『突然の別れ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【突然の別れ】
君は、いつも夜突然音信不通になる。LINEのやり取りをしていても、既読がついても、もう返事は返ってこない。突然の別れ。最初は不安で仕方なかった。何かあったのかな、嫌われたかな…。
君はいつでも、誰かのために全力で頑張っている。見返りなんて求めない。純粋な気持ちで。そして私にもたくさんの幸せをくれる。
だから、突然別れがくる。今頃どんな夢を見ているのか。ちゃんとベッドで寝てるのか。心配は尽きないけれど...。
ほぼ毎夜繰り返される突然の別れ。しかし、夜が明けるとその愛おしい声を聞かせてくれる。毎日新鮮な気持ちで出会える。そう考えると突然の別れも悪くない。次の日に出会うための別れならば。
本当の突然の別れなら...そんな事考えたくもないよー!!
毎夜の別れ、毎朝の出会いを積み重ねて、2人でずっと同じ時を過ごして生きたい。
flamme jumelle
『突然の別れ』
スマホ1つで繋がっている
LINEだけになってる人もいる
だからね、その手段が切れたらもう繋がりが切れる
バックアップ取ってないとか
他にひかえてないとか
どんなに仲良かったと思っても
それまで繋がりを大切にしていたとしても
会う機会が無い相手はそれで終わり
なんて寂しい
なんて薄い繋がりなんだと思い知らされる
愛してる家族。友達。
突然。
もう二度と会えない事になるかもしれない。
そんな事にはなりたくない。
ずっと一緒に笑ってたい。
別れが来る事ぐらい分かってる。
けど、いつか来る別れに怯えるよりは、
今、一緒に楽しく笑っていたい。
(突然の別れ)
「やーだ!」
「こんなに汚れているんだから、ね!?」
玄関前で、大きなぬいぐるみを片手にした青年と、その恋人が大きな声をあげていた。
このぬいぐるみは、元は白いうさぎのぬいぐるみだったのだろう。だが、今は見る影もなく茶色いマーブル色をしていた。
「大事なんだもん、やだ」
「それは分かってるよ。でも、家にあってもどうにもならないでしょ。俺を信じて、ね?」
その言葉に動きが止まる彼女。
「その言い方は……ズルいです」
「うん、でも信じて欲しいな」
「わかった」
「ありがと。少しの別れだから。すぐ帰ってくるからね」
彼女をなんとか説き伏せて、家を出た。
腕には白いうさぎのぬいぐるみだったもの。
これをなんとかしないと。と、青年は考えながら職場に足を向けた。
それは今朝のこと。盛大に彼女が居間で転んだ。
転ぶだけなら良かったのだが、彼女が持っていたマグカップが、中身ごとソファと鎮座していたうさぎぬいぐるみにナイスショットをぶちかましていた。それはもう見事……いや、無惨なほどに。
白を基調にしたうさぎのぬいぐるみは、マグカップの中身――コーヒーの色に染まった。
いっそ、全部かかっていたらコーヒー色だと思えそうなものだが、今回は綺麗なマーブル色に染まってしまったのだ。
このシミを何とかしようと色々試行錯誤したのだが、素人には難しい。
この白いうさぎのぬいぐるみは、一緒に暮らす前から大事にしていたと知っている。
だから〝捨てる〟と言う選択肢は無かった。だが、離れ難い気持ちが先行したのだろう。持っていくことを拒否されたのだ。
それで気がついた。
彼女にプロに任せようと伝えただろうか。〝持っていくね〟だけしか伝えていない気がした。
「俺も説明が足りなかったのかも」
それは嫌がられても仕方がないと反省しつつ、〝俺を信じて〟の一言で、引いてくれた恋人に胸が暖かくなった。
青年は腕の中にいた、マーブル柄になったうさぎのぬいぐるみを持ち上げる。
「ちゃんと綺麗に、元通りにしてもらうからね」
後日、汚れ含めて綺麗になったうさぎのぬいぐるみが彼女の元に戻った。
突然だったが短い別れ。そしておかえりと微笑む恋人に安堵した。
「そのぬいぐるみ、大切になった理由を聞いていい?」
