『街の明かり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
街の明かり(2023.7.8)
私は世紀の大怪盗。今日も今日とて、人々から華麗に何かを盗み去る。
本日の舞台は、眼下に広がるこの大都市だ。もう随分と遅い時間にも関わらず、街全体が煌々と光に満ちている。
さて、今日の仕事を始めようか。
私が『あるもの』を盗み過ぎ去るたびに、その場所からは光が消え、ただ静寂だけが残る。
あまりに鮮やかすぎる犯行ゆえに、誰も私のことを知らないのは残念だ。そう嘆きながら、今日も私は夜の街を飛び回る。
闇夜に翔ける彼女を、少し離れたところから見守る影が二つ。
「あの子、また変なことしてるんですか?」
「今度は怪盗ごっこらしいのう。まぁ、楽しそうで何よりじゃ」
「はぁ……。まぁ、仕事はしているようですし、別にいいんですが。変なことをしすぎて、人間たちに見つかったらどうするつもりなのやら……」
「まぁまぁ、我々眠りの妖精の仕事は、誰にも気づいてもらえない寂しいものじゃ。人知れず夜の街を回って、人々に安眠を届ける…素晴らしい仕事ではあるが、なかなかやりがいを感じられんものじゃからのう。少しくらい遊んだとて、バチは当たらんじゃろ」
「まったく、あなたがそう甘いからあの子も真面目にならないんですよ」
「ほっほっほっ、まあまあいいじゃあないか…」
しばしそんな会話を交わした後、彼らもまた自らの仕事のため、夜の街へ消えていく。
『ーー続いて、次のニュースです。昨日の深夜2時ごろ、〇〇市で当時起きていた人々が突然全員眠ってしまうという不可解な事件が起こりました。幸い、事故や事件性などは見られず、警察は人体に悪影響のない薬品が散布されたか、集団催眠の疑いで捜査を進めています。当時コンビニでアルバイトをしていたという男性に話を聞いたところ、「突然すごい眠気に襲われて、いつのまにか寝てしまっていた。最近は不眠症気味だったが、久しぶりによく眠れて体調が良い。店にも特に盗まれたものなどはなかった」とのことです。続いて、明日の天気です。ーー』
【テーマ:街の明かり】
今日は関わりしかないテーマ。このアプリはまったく気分屋のようだね。
私は街がライトアップされているのも、日光で残り香のみで若干薄暗いのも好きだ。ライトアップされているときは人の面影を感じられるし、薄暗いときは逢魔が時や黄昏時…つまりこれから何か起こりそうでとても楽しい。
黄昏時の由来については映画『君の名は。』で知っている人も多いだろう。誰そ彼時、「あなたは誰だ?」と問うような時間。それを黄昏時という。
逢魔が時は魔物(現代の言葉で近いのは妖怪)と逢うような時間である。私がわくわくするのは主にこちらだな。
私はこのアプリを初めて最初に書いた作品のように、神隠しや妖魔などだったり都市伝説だったりというホラーが好きだ。得体のしれない存在が大好きだ。だからこそ逢魔が時はなんだか楽しく思えるのだ。まあ、それこそ糠喜びと言う他ないが。
ああそう、今日は用事で外に出たのだが、そのとき竹林の側に様々な色の短冊が飾られた笹があった。風が吹くとヒラヒラと色が舞うのがとても綺麗だった。中には世界平和と書かれたものもあってくすっと笑ってしまったが、最近はあまり馬鹿にできない願いなのが悲しいことだな。
私は出不精で旅行も滅多に行かないため、都市から外れた場所というのはどのくらい暗いのか実際には分からない。テレビで街灯一つもないような田んぼの近くの道を歩いているのを見たことがあるが、出演者を照らすライトを消した途端何も見えなかったのがとても衝撃だったよ。
そのような道で空を見ながら帰路につきたいものだが、そんなことをしたら田んぼに落ちてしまいそうだ。それに小さな蜘蛛に悲鳴を上げるほどで、虫もあまり得意ではないしな。それを認識すると、私は都会から離れられないのだな、と虚しく思う。
