終わらせないで』の作文集

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終わらせないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

11/29/2024, 11:03:10 PM

くらり、と歪む世界。
近づいてくる終わりに、あと少しと歯を食いしばり耐える。
ここで終わる訳にはいかない。せめてあと一月耐えなければ意味がない。
途切れそうになる意識を繋ぎ止めながら、ゆっくりとベッドを抜け出した。

「何してんのよ!」

がちゃり、とドアの開く音とほぼ同時に、強く憤る声がした。
ベッドから抜け出し、そのまま崩れ落ちていた自分の元へ駆け寄ると、華奢な白い手が強く肩を掴む。

「そんな死にそうな顔して、どこに行こうとしたのよ!」

顔を上げる。怒りに歪んだ表情をした妹に大丈夫だと、必死に笑ってみせた。
だがそれがさらに彼女の機嫌を損ねてしまったようだ。眦をきつく吊り上げ、許さない、と睨めつけられる。

「勝手に抜け出そうとした事、おにいちゃんに言いつけてやるんだからっ!」

それは止めてほしい。
震える指で、妹の服を掴んで引き止める。簡単に振りほどけるだろうか細い力ではあったが、立ち上がりかけていた妹を留める事が出来た事に安堵した。
兄の事は、少しだけ苦手だ。
強い目が、あの全てを見通すような鋭い眼差しが、怖い。
家族の中で、一番最初に自分のこれに気づいてしまったのが兄だった。気づかれなければ、きっと今頃終わるための用意が出来ていたはずだったのに。

「言いつける必要はねぇな。ここにいるから」

ドアの前。聞こえた静かな声に、思わず肩が跳ねる。

「おにいちゃん」

振り返る妹が嬉しそうに立ち上がる。移動した事で近づく兄の姿が視界に入り、ひ、と声にならない呻きが漏れた。

「また抜け出そうとしたのか。今度はどこに行くつもりだったんだ?」

優しい声音。笑みを浮かべながらも、その目は鋭さを湛えて。
その目に怯えて後ずさりしそうになる体は、しかし背後に回った妹に抱き竦められて動けない。

「どうした?何がしたかったんだ?」

身を屈めた兄の冷たい手が頬に触れる。
引き攣った喉から声は出せず。僅かに首を振って何もないと答えれば、そうか、と兄は愉しそうに笑った。

「そういや。お前のそれ、ようやく原因が分かったぜ」

触れるだけだった兄の両手が頬を包み、視線を合わせられる。笑みを浮かべながらも、その目には隠しきれない怒りの感情が渦巻いていて、ただ怖かった。

「形代」

目を見開いて、息を呑んだ。

「お前の事だから、家族の中の誰かだろうなぁ。俺ではないし、お袋や親父も違う…なら、残りは一人だけだなぁ」

額を合わせて、静かに言い聞かせるようにして囁かれる。
言い逃れは出来ない。それが出来る段階は、疾うに過ぎてしまっていた。

「たしか、十年くらい前だったか?お前らが神隠しにあったのは。戻ってはきたが、お前は泣いて話も出来ねぇし、こいつはずっと眠ったまんまだったし…一体、あの時何があったんだろうなぁ」
「ぁ…ごめ、な、さ……」

兄の鋭い視線に耐えかねて、謝罪の言葉が口から溢れ落ちる。
意味がないと知っている。けれど恐怖に混乱する思考では、それしかもう言葉には出来なかった。

「何謝ってんだ?悪い事でもしていたのか?なら、お兄ちゃんに何したか、全部教えてくれるよな」

兄の瞳孔が猫のように広がっていく。焦点も合わぬ程近いその目の中で、あの時の自分達の姿が浮かび上がる。
妹に手を引かれて入り込む森の中。止めようと引いた手は逆に振り払われ、駆けだしていく妹の小さな背中。追いかけるその先にあった、朽ちた鳥居。
まるで映画のように、あの日の記憶が兄の目の中で流れて行く。その先を見たくはないのに、目を逸らす事も閉じる事も許されない。
鳥居を抜けた先。急に訪れた夜の暗闇を手探りで進んで、辿り着いた場所。朽ちて形を留めていない社と、その奥にある巨大な古木。
たくさんの誰かが吊されて、取り込まれているのが見えた。
そしてその古木の根元にいた、意識のない妹の姿。
駆け寄って、肩を揺すっても起きない妹を必死に抱え上げた。来た道を戻るために、数歩歩き出し。
最後に見えたのは、妹に向かい伸びる鋭い枝。
咄嗟に妹に覆い被さって、そこで何も見えなくなった。