ふと聞いてみたくなった青年は恋人に言う。すると、頬を赤らめた彼女がイタズラっ子のような笑顔を向けた。
「だって、あなたに似てるんだもん」
おわり
お題:突然の別れ
突然の別れ
まさにあなたとの別れこそ
突然にやってきて
ただ不仲になり別れたのなら
まだしも
この世とあの世の別れに
なるなど思いもせず
ただ、ただ
心も体も震え
わたしを一人残して
去ったあなたを
恨んで…
まだ何も始まっていないのに
あまりにも突然過ぎて
泣くことさえ叶わず
こんな終わりが来るのなら
あなたを嫌いになる方が
どんなにか楽かと
思わずにはいられなかった
突然の別れは
早すぎる別れになった
突然の別れ。
それはさよならも言えずに
ありがとうも言えずにやってくる。
もう届くことはないけれど、
精一杯ありがとうを言いたい。
「突然の別れ」
ずっと雨の中にいるのかな
冷えた体を抱きしめて
思考は ぼんやりしてゆく
笑う姿や 声を 思い出そうとしても
なぜか うまくいかない
膨大な心残りに 遮られている
時がたてば と人はいうけど
忘れたくない
わたしは ずっと 記憶と残像を抱いて
冷たい水の底に 静かに 沈んでいたい
ゆらゆらと ゆらゆらと
この身を任せて ゆっくり思い出していくんだ
別れの感触を 受け止められるまで
何かあったのか?
俺が、何かしたのか?
原因も理由もわからない。
どこへ行ったかもわからない。
ただ、5文字の冷たい言葉だけが書かれたメッセージがきただけだ。
そのあとは、連絡先が全て消され、姿を消した。
彼女が突然の別れを決めた理由がわからない。
彼女の友人達も何も知らない。
探し出す術がわからない。
どうすればいいのか?
彼女に逢いたい。
お題『突然の別れ』
「あなたは以前私を桜色と例えましたね」
眼の見えない彼女と過ごす、いつものたわいない会話の時間。
今日は以前にした『色』に関する話題を彼女が振ってきた。
「したな、そんなこと」
「桜は散ってしまう姿が儚いと聞きます」
「そうだな。ざあーって散っていって地面にピンクの花弁が散らばって、木は少しずつ緑になっていくんだ」
「緑は安らぐ色、でしたか」
「桜の葉は柔らかい緑色でさ。俺は桜餅を連想して腹が減りそうになる」
「桜餅って二種類あるって本当ですか?」
「あるよ、おはぎみたいなやつと、どらやき挟んだみたいなやつ。なんか両方寺の名前がついてたと思うけど忘れた。俺はおはぎみたいなのが馴染み深いな」
「それなら私が食べたことあるのは多分どらやき挟んだみたいなのだと思います」
「前にも言いましたけど。私も、あなたのこと桜色だなって思ってるんですよ」
そう言った彼女と会わなくなってしばらくたった。
どうしてなのかはわからない。そもそも俺達はお互いの名前も連絡先も知らない間柄だ。たまたまいつも同じ時間、同じ場所で会うひと。それでなんとなく話すようになった相手。
いつも彼女と腰掛けて話すベンチの後ろに立つのは桜の木だった。
それも相まって、俺は彼女を『桜色』だと思った。
彼女がここに来なくなった理由はわからない。
もう会えないかもしれない。
出会いは偶然。別れは突然。
まあきっとどこかで元気にしてるだろうと勝手に思うことにした。
今年も桜は綺麗に咲いた。
「桜は散ってもまた咲く。そのたびによう、また逢えたなって笑えるんだ」
「そうですね。また逢えて嬉しいなぁって感じるんですよね」
「…久しぶり」
「はい、お久しぶりです。あなたが今来てるジャケットが冷たいと思う『水色』ですか?」
いつも閉じていた眼を開いて、俺の顔をまっすぐ見てくる彼女がいた。
出会いは偶然。別れは突然。再会は必然だったようだ。
終
*お題「突然の別れ」
俺の大事な人
守りたい人、、
今日もまた、迎えに行く。
コンコン
居なかった。
隣の人が『実家に帰ったよ』っと教えてくれた。
なぜ1人で帰ったの?
ずっと、ずっと、一緒って言ったじゃん、
あれって嘘だったの?
なんで?
なんで?
なんで?
俺だけの物じゃないのか?
