『行かないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
手を伸ばした。ドットが欠けていくように、消えていくお母さんの後ろ姿に。行かないで。そう、ぼくは叫んだ。
「……夢……?」
目をこすりながら、ぼくはそうつぶやく。気付けば部屋は真っ暗で、目の前のホログラフの投影機だけが淡く光を放っている。
「まだかな……お母さん……」
さっきの夢がフラッシュバックして、泣きそうになる。
「ん……」
そこで、私は目が覚めた。
「夢かぁ……。それにしてはリアルだったね……」
それにしても、夢とは思えないリアルな夢、今はまだない技術。
「……まさかの予知夢かなぁ?」
軽く笑って私はベッドから降りる。さあ、今日もいい天気になる。
【行かないで】
もうね
それはもう仕方ないよ
出会ってしまったからには
行き着く先は
生き別れか死に別れ
それなら
出会いに感謝し
後者でなかった事を
相手に行く先がある事を
喜ぶしかないんじゃなかろうか
どこかでひょっこり
なんて事もあるかも知れない
もちろん極論だし
実際の所
そんな簡単には出来ないけれど
結果を変える事が出来ないのなら
捉え方を変える
少しくらい自分に寄せたって
誰も文句言わねぇよ
あの時
『行かないで』と言えたなら
未来は変わってたかもしれない
でも今まで出会えた人には
出会えなかったかもしれない
たった一言だけど運命を
変える一言だったかもしれない
“行かないで”
口を突いて出た言葉だった。私とせっかく話をしていたのに、少しの沈黙が続くと先生は椅子から立ち上がる。私は先生のことが、好きで、もっとお話がしたかった。優等生の偉い子のままでいたかったから、話すことは全部授業内容に関係することを選んでいた。けれど、口を突いて出た。
「“行かないで”、、戻らないでください。」
「?わかりました、何かございましたか?」
そういう柔らかな言葉遣いが、彼の言葉が大好き
「音読して欲しいです。この前やったところを…」
彼に授業で教えて頂いた私の教科書ページを見せると
「これはもう終わってしまったものでしょう?では、3年生が行う文章を読んで差し上げましょう。」
読んでくださるのが嬉しくて、私は次の言葉を待つ。
「すごい、僕の言葉を沢山拾ってくださっているんですね。メモが多い」
「…ぁ、ぇ、っ、そうですね、どれも勉強になる言葉ばかりで。」
なんとか勉強熱心な生徒ということでこれは丸く収まったが(隠しきれない陰キャ感は否めないが)一歩間違えていればただ彼への愛情が強すぎるおかしな生徒になるところだった。勉強を怠らず努力していると、たまにこういう危機回避ができる。なんでそんなに勉強できるの?と言われた時は毎回、こう思ってしまう私の下心を、いつか殺してしまいたい
お願いだから、どうか行かないで。そうあなたに言いたいけど、きっと無理だよね。あなたはこれから新しい道を走るんだから。僕はあなたに恋をしたまま、ここで立ち止まることしかできないからすごくつらいな。でも、もし戻りたくなったら、いつでも来てね。ここでずっと待ってるから。まぁ、そんな日は来ないかもしれないけど。
もっと話したい事、沢山あるの。
『 行かないで』
行かないで #79
冷たい風が肌を撫でる早朝。
身震いしながら外に出て空を見上げた。
空が高くて澄んでいた。
夏の終わりと秋の始まりを予感させる。
季節の匂いも変わっていって私の好きな夏の匂いもなくなって切なく思ってしまうよ。
夏よ、行かないでおくれよ。
秋と冬が近くて暖かさが恋しいのかも。
空が澄んでいるから月も綺麗に見えるかな。
行かないでと伝えたい
けれど声は出ない
体も動かない
だから見送ることにした
『行かないで』
頭がズキズキと痛む。体がだるくて動けない。
熱下がったかな、と体温計で体温をはかる。
ピピピ、と音がして液晶を見ると、38.4℃と表示されていた。
最悪だ、熱上がっちゃった。解熱剤飲まないと。
私は重い体を起こし、引き出しを漁る。
見つけた解熱剤を飲み込んでも、なかなか楽にならない。
はぁ、しんどい。
私は頭や喉の痛みを意識しないように、無理やり目を瞑る。
コンコンッ
ふと、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
こんなときに、と多少苛つきつつも、部屋のドアを開ける。
「いきなりごめんね、大丈夫?」
「さくなちゃん……、」
そこに立っていたのは、私の同級生であり恋人のさくなだった。
彼女の姿を見たら安心して、少し泣きそうになった。
「これ、薬とか、熱さまシートとか、色々入ってるから。あと、プリン。好きでしょ?ゼリーもあるよ」
彼女は手に持っているレジ袋を私に差し出しながら言う。
「ごめんね……ありがと」
私は泣きそうになりながら袋を受け取った。
