NoName

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あの人は出て行ってしまう。
「いかないで……っ!」
必死に手を伸ばすが、届くことはない。
「……はっ!?」
目覚まし時計は午前7時を指している。
「しまった、遅刻する!」
リビングの机に置いてあったスティックパンの袋を掴んで家を出た。
目尻に溜まった涙を雑に拭った。

窓の外を見つめて、ぼーっと考えごとをする。
ここ最近、何度も同じ夢を見ている。

「どうしたの? 隈できてるよ」
「ちょっと寝不足で……」
「夢ならたまに見るけど……。起きたら忘れてるからなあ」

10/24/2024, 12:34:27 PM