あんなに一緒に夢を語ったのに、、あんなに愛し合ったのに、、
誰かの声が聞こえた、
あの声は、俺が好きな人の声。。
声を聞いた瞬間、走ってしまった。
でも、そこには誰も居なかった。
俺の大好きな人、愛してる人、俺は貴方のために生きていたのに、、
どうしてなんだ?
俺何かした?
どこがダメだった?
どこに変だった?
俺は、泣きながら探す。
俺の大事な人を見つけれために、
いや、探すために、
何度でも、何度でも、探し続ける。
貴方の愛をくれるならば、
どんな手を使っても見つけ出す、、
“愛してるよ♡マイハニー”
『突然の別れ』
二度と会えないなんて知らなかった。
知ってたらあんな言葉言わなかったよ。
もっと笑顔でいってらっしゃいって言ってた。
オレがあんな言葉言っちゃったから、あなたは帰ってこなくなっちゃったんじゃないの?
そんな超常現象あるわけないのに、言霊っていう言葉がまとわりついてくる。
というか、そもそも知ってたら行かせなかったけど。
泣き喚いて絶対に離れなかったのに。
過去に戻れたらいいのに。
これはあなたがいなくなってから、何万回と繰り返し考えたこと。
突然の別れはあまりに突然すぎて、日常が変化しすぎて、ついていけなかった。
お腹がすくとか、眠くなるとか、トイレにいきたいとか自分の身体におこる現象は変わらず続いているのに、あなたがいないっていう非日常が常に側にあって、そこばかりが浮き彫りになってわけがわからなすぎた。
それでもあなたがいない非日常はだんだんと当たり前になってしまって、ただの日常になってしまった。
そんな自分が許せなかったよ。
その時期はちょっとだいぶ苦しかった。
今は少しあなたがいないこの世界を生きていく覚悟ができ始めたと思うんだ。
あなたと同じ世界に行きたいけど、それはあと何十年後のお楽しみにしておくよ。
その時はあんな言葉言いやがってって怒ってね。
オレはごめんって言うから。
その後にオレを置いていきやがってって怒るから。
その時にあなたが言ってくれる言葉を想像しながら今日は眠ることにするね。
【突然の別れ】
僕は花奏からのラインを見て絶望していた。「余命」。その言葉が脳裏でチラつく。あぁ。彼女は末期がんだった。余命1週間。僕はその日、1日中泣いた。
海星「花奏。来てやったぞ?」
花奏「別に来なくてもいいのに。」
海星「とか言って、病院生活退屈で待ってたんとちゃうん?」
花奏「なわけねぇだろ、バカが。」
海星「うぅ、悲しいよぉ〜。僕のこと、待ってるのかと思って急いできたのに。」
花奏「とんだ勘違いだ。その頭取り替えたら?」
海星「君の頭ならGG。」
花奏「私の頭はバカにあげるものではないのでノーセンキュー。」
海星「そんな硬いこと言うなよ。俺が天才になったところ想像してみ?すごいイケメンで。ま、今もそうやけど。」
花奏「私の頭渡したところで作りは同じだから変わらないと思うけど。あとお前の顔面偏差値、模試の偏差値よりも低いけどな。」
海星「おだまり。僕の顔は超絶美貌なんだぜ。」
花奏「そういう妄想をしてらっしゃるのでは?」
海星「そんなはずはありません。きっとありません。」
花奏「絶対じゃないんだ、そこ。まぁそんな事はどうでもいい。なんで来たんだ?」
海星「ん?だって、僕たち親友だろ?長年一緒に過ごしてきたじゃないか?それ以外の理由とかある?」
花奏「さぁ?私にはわからんな、その感情は。人間の心を捨てた者なんで。」
実際にはこう言ってるが、友達に対してはとても自然的だ。あるのではないかと錯覚するぐらい。口だけかもしれない。
花奏「はぁ、病院生活って不自由すぎる。こんなんイギリスとインドやん。」
海星「さすがにそれは侮辱しすぎやろ。現在はそんな関係ないから。」
花奏「でも、ホンマにやることがない。おもんない。残り時間の前に過労死するで。」
海星「それはさすがに早すぎやしませんかい?そんなときには僕が来るさ。学校終わりの放課後、直行で行ってやる。」
