『私の名前』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「今日が峠になると思います」
医者から言われた言葉にすぐに反応できなかった。むしろどこかで聞いたことのある台詞だったから、事の重大さを瞬時に感じ取れない。だがこれは、ドラマのセリフでも小説の世界でもない。僕の目の前で最愛の人が宙を舞った。突っ込んできたのは何トンあるか分からないダンプカー。警察が駆けつけた時には、運転手は人が見えなかったと弁明していたが、言い逃れのできない完璧な前方不注意だった。僕は、信号を渡ってくる彼女を道の反対側で待っていたから何の怪我もしなかった。けれどもう、心臓が張り裂けそうで生きた心地がしない。目の前で人が轢かれるシーンを、まして僕の、大切な人を。目を閉じても耳を塞いでも記憶として残ってしまっていた。何度も嘔吐感に襲われてトイレに行くけれど、昨日から何も食べていない身体からはもう胃液しか出てこない。
どうして、キミなんだ。どうして、僕は庇うことなく突っ立っていたんだ。どうして、どうして。頭の中でそればかりが延々とループする。
そして彼女の名前を何度も呼ぶ。アカリ、と大好きなその名前を何度も、何度も。どうか、助かってくれ。お願いだから。僕のそばから居なくならないで。
日付が変わって間もなくの頃。看護師が僕のいるロビーにすっ飛んできた。
「奥様が……!」
言葉を最後まで聞かず僕は全速力で彼女のもとへ走る。病室の前には病院の関係者がいやに集まっていた。無理やり掻き分け、部屋の中へと押し入る。昨日僕に死刑宣告のような言葉を告げた医師がベッドのそばで気難しい顔をしていた。
――嫌だ。やめてくれ。
「アカリ!!」
彼女はベッドの上で横たわっていた。ベッドサイドモニタには、彼女の心拍数が表示されていて、規則正しくリズムを刻んでいた。つまり、
「……助かった……の、か」
「先ほど目を覚ましました」
医師が崩れ落ちる僕の上で淡々と答えた。助かったんだ。無事だったんだ。良かった。本当に、良かった。その瞬間に目から涙が溢れ出てきた。昨日から水すら口にしてないのに、いったいどこからこの水分は集まってきたんだろう。
「ヨウちゃん」
聞き間違いかと思った。ゆっくり視線を上げると、アカリの瞼が薄っすら開いている。僕は乱暴に顔の涙を拭って彼女に近付く。
「良かった、アカリ。本当に……良かった」
「ヨウちゃんの、声が聞こえたんだよ。私の名前、いっぱい呼んでくれたでしょう?」
呼んだとも。生涯できっと1番口にするであろうその名を。気が狂ったようにずっと呼んでいた。その声がまさか届いたというのなら。
「ありがとう。呼んでくれて」
僕が言う前に彼女がふわりと笑ってそう言った。こちらこそ、僕の心の叫びを、受け止めてくれてありがとう。そう伝える時には、また涙がとめどなく流れた。でもこれは、嬉し涙だ。
そんな子に恋しているの?
私が居るのに。
叶うわけない恋なの?
