『無色の世界』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
細い手がするりとカップを取って、紅茶の湯気の温かさを小さな鼻先で確かめ、少しだけ口にして美味しいと笑う。
おいしいわね、このお茶はなんというお茶?
ダージリンですね。今朝届いたばかりの新しい茶葉で、インドで作られたものです。
なんということのない会話。
まだ茶葉の名前も覚えていない、いとけない彼女の質問はこう続く。
へえ、じゃあこのお茶は、どんな色をしているの?
待ち受けていた私は手に持っていた辞典を開く。
小豆色……いや、褐色でしょうか。橙が濃く、鮮やかです。秋摘みの紅茶ですので、春のものより濃く、味が強くでるのです。
褐色、褐色。
彼女は口の中で言葉を繰り返し、思い出そうとするように目をまたたかせた。私の方に顔が向けられる。
それって、私の髪の色と同じ?
ええ、お嬢様の方が少し軽やかで色が薄いですが。
なら、私は今、じぶんとおなじ色の紅茶を飲んでいるのね!
大発見のように喜ぶ彼女のその目は、紅茶のカップを正確には覗き込んでいない。
そうだ、私の服は今日はどんな色? いつもとおなじ青色?
彼女の問いは矢継ぎ早に続く。
私は彼女の世界に少しでも彩りをつけるべく、辞典をめくった。
#無色の世界
『無色の世界』
色なんてない、白黒の世界
それが、段々と色付いてきた
最初はぼんやりと、今は鮮明に
何でかわからないけど、白黒の世界よりも気分がいい
原因はわからないけど、でも、カラーの世界になって嬉しいよ
無色とは、何色だろうか。
私はきっと目を瞑った時の世界が無色なのだろう。と考える。
眩しい世界に疲れたらちょっと少し一休み。今日も無色の夢に揺蕩うのだ。
私を無色の世界に閉じ込めないで
私を無色の世界に染めないで
私の心を「無色」にしないで
「無色の世界」
そんな世界に放り出されたら
私の澱んだ色の塊が すぐに知られてしまう
無色の世界
やっぱこの世の中も彩りが欲しいよね。
「十人十色ってなんだよ」
(色盲について関係の無い人が書いています。不快に思われたら申し訳ございません。)
私は色が分からない。
色ってものがあることは小さい頃から教えてもらったけど違いがわからない。
色盲とか言うやつらしい。
みんなは信号を赤、黄、青と言う。
違うのは知っている。
私はどこが着いているのか。
場所で判断する。
光ってるか、光っていないのか。
それしか分からない。
この世界に色んな色があるように、
人も色んな人がいるんだ。
十人十色。
学校で教えられた言葉。
まぁ確かにものは見えてるし
違いが全くないとかじゃない。
でも他の人には別の何かが見えているようだ。
私には一生分からない。
例えが私にあっていない。
それも十人十色だよね。
話したらこう言われた。
わかんないんだって。
たくさんの色を見てみたい。
十人十色を目で理解してみたい。
無色の世界
「『無色(むしき)』の世界、てのがあるらしい。」
先生白は無色に入りますか云々、色彩学で無色とは色の偏り云々、なお「色を無くした世界」の文章表現は一般的にアレがどうとかこうとか。
今回も相変わらず困惑して途方に暮れて面倒になって寝て、苦悩2日目の某所在住物書きである。
「定義が存在してるから、『無色(むしょく)』ってどんな世界だと思う〜?よりは、比較的書きやすい」
朝っぱらから、娯楽文学の欠けた面白みの無い本棚を見たり、「無色」のサジェスト検索から仏教講座が始まったり。なお無色界とは欲望や肉体・物質的束縛から抜け出した、心の活動のみが存在する世界らしい。
「……問題は『比較的』書きやすいだけ、って話な」