花奏「死ぬとわかったから勉強もしなくていいし。時間を待つだけか。お前が来るまで何しとけって言うねん。」
海星「じゃぁ、読書の感想でも話してくれ。この本渡すから、内容も話してくれよ。毎日新しい本持ってくるから。」
花奏「なら、いっか。」
と言って微笑む彼女。あと何日話せて、声を聞けて、顔を見れて、笑っていられるんだろう。
海星「あ、もうこんな時間。今日塾なんよ。また明日来るね。じゃ。」
そう言って病院を後にした。
次の日。
海星「へーい、今日もやってきましたよ?そんな話題持ってきてないっすけど。」
花奏「はいはい。讀書の感想聞きたいならさっさと座れ。」
海星「はーい。」
そうして、彼女の感想話を聞いた。ずいぶんと理解度が高い。僕はこの本、1週間くらいかけて読んで理解したんだけどなぁ。一通り聴き終えた僕は花奏に言葉をかけていた。
海星「すごいな。1日で理解仕切るなんて。僕やったら何日も読まんとわからん。」
花奏「私は頭が良いからな。それに時間はお前よりもある。」
海星「ヘイヘイ。知ってますよ。そういえば僕以外に誰か来ないの?」
花奏「親ぐらいかね。明日は友達来るけど、まぁ、お前が来たいならくれば?私は強制しないよ。」
海星「そんなこと言って、僕がおらんかったら寂しいだろ?」
花奏「そんなことはない。断じてない。」
海星「まじかぁ。んじゃ、僕は帰るよ。また明日。」
花奏「また明日。」
次の日も、また次の日も同じような流れだった。読んだ本の感想を聞き、少し雑談をし、笑い、見栄を張る。充実した日々。一番早く感じた。もう何日目だろう。そんなことを考えていたらついに7日目が来ていた。
海星「今日はつきっきりでおるからな。一緒に夜更かししようぜ。」
花奏「なんで夜更かししなきゃならんのだ。安心して眠れんわ。」
海星「お前は今日は寝たらだめ。古典でいう『や、〜な」やな。」
花奏「寒いんすけど。まじで凍えるわぁ。」
海星「先に冷たくならんといてや。」
花奏「それは無理な話やな。」
海星「何する?」
花奏「ゲーム🎮。」
海星「いいよ。やろうか。」
僕らは静かな病室でゲームをした。1時間が経過した頃。
花奏「もうそろそろでやめるか。」
この試合が最後だと悟った。
海星「うん。そうだな。今は…9時じゃん。早すぎん?」
花奏「しょうがないよ。ゲームというのは娯楽なんだから。ふぅ、おわり。」
海星「次は僕の話でもしようか?」
花奏「頼むわ。」
僕は多くの昔話をした。花奏もその話に時々笑い、ツッコミ、たたき、いろんなことをしてくれた。
花奏「ずいぶんと長話したもんだ。国語最下位のくせに。」
海星「これでもお前と同じ高校に行ったんやからな。そこだけ褒めてくれ。」
花奏「ヨクガンバッタネ。」
海星「すげーカタコトですよ?もっと愛情込めてください。」
花奏「無理な話だ。今ものすっごく眠いんやけど。こんなに夜更かししたの久しぶりや。もう一時で。日が変わってるし。寝まーす。」
海星「じゃぁ、僕花奏の隣で寝よ。」
花奏「なんでそうなる?やめろ。バカが移る。」
海星「いいじゃん、最後かもよ?」
花奏「私には抵抗する手段がありません。」
そう言いながらもよってくれる。
海星「お休み。」
花奏「お休み。」
数時間後。
花奏「なぁ、海星。ちょっと起きてくれん?」
海星「ん?どうした?トイレか?」
花奏「なわけねぇだろバカ。私なんか浮いてる感覚がする。」
海星「え?」
花奏「もう、ゴールが近づいてるのかもしれないな。」
海星「そうな…。僕はまだ、」
花奏「お前の気持ちもわからなくはないが、しょうがないことだ。変えられないんだ。このことに関しては。」
僕は泣き出していた。これが最後だというのがわかった。
花奏「そうなくなって。天国に行っても見守ってやるからよ。」
そう言って、抱きしめてくれる。初めてだ。その妙な温もりに落ち着く。
花奏「お前の人生は、私だけじゃない。お前の性格なら色んな人と関われる。…長く生きろ。そしてまた、今日みたいに長話をしてくれ。色んな話を持ってきてくれ。私は期待して待ってるから。ほら、最後に笑顔をみしてくれよ。安心して眠れないだろ?」
