『梅雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
梅雨の時期になって、彼女はなぜか楽しそう。
「こっちは雨ばっかでうんざりしてるけど、好きなの? 梅雨」
「うん。だってお気に入りの傘をたくさん使えるから」
日傘兼用じゃないの? と問いかけようとしたけれど、ちょうど教授がやってきて流れてしまった。
家に帰ってから、授業中にふと思い出した「モノ」を探す。私は昔から雨が嫌いだったが、いつからだったろう、と記憶をぼんやり辿って、ある出来事に着地した。
「あ、った」
ピンク色のてるてるぼうずだ。小学生のとき、雨ばかりで不機嫌になった私に母が作ってくれたものだった。
『ほら、かなこが好きな色のてるてるさんよ。これをつけていればきっと晴れるわ』
今なら迷信でしかないと笑うところだけれど、当時の私は素直に言うことを聞いていた。次の日晴れなければ「お願いの力が足りなかったんだ!」なんて真面目に反省して。
それに、手のひらいっぱいの上で笑っているてるてるぼうずが可愛くて、雨の日以外でもちょこちょこつけていた。
「いつからつけなくなったんだっけな」
たぶん中学生になってからかもしれない。単なる迷信だと気づいたのか、母親の手作りマスコットなんて恥ずかしいとか、思春期にありがちな理由だったんだろう。
改めて手のひらに乗せる。記憶のなかよりも色褪せて、取り付け用のゴムは伸びてしまっているけれど、笑顔は変わっていない。
「ゴム変えればつけられそう」
口元を緩めながら、顔の部分を軽く撫でる。
もしかしたら本当に雨が上がるかもしれないけれど、あの子には秘密にしておこう。
お題:梅雨
この時期特有のひんやりした雨の日が続くと、ルーカスは落ち着かない。自分ですらソワソワしていることを自覚しているのだ、領主様やベルンにも気づかれている。元々甘い領主様が更に甘やかしてくるし、いつもなら嗜めるベルンがそれを黙認しているのだ。
だからといってそれを全面的に受け入れられるほどルーカスは子供でなかった。もう再来月には10歳になる。以前はいつか屋敷を追い出されるんじゃないかとヒヤヒヤした時もあったが、2年近く過ごすうちにそんな不安は解消された。領主様は縁もゆかりもない孤児を背負って執事見習いに雇うようなお人好しだし、ミスをしても改善するまで横で見ているのがベルンだ。仮にルーカスが屋敷を離れようとしたら、彼らの方から呼び止められることは予想付く。
その日雨は一日中降り続いた。外で体を動かしてないせいか、夜ベッドに入ってもなかなか寝つけなかった。トイレにでも行こう、起き上がったルーカスは部屋を出て壁沿いを伝って廊下を歩く。昼間はなんとも思わないのに、人の気配がない廊下が、暗闇から浮き出て見える花瓶が、誰かわからない人物画が無性に恐ろしかった。
……肌寒いのは雨のせいだ。ルーカスはそそくさとトイレに行った。部屋までの帰り道、ふと階下を見るとほんのりした光が見えた。ごくりと唾を飲み込んで、恐る恐る階段を降りた。半分ほど降りて光の方に着目すると、それは台所のあたりだと気づいた。
エルンスト様だ!途端に肩の力が抜けたルーカスは、足取り軽く残りの階段を駆け降りて、明かりの付いている台所に顔を覗かせた。
「エルンスト様!」
「うわあっ!…………って何だルーカスかあ、驚かすなよ」
振り向いたエルンストは、どうしたの眠れないの?と言う。台所には、一つ大きなテーブルがあり、四脚の椅子が並んでいる。座りなよと席をすすめるエルンストに甘え、台所に入る。
「いい匂い……コンソメ?」
エルンストが火の元で何かを煮ている。
「そうだよ、具材は何もないけどね」
ルーカスもいる?と尋ね、食い気味に欲しいと言うと笑われた。そこの棚のコンソメと後追加の水、という指示に従い自分の分のそれらをエルンストに渡す。
スープのぐつぐつした音と、ぼうとした火の音だけが台所を包み込む。
ねえ知ってる、静寂を破ったのはエルンストだった。
「夏が訪れる前のこう言う時期に降る雨のことを、とある外国では梅の雨と呼ぶんだよ」
「梅の雨?」
プルーン聞いて思い浮かんだのは、この前食べたお菓子だ。もちっとして、ちょっとカスタードの味に似ていたファ、ファー……
「ファーブルトンね」
「それだ!でも何でプルーンなの」