盆に寺の墓参りへ行くことすら億劫な欲望マシマシ衆生に、仏教的無色を説くのは困難を極めそうである。
――――――
むしき。むしょく。どちらにせよ、なかなかに手強いお題ですね。こんな童話的おはなしはどうでしょう。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
一家の末っ子、偉大な御狐目指して修行中の子狐は、お星様が大好きな食いしん坊。敷地に咲く花を星に見立てて、あれはお星様の木、それはお星様の花と、
愛でて、囲って、一緒にお昼寝していたのですが。
何がどこでどうなったか、無論そんなの今回のお題が「無色」だったからにほかならぬのですが、
ある日、子狐はひとつの白水仙が、敷地内の花畑で苦しい、苦しいとささやいているのを聞きました。
「おはなさんが、しゃべってる」
コンコン子狐、自分のことは棚に上げて、白水仙に近づきこんにちは。キラキラおめめで見つめました。
『私のこえが、聞こえるのですね』
白水仙からまた、ささやきが聞こえます。
『私はこの、完全に物質的な、花の根に囚われてしまった魂です。元々はここではない、物質から脱却した、精神のみの世界に居たのです。だから、苦しい』
神道の敷地で仏教的な身の上話。神仏融合とは言わぬのでしょうが、何にせよ子狐ちんぷんかんぷん。
要するにこの花はどこか具合が悪いのだと、そこだけ早合点したのです。
「おはなさん、くるしいの?」
『はい。精神のみの私には、物質の枷は重くて痛い』
「おもちあるよ。おもち食べれば、元気になるよ」
『お餅?いや、私は既に、色(しき)が無いので』
「待ってておはなさん。おもち、持ってきてあげる」
『ですから私は、……あっ、……待……』
結局誤解は解けることなく、父狐が仕事から帰ってきて、白水仙を球根ごと引っこ抜き鉢に植え替えて、『世界線管理局 密入出・難民保護担当行き』と書かれた黒穴にとんと送り出すまで、
子狐はずっと、白水仙がお餅を食べないのを不思議がり、考え疲れて、隣でお昼寝していたのでした。
『子狐、あの、一緒に仏様のお勉強しませんか……』
細かいことは気にしません。このおはなしの著者には、このあたりが「無色の世界」テーマの物語の限界なのです。しゃーない、しゃーない。
無色の世界
何もない世界
あなたにあんなにも恋して
鮮やかな色彩を誇った時は
もう終わったのか
立ち尽くし茫然とする
ひとり
またひとりに戻る
昨日までの世界は、実に鮮やかに私の目に映った。
貴方1色に染まっているのに、彩り鮮やかであった。
今日私の目に映る世界は、無色の世界。
貴方1色が消えただけで、全てが白黒の、無色の世界。
残ったのは、真っ白な喪失感とどす黒い後悔の
白黒の、世界。
目で見えたら
気持ちで見たら
それで色があると
決められるものなのか
無いからといって
その人が欠落してる訳じゃない
無色の世界
手に取り選ぶのは出先にちなんだモチーフや花が印刷された便箋。たまに事前に用意することもあるがよっぽど特別な時だけで基本は現地調達だ。今回訪れた店に置いてあった便箋は無地で何の印刷もなかった。観光地でも商業が盛んでもないから無理もなく。物珍しく店主に見られながらそれを買い上げた。
何も描かれていないシンプルな便箋は久々だ。といってもモチーフが入ったタイプだってワンポイント程度。話題の提供に役立っていたが、一ヶ所に印刷されているかいないかの違いで便箋が大分広く感じる。故郷の雪原みたいにまっさらだ。
ここは町と離れているから、きらびやかな場所も有名な場所もないが、食事処で出される料理はどこか温かみのある味で君が気に入りそうだ。俺が考えたこの場所のモチーフを同封しようか。書くことを頭のなかで整理して書き出しの文を考える。