そっか。
私の名前は「救世主」を意味する。我が子を幼いうちに亡くした両親にとって、後から生まれた私の存在は文字通り救いそのものだったようだ。だがそんな両親からの思いは皮肉にも私の生き心地を窮屈にするばかりだった。私は故人の生まれ変わりとされたのだった。
成人してからもしばらくは死んだはずの人間と重ねられたトラウマに苛まれた。自分が自分として生きている実感が出来なかった。亡霊と一体化した立場を脱することが出来たのは生涯のパートナーのおかげだった。私の精神の不安定さや気まぐれを従え、磨き抜いた才能を見抜き、発信すべき方向を取り決めてくれる絶対的な存在だった。彼女のおかげで私は亡霊の影を伺わせるものでしかなかった自分の名前を、心から胸を張って名乗ることが出来る。
「天才画家、サルバドール」と。
テーマ:私の名前 #249
私の名前は男の子でも女の子でもいるの。
まぁ、私は性別なんてないんだけど。
親が付けてくれた名前だから、
大切にしないとね。
私の名前
名前は単なる記号
ハンドルなら思い入れもあるけど
自分で名を決めさせらても困る
それでも自分でつけた名ではない
名前が私ではない
私は名前でもない
それはあくまで
私以外が判別する為にある
音が好きな名はなくもないから
響なのかもしれない
人が2人しかいなかったら
私とあなたでこと足りる
ある程度の数がいなくちゃ必要すらない
それが名前ですよ
私の名前は
私は嫌いではない
私にはそれだけですね
それでも
他人の名前よりは忘れられない
それが私の名前
私の名前
遠くの方で、誰かが呼んでいた。優しい音で紡がれるそれは、宝物のように大切で、愛しい私の名前だった。
「名前は、親からもらうもので体の次に大切なものだから」
そう笑顔で言った君が、そっと背中を押す。
まだ来るのは早い、と微笑み、しばらくは来なくていい、と言った君の顔がどんどん霞んでいく。
目が覚めたら、真っ白な天井が広がっていて、少しだけ消毒の匂いが鼻をかすめる。ああ、病院か、と気づいたのと同時に、ひどく安心したような顔をした両親がそこにはいた。
お題:私の名前
「はじめまして」
聞かずとも知っている。
お前の名前。
それは曽ての私の名前。
お前に託した私の名前。
お前に託した私の祈り。
お前は何も覚えていない。
「名は何と言う」
「私は――」
お前が知る名
お前を殺した私の名前
その口で紡ぐ
苦しいとき、逃げたくなったときは私の名前を呼んでね
いつでも、駆け付けるよ
僕は僕を好きになる
君が好きと言ってくれた名前だから、
もう自虐したりしないよ
明日は君に会えるかな
人は忘れ去られた時に
本当に消えゆくのではないかな。
汚名も栄華でも語られ綴られ
騙られ、ねじ曲げられて
どうか
私の名前を
忘れないでください。
『うわべだけでなく心から美しくなるように』
願いに
応えられているだろうか
#私の名前
音が跳ねてかわいいのよ
口の中で転がしてね
09 私の名前
「僕、小学生くらいのときに大切な人が居たんだ」
『へぇ〜…喋るの苦手な君が?』
「ふふっひどいね、でもその通りだ。…僕が言おうとしていることをひとつひとつちゃんと聞こうとしてくれる人だった」
『優しい人なんだね』
「僕には勿体ないくらい素敵な人だったよ。とっても真っ直ぐに言葉を伝えることができる人だったなぁ…
真っ直ぐすぎて、すこーしだけ口悪かったけどね」
『あははっ、随分とすごい人だ!』
「でしょ?」
『…その人の名前は?』
「…わかんないんだ。なんでだろ?
その人の性格も好きなものも嫌いなものもちゃんと覚えてるのに名前だけ思い出せない」
『えぇ?』
「でも、なんだか綺麗な名前だったような…」
『綺麗な名前?』
「うん、なんだっけな…
思い出せないや」
『君、普段記憶力いいのに名前だけ思い出せないこととかあるんだね』
「僕もびっくり」
『そっか』
「あ、電話だ。誰だろ…あぁ、先生だ。
ごめんね、ちょっと話してくる」
『いいさ、全然。
…いくらでも待つよ』
「ふふっ、ありがと」
君のためならいくらでも待つよ。
だから、ゆっくりでいいから、
名前、思い出してよ
私に名付けた親は今歩んでいる私をどうみるだろう?
名は体を表すなんて言うけれど、本当にそうだろうか?
