『理想郷』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
理想郷に行きたい。静かで綺麗な場所で、自分らしく過ごしたい。悲しいことや辛いこと、寂しいことなどない場所に行けたら、どんなに楽なのかな。どんなに幸せなのかな。そんな素敵な場所に行けるのは、きっとまだまだ先のこと。あと、どのくらい待てばいいのかな。その間、一体何をすればいいのかな。何かを頑張ろうとしても疲れちゃってしんどいから、どうしたらいいか教えてほしいよね。現実って楽しそうで、結構ハードだからね。
理想郷
この世界は理想郷である。
社会に出て成功する者
小さい頭脳とその体で能力を発揮する者
世からの高評価を上手く使いこなす者
貴方はどの者ですか?
スタイル抜群の身体で都会の街中を歩くこと
恋愛と学力が大成功すること
貴方の理想を選択してください。
そう、ここは理想郷です。
貴方の人生を自由に選ぶことができます。
さあ、理想郷の世界へ。
はっぴいー はろういんっ! 妻の声が華やいでいる。
再会からもうすぐ二月。常ならむ姿で笑い合う部下たちを見ていると、我々に起きた身の上の変化など、まるで夢でも見ていたかのようだ。
『奥方様も狐の面が欲しいそうですよ。』
天狗が微笑みながら徳利を差し出す。
各々考えた衣装を見せ合い、一頻りあれこれ批評したりじゃれ合ったり。狙い通り、妻は大層喜んでくれたようだ。
祭りの慣例に倣い、彼女は我々の畑で収穫した南瓜を蒸したり焼いたり潰したりして拵えた菓子を振る舞ってくれている。肴になるようにと、皮の金平も。忙しくしていて衣装を仕込む暇がなかったのが残念なようだ。
『…あれには日向の方が似合うさ。』
幽霊も一つ目小僧も雪女も、妻の菓子を頬張って笑い合っている。手懐けられている。日を浴びて育ったものを、日向の笑みを称えた女に与えられて。
思えば、いつしか農民の暮らしを徴する税の増減でしか見なくなっていたのかもしれない。しかし何度戦が起こって踏みつけられても、それが終わって荒れ地へ放たれても、消して絶えることがないのは彼らの営み。
…そう今の、我々の生き方だ。
朧な雲から月が顔を出す。もう、お前を厭う理由もないね。
これからは酒を嗜む口実になったり、妻の肌を照らしたりしておくれよ。
金平と盃を天狗に譲って縁を離れる。妻が両手で持った饅頭の大皿から一つ取って頬張った。
やっぱり南瓜餡だ。甘いね、美味しいよ。
でもお前、配ってばかりで食べていないんじゃないかい?
南瓜の甘みの残る口で、弧を描く唇に素早く吸い付く。
えっ、だか、はっ、だかいう声が起こり、一つ目の面はくすくす言ってひらひらと揺れていた。
まん丸な目と口と、真っ赤な頬を隠すように狐の面を掛けてやる。…耳の赤いのは隠れないね、ごめんよ。
【理想郷】
「喫茶『理想郷』へようこそ! 始めてのお客様ですね。まずは当店の注意事項をいくつかご説明させていただきます…」
友達おすすめの喫茶店に来てみた。さっき席に案内してくれたのは店長だろうか。快活そうな方だった。さて、何を頼もう。ホットケーキか。そういえば最近食べてないな…。よし、ホットケーキにしよう。
運ばれてきたホットケーキは、期待していた以上の味だった。僕好みの、分厚くてふわふわした食感。シンプルだけどすごくおいしい。まさに幸せの味だ。周りの客も、皆うっとりとした顔をしている。こんな素敵な店があったとは知らなかった。教えてくれた友達に感謝しなければ。
最近は毎日、『理想郷』で食事をしている。店長の料理の虜になってしまったのだ。本当にこの店にいるときは幸せになれる。常連仲間もできた。みんな似た者同士だからなのか、とても気が合う。こんなに最高のメンバーが集まるのも、店長の陽気な性格と絶品料理があってのことに違いない。名前の通り理想の喫茶店だ。絶対また明日も来「そこのお兄さん、ちょっとよろしいでしょうか」
2週間後、『理想郷』の店主は警察に身柄を拘束された。猫人種の客に提供するメニューに、マタタビを混入していたことが明らかになったためである。店を出て帰宅途中の客が偶然職務質問を受けたことから発覚したのだ。近年は技術の進歩により、誰でも安く医療用マタタビを手に入れることができるようになった。確かに、マタタビを利用すれば少ないコストで大きな集客効果が見込めるだろう。しかし、本来の目的以外で乱用されることは絶対にあってはならない。私たち獣人の社会では様々な種族が支え合って生きているのだ。何事においても秩序は守られるべきである。
