『行かないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
アンドロイドと占い師
人は占い師に道筋を求め、行き先を尋ねる。
うつ向いて占いにやってきた客は、出ていく時にはほっとしたような…負担が和らいだ表情をしている。
人間はなぜ占いにすがるのか。機械である自分には、根本的な所が分からない。
「そうですね…」
彼女は嫌な顔一つせず、言葉を選びながら答えてくれた。
「なぜ自分は生きているのか。どうやって生きていけばいいか。要約するとだいたいこんな感じになりますね」
「重いな…」
「重いですね」
ぞっとして感想を述べると、彼女は拍子抜けするぐらい柔かな笑みを浮かべていた。
んなもん、自分で決めろよと思うのだが。
「宗教であったり、国であったり…生きるのに精一杯な時もあれば、悲しみや空しさに潰される時も多い。人は、すがるものが欲しいんです」
「人間は大変だな。オレにはわからん」
「そうですね。だから何のために生まれて、何のために生きるのかはっきりとしている貴方は、たまにちょっと…羨ましいですね」
「オレがか」
「はい」
「めでたいなそりゃ」
「そうかもしれません」
不思議な不思議な感覚だった。
いつか追い付くから。どうか置いていかないでそばにいて。祈ったのはどちらだったのだろう。
穏やかな午後がもう少し続きますように。
行かないで そうわざとらしく言って彼を止める
別れ際にいつもしているお決まりのくだり
重いふりをして彼を笑わせる
ふりのふりだって彼に気づかせないために私もすぐに笑う
自分で自分に腹話術 本当の気持ちを誰かに言わせる
飽きられないように声色と動きを毎回変えて言ってきた
だけど彼の笑った後の表情が不穏に感じる
頑張ってきたけどついに飽きられたのかもしれない
それでもどうしたらいいかわらなくて私はまた誰かになる
行かないで そうわざとらしく言われて止められる
別れ際にいつもやられるお決まりのくだり
重いふりをして僕を笑わせる
本当にしているのは重くない恋人のふりだとわかってる
彼女のすぐに笑った後の表情が不穏に感じてしまうから
その表情に触れられない自分の情けなさを隠すために笑う
だけど自分の笑った後の表情は隠しきれてないんだと思う
頑張ってみたけれどついにそれもバレてるのかもしれない
それでもどうしたらいいかわからなくて僕はまた笑う
-行かないで-
「最初、こちらの世界に来た時は戸惑ったっす」
寂しそうに笑ったアモンは、私の問いに答えず話し始めた。
何を話せばいいのか、言葉が出てこなくてただ黙ってアモンの言葉に耳を傾ける。
「こっちの世界は東の国の文化に似ていて、俺のいた世界とは違って文化も発展していてムカつくくらい平和な世の中でだと思ってたけど…守ってくれる人間がいるから、平和だったんすよね」
『…アモン…』
「テレビってやつで活躍を見た時に敵を捕まえて、皆から賞賛されている人間が、私生活は家事も出来なくて酷い有り様なんて、笑っちゃうっすよほんと…俺と同じ部屋に住む人より世話が焼けるっす」
アモンはゆっくりと私に近づき、目の前に立つと私の肩におでこを付ける。段々と声が震え始めるのを聞くとたまらず抱きしめた。
『アモン…私、アモンがいないとダメだよ…だから…』
行かないで、という前にアモンの指が私の唇に触れる。
涙を流しながら首を振ったアモンに、本当にこれは夢なのかと錯覚してしまった
どこにも行かないで、置いていかないでって思ってるよ。でも私たちは恋人同士じゃないからそんなこと言えない。側から見ればどう見ても恋人同士なのに、
「好き」
の言葉だけが重すぎる。伝えたら全部壊れちゃう気がする。そうやって次は言う、次は伝えるって思ってたけど結局言えなかった。伝えなかったらずっと一緒に居れるんじゃないかなって思ってた。バカだよね。
伝えなくても壊れちゃう関係なら、「好き」の2文字ぐらい投げつけてやればよかった。
ずっとずっと呼んでいた
ただその手を掴んでいたくて