街灯という一つを挙げても地域によって格差があるのはとても面白い。私が住むような都の方では街灯が途絶えることなどないが、畑や山の方では車のライトくらいなのか?詳しくは分からないが、それもまた神秘的で素敵だと思う。
田舎だから都会に出たい、と思うのは否定しない。確かに都会は良い。でも、田舎には田舎の良いところだってあるのだ。君らの知る場にしかないものを見つけてみるのもきっと楽しいだろう、と私は確信しているよ。
『以下練習用SS』
光、光、光。この街は日の光を避け、月の光を皮切りにぞろぞろと出てくる。まるで幽霊や妖怪みたいに。夜は我らの時間だ、と言うように。
「おねーさん、俺らのお店で飲まない?」
「すいません、私お酒飲めないので。」
横から出てきた男の誘いを決まり文句で断ると、素直に引き下がってくれた。よかった、これで駄目だったら股を蹴るしかなかったから。
キラキラと煌めいた衣装と少しくたびれたスーツが交わって、スチール缶がぶつかる音や、喧騒が混ざり合う。
まさにカオス。その他に言い表せる言葉はないだろう。
そんな通りを抜け、駅に着いた。そこから蛍光灯に照らされて暫しの間揺れていると、漸く最寄り駅に到着した。
あの場所とは違い、月よりも日を好む人が殆どな街だ。その分夜は本物の妖怪が出そうな闇さだが。少なくとも話が通じるようで通じない人間より、全く通じない妖怪の方が気が楽だと思う。
「ん、ふわぁ…」
あくびが出て空を見ると、こんな道でも該当がないわけではないことに気づいた。
「月だ。」
月が魔除けになってくれれば、街灯も人除けの効果を持ってくれるのだろうか。あんな道を通らなければならなかった今日を思い出して考えた。
離婚した。
終電に揺られながら街の明かりを眺めて
思いを馳せる。
どこから間違えた?
正しい答えは何だったのだろう…。
チカチカと消え掛けの明かりすら
感じていなかった。
家族が寝静まったあとの暗い部屋に
僕は慣れ過ぎたんだね。
#街の明かり
街の明かりに誘われ、蝶は舞う
美しいと、人は見惚れる
街の明かり
夜8時、私と彼は車に乗っていた。犯人グループの足取りを掴むための張り込みだ。私は怪しい建物を見るふりをして、彼の横顔を盗み見る。彼は建物の方をじっと見ていて、視線には気付いてないみたいだった。車の明かりは付いてない。今私たちを照らしているのはそばにある街灯のひかりだけだった。薄い茶髪が光によって透けている。私は少しの間だけそのまま過ごした。
それからほんの10分後、建物から人が出てきた。いかにも怪しげな恰好をしている。資料で見たけど。
「行こう、エミリア。」
彼が銃を手に取り、ドアを開ける。
「はい、警部」
私も続いてドアを開けた。男を、彼を追いかける。私よりも低い位置にある頭を見て、肩を見て、決意を新たにする。この人は私が守らないと。
かつて彼がそうしたように。
夜になるにつれて街に明かりが灯る
大地に輝く無数の星のように
オレンジ色に光る居酒屋のランプ。
車の眩しいライト。
コンビニのネオン。
街には喧騒とぴかぴかが溶け合っていて、何だかふわふわくすぐったい気分になる。
あ、違った。ふわふわしてたのは、アルミ缶のお酒を呑んでたからだった。大丈夫かなあ、私。
帰りたいな。このままふらふら歩いていって、静かなどこかに帰りたいなあ。故郷でも何でもないのに、何でそんなこと思うんだろ。寂しくて寂しくて、涙が出てきた。
だいじょーぶかなあ、私。
街の灯りが、夜の闇を照らし出していた。その光は、街中を明るく彩り、人々の足取りを支えていた。煌々と輝くライトが、建物の窓辺や街灯の柱に、美しい陰影を落としていた。
街路樹に飾られたイルミネーションは、まるで星空のように美しく煌めいていた。その光景は、まるで夢の中にいるかのように、心を癒し、安らぎを与えてくれる。
歩いている人々も、その美しい景色に心を奪われ、足を止めて時を忘れてしまう。時計の針が進んでいることを、忘れているようだった。