「良い子だ。怖かったなぁ」

離れていく兄をただ見つめる。離れても焦点が合わない事を不思議に思っていれば、ぐい、と後ろに体が引かれ今度は妹と目を合わせられる。

「ちょっと、おにいちゃん。あんまりおねえちゃんを泣かせないでよ」

目尻を拭われ、妹の唇が触れる。焦点が合わないのは、泣いていたからだと気づいた。

「可哀想なおねえちゃん。大好きよ…でも、許さないから」

激しい怒りを湛えた目をして、妹は笑う。

「おねえちゃんはもう、あたしとおにいちゃんのものにするわ。だからその命、勝手に終わらせようとする事は許さないから」
「そうだなぁ。俺らが何にも言わないのをいい事に、ここまでぼろぼろにしちまったんだ。寂しがりのくせにこのまま一人きりで終わらせるってなら、俺らがもらって終わらないように大事にしまって置くしかないわなぁ」

妹の指に顎を掬われ、兄に向けて喉を晒される。嫌な予感に逃れようと藻掻くものの、弱りきって自由にならない体は妹の細い指一つ振りほどく事が出来ない。

「そんなに怯えんな。少し痛いが、今よりは楽になるから」

兄の指が喉を撫で上げ、唇を寄せる。止めて、と願う声は形にはならず、悲鳴に成り代わった。
痛い。食い破られてしまいそうな、痛み。そして体に溜まった澱みを吸い上げられていく感覚。
耐えられず目を閉じる。止めようと、縋ろうと彷徨う手はそれぞれ二人に繋がれて、もう離れる事が出来ない。


「まあ、こんなもんか。時間稼ぎにはなるだろ」

兄が離れていく気配がする。けれどもう目を開ける気も、況してや逃げる気力もなく、そのまま妹にもたれ掛かった。
幾分か楽になった体が睡眠を欲しがって、意識を落としていく。

「しばらく戻れねぇが、良い子にしてろよ?」
「大丈夫よ、おにいちゃん。でも早く帰ってきてね。でないと、おねえちゃんだけじゃなくて、あたしも悪い子になってしまいそうだもの」

二人の声が遠い。
触れる熱が、微睡んだ意識をさらに深く沈めていく。

「あたしのためとか、終わるための言い訳は許さない。終わらせてなんかあげないわ。おねえちゃんはこれからずっとあたしとおにいちゃんのものだから」
「そうだな。これまでも、これからも三人一緒だ。約束したからな」

笑う声がする。
遠い昔。幼い頃の自分が寂しさに耐えかねて、泣きながら差し出した小指が。
酔いそうな熱を持ち始めた、そんな気がした。



20241129 『終わらせないで』

11/29/2024, 9:38:34 PM

4F 5F 5Des  4Ges 5C 5Des 5C ……
4As 5As 5F   4A  5Es 5F  5Es ……

綺麗な字で書かれた暗号を、
お前は難なく解いてしまう。

その指先で奏でられるクラシックは
飽きるほど聴いたはずなのに、
飽きないほど美しく、
私の体を優しく包む。

ベートーヴェンとドビュッシーで
月の光の見え方がこうも違うものなのか。

楽譜という別の暗号よりこの文字列のほうが読みやすいというお前は、
出会った時と変わらない、イタズラっぽい笑顔を見せてくれる。

だが、お前の月の光は日に日に弱まっていく。
その弱い光を求めてか、
私の定位置は日に日にピアノに近づいていく。

この曲が美しいから。
この時間が至福だから。
ピアノを弾く時のお前の顔が好きだから。

だから。

頼むから。
その音色を。


【終わらせないで】

11/29/2024, 11:41:12 AM

始まりには終わりがある、
その間に何があるかは分からないけど。

ダチが死んだ。私とした約束を残して。

まぁかぁぁあはんにゃぁぁあはらみぃぃたしんぎょぉ〜

どうやって出会ったかは分からない。でも、私はダチだと思ってた。なんにも考えられなくて、とりあえずいつものカッコで葬式場に来てみた。

お焼香して、手を合わせる。棺桶に入ったダチはいつもよりメイクが薄くて、違和感があった。
ダチの顔に触れてみる。冷たかった。これからやっと動き始めそうなくらい。気持ち悪さは感じるけど、なんか心地よくて。なんかおかしい。

何も言えなくて、言う言葉が出てこなくて。
電池切れの姿のダチをじっと見ているしかできなかった。

全身に力が入らない中、帰ろうとしているとおばさんから声をかけられた。

[あの、美和子さん、ですか?]
「はい?急になんですか。」
[美紗が、これを、あなたにって。]

ミサトってほんとはみさって言うんだ。
おばさんはどうやら、ミサト…みさの親戚らしい。
手には、カセットテープとライターとタバコがあった。

「え、いいんですか?あたし未成年ですよ。」
[えでも…美紗が渡してって言ってたから。持ってって。]

