『美しい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#4 美しい
人間は、美しいものに惹かれると思う。
かくいう私もそんな人間だ。
初めて貴方を目にした時のことを
今でも覚えている。
ある夏の教室で、
斜陽に照らされた貴方の横顔があまりにも美しくて
戸惑うことを知らず、声をかけた。
貴方は見ず知らずの私に
優しく微笑み返してくれたのよね。
恋に落ちるのは、必然だったのかもしれない。
なんて。
美しい宇宙
沢山の惑星が散りばめられた空間である宇宙は
絶妙なバランスで存在している
その中の一つ
わたし達のいる地球🌏
地球もまた
沢山の動植物が
絶妙なバランスで存在している
この絶妙なバランスは
美しくて不思議なエネルギーによって保たれている
バランスが乱れると
元に戻そうとするエネルギーが働く
人の精神バランスが乱れると
経済が乱れる
経済バランスがみだれると
人口がみだれる
人口バランスが乱れると
人間達はお互いに戦い始める
これが自然の法則なのかもしれない
美しくて不思議な
未だかつて解明されていないエネルギーの
バランスは
善良な精神をもって整えると
決意しよう
未来を輝かせるために
綾
辛くて眠れない夜、窓から見える月が、なんとも美しく見える。
【美しい】
自然のものは美しい
人間と違って争わず醜さを知らない
人間と違って世界を汚さない
だがその自然さえも人間は汚してしまう
人間という生き物は醜すぎる
自然とは正反対だ
だが人間は美しくあろうとする
美しく着飾る
人間の努力や姿勢は美しく素晴らしい
自然には真似できないことだ
人間は知恵を使って
これからも美しくあろうとするだろう
だから人間は醜くも美しい
∮美しい
みんな思い浮かべてるって信じてる。
「生きろ、そなたは美しい」
"美しい"
「ここだ」
久々の休日、午前の殆どをボールペンやクリップ、付箋等文房具の買い足しに使い、あと数分で約束の十一時を回る頃に大我の元へ行くと「行きたい所がある」と医院近くの真新しい外装のカフェに連れ出された。
大我がカフェの扉を開けると、カランカラン、というベルの音と共に、店内から紅茶の良い香りが漂ってきた。
「いらっしゃいませ」
と、エプロンを身に付けた男性がカウンターから声をかけてきた。胸元の名札を見ると、この人が店主らしい。
見た目は、大我より数個上くらいだろうか。落ち着いた声色や口調から、精神年齢が実年齢より十歳程高い事が伺えた。
店内を見渡すと、装飾品が少なめで統一感があり間接照明で柔らかな雰囲気が醸し出されている。
店内を軽く観察していると「空いている席へどうぞ」と促され、カウンターから少し離れた二人席のテーブルに向かい合わせで座る。着席すると、大我が口を開いた。
「去年の十月にできたカフェでよ、本当は去年の内に連れて来たかったんだけど、タイミングがなくてだいぶ遅れた」
「そうだったのか。済まなかった」
よく周辺を散歩している真面目なこの人の事だ。きっと開店から数日後辺りに来ていただろう。そうでなければ「去年の内に連れて来たかった」なんて言葉は出てこない。
それなのに去年の秋頃から一週間程前までできる限りオペの予定を入れて、去年の後半は共に居る時間が極端に少なかった。自身への憤りと、スケジュールと照らし合わせて今日を選んでくれた大我への申し訳なさが押し寄せてくる。
「そう思ってんなら、今日一日でこれまでの埋め合わせをしろ」
そう言いながらメニュー表を渡される。開くと、豊富な紅茶の茶葉に紅茶以外の飲み物、数種のケーキに隅の方にクッキーが書かれていた。表に書かれているメニューの半分程だろうと思っていたので驚いた。
それとメニュー表の三分の二程が紅茶で、扉が開かれた時に紅茶の香りが漂ってきた理由が、紅茶をメインにしているからだと分かった。
「決まったか?」
「ダージリンとスポンジケーキにしようと」
「俺はカモミールとクッキー。因みにここのクッキー凄ぇ美味い」
ダージリンに合うか分かんねぇけど、と付け足す。
ダージリンとクッキーの組み合わせは聞いた事ない。だが、大我が絶賛する程だ。どのような味か気になる。
「ならスポンジケーキを止めて、クッキーにしよう」
「は?いいのかよ」
驚いた声色で聞いてくる。
「貴方がおすすめだと言っているものだ。気になるのは道理だ」
大我の口振りから察するに、恐らく何度も訪れているのだろう。何度も来た事のある者のおすすめに外れは無い。
「分かった」