戦争をしない
犯罪がおきない
事故がおこらない
勝敗を決めない
そんな”理想郷”で生きるなら
怒ったり苦しんだりすることはないのかな
引き換えに何か不具合がおこるのかな
人間の進化において必要なことなのかな
ニュースを見るたびに しんどくなる
違う世界の話だと思わないと生きていけない
仕事は
ほどほどで
好きな人や
優しい人と
旅行したり
遊んだりして
美味しい
ご飯を食べて
よく寝て
過ごしたいかな。
やることが
あり過ぎたら
苦しくなるし
やることが
なさ過ぎても
余計なことまで
うだうだと
考えすぎてしまうから。
健康で
ほどほどに
楽しく
生きていきたいな。
#理想郷
理想郷
嘘でも良いから笑ってほしい。それを優しさとするくらい飢えてる。自分を愛するのは悪いことじゃないし、貴方は私でもあるからそのままで居て欲しい。でも、初めて理解して貰えた気がしたとき、私じゃない貴方がいて、虚ろな目が印象的だった。
理想郷
動物らしく、ただ生きたい。
人間はややこし過ぎる。
発展のため進化のため
複雑化した社会と環境は
人間を幸せに導いたのか。
もっとシンプルに生きたい。
《理想郷》
夢と共に歩き続け
夢と共にずぶ濡れになった
輝きは時間と共に風化していき
今の私は現実のなかで生きています
あの時思い描いた「理想郷」に
今度は辿り着くことはできるだろうか?
憧れは私の心を幾度となく揺さぶります
私の理想郷。
とりあえず、君は絶対に必要。
君がいない世界なんて捨ててやる。
あと、あの子もいればもっといい。
あの子も、私の大切な友達のはずだから。
あとはなんだろう。
美味しい食べ物。素敵な本。綺麗な景色。
そんな考えが頭に浮かんでは消えていく。
そうだ、なければいいものも考えようか。
辛いこと。
怒られること。責められること。見捨てられること。
そんなことがない世界。
ここで、私の中の理想郷はかき消された。
わかってるよ。そんな理想郷なんて絵空事なんでしょ。
クレヨンで塗り潰すように、私の心も塗り潰した。
ここでなら
どんなことでも叶う。
でも何が理想か
分からない。
自分の理想とは何か。
思い描く社会とは。
そんなものが見えていないから
ここはくすんで見えてしまう。
理想がないなら仕方ない。
大した強い望みもなく
のうのうと生きてるあなたへ。
薄汚れた現代社会へようこそ。
–理想郷–
ご飯を食べなくてもいい世界がほしい。勝手に清潔に保たれる身体であってほしい。気の済むまで眠って、誰にも起こされない朝が始まってほしい。私のユートピアを、あなたはディストピアと呼ぶだろう。
頭の中にいるもう一人の私はいつも幸せそうなんだ。
周りの人に大切にされて、どんなことも肯定され、欲しいものもやりたいことも全てを手に入れてやり遂げてしまう。ヒロインそのものだ。
 「かわいそうに」
 ヒロインが悲しげな表情で私の顔を覗き込む。同じ姿かたちをしているのに、なぜだかキラキラと輝いてみえた。
わらわらと集まってきた人たちはみんなヒロインに声をかけ同情し励ます。まるで私の存在などなかったかのようにヒロインにだけ群がった。
 そのうちの一人が私の腕を引っ張ってヒロインから遠ざけた。困ったような苛立っているような表情で無言のまま遠くへ遠くへ、ヒロインが見えなくなってもずっと引っ張って離さない。
 「…あそこは、あなたの場所じゃないでしょ」
 無感情な目で、声で、態度で、私の心を抉った。色々と言いたいことはあったけれど何一つ言葉にならなかった。
 私はヒロインのようになりたかったんだ。でもそれと同じくらいヒロインみたいな人間とそれに群がる人間が大嫌いなんだ。
 ドンッと背を押されてたたらを踏む。前のめりになって覗き込んだのは澄んだ湖だった。水底はみえるのにその深さはまるでわからない。きれいなのにゾッとする。
 「あなたはこんなふうになったらだめだよ」
 ――――理想は理想でしかないのだから、
                【題:理想郷】
大きな理想は無いなぁ…
目の前の今を大切にできればいいかなぁ
寄り添い合う事が続き笑っていればいいよ
それがいい!!それが大切!!
大それた事は望まないよ!!
君とふたりそれがいいよ!!
テーマ「理想郷」
…理想郷ってなんだ?