強引に渡されたそれは、ふんわりミサトの匂いがしたような気がする。ミサトが生き続けてるみたい。

―勝手に終わらさないでよ。

王冠をつけた黒い車が、あたしの隣を通り過ぎて行った。ライターを買いに、あたしはコンビニへ向かった。




【終わらせないで】

11/29/2024, 10:07:12 AM

◎終わらせないで
#38

目を開けると、真っ白な空間に綺麗な人が佇んでいた。
ぼんやりとその後ろ姿を眺めていると、その人はこちらに振り向いて口を動かした。

「────」

なんて言ったのか聞き取れなくて首を傾げると、その人はやんわりと微笑んだ。

「ここで終わらせないで」

聞き取れた瞬間空間にヒビが入る。
どういう意味か聞きたくてあらん限りの声で叫ぶも、困ったような顔をしてその人はこちらに手を振った。



目を開けると、色の着いた世界が目の前に広がっていた。
一定の間隔を刻む機械音が鼓膜に届く。
どうやら、死に損なったようだ。

11/29/2024, 10:00:03 AM

このひと時が止まってほしくない
落ちないで、終わらせないで
どうか、この一瞬を
もう一度のないこの時を、続けさせて

「終わらせないで」

11/29/2024, 9:56:36 AM

大好きなもの選んでも
2週すれば飽きてくるし
当たり障りのないものも
いつかは棘が出てきて
触れられない
そんな繰り返し
嫌になるな

11/29/2024, 9:55:37 AM

「終わらせないで」

私はあなたを置いていってしまった。
遠い場所まで、あなたのもとにもう二度と戻れないほど遠い場所まで来てしまった。

あいつは死んじまった。
ケンカして家を出ていったその先で事故に遭った。
俺のせいで、あいつを死なせることになった。

ごめんなさい。私がつまらない意地を張ったせいでこんなことになってしまったの。

悪かった。ごめん。あんな酷い言い方しなくてもよかったのに。

私のせいで。
俺のせいで。

取り返しのつかないことになってしまった。

だけど、どうかお願い。
あなたの命を、こんなところで終わらせないで。
あなたにはこれからがあるのよ。後追いなんてやめて!

だから、ケジメをつけないとな。
自分の命を持って、あいつの命の責任を取らないと。

お願い。未来を生きてちょうだい?

……あいつに会いたいっていうのが本音だけど。

あなたにはずっと生きていて欲しいの。だからおねがい───

原因を作った俺が長生きなんかする資格はない。だから───

もっと生きて!

もう死ぬよ。

11/29/2024, 9:41:58 AM

終わらせないで


どうか、このひと時を終わらせないで。
私にとって大切な思い出をずっと覚えていたいから。

私は、この瞬間を永遠に続いて欲しいと願っているから。

11/29/2024, 9:39:45 AM

わたしは

多分

繊細さんだ。






 



今は

キャリアを
収入を

諦められたけれど




かつての
わたしは

こんなんじゃ
ダメ!

もっと
もっと
頑張りたい!

頑張らないと!

教の信者で―――




何度か
強制終了
したことがある。





強制終了したからこそ

わたしは

わたしの特性に



気付いて



生き方を

修正してきた。




また
奢りが出ると

きっと
強制終了だ。





あの気付きと
ちゃんと
向き合って


自分の人生を

もっと

生きやすくしたい。


#終わらせないで

11/29/2024, 9:38:34 AM

昨日の分も合わせて、今回は2本立てです。
「愛情」 「終わらせないで」(←書けました!!)
------------------------------------------------------------------------「愛情」
自分はロボットです。
自分の役目は博士の代わりに毎日仕事をこなすだけ、そう思っていました。
ですが、博士は自分が思っていることとは違うことをしていました。自分に優しく接してくれたり、システムエラーなどが起こってもすぐに直してくれたりしました。このとき、自分には感情がないはずなのに、特別ななにかが心に記憶された気がしました。

ある日、博士が突然倒れました。
自分には何が起こったかすぐに分からず、人間で言うパニックに陥りました。
パニックになっている自分に、博士は優しく、寂しそうに言っていました。

「…ごめんね…私がいなくなっても××らしく生きるんだよ…」

博士が発したコとばの後、博士の胸からなり続けていた音が静かになりました。

そのとき、自分はやっとあのときの『特別なキモチ』が分かった気がしました。

-------------------------------------------------------------------------

「終わらせないで」
私はデータの中に生きている。
データを記録した人は"現在の私"だ。私はデータとして記録されている"現在の私"から見た"過去の私"だ。

ある日、データを記録した"現在の私"がデータの整理をしていた。データの記録は本人しかできなく、そのデータの "削除" も本人にしかできなくなっている。
その"現在の私"は何を思ったのか次々とデータを削除していった。
もちろん、記録されているのは大事なこと。
その記録データを"現在の私"は迷いもなく削除していった。

次々とデータが削除され、ついに私の番が来た。
正直、怖かった。"削除"されたら私はいなくなる。
そう、思った。だから、届かなくてもいいから私は"いまの私"に自分の気持ちを限界まで込めて言った。

《私の"人生"を…『終わらせないで』》

11/29/2024, 9:37:36 AM

2人の関係を終わらせること

何度も考えた

きっとあなたもそうだよね

終わりにすればたぶん楽になれる

でも終わりにできないのはどうして?

