虚書/Kyokaki

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【テーマ:街の明かり】

 今日は関わりしかないテーマ。このアプリはまったく気分屋のようだね。
 私は街がライトアップされているのも、日光で残り香のみで若干薄暗いのも好きだ。ライトアップされているときは人の面影を感じられるし、薄暗いときは逢魔が時や黄昏時…つまりこれから何か起こりそうでとても楽しい。
 黄昏時の由来については映画『君の名は。』で知っている人も多いだろう。誰そ彼時、「あなたは誰だ?」と問うような時間。それを黄昏時という。
 逢魔が時は魔物(現代の言葉で近いのは妖怪)と逢うような時間である。私がわくわくするのは主にこちらだな。
 私はこのアプリを初めて最初に書いた作品のように、神隠しや妖魔などだったり都市伝説だったりというホラーが好きだ。得体のしれない存在が大好きだ。だからこそ逢魔が時はなんだか楽しく思えるのだ。まあ、それこそ糠喜びと言う他ないが。
 ああそう、今日は用事で外に出たのだが、そのとき竹林の側に様々な色の短冊が飾られた笹があった。風が吹くとヒラヒラと色が舞うのがとても綺麗だった。中には世界平和と書かれたものもあってくすっと笑ってしまったが、最近はあまり馬鹿にできない願いなのが悲しいことだな。

 私は出不精で旅行も滅多に行かないため、都市から外れた場所というのはどのくらい暗いのか実際には分からない。テレビで街灯一つもないような田んぼの近くの道を歩いているのを見たことがあるが、出演者を照らすライトを消した途端何も見えなかったのがとても衝撃だったよ。
 そのような道で空を見ながら帰路につきたいものだが、そんなことをしたら田んぼに落ちてしまいそうだ。それに小さな蜘蛛に悲鳴を上げるほどで、虫もあまり得意ではないしな。それを認識すると、私は都会から離れられないのだな、と虚しく思う。

 街灯という一つを挙げても地域によって格差があるのはとても面白い。私が住むような都の方では街灯が途絶えることなどないが、畑や山の方では車のライトくらいなのか?詳しくは分からないが、それもまた神秘的で素敵だと思う。
 田舎だから都会に出たい、と思うのは否定しない。確かに都会は良い。でも、田舎には田舎の良いところだってあるのだ。君らの知る場にしかないものを見つけてみるのもきっと楽しいだろう、と私は確信しているよ。


『以下練習用SS』

 光、光、光。この街は日の光を避け、月の光を皮切りにぞろぞろと出てくる。まるで幽霊や妖怪みたいに。夜は我らの時間だ、と言うように。
「おねーさん、俺らのお店で飲まない?」
「すいません、私お酒飲めないので。」
 横から出てきた男の誘いを決まり文句で断ると、素直に引き下がってくれた。よかった、これで駄目だったら股を蹴るしかなかったから。
 キラキラと煌めいた衣装と少しくたびれたスーツが交わって、スチール缶がぶつかる音や、喧騒が混ざり合う。
 まさにカオス。その他に言い表せる言葉はないだろう。

 そんな通りを抜け、駅に着いた。そこから蛍光灯に照らされて暫しの間揺れていると、漸く最寄り駅に到着した。
 あの場所とは違い、月よりも日を好む人が殆どな街だ。その分夜は本物の妖怪が出そうな闇さだが。少なくとも話が通じるようで通じない人間より、全く通じない妖怪の方が気が楽だと思う。
「ん、ふわぁ…」
 あくびが出て空を見ると、こんな道でも該当がないわけではないことに気づいた。
「月だ。」
 月が魔除けになってくれれば、街灯も人除けの効果を持ってくれるのだろうか。あんな道を通らなければならなかった今日を思い出して考えた。

7/8/2023, 11:28:52 AM