すみません、とカウンターの方を向いて片手を上げて店主を呼び、各々の紅茶と二人分のプレーンクッキーを注文する。
「レジ横にケーキとかクッキーの持ち帰りあっから」
そう言ってレジの方を親指で差す。本当にこの人は。
「……んだよニヤニヤしやがって。んな顔でこっち見んな」
「済まない」
等と雑談をしている内に、頼んでいた二人分のクッキーと双方の紅茶が運ばれてきた。とても良い香りが鼻腔をくすぐる。
蒸らす為に、先にクッキーを食べる。
「どうだ?」
「……あぁ。貴方の言う通り、とても美味しい」
サクサクとしているが、バターの種類や分量に拘って作っているのだろう、しっとりともしていて口の中の水分が持っていかれない。その上甘さ控えめで、クッキー単体でもいける。やはりこの人のおすすめに従って正解だった。
「そ。気に入ったみてぇでなにより」
視線を落とすと、テーブルの上に置かれた二つの砂時計の内、大我の近くに置かれている方の砂時計の上の砂が無くなった。
「じゃ、お先に」
ダージリンはカモミールより蒸らしの時間が長い。カップに注ぐと、口元に持っていきカモミールティーを一口。
「……」
カモミールティーをカップに注ぐ仕草と飲む所作が──こう言うのは失礼だが率直に言って──いつもの大我とは違って美しく、思わず息を飲んで見惚れてしまう。
「……い。…おい」
怒気のこもった大我の声に、はっ、と我に返る。
「ん」
テーブルの上を指す。指先を辿ると、俺の近くに置かれていた、もう片方の砂時計の上の砂も無くなっていた。慌ててポットを両手に持ってカップに注ぐ。礼を言うと、再びカップに口を付けてカモミールティーを口に含み「ふん」と鼻を鳴らした。
患者相手の時のように素直に受け取れば良いものを。そういうところは全く変わらないな。
そう思いながら、ダージリンを一口含む。特徴である蜜のような香りが口の中に広がり、鼻に抜ける。数秒ダージリンの風味を楽しむと、クッキーを一枚手に取って一口食べる。
ダージリンにクッキー、意外と合うな。
なるべくお店で出す紅茶全てに合う味になるように試作を繰り返したのだろう。店内や紅茶の淹れ方だけでなく、クッキーにも相当な拘りを感じた。店主は自分が思った以上に拘りを持った人だと脱帽する。
「どうだ、気に入ったか?」
「あぁ、とても。近い内にまた来たい」
「てめぇなら気に入ると思った」
は、と鼻を鳴らして得意げに言う。その顔から、どこかほっとした表情が見て取れた。
そうは言っても、俺が本当に気に入るか心配だったのだろう。
するとまた、むすっとした顔でこちらを見てくる。
「てめぇ、何考えてやがった」
「別に、何も」
「本当か?」
「ただの思い出し笑いだ」
そう言って誤魔化すと「あっそ」と不貞腐れた声色で言ってクッキーを手に取って食べ始めた。
心の中で微笑みの声を漏らしながら、俺もクッキーを一枚手に取り食べた。
「みてよ、今日の空!」
バルコニーに出ていた彼女が、室内にいる俺を見るべく、くるりと振り返る。
風呂も終わって飯も食った俺は、室内のカウチソファにゆったりと座り、リラックスしながらバルコニーではしゃぐ彼女を見守る。
「ねえねえ、一緒に見ようよ、とっても綺麗なんだから!」
ガラス窓越しでも分かるほど、満面の笑みを浮かべた彼女は天にむかって指をさす。
最近、どうも曇りの日が続いて星が見れない状態だったたから、今日みたいに澄みきった夜空に輝く星が見れて嬉しいんだろう。
「いや、俺は遠慮しとくよ。仕事で疲れてるから。」
「そっか…うん、わかったよ!」
野外と屋内の壁を経て聞こえてきた彼女の声は籠っていた。彼女は再び、バルコニーに手を乗せて星空を眺める。
月明かりに照らされる彼女の長い髪と、部屋明かりにうっすら照らされた艶やかな背中は形容しがたい美しさを感じる。
「…綺麗だ」
「えっ?外からだと何を言ってるのか聞こえないよー!」
今宵は月も星も綺麗だが、月も星も美しい彼女を引き立てる添え物にしかみえない。
こんな俺は、きっと彼女のぞっこんなのだろう。
きみの首筋にアンタレスが光っている。
アンタレスとはさそり座の心臓にあたる赤い星。きみの白く美しい首筋に隠れているホクロのことを、僕は勝手にそう呼んでいる。
いつも髪を下ろしているから、ここにホクロがあることを知る人は少ないだろう。
でも後ろの席の僕は知っている。髪をかきあげるその時に垣間見えるその一等星を。
「ちょっと」
気がつけば、きみは怪訝な顔でこちらを向いている。
「何?」
「今見てたでしょ」
「何が?」
「私のこと」
「見てないよ」
「うそつき」
きみはまた前を向いてしまった。
……うん?