いつか、それを知ることができるか。
教えてくれる人は現れるだろうか。
私の名前に私は誇りを生み出せるだろうか
#私の名前
【私の名前】
ゆったりと暗闇に漂っていた意識は、君の呼び声ひとつで覚醒する。現実へと姿を浮上させれば、目の前には血の涙を流す女が立っていた。
私を呼んだということは、祓って良いということだろう。君を背後に庇い、腰の刀を一閃。それだけで女の霊はあっけなく掻き消えた。
「これで良かったか?」
「うん、助かったよ」
人畜無害な顔でニコニコと笑う君のえげつなさを、私はよく知っている。堕ちた霊に対しては一切の同情がなく、どれほど身の上話を聞かされようとも躊躇なく私に祓わせるのだ。……そうでないときっと、視えてしまう君はこの世界で生きてはこられなかったのだろう。そう思うと、少しだけ哀れで仕方がなかった。
そんな容赦のない君が、どうして悪霊と化しかけていた私をわざわざ手元に置くと決めたのか。その答えを私は知らない。だけど君の心地の良い声が、君の与えてくれた私の名前を呼ぶから。私にとってはそれだけで十分だった。
遠い昔にはもっと別の名があったように思うけれど、君に名前を与えられた時から、私の名前はひとつだけ。あの日から私は君の持ち物で、君だけの刀だ。
「何かあればまた呼んでくれ」
それだけを告げて、意識を闇へと揺蕩わせる。ありがとうと告げる軽やかな君の声が、私を優しく包み込んだ。
「ね、どんな色になってる?」
ブルーハワイのかき氷を片手にベッと舌を見せた私に彼は目を瞬かせた。大して仲良くもない女子にいきなり馴れ馴れしくされたのだから当然の反応。
それでも優しい彼は戸惑いながらも律儀に答えてくれるのだ。
「えーっと……青い、かな?」
「うん。あおいです」
頷いた私に分かりやすく疑問符を飛ばす彼に、忘れないでね、と小さく念を押した。
/私の名前
わたしの名前はいまいちパッとしない。
と思う。
アイドルみたいなキラキラした名前じゃなくて、もっと素朴でどこにでもいそうな名前だ。
小学生の時、なんで別の名前にしなかったのって問い詰めたこともあるくらい。
でも、好きな人ができて彼から名前を呼ばれたときに初めて思った、
わたしはわたしの名前が好きだ。
私の名前、、それに意味する者と
今の私はまるで別人だ
多くの者に特別視されるでもなく,
救いの手を差し伸べられるでもなく,
ましてや誰よりも優れているとは言い難い、、
余りに過小評価するようだが
あながち間違いではない
少なからず慕ってくれる人はいる
だが、身に伴っていない
、、この名前に私は追いついていない、、
しかし、両親はとても愛してくれていた
名前は些細なモノだとそう思った
この辺りで終いにしよう
〜完結〜
はじめまして、私は猫のコウノスケです
あっ、失礼、猫ではなく、猫のぬいぐるみです
私はご主人が恋人からプレゼントされたぬいぐるみでして、名前はご主人が恋人の名前をモジってつけました
私にとってはご主人が一番なのですが、ご主人の一番は恋人なので、少し寂しいです
とはいえ、そもそも私を選んでくれたのは恋人ですし、まあ複雑ではありますが、大切にしていただいているので概ね幸せです
テスト文章、書き直しきくなら後で書き直し
「ボクの名前?」
うさぎを模したファンシーなパーカーを着た少女は唐突にそんなことを聞かれると、わざとらしく首を傾げながら反応した。
「そんな改まってどうしたの? キミとは昨日も会ったのに。あ、もしかして昨日さよならを言ったあと記憶喪失になってボクのこと忘れちゃったとか」
「そんな訳あるか。ほら、取り敢えずいつもの自己紹介言ってみ?」
「え、いいけど。……ボクの名前はクルトン。キャピタル学園の4年生。好きなことはダンスで嫌いなことは戦うこと。ある時、普通の学生生活を送ってたのに突然校長先生に呼ばれて異世界に飛ばされちゃった。戦うのは怖いけど、この世界で出会った仲間たちと一緒に頑張ってまーす」