『貝殻』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
バキンッと音がしてようやく足下に目をやった。
粉々に砕けた貝殻が床に散らばっていた。正確な数は分からないけど、両手では掬いきれないほどたくさんある。
ぼんやりとそれらを眺めていたらまた金切り声が部屋の中に響き出した。無遠慮に踏み込んできてより一層声を荒らげ、ガクガクと私の肩を揺さぶる。
黙ったままその人の目をみていたら頬を叩かれた。痛そうな音がするな、と考えていたら今度は反対側を叩かれる。抗議の意を込めてその目をみれば、大粒の涙を零しながらギャンギャンと騒ぎ立てるだけでとても話しなどできそうにない。
―疲れた
その一言さえ発することを許されていないのだ。
偉そうに胸を張って他人を見下すその人こそ、私の生殺与奪の権利を有しているのに情けない。ただ邪魔だから消えろと言えばいいだけなのにそれすらしない。
ひたすら己の自尊心を高めるためだけの行動を繰り返す様は滑稽で、毎日笑いをこらえるのに苦労している。
足下に散らばる貝殻のように踏み潰せたら、なんて。
私もまた狂ってしまったようだ。はやく処分してもらえないかな。
口の中いっぱいに広がる血の味を飲み込んで、その人のヒステリックが終わるのを待つ。これが私の仕事なんだ。
【題:貝殻】
例えば大きな貝殻が、海に流されて砕けてしまえばそれを貝殻と呼ぶことは出来るのだろうか。
きっと全てのかけらが集まって、元の形と同じ重さになったとしても元に戻すことは出来ない。
そしたら、君がこうして小さくなって私が抱えられる程軽くなってしまったのは当の昔に消えてしまったという事だろうか。
海の匂いが鼻をつんざき、砂が目に入るから泣いてしまう。こんな所に撒いたって君は自由になれないだろう。
だって、私が縛り付けたのだから。
後悔なんてしていない、していない筈だったのに。
時に穏やかで、時に激しくて、時に自由な波に身を任せ。たどり着いた浜辺には数々の出会いのカケラが待ちうけているだろう。
『貝殻』
「貝殻」
マコは海のある町に住む小学四年生の女の子です。マコは海が大好きで、毎日海岸を散歩しています。
ある日、いつものように散歩していると、みたことのないきれいな色をした貝殻を見つけました。マコが知っているより一回り大きなホタテの貝殻です。一見真っ白に見えますが、日にあたって虹色に輝いていました。マコは貝殻の輝きに目を奪われて、砂浜から貝殻を拾い上げました。貝殻はずっしりと重く、マコはとり落としそうになって慌てて両手で持ちました。近くで見てみるとますますきれいに見えます。少し角度を変えると色が変わるのが楽しくて、マコは貝殻をくるくる回して眺めました。しばらくそうしていると、貝殻の中から小さな声が聞こえました。
「ううう、もうまわさないでぇ……」
マコは悲鳴をあげました。貝殻がぱかりと開いて、なかから小さな小さな女の子が涙を流しながら姿を現したのです。
「あ、あなたはだあれ?どうしてそんなに小さいの?」
尋ねてみると、女の子はべそをかきながら答えました。
「私は海の国から来たの。陸に行ってみたくて泳いでいたら、迷ってしまったの。おうちに帰りたいよぅ……」
「あなたのおうちはどこにあるの?」
「海の底にあるわ」
「うーん、それだけだとわからないな。とりあえず、わたしの家に来ない?わたしのお父さんは漁師なの。何か知ってるかもしれないよ」
こうしてマコは小さな女の子を家に連れていくことにしました。
お母さんは手のひらに乗るくらい小さな女の子を見てびっくりしましたが、事情を話すと優しい手つきで女の子をなでました。
「大丈夫よ。きっと家に戻してあげるからね」
お父さんは夜にならないと帰ってこないので、それまで待たなくてはいけません。マコは女の子の不安を紛らわすために、女の子とおしゃべりすることにしました。
「おなまえはなんていうの?」
「名前はないわ。海では名前を呼ばないの」
「じゃあわたしがつけてあげる。えーっと、貝殻姫とかどうかな?」