なんで真後ろにいる僕が見ていることに気づいたんだ?
きみの机の上で何かがキラッと光る。手鏡だ。
僕は知らなかった。その手鏡で、きみが僕の様子を見ていたことを。
【お題:美しい】
日常会話の中で少し冗談めかして美しいと言う以外、感嘆して心の底から美しいと口にしたことはないかもしれない。本来そういう言葉の気がする。
《美しい》
「——なあ、人はどうして醜いんだろうな」
「急になに言い出すんだ」
頭でも打ったか、とシエルはキャンバスへと向けていた手を止めた。代わりに怪訝な視線を横にずらす。
言い出した本人は、キャンバスから視線すら外さず描き続けている。
「お前もそうは思わないか? シエル」
「急にどうしたんだってオレは聞いたんだけどな、ブライトさんよォ」
そう言い、シエルはまた手を動かした。
話している時間も惜しいのだ。
「ほら、窓の外。月が見えるだろ? あれが本当に美しいなと思って……」
「それに対して人は醜いなってか? 比べるもんが可笑しいだろ、そりゃ」
「というと?」
今の言葉のどこに惹かれたのか、ブライトはなにやら楽しそうだ。
先程まで数時間、無言だったからか。
ブライトを楽しませるのは本意ではないが、口が暇なのはシエルもまた同様だ。
渋々と口を開く。
「お前の言う、月が美しいってのは、視覚的な話だ。月という物を見て、美しいと感じてるんだろ。けど、人の心の美醜はそうじゃねェ、内面的な話だ。比べるなら、月の美しさと人の容姿の美醜でも比べてろ」
「まぁ、それもそうなんだよなぁ……」
「人に分かり切ったこと言わせといて、薄い反応見せてんじゃねェよ」
「はいはい、悪い悪い。……でも、そうだとしても、人は醜いだろ?」
「おい、さっきからなにが言いてェんだ」
一拍、キャンバスを滑る筆の音が場を支配する。
「……俺は、最期くらいは、綺麗に終わりたいなって思ってさ」
ブライトがややあってそう言うと、シエルは間髪入れずに溜息を吐いた。
「あのなぁ、十分世間様から見れば綺麗に生きてるだろお前……!」
「シエル、そういうことじゃなくてだな」
「そういうことだっての! だってな、他所からすりゃお前みたいな順風満帆な人生送ってる奴は、大層お綺麗に見えるだろ」
元は平民の生まれであるブライトは、幼少の頃から絵を描くことが好きだった。道端で拾った石と水で街中に落書きしたところ、怒られるどころかその才を見込まれ地方貴族の養子となった。
そして数年経ち、ブライトは『天才画家』と呼ばれるようになった。
若くして売れた画家の人生が、順風満帆でなければなんなのだろう。
こうしてシエルが、ブライトの為のアトリエで共に絵を描いて居られるのも彼のお陰である。
意地でも、絶対に言わないが。
「……ま、オレはお前のこと、結構醜い生き方してんなって思うぜ」
「へぇ……?」
意外だったのか、今度はブライトが手を止めてシエルを見つめる。
「天才だなんだって言われてるけど、実際はただの努力の成果でしかない。どっちかっつーと才能だけならオレの方がある」
「なんだ、自慢か?」
「茶化すな。……だからお前は秀才だよ、紛れもなくな。それこそ、人には話せねェくらいの泥水啜って生きてる時だってあった。手の付けようがねェくらい暴れてた時もあった。ただ、そんなお前を知ってるのがオレくらいなんだよ。だから他人様から見りゃお前は綺麗でも、オレから見りゃお前は醜いのさ」
「そうか……そう、だな……」
ぼんやりと返事をしたかと思うと、ブライトは筆を動かし始めた。
シエルはまだ吹っ切れていない様子のブライトに呆れるが、話を続ける。
「だから、死ぬ時も孤独に死んでけ。誰とも結ばれないまま寂しく独りで死んで、五日経って、腐乱した死体でもオレが見に行ってやるさ」
「見に来てはくれるのか」