街の中心部には、高層ビルの明かりが、夜空を染めていた。人々の暮らしや仕事が、そのビルの中で行われていることを、思い起こさせる。
街の灯りは、人々を包み込むように存在していた。それは、まるで人々が一つの大きな家族のようにつながっているかのように感じられた。そんな温かな感覚が、心を満たしていた。
夜景を見た。
写真では
何度も見たことがあったけど
やっぱり実物が
1番キレイ。
あの明かりは
わたしの知らない
誰かのおうち。
わたしの知らない人は
こんなにたくさんいて
同じ時間を
生きている。
―――なーんだ。
わたしが
知ってる世界なんて
こんなに
ちっぽけだったんだ。
そこで
上手く行かなくたって
きっと
違う世界は
たくさんあるんだ。
#街の明かり
※ポケモン剣盾二次創作・マクワとセキタンザン
※お題:七夕
ひらりと短冊が宙を舞った。何も書かれていない細い紙は、なぜかぼくのタブレットから現れて、キルクススタジアムのジムリーダーが主を務める部屋の絨毯の上に降りた。
長い間使われてきた部屋だが、こんな大きなタグのようなものを見るのは始めてだろう。
ぼく自身、キルクスで七夕飾りを見ることは初めてだった。
「もしかして……くっついてきてしまいましたか」
「シュポォ?」
隣で一休みしていたセキタンザンが不思議そうな顔をして紙切れを拾い上げると、ぼくに手渡した。
「ありがとうございます。……これは短冊というものです。カブさんのところでいただいたものを……ぼくとしたことが、どうやら間違えて持って帰ってきてしまったみたいですね」
数時間前までいたエンジンスタジアムでのことを思い出す。エンジンでのジムリーダー交流会は、会議を兼ねているとはいえ実りが多くていつも密やかに楽しみにしている恒例行事だった。
今日のエンジンスタジアムは、ちょうど星祭りの中でも『七夕』を祝っており、ほかではあまり見かけないホウエンあるいはその近辺の祭事を行っているところだった。
ジムトレーナーたちが率先してカブさんの故郷の慣習を復元し、笹の木を立て、短冊に願い事を書いて飾っているのだという。
正直なところ、カブさんとはありがたいことに、親の縁でとても長い付き合いをさせてもらっている。おそらくぼくのあまり知られたくないところや見られたくない姿だってよく知っているだろう。
彼はずっと遠い場所からやってきて、そして長くぼくたちの地方に居続けてくれているひとでもある。どこまでも誠実で強いカブさんは、ぼくの目標のひとりでもある。
そんなカブさんがトレーナーとして尊敬され、めいっぱいカブさんを歓迎しようとしているジムトレーナーたちがいることは、ぼくとしてもうれしいことだった。
彼らは会議の休憩時間に七夕について教えてくれて、ぼくにも短冊を一枚渡してくれた。その場で書いて飾ってもらったのだが、なぜかここにもう一枚の短冊が残ってしまった。
「……せっかくだから……きみもなにか願い事を書いてみますか?」
「シュ ポォー」
ぼくはオフィスチェアに座り、デスクの引き出しからペンを取り出した。セキタンザンは興味深そうに短冊を見下ろしている。
「……きみは……きみの願いごとは……?」
「ボオ」
こうして短冊に向き合ってみて、ぼくは気が付いた。彼をぼくの願いに、やるべきことのすべてにずっと連れまわしてきた。ぼく自身の将来のために、疑うこともなく。この先にある道は、岩壁よりもはるかに険しい。それでも必ず彼にとっても幸福を齎すことだと信じてやってきた。
だがしかし、彼の本当の夢や願いを聞いたことなんてなかったのだ。
すうっと、抜ける冷たい風がある。窓は締め切っていて、エアコンも空調の類もつけてはいない。
小さな短い白い紙が、妙に大きく広がって途方もないほど大きく見えた。まるでキルクスに広がる雪山のようだ。
いつも通り、強い引力を連れて自分の願いを書いてしまおうかとも思った。それは絶対的に正しいことだ。ぼくがトレーナーで、彼がポケモンである以上正義であり続けるだろう。
けれど口の中にたまる唾を飲み込んだ音が大きくて、ぼくの動きを阻害する。