一目で俺と分かる封蝋が付くから差出人が誰なのか困ることはない。ある程度文はまとまった。ペン先を便箋に置けば『無色の世界』にインクが染み込んで、新雪に足を踏み入れる心地だった。
#12「無色の世界」
僕の心の中は空っぽだった
目標もなければ夢もない
逆に言えば何色にでも染ることが出来る
今はなくてもやりたいことがきっと見つかる
今はよく分からない「やりたいこと」を探す旅に出るのが僕らの航海
航海するなかで見つけた時、その色に染まれる
僕は今はまだ無色の世界にそれを求める
無色から有色へ
私は、本気で絶望した時にだけ見える世界がある…それは、無色の世界だ…自分が「もう本気で無理だ」と思った瞬間、突如現れる無色の世界…頭が真っ白になった時、見える無色の世界…私は、そんな無色の世界が嫌いだ…何故なら、希望を持って、日々生きていたいから…なのに、希望を持って生きていたいのに、無色の世界が見えると、自分で自分に幻滅してしまう…
君は、私を色づけるパレットだった。
君がいなくなった今、私は無色だ。
白い
どっかで聞いた。盲目の人の世界は真っ暗な世界だと思われるが、実際は白い霧の世界らしい。今、私はそれを実体験している。事故で目が見えなくなってしまった。全盲で、治ることはないと医者に言われてしまった。見えなくなったせいで、点字を覚えたり、好きな漫画が読めなかったり、アニメが音だけになって、コ○ンとかの推理アニメ・ドラマでは重要なトリックのシーンが見れなくなったりと、散々な思いをする。でも、耳は良くなった。とても前に情報は視覚が7〜8割使っていると知った(うろ覚えだが)どれだけ目の視える人が視覚に頼っていたのかがわかる。
そして、一つだけいい事ができた。好きな人ができた。私のクラスの人はみんな私を避ける。多分目の見えない人の対応がわからないから、そうするしかないのだとおもう。その人は、私のことを避けない。私の世界は白い。無色の世界だ。その人によって世界が彩られた感覚がする。
たとえ、親切心で優しくしてくれても、私の世界に彩ってくれる。
『無色の世界』より
【無色の世界】
ただ、君が消えた日から僕の世の中の色はなんの色にも見えなくなった、君が隣にいるだけでこんなにも輝いていたのにただ。きみと出会う前に戻っただけなのになんでこんなにも違うんだろうなんでこんなにも苦しくて辛いんだろう、
色がない世界に生きてる心地もしない、君と出会えたことが最高の幸せであり最高の不幸せでもあるきみはこのどちらももっている残酷な人‥
会いたいよ‥
無色の世界
無色の世界には色がない
そらもだいちもとりもさかなもあなたにさえ色がない
ふと考える
これはどんな色なのか
そしたらおのずとみえてくる
色が溢れていく
この世界は私たちより色に溢れているのかもしれない
ではこのちきゅうはどうだろう
無色の世界よりとぼしい色彩
それはあたりまえだから。
私たちが思っているより、
この世界はいろにあふれていふのだ。
無色の世界
桜が散り、春が流れ夏が訪れる。
木々の下には桜の絨毯ができ、アスファルトが少し色めく。
流れる汗と一緒に夏が過ぎると、秋が風にのってやってくる。
新緑に並んだ木々はひらひらと葉を落とし、または紅葉に煌めく。
彩る葉と共に秋と陽も落ち、空から寒さと冬が降ってくる。
季節を賑わせた木々に、今度は電飾が巻かれ、光を放つ。
雪が溶け少しの暖かさと、春が顔を出す。
木々は巡りまた満開となる。
周りを見渡せば色と一緒に季節を感じる。
音楽を聞けば音符に乗って音色がのる。
絵を描けば白から創造が生まれる。
色が溢れた世界、無色なのは人の感じる物事や手に掴めないモノだけだ。
無色の世界にほんの少し色を足し付けて虹色になるように。
そんな人生がおくれたらいい。