苦笑しつつもブライトは、心が軽くなったように感じた。
「腐れ縁が繋がってれば、な。そん時にゃあ切れてるかもしんねェけどな」
「……なあ、シエル。お前に頼みたいことがあるんだがいいか?」
「内容による。……なんて冗談だ。なんだよ」
腐れ縁であるブライトに妙に改まってお願いされると、シエルは居心地が悪く感じた。
「俺と一生友達で居てくれないか」
「なんだ、そんなことでいいのかよ」
拍子抜けした表情で筆を進めるシエルに、
「あ、もちろん友達なんだから、最期は看取ってくれるよな?」
「おう……あ、でもオレは独身貫く気ねェからな! 勝手に独りで逝ってろ、オレは絶対に誰かと幸せになってやる」
全くもって、潔い宣言である。
「……わかった、それでいいよ」
「い、いいのか」
「いいけどその代わり、これだけは譲らない」
なんだ、と言いかけたシエルの頬に手を添えてブライトは微笑む。
「お前のこの、綺麗な目だけは俺にくれ。一生、俺だけを見ろ」
「…………こ、告白みたいなこと言うなよなぁっ!」
「ある意味間違ってないな」
「……っ!?」
動揺するシエルを置いて、ブライトは筆を取った。そのまま絵を描き始める。
「お前は——シエルだけは俺を色眼鏡で見たりしないだろ? だから、くれって言ったんだ」
「……っ、あぁ、そういう……変な言い方すんなよ、馬鹿」
「なにと誤解したんだか……くくく」
「笑ってんじゃねェ! るせェ!!」
「夜中にうるさいのはそっちだろ?」
「ぐぅっ……!」
ブライトの言ったことは正論で、シエルは無言になって止まっていた手を動かす。
「……あー、くそ、まあいいけどな? 腐れ縁が切れてなきゃな!」
「切れてないことを祈るさ、切にね」
なんだかんだ言って承諾したシエルに、ブライトは笑みを隠し切れなかった。
ブライトにとってシエルだけは、『天才』と言って自分を遠ざけたりしない唯一の存在なのだから。
やがて彼らはは歴史に名を残す。
『天才画家』と呼ばれた画家、ブライトと。
そのブライトと交流のあった画家、シエルとして。
ブライトは生涯独身を貫き、シエルに看取られて病で命を落とした。
70年来の腐れ縁であるシエルもまた、生涯独身を貫き、ブライトの後を追うように二年後老衰で亡くなった。
シエルが弟に託したという日記が、彼の実家で過ごす子孫から博物館に寄贈された。
その内容は、ブライトがどれほど努力を重ねて来たのかを、シエルの感情を交えて書いたものが多く、生涯書き続けたのか百冊以上のノートが日記であった。
かくして、この日記を元に歴史は正された。
かつて『天才画家』と呼ばれた秀才、ブライトと。
彼と共に在り続けた親友の画家、シエルと。
彼らの一生を描いた作品は、世界中で劇として広められた。
有名な、最後の一節がある。
「美しさを求めた彼らの作品は、決して完成することはなかった」
完成を、生きている内に感じればそれで画家として終わりだ。
だからこそ、彼らは求め続けた。
彼らの人生は、世界で最も美しい友情の物語として、今も語り継がれている。
「美しい」
その言葉は人生で何回、使うだろうか。
かわいい、かっこいい、すてき、すごい、きれい。
世界には、たくさんの言葉がある。
私はかわいい、かっこいい、すてき、すごい、きれい今挙げたのは日常の中でも、
使っている言葉だ。
だけど「美しい」は、
あまり使わない。
だから、「美しい」は、心の底から感動したとき
そう言うのではないか。
「美しい」
美しい
美しいとは相対評価ではなく絶対評価こそが相応しい。何かと比較して使うものじゃないってことだな。
自分の感性が感じたまま褒め称え、その虜にされちまった時に思わず出てしまうような、修飾語よりは感嘆符に思う。