「シュポオ」
「へ」
セキタンザンはいつもの人好きのする笑顔でぼくの顔を覗き込んだ。それから彼は小さく頭を横に振ると、真っ直ぐぼくの目を見つめる。
「シュ ポォー」
そこにあるのは、セキタンザンの黒い瞳の中で、僕の青い目が彼の背中の光を受けて輝く『あまのがわ』だった。
「……ふふ……きみは……」
「ポォ」
「きみはぼくの夢が叶うことがきみの夢だって……そう言ってくれる……?」
「シュポオ」
大きな石炭の頭は強く首肯する。
「……ごめん……いや、ありがとう。……そうですね。それを信じることがぼくたちです。……けれど本当は……もう少し早く聞いておくべきことでもあったと思います……」
「シュポォ」
「それでは、ぼくたちの願いを書きますね」
再び願いを書き記す。やりたいことはたくさんある。すべてが途方もない悲願であり、夢だ。けれどポケモントレーナーとして生まれ、今ここにいるぼくだからこそできることもあるはずだ。
このガラルという素晴らしい土地を愛し、そして利用して、そしてぼくが捧げられるもの。
「それではセキタンザン、動かずにいてくださいね」
「ボオ?」
ぼくは短冊をもって立ち上がり、セキタンザンに近づくと、彼の背中で炎が燃える、石の山の中に差し入れた。乾いた紙切れはあっという間にセキタンザンの温かな熱に包まれて、端っこから火の粉を上げて黒く小さく変わっていく。焦げる香りは心地よい。きっと衣服にも残るだろう。
ぼくたちを刻み付けてゆくものだ。
「ぼくの願いは……きみが持っていてください。ぼくの希望を自分の夢としてくれたきみが。
この夢が叶うそのときまで」
「シュ ポォー!」
セキタンザンは一層背中の熱を上げて、ほのおを強めた。一際ぱちぱちと音が立ち、炭の香りが当たりを包む。
ぼくにはセキタンザンがいる。ぼくの信頼する切り札は、いつだって隣で笑って、時に猛々しくいてくれた。
もうとっくの昔、彼が進化した時から、セキタンザンという彼自身にぼくの新しい大望を預けていたのだ。
キルクスの空気には、懐かしい香りと静かな煙が流れ続けていく。
街の明かりって綺麗だよね。
僕もそう思うんだ。
夕焼けから夜になる時
街の明かりでとても綺麗に
この目に見えるんだ。
でもこの綺麗な景色を見るのも今日まで
だって今日、僕は
この世から消えるからさ
街の明かり
この街は眠らない
夜の帳が下りた後も
煌々と明かりが灯る
この街の明るさは
そのままこの街の闇
この街の影に紛れて
俺は今日も仕事を始める
お題『街の明かり』
※多忙につき一旦保留。
寝かせているお題はいずれ一気に更新します。
街の明かりが消えたとき
あなたと私の二人だけの世界
このままこの時間が続けばいいのに
感傷に浸りながら街を見下ろした。
街には光が所々に分散していた。
とても、綺麗だと思った。
また、少し寂しいとも思った。
寂しさのあまり、足を立てて、そこに頭を埋めた。
なんとなくため息をついた。
私はずっと、このままが良いと願った。
お題【 街の明かり 】
「街の明かり」
土曜の夜は日常を抜け出して
喧騒を離れて 海へとやってくる
否応なしに耳を攻撃してくるCMソングも
これでもかと自己主張する街頭ネオンも
一切の音を遮断して
この地球の発する音だけに
耳を休ませるために
眼をいたわるために
対岸の小さな小さな街の明かりは
天空の星たちと同じ大きさ
地上の私からみえるのは
寸分たがわぬようであるのに
それらの抱える思惑も
それらの抱えるとしつきも
似て非なるもの
人の世の中においても
見かけだけでは測りしれない
奥底の某かがひっそりと
隠れているものなのかもしれない
深呼吸して 私は街へと戻る
ものごとの奥底に隠された
某かを見極めるために
「街の明かり」
「__いつもと変わらない」
マンションのベランダから見下ろすのは、街。
そこには、車のライト、ビルの光、街灯が夜の街を照らしていた。
いつもの風景である。