本当に頼りになる、優しい彼女だ。
「それで、体調はどう?熱ある?」
彼女は私の額に手を当てる。
「結構熱いね」
驚いたようにそう言い、熱さまシートを貼ってくれた。
ひんやりして気持ちいい。
「それじゃ、またね。ご飯ちゃんと食べるんだよ?なんかあったら連絡して」
彼女はそう言って、部屋を出ていこうとする。
「行かないで……!」
私は思わず、彼女の服の裾を掴んでいた。
彼女が振り向く。
「どうしたの?寂しい?」
彼女はいたずらっぽく微笑んでそう問いかけた。
私はおずおずと頷く。
「もし迷惑じゃなかったら…」
おそるおそる彼女の顔を見ると、彼女は優しく微笑む。
「いいわよ。じゃあ、今日は泊まろうかな」
彼女は私の頭を優しく撫でてくれた。
風邪は辛いけど、たまにはこういう日もあっていいな、と思いながら、私は心地よい眠りに落ちていった。
お願い、どこにも行かないで。
ずっと隣にいてよ。勝手に居なくならないで。
二人でいたいよ。これからもずっと。
デートの約束もしたじゃんか。
ゴールデンウィーク帰ってくるよって言ってたじゃん。
なんで、亡くなって帰ってくるの。
ねえ、なんで。
答えてよ。教えてよ。
せめて、私を見てて。
行かないで
声に出せない
心の叫び
気が付いてしまう
思っていた以上の
君への想い
今、手を離したら
君が、君がいなくなってしまう気がして
ぐっと力を込めた。
いたい、いたいよ、って君が言うから
僕も、僕もいたいよ、いたいよ、
ずっといたいよ、とさらに力を込めた。
どこにも行かないで欲しい。
僕だけを見ていて欲しい。どうか、君の綺麗な瞳で
僕だけを、写していて欲しい。
ずっと一緒に居たいよ。
私は誰かの特別になりたかった。
誰かに特別にして欲しかった。
そのために友達全員と
平等にフレンドリーに接した。
八方美人すぎて
自分でも気持ち悪く感じた。
裏の顔がありそう、
何をしても怒らなくて逆に怖い、
そんなことを言われて
結局誰もいない部屋で
孤独にまみれていた。
誰も違う感じがしたり、
みんないい感じがしたり、
気持ちはいつも曖昧で
境界がわからない。
いつかに読んだ
小説のセリフを思い出した。
死にたい、愛されたい、死にたい。
確か、
夫が亡くなって、絶望して、
育児放棄した女性のセリフだったかな。
私には愛する人すらいないっていうのに。
好きだとわかる、
愛してるとわかることは
誰にでもできることじゃない。
私にはできなかった。
ぼやぼやっとしていて
何も変わらなさそうな感じがした。
虚無な夜を過ごす時もあれば、
泣き叫びながら
布団を被る夜を過ごす時もあった。
人に飢えているみたいで
吐き気がした。
自己嫌悪が激しかった。
行かないで。
どこかの誰かさん。
私を置いて行かないで。
連れてって。
どこまでもついて行けるの。
私、ここじゃないどこかへ行きたいの。
"Good Midnight!"
イベントも何も無い今日。
適当に漫画を買って
ラッピングして
深夜に適当な家の窓に投げ込んでいく。
漫画で人が幸せになれるかって言ったら
そんな事あるはずないけど、
きっといる。
この変なプレゼントを喜んでくれる人が。
朝方、
適当に散歩していると、
うええおぉうおあああ!!!
という声と
あ、これ好きいいい!!という叫び声が
私が漫画を投げ込んだ一軒家から
聞こえてきた。
ああ、
私、まだ大丈夫かも。
朝日が眩しくて
目を細めた。
《※フィクションです》
突然だが私の父は消防隊員。母はとある企業のOLだ。
私がふらふらと目を擦りながらリビングに行く頃には既に父の姿はなく、母が私のお弁当を作ってくれているのが当たり前の日常だった。
私がおはようと言えば、母がお弁当作っておいたから食べてねと言う。
私が今日は雨だねと言えば、母が傘を忘れないようにねと言う。
タオルを持っていくことにしよう。
それが日常。当たり前の光景。
先月の誕生日で、父が私に買ってくれた白を基調としたシンプルなデザインの傘をさして家を出た。
学校に着くと、何人かの生徒が制服が濡れたと嘆いているのが聞こえた。
私も靴下が濡れた。
仕方なく靴下を脱ぎ、鞄の何も入れていない小さいポケットにそれを突っ込む。
帰ったら鞄も洗わないといけなくなった。少し面倒。
雨の日の教室は、どこか不思議な感覚。孤独感に近い、何もかもが空っぽになったような感覚。
でもその感覚が心地よかったりもする。何故だろう。
学校が終わる頃には、先程まで降り注いでいた雨なんてまるで夢だったとでもいうような快晴に変わっており、あまりの眩しさに目を閉じる。
正門をくぐるタイミングで、カンカンカンと耳を劈くようなサイレン音を鳴らしながら消防車が数台、通り過ぎて行くのが見えた。
私は興味本位か、その消防車が走っていった方向へ流れるように足を進めた。
着く頃には野次馬ができており、撮影をしている人もいた。