いつの間にか隣が当たり前になっていた
今はそれさえ手放し難い
せめてほんの少しでもいい
どうか離れる事を躊躇ってくれないだろうか
[行かないで]
行かないで
置いて行かないで
一人にしないで
孤独にはもう耐えられない
あなたに会えたから
愛情を知った
優しさを知った
温もりを知った
行かないで
会いに行く
わたしの寿命が終わるときに
会いに行く
早朝に帰ってきたママはコンビニの袋を置いてすぐに家を出てしまった。いつもいつもいかないでと抱きついて呼び止めても、握った手を離されどこかへ行ってしまう。ネグレクトはまっすぐな子供の心を静かに裏切っている。それは最も涙ぐましい。だいすきな親だからこどもはままを嫌いになれない。まだ何も知らないから、素直に受け止める。その小さな世界で孤独と愛が並行してる。
そんな心がいっぱいあると思う
ひとの決意を翻させることは難しい。
正確には、烏滸がましい。
ひとは、決めきれていないから悩むし、相談する。
思案しているうちはいくらでも取り返しがつく。
ただ、ひと度決めてしまったものは、鋼の意志で取り組むべきであるし、それほどの意志を持たない状態は、まだ悩んでいるとも言える。
そこまでの決意を覆すには、意志を砕かねばならない。
そこまでの意志は、悩んだ時間と、そのひとの生来の熱意から成る。
つまり、そのひとのかけた時間と、そのひととなりを、
一度否定しなければならない。
否定は辛い。いつの日がその刃は自らに向く。
そんな言葉で、相手を傷付けねばならない。
だから、烏滸がましいと思うのだ。
そんなわけで、言うのは辛いし、いつの日か私の身にも
降りかかることは解っているが。
お願いだから、
君の命をそんなに容易く棄てないでくれないか。
お題「行かないで」
行かないで
お願いだから、もう何処へも行かないで…もう私の元から離れないで…だって、せっかく手の先に届いた私だけの一番星兼太陽の様な存在の貴方だから…でも、貴方が私の元から離れられないのも、私が貴方から離れられないのも、離れないのも、お互いがそれを知っている…だって、私達は、溺愛し過ぎてるし、何時だって、引き寄せられてるから…私達が離れたら、周りの人達が皆驚く程、私達は、溺愛し過ぎてるし、引き寄せられてる関係だから…この先も誰も、私達の愛を壊す事なんて出来ない…だって、私達の愛は、永遠だから。
あと4ヶ月くらいで旅立ち・巣立ちのとき。
気づけば、もうそんなとこまで来ていた。
季節は、春から夏、夏から秋へと移り変わって、今は秋から冬へと変わろうとしている。
思えば、あなたと初めて会ったのは去年の夏休み。
必死に自分の思いを、歌を届けようとする姿に惹かれて、気づけば今私はあなたの目の前にいる。
自分で選んで来たのに、毎回目の前にいるのが奇跡に思えてしまう。あなたといた日々はとても楽しくて、どのシーンも全て私にとって最高の思い出。今ではこの道を選んで、あなたという人に会う道を選んで良かったと、心の底から過去の自分に感謝している。
しかし、もうすぐあなたは旅立ってしまう。
自分の夢へに向けて。
心なしか、もうあなたの背中は少し離れたとこに見える気がする。きっと夢をずっと追いかけているからだよね。
私もある意味旅立ちをする。あなたが旅立つ前に。
この国を飛び出して、この狭いところを飛び出して、もっともっと広いとこに行くんだ。
「広い世界に旅立つ」という意味で言うなら同じ旅立つを私もあなたもするね。
ただ「広い世界」は私とあなたでは、旅立ちする場所と意味が違うけど。
まだあなたはそこに、私が、私たちがいる場所に残っていてほしい。出来ることなら、私が今いる場所を旅立つまで。
日に日に、「まだ行かないで」、「まだこのままで」、「時間が止まればいいのに」という思いが強くなる。その度に私は泣きそうになる。
これはある意味、決まった運命だ。この世界の、この国のルールによって、決まっていた運命。
それでも私は願い続けている。そんな願いはきっと叶わないのに。
わかってる。わかってる!
