『胸の鼓動』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
老人介護の仕事に就いてから、偶に人の死を見る。
最近目にした方の話をしようと思う。1年ほどの入所であったが、何度病気になって入院しようと、最後にはカラッと笑いながら帰ってくるような、茶目っ気のあるお婆ちゃんだった。
初夏。
少しずつ気力が無くなっていくその人を見て、これが死か、と悟っていくのだ。水も何も飲まなくなって、気力と一緒に体重も落ちる。日に日に軽くなっていく人と一緒に、家族も、職員も、気持ちの整理をつけるのだ。
死亡確認のときは、鼓動を確認する。健常者よりも遅く、時間を止めるように脈打つ鼓動は、トク、トクと動いている。時間とともにゆっくり、ゆっくり静かになって、終いには動きを止めてしまう。
死に対面したとき、人という独立した一生命から、フッと背景になってしまったような、そういった変化を感じた。正に魂が抜ける、というような。安らかな顔をしたその人は、存在を周りと同化させていく。静まりかえった部屋の中に、そこにいるのが当たり前だというように。そこにいないとダメだ、というように。
鼓動は生命を司る。
鼓動は自分を、自分たらしめる根源のラインである。
初対面の人に挨拶する時とか、何かを発表する時とか、そんな時に感じる自分の心臓の音が苦手だ。
ドクドクドクドク。
私の緊張や早く終わりたいという気持ちを無視して、その部分だけ違う生き物みたいに勝手に暴走する。
その音のあまりの速さに、スピーチの内容や言いたい事が頭の中からスポッと落っこちるみたいに消えてしまう。
「それは当たり前の現象だから大丈夫だよ」
それはそうなのかも知れないけれど。
でもこの、ドクドク鳴る音が怖くて、怖くて――。
治まってくれ、って思っていたら·····。
◆◆◆
「死んじゃったんだ?」
「そういうこと」
「考え過ぎは良くないって事なのかな」
「うーん、死んじゃった本人が分かってないからなぁ。どうなんだろね?」
アハハと笑う彼女は、幽霊だとは思えないくらいあっけらかんとしていて。
でも、背後の壁紙が透けて見える体の、心臓の部分だけが真っ赤に見えて·····。
「それでも会いに来てくれたんだ」
「·····まぁね」
いつものように笑うその顔に、私はそっと手を伸ばす。
「――あ」
あぁ、すり抜けちゃった。
·····やっぱり幽霊なんだなぁ。
END
「胸の鼓動」
色褪せる前の
歪なリンゴをかじった
私自身が
歪な
花嫁でしたね。
抑える。息を並べて、はぁハァ嗚呼止まない、こつん、コンコンうるさいなぁ
。胸の鼓動。
胸の鼓動が治まらない。貴方の事を考えるたび頭がふわふわするの。これはきっと恋をしてるから。どうか私の叶わない恋を救ってください……
胸がいつもより大きな音を立てて脈を打っていた。なぜかなんで問われれば、それはもう一目瞭然で。権力者が、僕にもたれかかって眠っていたからである。
出会った当初であればこんなことは、絶対にありえなかっただろう。僕と彼女は敵対していて、そもそもそんなに距離感が近くなくて、そもそも僕は彼女に対して、胸の鼓動が早くなったりすることもなかったであろう。
でも、今は彼女のことが好きだと気づいてしまったから、胸の鼓動はこんなに早くなってしまった。僕にもたれかかって安心しきった寝顔を見せている彼女に敵対心ではなく、恋愛の感情を抱いてしまっている。
だがそんな自分を恥じたり、改めようという気はしない。むしろ、彼女に惚れてしまったからにはどうやって彼女を僕に惚れさせるか、そういう思考回路の方が回るものであった、一人でいる時になれば。
だけどいざ、彼女とコミュニケーションを取ろうとしたり、今みたいに接近したりすると、突然言葉がスラスラと出てこなくなり、一人でシミュレーションしていたはずのやり取りを上手く自分で引き出せなかったりするのだ。
まぁでもそれこそが、恋愛だろう。思った通りにはうまくいかないということが少し楽しく感じられて、でもそう思えるのも一人でいる時だけで、そんな曖昧な気持ちを感じながら、今はただ彼女が隣で安心しきっているのを見つめることしかできなかった。
胸の鼓動
心臓が、どっと跳ねた。ああ、運命なんだ、。その言葉が脳裏を過ぎる。私の目の前には、ガーベラがプリントされたスカートが、ガラスの向こうですんと佇んでいる。奪われた目はいつの間にか離すことができない。時が止まったみたいだった。