テーマをみて初めに思ったことはこれだった。文字を見ても想像できそうでできない。
ということで調べてみると、『想像上の、理想的で完全な社会。ユートピア。』とのこと。余計分からない。
「理想的で完全な社会」が全く分からないから想像上の世界だと解釈することにしよう。
私は本が好きでよく読む。あとゲームはRPGが好きだ。どちらもストーリーがある。本は違うものもあるが。
ストーリーを進めていくとだんだんその世界に飲み込まれていく感じがする。本当に作者がつくった想像上の世界に入ったかのように。
これをするのは特にハマったゲームだけなのだが、その世界に元から自分がいるとしたらといった想像をよくする。ちなみに想像上の自分は絶対主人公とは関わらない。その世界で生活している想像をする。
「想像上の世界」が「理想郷」だとしたらこれがそうだと言えるのだろうか。
今回でこの言葉について興味が出てきたからもっとしっかり調べてみようと思う。
わたしはいつも優しいママとパパの3人ぐらし
いつもママは褒めてくれるしぎゅっ!ってしてくれる。
パパはお仕事忙しいけどそれでも帰ってきたら
一緒に遊んでくれる。
ずっーとこの幸せは続くといいなあ
うふ、うふふっえへへ…
Э「うわ、すごいですね…これな、彼女が求めていた幸せ…なんだか気持ち悪いですが、楽しそうですね。」
Д「そうだな…まぁ、そのまま逝ってもらうか。」
Э「そうですね。では、さようなら。犯罪者。ずっと自分の『理想郷』にでも居てください。」
理想郷。想像上の理想的な世界、ということらしい。
理想…痛みも苦しみも辛さもなく、ただただ穏やかで安らぎのある世界。戦争も病気もなく、それこそ「人類みな兄弟」が普通になっている世界。
そんなの、あるわけないか。プラスもあればマイナスもある、そんな世界で私達は生きている。
ついさっきも、立てこもり事件のニュースを見たばかりだ。当人にも動機はあるのだろうが、せめて事件なんか起こさない、そんな世界を願っている。
                  「理想郷」
少しボロけた、一冊のノート。
開いてみれば、そこには沢山の絵が、文章が溢れていた。
自分の思いを書き出し、具現化したノート。
さぁ、今日も夢の続きを描こうか。
---二作目---
理想郷なんて、ないと思っていた。
これから先も、ずっと比較されて、ずっと独りぼっちの
苦しい未来しか想像できなかった。
でも
「久しぶりにケーキを焼いてみたんだが、一緒に食べるか?」
あの時、俺をあの場所から引きあげてくれた。
俺を個人としてみてくれた、そんなあいつがいたから。
「...お前が焼いたケーキを食べない選択肢なんてねぇよ...!!という事で、俺飲み物用意するな♪」
「...そう言って貰えるのは嬉しいものだな。...あぁ、よろしく頼む」
今は、そんな日常が続く、幸せな未来を描きたいと思えるんだ。
#理想郷
106作目
お題「行かないで」「奇跡をもう一度だけ」
 ハロウィンの奇跡というものがある。
 死んだ者が、たった一夜だけ蘇る奇跡。
 だからハロウィンの夜、大切な人を失った多くの人々は、とある墓場へと向かう。
 その墓場は一見すると広々とした公園のように見えるけれど、中に入れば西洋墓地に似た光景が広がっている。
 名前の刻まれていない墓標が並ぶその場所に、今年も多くの人が訪れる。
「また来ちゃったの?」
 今、男性に肩を叩かれて振り返った彼女も、ある年から毎年のハロウィンにこの場所を訪れている一人だ。
 最初の年こそ戸惑いながら中に入り、突然背後から肩を叩かれたことに驚いたが、今ではもう慣れてしまった。
 一年に一回でも、毎年のこととなればそれなりに回数も重なる。
 だから今年も、ずっと変わらない男性の姿を目にして、彼女は微笑んだ。
「一年に一回だけだよ」
「そりゃそうだよ。ハロウィンの奇跡なんだから」
 対する男性は少しだけ困ったように笑いながらそう言って、墓地の外を指差した。
「今年はさ、ちょっと散歩でもしようよ」
「うん、いいよ」
 二人は並んで歩き始める。
 歩きながら、色々な話をした。昨日のこと、今日のこと。こういうことがあった。こう思った。良いこと、悪いこと。嬉しいこと、悲しいこと。変わったこと、変わらないこと。本当に、色々。
「最近はどう?楽しいこととかあった?」
「楽しいことかぁ……友達と旅行には行ったよ」
「いいね。どこ行ったの?」
「京都。紅茶のマルシェがあったから」
「紅茶好きなの、変わらないんだね」