まるでおやゆびひめみたいだと思って言うと、女の子は初めてにっこり笑いました。
「かわいい名前。私、名前って初めてよ」
それからマコと貝殻姫はいろんな話をしました。マコが陸の話をして、貝殻姫が海の話をしました。貝殻姫はマコの話を聞いて喜んでくれたし、貝殻姫の話は聞いたことないような話ばかりで楽しいものでした。おしゃべりははずみ、外はあっという間に暗くなって、お父さんが帰ってくる時間になりました。
お父さんは貝殻姫の事を聞くと冷静にうなずきました。
「なるほど、海の底から来たんだね。僕はほたてが多くいるところを知っているよ。そこでかえせばいいのかな」
貝殻姫はこくんとうなずきました。お父さんは、明日漁をするついでに貝殻姫を送ってくれるといいます。拍子抜けするほど簡単に、貝殻姫は家に帰れることになりました。すっかり友達になったマコと貝殻姫は、ハイタッチして喜びました。
「よかった、帰れるんだね」
マコが言うと、貝殻姫は嬉しそうに笑いました。その笑顔を見た時、一瞬マコの胸がずきんと痛みました。せっかく友達になれたのに、貝殻姫とお別れしないといけないのです。
時間はすぐにたち、貝殻姫が出発する時間になりました。見送りに来たマコは、貝殻姫にビーズで作ったネックレスを渡しました。
「海に行っても、私たちは友達だよ。忘れないでね」
貝殻姫はおどろいたようにネックレスを見て、そして大切に握りしめました。
「こんなのもらったの、初めて。海にはこんなにきれいなものはないわ。大切にする」
貝殻姫はマコの人差し指をそっと握りました。
「ありがとう、マコ。私の初めてのおともだち。きっとわすれないわ」
そうして貝殻姫は帰っていきました。それを見送るマコの指には、貝殻姫とおそろいのビーズの指輪がはまっていました。マコはきっと、この不思議な出会いのことを忘れることはないでしょう。
今年のお正月の数日前、姉がおせちセットを送ってきてくれた。
箱を開けると密閉された袋に量は少ないが
結構な種類のおせちネタが一袋一袋入っている。
奮発してくれたのだろう。殻に入ったアワビがあった。
母がお重の真ん中に飾ると豪華なおせちになった。
松の内が過ぎ、台所にポツンと置き去りにされた
アワビの貝殻を見かけた。母のことだ、何かに使う気だろう。
キレイに洗って乾かしてあった。
そして次の日、シンクの縁にアワビの貝殻が置いてあり
その中に白く透き通った高級そうな石鹸が入っていた。
あら、オシャレ。横に並んだ穴から水も出るし。
ただ、シンクが傷むのを気にしたのか
キッチンペーパーが敷いてあるのが母らしくて笑った。
貝殻って色んな形あるよね
学校の帰り道にぼそっと呟くように彼女は僕に言った。
海辺に近い学校で当たり前のように一緒に帰る彼女。
僕の片思いの相手だ。
これは穴が空いてるよ、ちょっと痛そう
笑顔で貝殻を拾っては僕に感想を言う。
僕は特に何も言う訳でもなく、波と彼女の音を心地よく受け入れる。
いくつか拾ってきた物を彼女が僕に渡す。
両手で受け取る僕を見て彼女はまた笑う。嬉しそうな幼いえくぼがたまらなくて、慌ててポケットに詰め込む。
そろそろ帰ろう、と足早に進む。
ポケットの貝殻の数を感触で数える。
1、2、3、………あと8個。
今まで貰った貝殻の数とあわせてみる。
あと8個受け取ったら彼女に告白をしよう、なんて。
もうそろそろ片思いから抜け出す準備をしなければ。
そう意気込んで帰り道を進む。
後ろで彼女は小走りで隣に並ぼうと頑張ってる。
そんな姿を見て、僕は歩幅を小さくする。
明日も晴れるといいね、彼女は笑う。
僕もつられて笑う。
明日も晴れますように。
海には大きな貝殻、小さな貝殻などたくさんの種類の貝殻がある🐚
貝殻
海に行くとたくさんの貝殻がある
これは一つ一つに命があったという証
貝の中でいろんな経験を積み重ね
外の世界へ旅立った跡
海へ行くと今は貝の中にいる自分も
外の世界へ呼ばれている感覚になる
【貝殻】
不法投棄されたガラスの破片。
それが海で揉まれて角が取れるとシーグラスと呼ばれる。