私は昔から、可愛いものが好きだ。可愛い雑貨、洋服、アクセサリー。でもいつからだろう?大人になっていくにつれて、忙しくなって、そういうものを手にしてなかったな、、。そんな思いも込み上げてきて、私はそっと手を伸ばす。ちょっと高めなそのお値段に少しガッカリするけど、今度、お金を貯めて、これを着たい。
私はそっと、そんな覚悟を決めて、カバンを持ち直す。さっきまでは憂鬱とした、何も変わらない日だったはずなのに、今はとても清々しくて、気分がいい。
次の休みはあれを着てどこにいこうかな?今ならどこへだって行ける気がする。❁⃘*.゚
君の胸にグランドを突き刺して
コードは1番短いヤツで
大音量で自分にぶつける
君を大きく感じていたい
1番近くで聞くんだ
ワイヤレスはダサい
離れて聞くなんて軽い
直に伝わる物理的な方が
人を動かすし普通に泣ける
高鳴る胸の鼓動
煩い俺の薄い自論
「雨宿りの時間は終わらない」
それは、ふとした瞬間だった。
今までただの幼馴染だと思っていた君が、きらきらと輝いて見え始めたのだ。そして、自分の胸もドキドキしていることに気付いた。
降り続く雨。
止む気配がない。
雨宿りの時間は終わらない。
激しくなる雨音を追いかけるように、体内を駆け巡る。
あぁこれは、アレだ。
認めたくない。
なぜ気付いてしまったのだろう。
君は無自覚に距離が近い。
今も隣に座っている。ごく自然な流れで。
付き合っていない男女の距離ではない。
だが、今さら離れようとも思わない。
そういえば、君は雷が苦手だったな。
近づいてくる雷。
びくり。震える肩を思わず抱き寄せた。
こんなにぴったりとくっついてしまえば、いくらなんでも気付かれてしまうだろう。
だが、これで君が少しでも安心してくれるなら……
────胸の鼓動
同じクラスに「お気に入り」がいる。
友達でも推しでも好きな人でもなく、ただどこまでも
大好きなあの子。「お気に入り」をはみ出す偏愛だ。
興味、関心、好奇心。興味、興味、興味!!!
ねぇ、この気持ちはなんだろうね?
わかんない、でも楽しい。そうだよ。あの子のことを
考えているときの私は、ちょっぴり狂ってる。
恋愛対象にするのはもったいない、唯一無二なのです。
あれはもう3ヵ月前のこと。
あの子が私に「ありがとう」って言いました。慣れない
様子で。それでも私の目を見てハッキリ。
貸したものを返しに来ただけ。でもビックリしちゃって、それからとっても嬉しかった。
だって、話しかけるのはいつも私からだったから。
・・・興味に何かが混じった。
それはほんの数日前のこと。
あの子が初めて名前で呼んでくれました。何の気なしに下の名前をさん付けで。苗字さえ口にしなかったから、その音と彼の低い声が信じられなかった。だけどさ、
息が止まって、危うく全部持っていかれそうになっても
勘違いで片付けるのは無理だったよ。
だって私はとっても耳がいい。
なんだかふわふわと嬉しくなった。
それだけの話。
#37 胸の鼓動
お題「胸の鼓動」(雑記・途中投稿)
……心筋梗塞?(ヒドイ)
誰だっけ現代アートで「何百人もの心臓の音を録音した」って作品があったのを思い出した。割と田舎だった記憶がある、どこかの美術館? に行くと心音が録音できて、それが作品の一部になるんだったかな。
割と思いついたもの勝ちみたいなところがあるよね現代アート。好きだけど。
転職してから全然美術館に行けてなくて悲しい。
安彦良和は諦めてもロボット展は行きたかったなぁ。京都で最後ですってよ。
続きはまた今度。
胸の鼓動。
それは恋かもしれない。
それは緊張かもしれない。
それは生きている証かもしれない。
それは死んだら無くなるものなのかもしれない。
胸の鼓動は生があるからこそ分かるもの。
たまには、胸の鼓動を聞いてみるものいいかもね
70bpmで拍動してるあなたの心臓
測定された数字でしか、
私はあなたの鼓動を知らない
69、67、…。
少しの変化を恐ろしく感じて、
ずっとモニターを見つめている
いつか、元気になったら、
あなたの心臓の鼓動を
直に感じてみたい。
だから、早く目を覚ましてね。
言われるはずのない台詞に
思い巡らし夢を見る
届かぬ思いと高まる胸の鼓動
胸の鼓動
自分で自由自在に変えれそうで変えれない
変えれたらどれだけ楽だろうか
助手も帰った夜の研究室。
検査結果の入力をしていると、一通のメールが届いた。
送り主は、本社の総務部からだ。