頭では理解してる。心は理解を拒む。だから、涙が溢れて止まらない。
今の私に出来ることは、、、
あなたがいる時間を大切にすること。あなたといれる時間を出来るだけ長く保つこと。
これぽっちしか出来ないなんて、なんて哀しいんだろ。なんて虚しいんだろ。
でもこれしか出来ないんだから。
今を、あなたといれる時間を精一杯楽しもう。噛み締めようよ。
行かないで。行かないで。行かないで……っ!
心の中の私はいつまでもそう言い続ける。叫び続ける。
でも、あなたの目の前にいる私は必死に平然を装う。笑顔を作る。とびっきり笑ってみる。あなたを泣かせたくないから。私のせいであなたが涙を流すところなんてみたくないから。涙を浮かべるあなたを旅立つ前にみたくないから。
今、あなたの前にいる私はちゃんと笑えてますか?
前に書いたと思うのだけど
君の色のグループがあって
そのグループの中でも
君と同じ色の人はいない
君だけの色
君とは違う色のグループの人と
今までは一緒に居られたけれど
今では居心地が悪いか
自然と遠ざかったりするんじゃないかな
君に限らず
地球上の全ての人がそうなんだ
その関係を続けるか
自分の心の声を聴いて
丁寧に自分を表現して
少しずつ距離をとっていくか
手放して出来たスペースに
君の色のグループの人がやってくる
何を残して
何を手放すか
それが大切な時なんだ
行かないで #9
お約束をして
そのお約束の日がだんだんと近づくにつれ
ドキドキしてくる。
嬉しいとかワクワクする
とかでなく、
不安で…
自分で決めて、申し込んで、
未来が、怖くてドキドキしてしまう。
過ぎ去ってしまえば行ってよかったって、なる。
行動して良かったって。
だから
恐いけど
不安だけど
行かないで後悔したくはない
だから行こう。
側に
「お前にしては、珍しいな。風邪をひいて寝込むなど。前に外套をくれてやったろう?あれはどうした?」
「着たよ……でも、まさか川に落ちるとは思わないでしょ……温かくなるどころか、一瞬にして冷たくなっちゃったよ……」
私は、風邪をひいた。理由は任務の帰りにうっかり川に落ちたから。さらに運の悪いことにその日に限ってヴァシリーから貰った外套を着ていた。一緒に濡れてしまったそれは部屋に干されている。
ヴァシリーは干された外套を一瞥した後、ため息を吐いて私の方へ振り返る。
「………しばらくは寝ていろ。任務の書類も、こちらで預かる」
「え、何で……」
「真面目なお前のことだ。寝ていれば良いのに、書類などがあれば目を通したりするだろう?」
「………」
「これは預かるぞ」
ヴァシリーはサイドチェストに置いていた書類を取ると、書類を持っていない方の手で私の頭を撫でる。本格的に熱が上がってきたのか、彼の手はいつもよりも冷たく感じた。
(……冷たくて、大きな手。安心するな……あ、お父さんの手に似ているかも……)
そう思った瞬間にじわりと目の前が滲む。見えなくなった視界の向こうでヴァシリーが驚いたように息を呑んだ。
「な……」
「……行かないで、何処にも。側にいて」
思わず口からそんな言葉が吐いて出た。頭を撫でるヴァシリーの手を碌に力の入らない右手で握る。
「置いて行かないで。良い子に、するから」
どうしようもなく寂しくなった。ぼうっとする頭の片隅で、何処か冷静な思考が「死んだ両親のことを思い出したから」と結論に至っているのに、私の口から溢れるのは小さな嗚咽と幼子のような願いだった。
「………」
しかし、ヴァシリーは何も言わない。私の頭を撫でるその手がとても優しくて、ボロボロと涙があふれる。やがてヴァシリーは毛布ごと私を膝の上で抱えた。
これまでに彼に抱えられることはあったけど、その中でも特に強い力で抱きしめられる。
「……今更、捨てるはずも無かろう。お前は俺の教え子だ。お前の気持ちを蔑ろに出来るものか」