とにかく、最近美しいものに出会えているだろうか。あるいは自分が醜くなっていってはいないだろうか。ルッキズムが染み付いているわけじゃないが、見た目の衰え方が不健康を連想させてしまうようなら、美しくあるべきと言い切ってしまっていいだろう。
死ぬまで若々しいのがきっと良い歳の取り方でしょ。病気で急激に痩せる姿を見すぎてツラいんだよ最近。反面教師って言うと悪意が感じられるだろうが、死ぬまで杖のいらない足腰や自分の歯で物を噛み続けたい願望が俺にはある。
死にたくても、生き足掻いて、自分を磨く。最後まで生き抜く姿はきっと美しいものだと信じてるから。
あんなにも気難しいミルフィーユをまるで洗いたてのお皿のように食べ終えたあなたは、今日もどこかで凛と生きていることでしょう。
#美しい
電車で騒ぐ人がいて、誰も咎めないその意識の拮抗
反り返った花びらの群れは、穢れでしょうか。
例えばそれを正す人がいて、その瞬間にふっと糸がほつれていく。
ほんの少しそれが勿体ないような気がするのは、気狂いでしょうか。
誰も知らない互いが一瞬だけ一体となったあの瞬間が、
とても社会じみていて。
朝日の出は美しい。前まで朝日の出をみると野球の練習が始まる合図みたいで嫌だった。しかし野球をしなくなってから見ると、朝の空と混ざっているのが綺麗だから美しいと感じるようになった。
美しい
暗雲のなんと厚いことか。朝も夕も、不誠実の報せばかり。悪党が、善人を騙し、殺し、奪う。白昼堂々とだ。人ならざるものが、平然と街を闊歩する。こんなことが許されるのか。
されど頼りの司法機関も、権力に法外におもねる毎日。小さき市民の叫泣は、虫の羽音の如し。
ならば我がと、勇ましく起つ者稀にあれど、派閥の波に飲み込まれ、瞬く間に一抹の泡と化す。やれやれここにも光あらず。
しからば金は如何なるか。いやいやこれこそさにあらず。金は天下の回りもの。我が宿は所詮、一晩の足休め。
世の中をサラリと口にしてみたが、雲間の光ありやなしや。かてて加えて、暗雲の言、欠片も尽きぬ。例えば……。
……と、長々と不安ばかりを書き連ねる日々。私だけであろうか。
2024年 冬
ツェルマット村の山小屋から名峰マッターホルンの輝く雪を見ながら記す
美しい
夕方、西に向かって車の運転している…沈みかけた夕陽に、ふわりと浮かんだ雲が、優しく彩付いて、渋滞のイライラが、あっと言う間に消えて…バックミラー越しに見える空は、青から少しづつ蒼く夜の帳に変わっていた…道の先には、建物や街路樹が、影絵のように、並んでいる…刻々と移ろう夕陽、車のライト、長く伸びる様々な影…昼間とは違う風景に、疲れた躰に、何かが染みてくる…
割れて
こぼれて
削れて
落ちる
崩れて
とけて
散って
輝く
そこはかとなく冷えて
このうえなくかたい
美しいいしよ
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►美しい
穿ちたい程
雪の降る季節になると必ず思い出すことがある。
それは記憶の片隅から、脳に張り巡らされた電子回路をたどって、目蓋の裏のスクリーンに写し出される。そんな風に、忘れられない、はっきりとした思い出なのだ。その記憶の話を勝手ながらここで話させてもらおうと思う。小学5年生ぐらいだった私はその年、学校内でひどいいじめを受け続けていた。内面から腐りきったような、人の顔色をうかがって自分の面の皮をとっかえながら生きているような、そんな聞いただけでも嗚咽と怒号が止まらないような、とにかく気のおかしくなるような奴と友達になってしまった。「なってしまった」と言っても、「いつのまにか取り付かれていた」と言った方が正しいのかも知れない。ただ僕はそいつに遊び道具のようにいじめられていた。