「__街の明かり」
いつもと変わらない、街の明かり。
地球人は空を見上げて
僕らの住む星を綺麗だという。
家を持つ彼らは
確かにそこに居て
光を灯して毎日を営んでいると聞いた。
我々宇宙人は
青い地球に灯る光が美しいと感じる。
同じ気持ちなのかと思うと心がぽかぽかとした。
「なかなかに、アレンジのムズいお題よな……」
街の明かりって。「ド田舎は街灯が少ないので夜暗い」とか、「店の明かりを見ると◯◯を思い出す」とか、そういう系想定のお題かな。某所在住物書きはガリガリ頭をかきながら、天井を見上げ息を吐いた。
固い頭の物書きには、少々酷な題目であった。
「花火とか工事中の火花とか、今は法律等々が絡むだろうけど焚き火とかも、『街の明かり』、か?」
わぁ。考えろ考えろ。強敵だぞ。物書きはポテチをかじりながら、懸命に頭を働かせる。
――――――
「ふんふん。天の川は、2025年の、9月8日丑三つ時がねらいめ。おぼえた!」
昨日は七夕でしたね。せっかくなので、こんなおはなしをご用意しました。
「天の川、あまのがわ。たのしみだなぁ」
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で暮らしており、その内末っ子の子狐は、花とお星様がとっても大好きでした。
「きっと、すごく、すごくキレイなんだろなぁ」
でも子狐、「満天の星」を知りません。天の川も、見たことがないのです。
子狐にとって、夜の明かりは街の明かり。建物の照明に街灯のLED。それから標識にスマホのライト。
絶えず光の溢れる東京から、一歩も出たことのない子狐。真っ暗を必要とする星空を、その極地と言える天の川を、写真や絵本でしか見たことがないのです。
そこに「天の川が見られるかもしれない」と重要情報をブチ込んできたのが、母狐経営の茶葉屋さんに昨日お茶っ葉を買いに来たお得意様。
カイキゲッショクは地球が太陽の光を云々で、かんぬんで、モニョモニョなので、場合によっては天の川が見られるかもしれないらしいのです。
真っ暗な場所、可能なら山の上が望ましいとのこと。
子狐はこの情報を、お気に入りのクレヨンで、小さなメモ帳にぐりぐりぐり。すぐさま書き込みました。
「でも、まっくらな場所ってどこだろう?」
コンコン子狐、2025年の場所探しのため、人間にしっかり化けて夜の東京を巡回します。
「ビルの屋上は、ニンゲンが怖いから行けないや」
7月の熱帯夜続く東京。今夜は雨の予報です。
「お店のスキマは、くらいけどお空が見えないや」
アジサイのデフォルメをあしらった水色の傘に、同じ水色のかわいい長靴。絵になりますね。
「お寺も神社も、意外と、らいとあっぷ」
どこもかしこも、LEDに液晶モニタ。たまに悪い車のイジワルハイビーム。
街に明かりがあちこち溢れて、コンコン子狐、暗い東京を見つけられません。
しまいに子狐疲れてしまって、大狸の和菓子屋さんで、七夕あられの値引き品を3袋買ってから、お家に帰ってゆきました。
「東京で、くらいところ探すの、むずかしいなぁ」
1袋は自分用、残り2袋は大好きな父狐と母狐と、おじいちゃん狐とおばあちゃん狐へのお土産、
の筈だったのですが、道中子狐、あられがおいしくておいしくて、全部食べてしまいました。
「ととさんと、かかさんなら、知ってるかも。ととさんとかかさんに、聞かなくちゃ」
かわりに最近越してきた魔女のおばあさんの喫茶店で、お星様のクッキーボックスをお買い上げ。花咲きキノコ並ぶ、森深い夜の神社に帰ってゆきました。
神社はいつか昔の東京をうつして、涼しく、暗く、優しく、子狐を待っておりました。
おしまい、おしまい。
街の明かり
夜に似つかわしくないギラギラとした明かり
あぁここより静かで暗い場所に行きたい
俺にはここは眩しすぎる
そんな思いは今日も街の明かりに飲み込まれてゆく
今日も明日もここからは抜け出せない
偽りの仮面を付けて紛らわして
皆と同じように笑ってふざけて生きてゆく