野次馬を掻き分け先頭へ行くと、木造の古い一軒家が赤く燃えているのが見えた。
確か住んでいたのは、80代のおばあさんだった気がする。毎日庭の掃き掃除をしていて、何度か話したことがある。
幸せそうに笑いながら、家族の話を良くしていた。
私がおばあさんは大丈夫なんですかと聞けば、野次馬を制止していた消防隊員は救助したので無事ですよ。お知り合いですか?と聞いてきたので何度か話したことがありますと答えた。
どうやら朝から体調が悪かったらしく、何とか台所に立ってみたものの、火を消すのを忘れたまま寝てしまったのが事の発端らしい。
体調は心配だけど、無事なら良かった。
安堵していると、野次馬の中から母が出てきた。
母は焦ったように猫は?猫は?と何度も聞いてきた。
私が猫は見てないと答えると、母は無言で燃え盛る炎の中へ走り出した。
消防隊員が気づき、強く引き留めようとするも聞かず、母は業火の中に消えていった。
私は訳が分からず、止めることができなかった。
火が消し止められ、立派に建っていた一軒家は湿った木の板になっていた。
そこから発見されたのは、燃えきらなかったおばあさんの私物と、母と3匹の猫の骨だった。
それを聞いた数日後に、父は自責の念にかられた末に自殺した。
私は泣けなかった。母の葬式の時も、父の葬式の時も。
親戚中からそれを非難されたけれど、言い返す気にもならなかった。
私は同時に、大切な人を2人も亡くした。
父と最後に話したのはいつだっけ。
母と最後に話したのはいつだっけ。
どんな会話をした?
あの喧嘩、ちゃんと謝れないままだったな。
あの時母が助けようとした猫。1匹は子猫で生まれてすぐだと言っていた。思えば、こんな話をした事があった気がする。
昨日、夫婦猫を見つけたのよ。
夫婦猫?
そう。メス猫は妊娠しているみたいで、近所に住むおばあさんの家で飼ってるらしいわよ。
おばあさん、猫飼ってた?
最近になって飼い始めたんですって。1人は寂しいからって。
いいね。私も会いに行こうかな。
結局、会いに行けないままこの結果になってしまった。
という出来事があったのが、2ヶ月前だ。
私は今、施設で保護してもらいながら生活をしている。突然の環境変化に慣れてはいないけれど、生活はできているので問題は無い。
毎夜とある夢を見る。
猫を抱えながら走り去る母を、ただ立ち尽くして見ていることしかできない夢。
たった一言が言えない夢を。
あの人は出て行ってしまう。
「いかないで……っ!」
必死に手を伸ばすが、届くことはない。
「……はっ!?」
目覚まし時計は午前7時を指している。
「しまった、遅刻する!」
リビングの机に置いてあったスティックパンの袋を掴んで家を出た。
目尻に溜まった涙を雑に拭った。
窓の外を見つめて、ぼーっと考えごとをする。
ここ最近、何度も同じ夢を見ている。
「どうしたの? 隈できてるよ」
「ちょっと寝不足で……」
「夢ならたまに見るけど……。起きたら忘れてるからなあ」
「行かないで」とお願いするよりも、
「一緒に行ってもいい?」と言える人になりたい。
「いいよ。勝手に着いていくから」と言える域には
まだ達していないけど。
〈お題:行かないで〉
もやもやとした嫌な感じ。
なんだか、体が熱くて嫌な感じ。
スッキリとしない感じ。
行かないでと泣き喚いた。
シクシクと声を抑えるオトモダチ。
顔を下に向けて泣いている。
今世の別れ。或いは一生の思い出。
ずっとつづくとおもっていた世界の色が褪せてしまう。
私は泣いている。
でも、何に泣いているのかな。
モヤモヤとしたこの感情の正体が怖い。
私は何を悲しむのかな。
オトモダチが何処かに行ってしまう。
「…行かないでよぉ」
泣き疲れて掠れた声が嫌にピッタリだった。
あくせくする周りの人達は凄い“イイ人”。
・行かないで
お願い……行かないで
お願い……行かないで
お願い……行かないで
お願い……行かないで
お願い……行かないで
お願い……行かないで
おねがい……行かないで
おねがい…………いかない、デ
オネガィ………………イカナイデ
アハハハハハ……………………
そして私は心が壊れて、
人生というものを壊した
寝息を立ててる寝顔。
オムツでもこもこしてる後姿。
なんともいえない、もちもちのほっぺた。
私が見えないと、泣いて探してくれる声。
両手を広げて、だっことせがむ顔。
全部全部、なつかしくて。
過ぎた日々に、行かないで。と
思う事もあるけど。
少しづつ成長していく姿を見て、
これも悪くない。
あなたの未来が楽しみです。
『行かないで』
クリアケースに入れておいた心臓
アルコールなんかで踊る携帯電話
ありきたりに絡まった言葉の端々
欲しかった理解への複雑な避難経路
恍惚的に散った花びらたちの冒険譚
たしか間違っておいた先回りの確信
地獄行き
そっちじゃないよ。