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 歩きなれない白の道、前のめりに倒れそうになるのを何とかこらえて、ボスンと尻餅をついた。
 …想像より埋まってしまった。埋まったことで雪との距離が近くなる。辺り一面の銀世界、その一部になった気分だった。真っ白でさらさら、ではなく少し水っぽいのは太陽が表面を溶かしているから。
「急に静かになったからびっくりしたよ」
 私の前を歩いていた雪国育ちの彼は、歩きにくい道など存在していないかのようにあっという間に。目の前に手を差し出した。

「そのままだと冷えてしまうから手を取って」

 太陽を背負って戻って来た彼の顔は逆光で見えないかと思っていたら、雪がレフ板の代わりになっていたらしい。
握り返すとニカッと笑って力強く引き上げてくれた。手袋越しだというのに
「ほらもう冷えてる。早く帰って暖まろう」
 今度は見失わないようにと、しっかり手を握られて暖かな家を目指し歩いていく。

 『逆光』の中で見た顔も素敵だったと、彼に伝えるのは帰ってからでも遅くない。

1/25/2023, 9:16:40 AM