執着じゃない

情とかじゃない

あなたを好きだからだよ

11/29/2024, 9:33:01 AM

一人でいる時涙は出るし

自分の顔を見て絶望感

あぁ漫画みたいに可愛くなりたい

みんな陽キャでしかももう少しでテスト期間(今だけど、)

11/29/2024, 9:29:25 AM

ずうっと、追わせる側だったのに。

お題:終わらせないで

11/29/2024, 9:28:24 AM

終わらせないで

終わらせないで
終わらせないで
この関係を終わらせないで

私は寂しい
私は悲しい
私は辛い
そんな気持ちわかってよ

私の何がいけなかった?
私の何が悪かった?
私の何がつまらなかった?

ねぇ
答えてよ

11/29/2024, 9:28:06 AM

今日の話題は終わらせないで。
終わらせないかぁ、終わらせないと言えばそーだなぁ、課題を終わらせないでそのままにしちゃうこともあったよな。それで後々気づいてうわまじかよ…って自己反省して自分のこと責め出しちゃったりしてね。
まあそんな話はどーでも良くて、せっかく終わらせないでって言う話題なら何でもかんでも今日は書こう、
今日は11月28日なんだってさ。…いや、え。時の流れ早すぎる。前まで11月になったばっかだったよね?もう1ヶ月経つんだ…本当に早い。だってもう1ヶ月後には大晦日みたいなもんでしょ、考えられないわ、てかその前にクリスマスか。ほんとに早いんだなって実感する。
最近は気分というかメンタルがあまり良くないが、頑張って生きている。

11/29/2024, 9:26:39 AM

この、色をつけてくれた君の日々を、輝いたこの日々を、終わらせないで
君が始めた、この日々を、君が終わらせないで

どうか、ずっと私の日々に、色をつけていて

なんて、言っても。君は言ってしまうだろうから
私は笑顔で、君の背中を見つめるだけ
私は笑顔で、この日々を終わらせるだけ

11/29/2024, 9:22:53 AM

あなたが始めた恋なんだから
あなたが終わらせないで。

11/29/2024, 9:20:47 AM

昨日は、
お天気がよくて、夕方のきれいな日だった。
シャンパンゴールドの日が差しているかと思ったら、気づいたらもうロゼになっていた。

こんな日を、充実して過ごした人には、とてもいい夕方だろうなあ。なんて、夕方やっと外に出た自分は思った。
でもそんな時間は短くて、日はすぐに暮れ、帰りには空の色はまた変わってしまった。

家に着いたらすっかり暗くて星さえ見えた。


景色がロゼ色だった時、

この景色を「終わらせないで」なんて、思うかしら。
いや、また同じような景色に会うのだから。
いろんな景色があってそのいろいろがよくてこの景色もその一つなんだから。
そんなことは思わないよね。

って思ったのだけど、あまりに短かったから、もう少しの時間、終わらせないでくれてよかったな。と思った。




「終わらせないで」

11/29/2024, 9:14:52 AM

小さく揺らぐ
命の灯火

勝手に
終わりにしないで

置き去りの
心とからだ

静寂の
星空に
願いをこめる

消えないで
消えないで


#終わりにしないで 773

11/29/2024, 9:14:21 AM

《終わらせないで》

神々にとっては、たった一瞬かもしれない。
いえ、人の目から見ても刹那とも言えるこの日々。

見渡す限りを埋め尽くしていた灯火達も、今や数少なくなっている。
神々の手にあるその種火すら、尽きかけているのかもしれない。

たとえこの世界の灯火が全て消えたとしても、私はこの火を手放すつもりはない。

この明かりがあったから、私は道を外さず歩んでいけた。
一度は見失った導を、また見つけることができた。

それは長く苦しい道のりだけど、遠く見える喜びの大樹が私を導いた。
そして次の大樹へと、私を促す。
灯火さえ手放さなければ見える、微かな希望へ。
その向こうにある、暖かい手を取るために。

だから、お願い。その世界を、終わらせないで。
その種火が尽きるなら、私がこの身で守りますから。

どうか、お願い。

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