヶ月程前から、夜道を歩く度に毎回、背後に視線を感じるのだ。もともと幽霊とかそっち系が苦手だから過敏になっているだけかもしれないと当初は思った。今もそう思いたかったが、一ヶ月もその状態が続けばさすがに、私をつけている存在がいるかもしれない、ということを危惧する。足早に大通りを抜け、住宅街の路地に入る。
「やっぱ、お母さんに迎えに来てもらえば良かったかも……」
以前、このことを相談した時から、母は「仕事送ってってあげようか?」と頻りに聞いてくれる。その度、心底心配そうな表情を浮かべる母に迷惑をかけたくなくて、「大丈夫だよ!」と無理矢理に笑顔を繕って答えた。
今日はまだ、いつものようなあの気味悪い視線は感じない。少しほっとした。
中学生の頃からここに引っ越してきて、大体十年が経ったからか慣れたこの風景。この先の通りを左に曲がってそこを真っ直ぐ行けば、突き当たりが私の家だ。歩く速度を速める。ピンヒールをかつかつ鳴らしながら、このまま何も起きませんように、とバッグの持ち手をぎゅっと握りしめた。
左に曲がる。立ち並ぶ家々に、沈みかけた太陽の光が滲んでいる。家はもうすぐ。
その時。少し遠くに誰かが立っていた。背は高く、恐らく男の人の影だ。彼は、ズボンのポケットに手を突っ込んで、俯いている。もしかして、もしかしない、よね…?
一歩一歩、歩みを進める。
大丈夫、絶対大丈夫と自分に言い聞かせる。
あっという間にその人の目の前だ。横を通り過ぎようとした時、その男の人は、ゆっくりと顔を上げた。
妙な既視感を覚える。なんか、どっかで見た事あるような……。
「ふふ」
彼は、気味の悪い声で笑う。全身が粟立つ。一瞬にしてわかってしまった。
「え、あ、す…すと…」
絶対逃げ切れると自信をもって歩いていた。それがどうだ。地面に尻餅をついて、冷や汗をだらだらかいて、男の人を見上げるだけ。呂律も上手く回らず、涙を必死に堪えるだけだ。無力。頭の中では逃げろと警鐘が鳴っているのに、体が鉛のようで、思うように動かない。
「みつけた」
そう呟いて、私をしっかり見つめる彼。手が私に向かって伸びてくる。幸せそうに、でもどこか寂しそうな笑い声をあげるその男の人の顔は、逆光に照らされていて、うまく認識できなかった。あ、待って、さわらないで、やめ
「逆光」
ただあの日は、僕が学級日誌にシャーペンを走らせる音だけが、僕と君しか居ない放課後の教室に流れていた。たしか君は僕の横の席に座ってスマホをいじりながら、僕が日誌を書き終わるのを待っていた。
しかし、僕と君の間に会話はなかった。
僕が話しかけても、君は何処か上の空で、ぼんやりとした返事しか返ってこなかったものだから、何か考え事をしているのだろうと思って、僕は口を閉じて、日誌をさっさと書いてしまおうとせっせと手を動かしていた。
君が僕の名前を呼んだのは、たしか日誌をもう少しで書き終わるって時だったと思う。
僕は顔を上げて、隣に座る君のほうを向いた。
途端に目にきつい光が飛び込んできて、うっ、と顔をしかめた。君は逆光を浴びて全身黒のシルエットみたいになっていたことを覚えている。
君は僕の顔を見て、しっかりとこう呟いた。
「好き」
驚いた。僕はポカンと間抜けに口を開けて君の顔を凝視していたことだと思う。といっても、君の顔は逆光のせいで真っ黒になっていて、表情なんか分からなかったのだけれど。
何秒だっただろうか、僕はフリーズしてしまっていた。
そんな僕を解凍させたのは君の一言だった。
「なんてね、冗談だよ」
その言葉を聞いて酷く安堵した。だって君を恋愛的に好きだとか、そんなの考えたことがなくて、凄く動揺したから。
