『行かないで』
頭がズキズキと痛む。体がだるくて動けない。
熱下がったかな、と体温計で体温をはかる。
ピピピ、と音がして液晶を見ると、38.4℃と表示されていた。
最悪だ、熱上がっちゃった。解熱剤飲まないと。
私は重い体を起こし、引き出しを漁る。
見つけた解熱剤を飲み込んでも、なかなか楽にならない。
はぁ、しんどい。
私は頭や喉の痛みを意識しないように、無理やり目を瞑る。
コンコンッ
ふと、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
こんなときに、と多少苛つきつつも、部屋のドアを開ける。
「いきなりごめんね、大丈夫?」
「さくなちゃん……、」
そこに立っていたのは、私の同級生であり恋人のさくなだった。
彼女の姿を見たら安心して、少し泣きそうになった。
「これ、薬とか、熱さまシートとか、色々入ってるから。あと、プリン。好きでしょ?ゼリーもあるよ」
彼女は手に持っているレジ袋を私に差し出しながら言う。
「ごめんね……ありがと」
私は泣きそうになりながら袋を受け取った。
本当に頼りになる、優しい彼女だ。
「それで、体調はどう?熱ある?」
彼女は私の額に手を当てる。
「結構熱いね」
驚いたようにそう言い、熱さまシートを貼ってくれた。
ひんやりして気持ちいい。
「それじゃ、またね。ご飯ちゃんと食べるんだよ?なんかあったら連絡して」
彼女はそう言って、部屋を出ていこうとする。
「行かないで……!」
私は思わず、彼女の服の裾を掴んでいた。
彼女が振り向く。
「どうしたの?寂しい?」
彼女はいたずらっぽく微笑んでそう問いかけた。
私はおずおずと頷く。
「もし迷惑じゃなかったら…」
おそるおそる彼女の顔を見ると、彼女は優しく微笑む。
「いいわよ。じゃあ、今日は泊まろうかな」
彼女は私の頭を優しく撫でてくれた。
風邪は辛いけど、たまにはこういう日もあっていいな、と思いながら、私は心地よい眠りに落ちていった。
10/24/2024, 12:54:50 PM