件名には「研究所の今後について」と書いてある。
その端的な件名を見た瞬間、僕の左胸は一瞬停止し、次いでバクバクと嫌な音を立て始めた。
体の芯は熱いのに、指先は凍えるように冷たくなっていく。
心臓の音がうるさい。
その一方で頭は、淡々と状況判断していく。
この研究所は、古い施設だ。
耐震性やら免震に不安がないと言ったら嘘になるくらいボロい。
来るべき時がとうとう来てしまった。
そういうことなのだろう。
解体の二文字が脳内で踊っている。
人事部からのメールはまだ届いていないが、この後内示も届くだろう。
好きな事と思い邁進してきたが、上というのは数字を見る。赤字は出ていないが、不要と判断されれば切り捨てられるのが定めだ。
彼女ともこれで…。
そう思った瞬間、ズキリと胸が痛んだ。
彼女との思い出が走馬灯のように浮かんでくる。
3時の休憩、楽しかったな。
休憩があんなにも楽しいだなんて、知らなかったんだ。
いつも怒られる事が多かったけれど、内心嬉しかったんだよ。君の優しさに触れているようで。
あぁ、流れ星を見た時に約束したお給料アップ。叶えてあげられなかったな。
楽しかった思い出と、果たせなかった約束に胸がどんどん苦しくなってくる。
ズルい心が、メールを開かないという選択肢もあるぞと耳打ちしてきたが──それは一時の逃げだ。
事実を知るのが、少し遅くなるだけに過ぎない。
一度決まったことからは、逃げられない。
研究所の長として、覚悟を決めなくては。
僕は、震える手でマウスを操作し、未読の件名にカーソルを合わせる。
カチリと鳴るマウスの音が、嫌に響いた。
クリックと同時にメールの本文が開かれると、そこには──研究所老朽化による解体の文字が…無かった。
代わりに、新しい検査機導入の知らせが入っている。
以前個人的に培地の検査をお願いしていたものが、新商品の開発に役立つと判断されたらしい。
新しい検査機の導入日と時刻の下には、古い検査機の回収と検査調整の要請が書いてある。
その後ろには、会社の今後の展望と研究所に求められることも書いてあった。
そこも隈なく読んだが、解体や異動の文字は見受けられない。
詰めていた息を大きく吐き出す。
それと同時に、胸に安堵が広がっていった。
まだ僕にやれることはあるらしい。
今できることは、検査の日程調整を考えることだ。
僕は早速取り掛かることにした。
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胸の鼓動
ラボ組──博士の場合
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最近、「勿体ない」という言葉と出会う回数が多い。
いつものように受け取るのを拒否していたが、それも難しいくらい目に付いている。
勿体ない。
意味がわからないくらいに、繰り返し繰り返し出会う言葉。
けれど、届くことには何か意味があるのだろう。
向き合うしかない。
胸に手を当てると、心臓は静かな音を立てている。
その音に耳を澄ましていると、脳裏に浮かび上がってきたのは可能性の光景だ。
今とは異なる環境の世界。
光って見えるその光景に心惹かれる自分がいるのは、確かだ。
手を伸ばし、求めても良いのだろうか。
本当にその価値が自分にあるのだろうか。
求めた瞬間、手を振り払われたらと思うと怖い。
?…脳裏にオセロの駒が出てきた。
白黒表裏一体の駒。
価値がないの反対は、価値がある。
勿体ないの反対は、勿体ある。
なるほど。
ゲームのようにひっくり返せば良かったのか。
これなら気弱な自分でも出来る。
そうと決まれば、勿体ないをひっくり返して、光って見える光景に手を伸ばしてみよう。
振り払われたら、ひっくり返れば良いや。
胸の鼓動
もう目が離せない。
全速力で、わたしの片恋は駆け出した。
鳴り響くこの胸の鼓動を、
いつかあなたにだけ届けたい。
お題:胸の鼓動
あなたのことを考えるとドキドキするの。
あなたに会いたいな。
君に触れる
やめてくれ
僕はぐちゃぐちゃな頭で必死に
ああ
だめだ
冷たい君の鼓動はひとつも感じられなかった
胸の鼓動
好きな鼓動なんて1度もない
生きていることに好き嫌いなんてなくて
鼓動はずっと意味なく騒いで
私を弱く苦しくする
もっと
もっと
もっと強く
もっともっともっともっともっともっともっともっと
強く強く強く
苦しくなりたい
命の灯火なんか比にならないくらい
愛を超えた感情を持って
幻を掴みたい