そう言われたので僕は無理やり笑顔を作った。目も腫れ顔が赤いだろう。
花奏「うん。今のお前はかっこいいぞ。」
海星「お前と過ごした時間はとっても楽しかった。何気ない日常だってそう。それが僕の宝物だよ。ゆっくりお休み。」
花奏「あぁ。お休み。また、何十年後に。」
言い終えた花奏は時間が停止したかのように動かなくなった。
海星「ねぇ、花奏。ねぇってば!起きて!起きてよ!もっと一緒に時間を過ごしたいよ!行かないでよ。お願いだから…。」
そんな願いも虚しく、花奏は目を開けてくれなかった。
花奏がなくなって、数年。僕は大学生になっていた。大丈夫。僕の心の中では花奏は生きてる。そして高校生の話もいっぱいある。早く話したいなぁ。そして僕は歩き出した。
突然の別れ
耐えられないだろうな…
大事な人との別れ
覚悟してても立ち直るのに何年もかかった
精神的な病気にもなりやすいし
そんな時に騙されて利用されてしまった
人を恨むなっていうけど
学びになったって思うけど
感謝は無理…
学びの材料って思うくらいかな
いつもこんな話を聞いてくれた大事な人
今はそれを話せる友達ができたよ
安心してね
それは、死とか引越しとか、そういう物理的な別れではなくって、貴方は近くにずっといた。
「話しかけないで」
それは突然来た。
心当たりはあった。本当に小さなことが、積み重なっていたのかもしれない。
私は、人と付き合うのが下手くそだったから、貴方を沢山傷つけていたのかもしれない。
それから、私は嫌われていると心のどこかで常に思うようになっていた。
幼い頃からあった、無自覚な自信とのお別れ。
それは突然来た。
でも、新しいものとも沢山出会った。
だから、貴方にはとても感謝してる。
っていえるほど、私の心は美しくない。綺麗じゃない。
ごめん、もう貴方の近くにいたくない。
最近は沢山話しかけてくれたのに、ごめん。
『もう話しかけてこないで』
会社の人事部はお父さんを振り回している。
どうやら今年で19年目になるという海外赴任。
寂しがりやのお父さんにくっついて、私たち家族も大変国際色豊かな人生を送ってきました。
「転勤族」を自称できる程の頻度ではないとはいえ、
今までに国は3回変わった。
うちは赴任期間も次の赴任先さえも全く決まっていない
不安定な駐在さんだ。ある日いきなり3ヶ月後に海を渡ることが決定し、現地校に転入することになる。
それまでの人間関係と環境への慣れ諸共リセットされる理不尽も、生まれた時からずっと言い聞かせられてきたことだから特に不満には思わなかったな。
でもそれは何も私たちだけじゃない。海外にいる周りの日本人だって、殆どが駐在さんだった。
・・・とまぁ。そんなこんなで、
日本人学校は転出入が激しいから、人間関係はコロコロ変わった。いちいち手続きが大変ということで、制服も無い程に。日本に帰国する子、現地校に転校する子、
また他の国に引っ越す子。入れ替わり立ち替わりだ。
突然の別れに関してはエキスパートです、私。
定期的に環境が変わることを見越して行動するから、
「距離の詰め方や感覚がバグってる」とも言われるね。
エルフなんかの長命種から見ると、短命種がとっても
生き急いでいるように見えるのとおんなじなのかも。
別れの辛さに麻痺してきた自分がいる。
最初からそういうものだと理解した上での行動と思考。
いつだって別れはさびしいよね。悲しいよね。
でも、その感情を知っているからこそなんでしょうか。
相手の好きなところや、その時の自分が抱いた感情は
素直に口に出す。遊びの提案も積極的にしてしまう。唯一変わらない人間関係である「家族」との絆が深くなる。
世界の広さを知っている。物理的距離が近いことの
ありがたみを痛感している。別れはイコールすべての
終わりじゃない、なんてとっくの昔に悟った。
でもね、覚えてる。もう私と同じ時間を共有していない皆のこと。出会いと別れがどれだけ積み重なっても。
みーんな、私の「大切さん」だからさ。