「ほんとう?」
視線をあげれば、戸惑いを浮かべた青い瞳と合う。
「俺が今まで約束を破ったことは?」
「無い。……信じるよ、ヴァシリー」
「ああ。お前が起きるまでこうしてやる。だから、一度寝ろ」
言われるがまま目を閉じる。思ったよりも早く睡魔はやって来て、私の意識はゆっくりと溶けていった。
(……)
こいつの泣き顔を見て、少し驚いた。こんなことで泣くような娘で無いと知っていたからだ。
「……親、か」
こいつの言葉はまるで、捨てられる前の幼子のようだった。いつもは表情一つ変えずに人命を奪うようなこの娘は、実のところずっと家族の温もりを求めていたのかもしれん。
いつもなら捨て置くはずの考えだ。だが、いつになく俺は物思いに耽っていた。
「くだらん」
簡単なこと。俺がその居場所になれば良い。こいつが求めた家族の温もりを、俺が、与えてやれば良いだけのこと。
「ミル」
この娘の顔を見ていると落ち着くような、むず痒いような気分になる。この気持ちが何なのかは分からんが。
(……悪くはない)
起きたら、存分に世話をしてやることにした。この娘が望む全てを俺が与えてやる。
そうすれば、こいつも俺に必要されていると嫌でも分かるだろうからな。
いかないで
僕は今彼女を見ています。
彼女は僕の婚約者でした。
将来は確実に僕と結婚すると言うぐらい、僕たちは愛し合っていました。
そんな彼女は今涙を流している。
僕は、そんな彼女の頭すら撫でられない。
むしろ触れられないと、言った方が正しい。
-数年前-
「ねぇ、将来は絶対__君と結婚するんだ。」
彼女は僕に言った。
僕は彼女が好きな、青紫色の桔梗の花束を渡した。
彼女は嬉しそうに花束を受け取った。
「嬉しい....。絶対大切にする。」
彼女はやっぱり、青紫色の桔梗が似合う。
「僕も将来はやっぱり貴方と結婚したいです。」
《本当に....
幸せな時間は長く続かないものなんですね》
-数年後-
僕は現代の医療では難しいと言われている病気になってしまいました。
しかもその病気は何も感じので、かなり進行していたみたいです。
僕は雷に打たれたような気持ちになりました。
まず彼女にどう伝えようか
家族にどう言えばいいのか
義両親にも
そのような思考がグルグルと頭の中で渦を巻いていました。
僕は彼女、家族、義両親に、主治医に言われた事を正直に言いました。
彼女は泣き崩れ、家族は絶望した顔をし、義両親は顔を真っ赤に染めていました。
お義父さんは僕の顔に一発平手打ちをしました。
僕と彼女と家族は何が起きたか一瞬分かりませんでした。お義父さんは僕に言いました。
「お前はそんな奴だったのか!自分の体の異常に気づかんとは!娘も大切だが、お前も大切な息子なんだ!」
お義父さんのその一言で涙が出ました。
こんな僕でも、出来損ないの僕でも認めてくれる人がいる事が嬉しかったです。
その後は正直覚えていません。
覚えている事は、毎日彼女が来てくれたり、家族・義両親が来てくれました。
ですが、僕の病気の進行が早いのか、僕は日に日に痩せていきました。
他にも髪が抜けたり、血を吐いたり等がありました。
僕は最後の日彼女と少し話をしました。
「ごめんなさい....。こんな人で....。君は僕の事を忘れて、他の人と幸せな人生を送ってほしい....。」
彼女は嫌だ!なんて言っていました。
彼女は暫く黙っていたが、消え入るような声で言った。「....来世では絶対....一緒がいい....。」
僕は嬉しさに涙が出た。「勿論....です....。」
僕と彼女は指切りをした後に、僕は息を引き取りました。
僕は意識が遠のく中でこんな声が聞こえたような気がしました。
「私を置いていかないで」
青紫色の桔梗の花言葉
《永遠の愛》・《変わらぬ愛》
「お願い……!