キーホルダーやアクセサリーの素材に人気なのだとか。
貝も石も丸くなるのに、ガラスだけがシーグラス。
人間も一緒。この世に生まれ落ちた命。
それが社会で揉まれて個性が取れると大人と呼ばれる。
毒にも薬にもならない程度が扱いやすくて良いのだろう。
みな等しく『普通』になるのに、生まれで扱いは変わる。
不平等だなんて声を上げても変わらない。
石はガラスにはなれない。シーグラスにもなれない。
石はどれだけ削れて丸くなっても、ただの丸い石なのだ。
けれど人の手が加われば、価値あるモノへと姿を変える。
そのためには見つけてもらわないといけない。
屑石も原石も磨けば光る。磨く人がいれば、光る。
もし大人になれないまま歳だけ取ってしまったら。
見つけないといけない。個性を認めてくれる誰かを。
私はまだ、見つけてもらえることを期待している。
だって私はガラスではないけど石でもない。
そのままの姿でも価値のある、人の目を引く貝だから。
そして、ようやく出会えたの。私自身を見てくれる人。
あなたは「大人になれ」なんて言わない。
誰かと比べない。冷めた目で見ない。決めつけない。
私は私。他の誰でもないし、誰にもなれない。
簡単なことなのに、あなたしかわかってくれなかった。
見つけてくれたあなたのため、私は努力をする。
できる限り言うことを聞いて見捨てられないように。
「良い女だよ」どこかから聞こえるあなたの声。
「自己評価の高いバカは扱いやすくていい」嘲り笑う声。
あなただけと合う対の貝殻でありたかった
//貝殻
最高に天気が良い日
青年が最も恐れていたのは、死ぬことよりも、薬品くさい病室に死ぬまで閉じ込められることだった。
口元に何本ものチューブを繋がれて、身動きが取れないというのは、拷問みたいなものだと思った。
おまけに、彼には妻はおろか恋人すらいない、孤独な青年だった。
「病院なんか行くもんか。そうだ、俺は青空の下でのびのびと死んでやるぞ」
青年は恐らく内臓を病んでいた。吐血を繰り返しては、市販薬で症状を抑えていたが、もはや手遅れであることは彼自身がよく分かっていた。
青年はその日、いつも通りきちんと会社に遅刻せずに行き、定時になるまで仕事に励んだ。三年間続けてきたことだ。
ただ、同僚に「この後飲みに行かないか?」と誘われたが、それは断った。できるだけ一人でいたかったからだ。
青年は仕事を終えて、会社から駅に向かう途中で吐いた。
真っ赤な血だまりを見て、「もう、会社には行けないなあ」と呟き、駅のトイレでうがいをすると、電車に乗って自宅へと向かう。
幸い、今日は金曜日で、週末は会社は休みだった。
「チクショウ! まったく待ちくたびれたぞ。暇潰しの人生にしちゃあ長すぎだぜ。まったく」
彼はアパートに戻り、冷蔵庫からビールを取り出すとゴクリゴクリと飲み干し、ソファーに横になる。
「明日だ。明日中に死のう。ほうっておいても死ぬが、俺の命は俺が終わらせてやるんだ」
彼は家族の写真を取り、亡き両親の姿を見つめる。
「父さん、母さん、俺、もうすぐそっち行くから」
青年はそのままソファーの上で眠った。
朝、目覚めたとき、口元が真っ赤だった。やれやれ、と彼は起き上がり、風呂場に行くと汚れた服を脱いで髭を剃る。
それから着替えた後、彼はアパートを出た。天気が最高に良くて、彼は少し気分が良かった。
どこへ行くか決めていなかった彼は昼頃まで歩き続けてしまった。立ち止まったのは、橋の上。
青年はひらめいた。ここから飛び込んでしまおう、と。高さは十分だ。ゴツゴツした岩が川底から見えるから、着水の衝撃で死ねるだろう。
「よっと」
彼は橋の上に立ち、強烈な吐き気に襲われながらも、空を仰いで腕を伸ばした。
「君! 何をしてるんだ!! 危ないから降りたまえ!!」
麦わら帽子の中年の男が彼に駆け寄るなり、叫んだ。
「やーだよ」
彼は真っ赤な口元を歪めると、そのまま飛んだ。
「ああしまった」
彼は落下しながら叫んだ。
「俺、まだ朝食食べてなか…」
貝殻