ごめんね、許してね。私のこの在り方を。
いいなぁ、幼馴染とか。心底羨ましい。
別れを意識しないくらいになるまで、ずっと一緒に
居た他人がいるって、どんな感じなんだろう。
ダメだな。想像できないや。
#23 突然の別れ
"突然の別れ"
「もう、会えない」
夕日が地平線の向こうへ消えようとしていて、東の空には一番星が瞬いている。雲が無い為、とても鮮やかな茜色と夜闇のコントラストが空に描かれている。
そんな美しい空の下、突然告げられた。
講義が終わり帰宅しようと身支度を整え、スマホの電源をつけると一件のメッセージを受信していた。
【話したい事があるから、職員玄関に来て欲しい】
メッセージが送られて来たのは七分程前。スマホを鞄に仕舞い、荷物を持つと早足で大学を出て指定された場所へと向かう。
メッセージの送り主──花家先生は『天才放射線科医』と呼ばれ始めてもう久しい。
出会って何度か教えを乞ううちに、この人は天才だと思っていた。視野が常に広く頭の回転も早いから頭に入ってこず、もう一度ゆっくり解説してもらった事が何度もある。
分野は違うが、要点の絞り方や見方などといった実践的な事を丁寧に教えてくれる。分野が違う為流石に大まかな事だが、大切な事だと何となく感じて、その都度メモしている。
メモする度に「分野違うんだから全部覚えようとしなくていい」と苦笑されるが、俺の為にと教えてくれた事は全て覚えていたい。
そうしてメモを取っているうちに、メモ帳がもうじき二つ目になろうとしている。
花家先生は、人間としても素晴らしい人だ。彼は無償の優しさを振り撒く。危なっかしいと思う所は多々あるが、慈悲深さはまるで天の使いのよう。
真面目で『天才』と呼ばれても邁進すること無く知識のアップデートを怠らず、「俺はまだまだだ」と謙虚な姿勢を全く崩さない。
そして、花家先生から電話をかけてくる事は無く、メッセージで送られてくる。
だが、花家先生自身から送られてくる事は一日の内に大体夕方頃、大学が終わる時間帯のみ。メッセージなど送信する時間を気にする必要は無いというのに、気配り上手だ。
『話したい事』とは、つまり直接会って話したい程緊急性のある事だと思われる。これまで「急な仕事が入った」と直接報告される事はあったが、こんな風に事前に直接会って話したいとメッセージで伝えられたのは初めてだ。
少しざわざわとする心を抱えたまま外に出ると、直ぐ病院の職員玄関に向かった。
目的の場所が視界に写ると、職員玄関の横で外壁に寄りかかっている花家先生の姿が見えた。
「花家先生」
呼びかけると俯かせていた顔を上げ、大きな目で俺の姿を捉えて「おう」と片手を上げた。
違和感を覚えた。声が酷く掠れている。
よく見ると、肌が青白く頬が引き攣っていて目が赤い。
まるで昨日とは別人だった。驚きのあまり声が出ず立ち尽くしていると、花家先生がゆっくり口を開いた。一瞬躊躇うように動きが止まり閉じられるが、唇を引き伸ばし口を再び開いて、言葉を発した。
「もう、会えない」
掠れた声で、切羽詰まったような声色で、突然告げられた。
何を言われているのか分からず、唇の隙間から「え」と蚊の鳴くような声が漏れ出た。
「詳しくは言えない……ごめん……。けど、今よりもっと会う時間がなくなる。連絡も、難しくなる」
「『忙しくなるから会えない』という事なら、俺は全く気にしません。連絡も──」
俺の言葉を遮るように首を横に振り、再び口を開いた。
「そうまでして俺と繋がっている理由は無いだろ。俺が所属している科と、お前が目指している科は、全然違うんだから、教える事なんて皆無に等しかったんだよ。なんで引き受けたのか自分でも分からないけど。けど、もうこれ以上は、意味が無い」
『意味が無い』。いつか言われると思っていたが、いざハッキリと言われると、心がズキリと痛む。
出会った時の事を思い出す。あの時の事は、昨日の事のようにハッキリと覚えている。