僕はほっと息を吐いて笑った。
「びっくりしたー!だよね、冗談だよね」
相変わらず君の表情は分からなかったけれど、多分笑っているだろうと思っていた。
けれど、本当は泣き出しそうな顔をしていたらしい、今初めて知った。
「それ、本当?」
僕が隣で歩く君にそう尋ねた。君はむっと顔をしかめた。
「本当だよ、マジで傷ついた」
「…ごめんね」
僕が謝ると、君はふふっと微笑んだ。
「まぁ、良いけどね」
そう言って、君はするりと僕の指に指を絡めた。
恋人つなぎだ。
「今はこうだから、許す!」
君はにこにこと笑っている。僕も笑って繋がれた手をぎゅっと握りしめた。
『逆光』
黒塗りの面影に許しを請う
地に額を擦りつける過去
揺れる一輪花
泥塗れの御守
門前払いの男
覚醒した意識に目を開けば
夕陽に晒されながら平伏す
地に額を擦りつける過去
そっとドアを開けてみると
電気を消してスマホを点けて
バックライトに照らされながら
ベッドの中で動画を見る息子の
シルエットが見えた深夜
寝たふりしたってわかるからね
声を潜めてるつもりでも
笑ってるの聞こえるからね
そっとドアを開けられて
電気を消してテレビを点けて
ブラウン管に照らされながら
布団の中で番組を見る私の
シルエットを見られた過去
寝たふりしたってわかるのはね
昔の自分もそうだったから
声を潜めてたはずなのに
笑ってるのを聞かれてたから
「逆光」
逆光
逆光の中、君を見ると
後光がさしていた
この落ちぶれた人生のなかで僕に
一体何ができるだろう。
キラキラと輝いている人たちとは
全く違う世界にいる僕に。
どこまでも落ちぶれて落ちて落ちて落ちた先に
一体何があるのだろう。
それでも足掻いてもがいて生きてたら
いつか僕にも光があたる日がくるのかもしれない。
だからさ
とりあえず今日も生きてみるよ。
いつか僕の暗闇にもひとすじの光があたることを期待して。
おひさまの光 さんさん
順光に身を任す
あれまあ ごめんね
あなたからは逆光ね
こっちへおいで
明るいほうへ
歩きなれない白の道、前のめりに倒れそうになるのを何とかこらえて、ボスンと尻餅をついた。
…想像より埋まってしまった。埋まったことで雪との距離が近くなる。辺り一面の銀世界、その一部になった気分だった。真っ白でさらさら、ではなく少し水っぽいのは太陽が表面を溶かしているから。
「急に静かになったからびっくりしたよ」
私の前を歩いていた雪国育ちの彼は、歩きにくい道など存在していないかのようにあっという間に。目の前に手を差し出した。
「そのままだと冷えてしまうから手を取って」
太陽を背負って戻って来た彼の顔は逆光で見えないかと思っていたら、雪がレフ板の代わりになっていたらしい。
握り返すとニカッと笑って力強く引き上げてくれた。手袋越しだというのに
「ほらもう冷えてる。早く帰って暖まろう」
今度は見失わないようにと、しっかり手を握られて暖かな家を目指し歩いていく。
『逆光』の中で見た顔も素敵だったと、彼に伝えるのは帰ってからでも遅くない。
逆光
朝日と夕日をモデルさんに
風景写真を撮る
どうしても逆光になり
モデルさんがキレイ過ぎて
風景が霞んでみえる
まぁいっか
浮かび上がる
優しい香りと
貴女のシルエット。。
冷たい空気に包まれた
ボクの声は届かない。。
浮かび上がる貴女のシルエット
追いかけても、、追いかけても、、
追いつけない。。
期待だけを残しボクを苦しめる
逆光の優しい貴女は
逃げてゆくだけのシルエット。。
遥か遠く、
あかりを目指して走り続ける
僕の憧れ
濃紺の影と
楽しそうなその背中
「逆光」