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「逆光って不憫よね」
そういう彼女に、はぁ、と返事をする。彼女はどこか遠くを見つめているようで、俺の事など眼中にもないようだ。
「考えてもみてよ、逆光ってあまり良いと思う人が少ないじゃない。撮り方が上手じゃなきゃ、失敗したも同然よ。それに、逆境や脚光に間違えられるの。ちょっと、検索してみてよ、調べる度に不憫に思えてくるわ。」
コーヒーにシロップを入れながら彼女は話す。逆光に対して俺は感情を抱かない。彼女の横顔を見ながら、俺は適当な相槌をうった。
「でも、私は逆光が好きよ。逆光を浴びている物や人を見ると、言葉にできない神々しさや、懐かしさが湧き上がってくるの。」
「例えば、今の君とか?」
彼女は、クスッと笑った。
「嬉しいこと言ってくれるじゃない。でも、それはあなたもよ。だって私の隣にいるんだから。」
彼女の顔はよく見えなかった。ただ、何となく美しいと思った。彼女をもう少し見ていたくて、俺は彼女を見つめながら言う。
「俺も、逆光好きだよ。」
「それは、なぜ?」
彼女がこちらに顔を向けた。少し眩しそうに笑っている。
「逆光を浴びている物や人を見ると、言葉にできない神々しさや、懐かしさが湧き上がってくるからかな。」
彼女は適当な相槌をうった。俺は、彼女と顔を見合せて笑う。幸せな時間が、ゆっくりと過ぎていった。

1/25/2023, 9:59:32 AM