目の前でハンカチが落ち、拾ってすぐさま落とし主である白衣姿の先生の背中に声をかけた。ゆっくり振り向いて、不思議そうな顔を浮かべる目の前の白衣の人物に、同性だというのに、心を射抜かれた。
大きく綺麗な目。真っ直ぐ通る綺麗な鼻筋。白く滑らかな肌。美しく光を反射する艶やかな黒髪。そして、綺麗な声。
同性に恋をした瞬間だった。
親父経由で実は互いの存在を知っていたという事実に、鏡写しのように頭を抑えた構図のシュールさに、思い出す度少し笑みが零れる。
そして言葉を交わすと想像通りの人で、同時に想像以上の優しさを持った人で、この人の事をもっと知りたいと、繋がりを持った。断られると思っていたが、俺の我儘を快く引き受けてくれて嬉しかった。
それから勉強を見てもらったり、時々一緒に買い物に行ったり何処かへ出かけたりとしていく内に、より惹かれていった。
いつか伝えよう。せめて卒業式後に伝えよう、と心に決めていた。最高学年になるどころか、学年が一つ上がる前に『もう会えない』と言われ、理由を聞いて反論しても無駄で、それ以上何も言えなくなった。
優しいこの人の事だ。相当な覚悟で下した決断のはず。その決断を尊重すべきだ。
小さく頷いて、ずっと閉ざしていた口を開いた。
「分かった。貴方が考え、選んだ事に異論も何も無い」
「……ありがとう」
そう礼を言う顔がとても痛々しく、つられて顔を歪ませる。
「ただ、今生の別れにはしたくないです。俺が卒業して外科医になって、いつか貴方と同じ場所に、隣に立ちに行きます」
そう言葉を続けると、目を見開いて顔を伏せ「うん」と頷いた。その声はどこか震えているように聞こえた。
数秒後顔を上げて「ありがとう」と、いつもの微笑みを見せてくれた。
「……それじゃあ、行くね」
そう言って身を翻し、職員玄関の中へ向かう。するとこちらへ振り向いて
「またいつか」
「うん、またね」
そう言葉を交わすと、身を翻して建物の中に消えていく背中を見送り、帰路に着いた。
再び会うのは数年後。だがその数年後に再び会えるかどうか保証は無い。それでも、今生の別れにしたくない。そんな思いでの宣言。
そして、密かに抱いていた恋心に自身の手で幕を降ろした。
次は医師同士として、尊敬する医師の一人に純粋な思いで会う為に。
突然の別れ
昨日までは普通に配信していた
直前まで普通にツイートしていた
ちょっと具合が悪いと言ってただけなのに
家族を名乗る人物が訃報を知らせるツイートをした
あまりに突然の別れだった
別れは突然に訪れる。
季節は巡り、時は移ろいゆく。
どんな時でも「別れ」と「出会い」は存在し、
それらは人々を喜ばせ、悲しませ、驚かせ、悩ませる。
どんなに懇願したって必ずそれらは訪れてしまう。
別れは運命によって最初から定められている。
突然に感じられるかもしれないが、前々から決まっているものなのだ。
ずっと永遠にこのままなのだろうという、普通=当たり前なような
無意識な想い、確信があり、そのせいで別れを突然に感じられるのかもしれない。
私も突然の別れなんて出来れば経験したくないが、
別れは常に存在しているものであってそれからは絶対逃れられないのだろう。だが私は別れよりもこれからの出会いを楽しみにしている。
【突然の別れ】
虫の知らせが聴こえていたら
あれが最後だってわかったのかな
49日を過ぎてもあなたの笑顔や仕草を思い出す
今も電話をしたら取ってくれる気がしてしまう
もしあの病室に戻ったら最後の言葉を伝えたい
嗚咽ではなく、「また会おうね」と言えたら良かった
虫の知らせが聴こえていれば
最後の瞬間を大事にしたのに
『突然の別れ』
愛する人ほど、すぐに別れてしまう
大切な人ほど、すぐに別れが来てしまう。
もう何年か前のこと、
それは突然やってきた。
音もなく、
悲しむ余裕も、怒る余裕も、
心には残っていなかった。
いつそんな風になるかなんて、誰もわからない。
いつ、突然の別れを迎えるかなんて、誰もわからない。
だから僕は恨んでしまう。
3月11日
1月1日
2回に渡り僕から全てを奪っていった、
あの自然現象を。
あの、大きな地震を。