今日は、大好きな君と、沖縄の透き通った綺麗な海に来ている。「ねぇ!見て!この貝殻、素敵じゃない?」とまるで子供の様にはしゃぐ私に、君は、キスをした。「もぉ〜!何急に〜!そう言う急とか、照れるし、反則だから〜!」と言うと、君は、また私にキスをした。「今のは、急でも不意でも無いから、良いだろ?」と…「うん」と言いながらも私は、照れた表情を隠せずにいた…そんな君が、そんな君の全てが大好きで、愛おしい…これからもずっと君の隣。これからも君の隣にずっと私はいる。これからもずっと何度でも貴方の隣で貴方への愛を奏で、沢山囁こう。「大丈夫!例えどんな時でも、私が君の隣にいるよ!」いつも、貴方は、私を安心させてくれるから、今度は、私の番!頼りないかもしれないけど、これからは、もっと、私の事も頼ってね💕︎だって、来年の今頃には、もう二人は、同棲してるんだからさ✨
貝殻は、部屋だ。自分を守るための硬くて分厚い壁であり自分でさえ出るのに苦労する部屋。人間の脳みそも似たようなものだ。あくまでイメージでしかないが、引き出しのようなものがあり、ラベルが貼られているのだ。
だが時に、いくつかラベルが貼られていないものもあったりする。それらは、大抵自分が掘り起こしたくない記憶だったりする。
だからこそ、開くのには覚悟が必要になるのだ。中身は開かなければわからないのだから。
覚悟はあるか?
お終い
海に遊びに行った
浮き輪で浮かんでた
高い波が来て、ワーキャー叫んでた
砂浜はサラサラで、どこ探しても貝殻がなくて
少ししょんぼりしてたら海の中に一つだけ
白くて綺麗な二枚貝を見つけた
写真を撮って満足したので、海に帰して帰った!
貝殻
可愛い背中だ
おもむろにしゃがんだかと思ったら
小さくうずくまって
懸命に濡れた砂浜を探している
黙々と
遠目から眺める
小さな背中を見守る
大きな海
訪れる度に慌てる背中を
弄ぶかのように
揺れる波
愛おしい時間だ
貝殻
さざーん。
巻貝に耳を近づけると海の音がする。
大自然の恵みを感じる。
母なる海の音。
『貝殻』
イングランド東端で、約180年前に発見された、貝殻で装飾された『シェルグラッド』と呼ばれる地下洞窟がある。
185平方メートルの空間の内部の壁や天井は、計460万枚もの貝殻を用いた装飾で、びっしりと埋め尽くされている。
花や太陽に見えるマークやハート型のシンボル。全体的にモザイクのような模様になっていて、天井からは太陽光が差しこみ、芸術的な空間を演出する。
かように豪華なつくりの空間を建築したにも関わらず、誰がいつ何のために作ったのか、一切分かっていない。
古代の神殿なのか、秘密結社の集会所か、密輸業者の隠れ家なのか。謎は謎を呼んでいる。
古代の人々の考えや習慣、儀礼は
現在生きている我々には理解できないほど
ミステリアスなものである。
理解できないからこそ、理解できない部分を
いろいろ想像して、穴埋めしていくのが楽しい。
実際、合っているかは知ったこっちゃない。
だって世界中の歴史学者が議論し合っても
分からないんだから。
自分なりに解釈してもいい。
みんな。歴史を学ぼう!
楽しいよ〜
海なんて何年も行ってないな〜
最後に行ったのは相当小さい頃かな
波打ち際で塩水に触れながら砂遊びしてた
貝殻も紛れて小さな生き物と遊んで
また海に行けたらいいな
美味しい、美味しい、ご馳走の時間だ。
全てを吐かせてから。
そのまま、
炙って、
焼いて、
茹でて、
煮て、
あとは何が出来るだろうか。
隅々まで味わい尽くして、残ったそれはどこに飾ろう。
まだ、生きてる?
『貝殻』
〜貝殻〜
硬く閉ざし身を守る
他人にすれば厄介なこと
自らすれば必要なこと
硬く閉ざした中は安全
でも生きるためには
閉ざしたままではいられない
少し開いて中に入れる
それは思わぬ産物を生み出した
自らの意思で入れた
小さなものは"しん"となり
年月をかけて完成体となる
いびつな形
綺麗な形
光り輝く色
魅力的な色
小さなもの
大きなもの
全ては自らの意思のままに
そうして人を魅了する真珠は生まれる