「うん。そっちは?」
「変わりようがないよ、僕は」
 何でもないことのように、男性は笑う。
 もう生きてはいない彼の嗜好は、どうあっても変わるわけがない。
 分かっている筈なのに、こうして隣を歩いているとつい、昔に戻った気になってしまう。
「……そうだよね」
 けれど、そんなことはないのだと、彼の言葉で改めて実感する。
 これはハロウィンの奇跡。死んだ者が、たった一夜だけ蘇る。だから今、こうして二人並んで話をすることができているのだ。
「好きな人はいるの?」
「ううん」
 何となく上がってきた歩道橋。その途中で立ち止まって、見慣れ始めた町並みを眺める。
 二人はこの町の出身ではない。
 ハロウィンの奇跡という都市伝説の存在を知って、半信半疑ながらも引っ越しを決めた。 
 お骨も何も必要なく、ただ10月31日の夜に指定の公園を訪れるだけ。それだけで本当に、死んでしまった大切な人に会うことができる。
 よく考えれば引っ越しまでする必要はなかったとも思うが、この町はハロウィンの奇跡を信じる人ばかりなので居心地もいい。
 だからもう何年も、この町に留まっている。
「よっ!と」
「え、ちょっと……危ないよ」
 しばらく黙って景色を眺めていた男性が、突然手摺を乗り越えて向こう側に立つ。
 誰もがハロウィンの奇跡の為にあの公園を訪れている今夜、車道の車通りはほぼない。とは言っても、それなりに高さがあるので、手摺の向こうに立つのは危険な行動だった。
 だから彼女は止めているのに、振り向いた本人は穏やかな笑顔を浮かべていた。
「覚えてる?最初のハロウィンの奇跡に僕が言ったこと。もう何年も前だけど」
「覚えてるよ、ちゃんと」
 戸惑いながら、あの公園に足を踏み入れた夜。後ろから肩を叩かれて、会いたかった大切な人と再会した。その時に言われたことは、今でもしっかり覚えている。
 ――もし、ちゃんと忘れられそうな日が来たら、もうここへは来ちゃダメだよ。
「なのに、毎年来ちゃうんだから」
「だって、会いたいんだもの。あそこに行けば、会えるから……」
「そうだね。ハロウィンの奇跡が絶対だからいけない」
 手摺の向こう側とこちら側。安全な場所と、そうでない場所に立ちながら、互いの表情は反対だった。
 危険な場所に立っているのに、男性は笑顔を崩さない。状況にそぐわない穏やかさで、優しく女性を見守っている。
「君には、明日の命をずっと生きて欲しいから。僕はもう行くね」
 そのまま、何でもないことのように男性は言って、手摺から手を離す。
「待って、行かないで!」
「来ないで」
 ゆっくりと向こう側に倒れていく男性に伸ばした手は、あっさりと振り払われた。
 最後まで笑顔を見せて、それすらも夜に呑まれていく。
 すぐに手摺越し、精一杯に下を覗き込むけれど、もう姿は見えない。同時に、空が白み始めたことに気付く。
 今年のハロウィンの奇跡が終わったのだ。
 これからまた一年、次のハロウィンの奇跡まで、ただ毎日を消化していく。
 けれど彼女の奇跡は、もう起きない。
 夜明けまでに公園に帰るべき人が、あの日、歩道橋から夜に消えたから。
 それでも、ハロウィンの奇跡をせめてもう一度だけでもと次の年も公園を訪れたが、どれだけ待っても肩を叩く人は現れなかった。
 だからやっと、踏ん切りが着いた。
「本当に行くの?」
「はい」
「大丈夫?」
「もう大丈夫です」
 奇跡が起こらなかったハロウィンから少しして、彼女はこの町を出ることを決めた。
 近所の人たちは心配をしたが、本当にもう大丈夫だと思えていた。
 彼女にはもうハロウィンの奇跡は起きないし、必要ない。だから、ハロウィンの奇跡を信じるこの人たちと一緒にはいられない。
「行ってきます」
 ――もう、戻ってきたらダメだよ。
 追い風に混じって聞こえた声に背中を押されて、ようやく明日へ行ける気がした。
 そう。ここは、時が止まった町。
 大切な人がいた時間から動けない人の為の町。
 動き出した人たちは彼女のように、自然と町を離れていく。
 あれだけ彼女を心配した人たちも、去ってしまえば何事もなかったように日常に戻る。
 そうしてまた一年、ただ日々を消化して。たった一夜だけの奇跡のために、今日を生きていく。
                      ーENDー
理想郷
端的に言えば、戦争のない、誰一人飢えた人がいない世界。
現実には、また大規模な戦闘が始まってたくさんの人が犠牲になってます。
理想郷は遥か彼方です。
人間の愚かさにウンザリします。