ブラック企業のように、私が怒ると急に味方になったり、優しくなったりして、私は完全にそいつの手の下で操られていた。日に日に心と身体の傷も増え、心配してくれる仲間のことも、なんだかその心優しい天使達が、毎日を幸せに生きているように思えてきて、段々憎んでしまうようになっていった。また、そんな自分も嫌いで仕方なかった。ある日の憂鬱な目覚め。「もう生きていたくない。」そう呟いた枕元への静かな囁き。そのときに産まれて初めてそんな言葉を口に出したと思う。自分でも口から流れるように無意識に出てきた言葉に驚き、涙が止まらなくなった。そのとき一階から母親の「ドヴォルザークの行進曲8番」とも、「ショパンのノクターン第2番」とも似た母親の「朝よー、起きなさい。」という優しい、聖母マリアのような奥深い包むような響きが僕の胸を奮い立たせた。そんな単純な一言でさえも、ものすごい味方が着いてくれたようで嬉しかったのだ。窓から見える外はこの世の色が全て抜けおち、水になり川にながされていったかのような真白い雪があたり一面を覆い尽くしていた。私は急いで下に降りて、目が赤く腫れ上がっているのを、「目が痛いほど痒い」と言って誤魔化し、朝食を口に含んだ。食べている途中、温かい朝食の有り難さと優しさに泣きそうになったが、気にしないようにして茶碗で顔を隠しながら食べ続けた。また憂鬱な1日がここから始まる。嫌でしかたがなかった。どんな表現の仕方があったとしても、結局は嫌だとしか表現に出来ない事が辛くて、気が遠くなるほどとてつもなく最悪な気分だった。どうこう言ってもしょうがないので、せめてなるべくそいつと顔を会わせないようにしようと私は早く家を出る事にした。上下繋ぎのスキーウェアを着て、暖かい帽子と手袋を身に付け、私は重いランドセルのきしむ音と共に外に飛び出した。すると私が今までで一度も見たことのないような、とにかく「美しい」としか表現出来ない細かく舞った「ダイヤモンドダスト」 が私の目に写った。父と母も驚いて飛び出してきて、あまりの美しさに口をあんぐりと開けたままでいた。それを2分ほど見つめたあと、「頑張っていっておいで」とだけ私に言った父の、送り出すのが辛いような儚い笑顔が今でも脳裏によみがえる。私はこの思い出話を書いていてふと思ったことがある。そういえばはっきりと浮かぶこの記憶のどこがこんなにも美しかったのかと。これまでの話の流れからしても、「いやいやダイヤモンドダストだろ。」と思うかも知れない。だが私にはその舞い散る宝石のような雪よりも、父親のしたあの顔の方が美しいと思ったからなのかもしれないと思ったのだ。ふと、我に返りスマホから目を離すと座ってテレビを見ながらカステラを少しずつ口に運んでいる母が見えた。伝えたい気持ちがふつふつと頭に浮かんできたが、照れ臭くて口に出せなかった。まごまごしているうちに母は台所に入ってしまい、タイミングを自分で逃がしてしまった。そんな自分にまた嫌気が差した。
「ダイヤモンドダストの朝」
後書き
長文にも関わらず、最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の話は実話で、エッセイみたいな感じで書きました。まだ走り出しなので違和感のある所も沢山あると思いますが、そこは流してくれれば幸いです。長々と申し訳ございませんでした。
お題 美しい
美しい
この美しさは、作り物じゃないのに
アンチからの視線、
誰かからの陰口
全部そんなの届いてるよ
自分が醜いから、私にそれをぶつけてるんでしょ
私は私のしたいように生きるだけ
そんな言葉になんて屈しない
私の美しさも、美学も
なんだって私の武器
自分一人突き通せないで
あなたは誰を味方にするの?
うやむやな関係なんて捨てちゃえ
自分の心を信じろ