私を置いていかないでッ!」
叫ぶ、
喉が掠れて、顔は液体でぐちゃぐちゃだ、
うちの夫は仕事で忙しい人だ、
生憎子供にも恵まれず、
寂しかったんだ、
友達は毎日夫や子供とお出かけへ行ったり、
毎日とても楽しそうだ。
誰も私にかまってくれない。
酷いよ、酷いじゃない。
「なんで周りばっかり幸せになって
私ばっかり不幸にならないといけないのよッ!!」
夫は大金を持って、
私の知らない場所へ逃げていった。
もう二度と、元夫には会えない。
愛しの彼も、浮気がバレてから
連絡先も変えてどこかへ逃げた。
私の手元に残ったのは膨大な借金。
私はただ、誰かに愛して欲しかっただけなのに…。
お願いします……。
もう誰も私の元から……
「離れて行かないで。」
あの時の私は幼すぎて、あなたが家を出て行った理由なんて理解していなかった。「なんでいないんだろう」ってずっと思ってた。ただ、あなたがいない理由はなんとなく聞いちゃいけない気はしてた。なんとも思ってないように振る舞ったけど、ほんとは寂しかったんだよ。
大人に近づくにつれて、あなたが家にいない理由が理解できるようになってきた。今でもどんな事情があったのかは怖くて聞けていないけど。
あの時「行かないで」って言ったところであなたの選択は変わらなかっただろうけど、私の成長する姿をそばで見守ってほしかった。
#行かないで
光を背負うな
上に立つな
何者でもないあんたに会いたい
行かないで
夕飯は何にしようかなとスマホを触りながら考える。明日は土曜日だ。一日中ダラダラしたい。
「よし。カレーにしよう。」
誰もいない部屋で、まるで自分に言い聞かせるように呟く。そうしないとなかなか動けない。材料があることを確認し、ジャガイモと玉ねぎの皮を剥き始める。
無心で準備をしていると、頭の片隅でずいぶん前に付き合っていた男性のことを思い出した。あの人はカレーが大好きだった。
「野菜は、大きめに切ると美味いんだ。特に人参は大きく、目立つように切ると見栄えがする。」
自分のカレーに対するこだわりを得意気に話していた。
私はあの自信満々で、少し子どもっぽい笑顔のあの人が大好きだった。どうして別れることになったのだろうか。そんな事を考えながらルーを入れて良い香りがしてきた鍋をかき混ぜる。
「いただきます」
炊きたてのご飯にできたてのカレーは相性抜群だ。見た目もなんとも食欲をそそる。
そこでふと思い出す。私の作るカレーには人参は入っていない。野菜は玉ねぎとジャガイモだけ。
そうだった。人参は嫌いだとあの人には言えなかったのだ。そんな簡単なことも伝えられなかった。
「そばにいて欲しい。行かないで。」
そんな難しすぎる本音、言えるはずがなかった。
“行かないで”
遠くなる 袖引く為の腕下がり 鉛のような手 胴体吊るし
(行かないで)
ねぇ、奏くん、待って...!
「いかないで!!!」
奏はフェンスの外にいた。
「じゃあね。 好きだったよ。 バイバイ。」
奏は飛び降りた。
その瞬間
耳を塞ぎたくなるほど大きな破裂音が聞こえた。
「奏、、奏、、」
碧はその場で泣き崩れた。
好きだったなら、死ぬ前に言って欲しかったな……。
もう叶わない夢。
奏が伝えたかったこと、
苦しんでいたこと、
辛いって思っていたこと、
今じゃなくて、、
昨日、いや、今日の朝でもいい。
もう少しでも早く、
気付いてあげれば良かったな...。
奏、僕もそっちに行っていいかな……
そう考えているうちに
遠くから救急車の音がした。
そして、僕は警察の人に見つかった。
そして、屋上から降ろされ、
警察署に連れていかれた。