「えーっと……その地域でもプルーンに似た果実が収穫されるんだけど、その収穫時期がちょうど今みたいな雨が続く季節だからだよ」
「そうなんだ、雨じゃなくてプルーンならおいしいのに」
梅の雨にはもう一つ説があるのだが、母国語の読み書きを習い始めたばかりのルーカスに、表意文字と表音文字の違いや同音異義語をわかりやすく教えるのは難しかった。
そろそろか。エルンストは火を止めた。
ファーブルトンまた食べたいなあと呟くルーカスのために、明日料理人に頼んでみよう。
梅雨
たたたた たんたん たんたたん
白く煙った 空と街
霞がかった 山と塔
ゆううつそうな 人のため息
だだだだ ざんざん かんたたん
喜び満ちる かえるの歌と
濡れてつやつや 光る木々
雨音鳴らして 踊る傘
雨がしとしと降ってきた
いえ
サーサーかな
そう思っている間に
ざあざあ降ってきた
色鮮やかな紫陽花の上を
雨粒たちは
ぴょんぴょん飛び跳ねる
ぴょんぴょんぴょんぴょん
飛び跳ねる
紫陽花たちも嬉しそうに
器いっぱいに雨を抱き込んで
その色を一層輝かせている
『梅雨』より
湿気なのか気圧なのか、息が詰まる感覚が取れない。
まるで水中の中にいるように呼吸がしづらく、たくさんの錘を服につけているように身体が重い。
昔はそんな風に考えていなかったけど、今ならこれは気圧の影響だということはわかる。
だるく、重くて陰鬱。これが今の私が思う梅雨の印象だ。
あー、仕事帰りたいなぁ。
梅雨
学生の頃
♪風が吹いたら遅刻して
雨が降ったらお休みで
とハメハメハ大王のこどものように
雨降ったら 家から出たくない
と思ってた
社会人では そうはいかない
くせっ毛で前髪がうねるのやだな
学校が警報でなくなった。登校してわずか15分での下校。往復で2時間かかる登校。やめてくれよ。
息がしづらいか。空気がみんな水になってしまったものな。身体が重いな。お前は泳げないものな。
お題 梅雨
『梅雨』
長雨が続く
毎日毎日雨が降る
でも、僕は知っている
雨が止み、雲が晴れたとき
降り注ぐ太陽の光が
とても気持ちいいものだと
雨は憂鬱ですね。って言ってみた。
バイト帰り送ってくれたおばちゃんは
主婦もこなしてバリバリ働いてるおばちゃんは
車に落ちる雨粒の形が面白いから雨が好きって言った。
こんな余裕のある大人になりたい
#梅雨
『梅雨』
6月の代名詞でもある梅雨。
嫌な時期と言われている梅雨だけど、これから暑さに干上がる水不足問題に頭を抱えている人や、農家やアマガエル辺りには喜ばれる。
私は梅雨を嫌だと思うタイプだ。だって雨が降ると言うだけで通勤がひたすらに面倒くさい。自転車を使うから尚更だ。
カッパを着るという行為だけでもう面倒くさい。しかも、カッパを着ても太ももは濡れるし、フードは風で吹き飛んで意味ないから頭も濡れて結局イライラする。傘をさして運転なんて危ないことはチキって出来ないから、尚更カッパに頼るしか無くて結局イライラする。
しかも6月は私の誕生月なのだ。毎年誕生日にランドに遊びに行くのだが、案の定天気が優れなくて困ることなんていくらでもあった。
だから、私としては梅雨はそんなに好きでは無いのだ。
窓の外から雨音がする
この雨音のひとつひとつが
膨大な雨粒がなにかとぶつかる音だと考えると
なんだか寒気を覚えてしまう
小さな雨粒のひとつひとつが確かに存在するように、
この宇宙に一人一人の人間が確かに存在すること
不思議で怖くて、雨音が何かを語りかけてくるようで、
でもそれは多分考えすぎで、
雨はただ、地面を濡らしていく
梅雨。ちょうど今日は雨のことを書こうと思っていたんだ。流石にこれだけひどい雨が降ればね。雨のことを書きたくなるってものよ。
昨日からもう降ってた気がするけどどうだったかな。同じような毎日を過ごしてるから曖昧だけどとにかく今日は雨だ。ざーざーと雨が降っている。
ネットでは学校休みだとか計画運休だとか話題になっている。確かにちょっとどしゃ降りだった時間もあった気がするけど今は普通の雨だ。夜には止んでしまいそうなくらいの普通の雨。
でも天気予報だと今日から明日の朝までずっと雨らしい。朝一瞬だけ止むみたいだけど。とにかく今日は雨日より、正に梅雨だ。
今日は買い物に行こうと思っていたけど家に籠ろう。なにをするでもなくだらだらする日だね。まぁ毎日そんな感じで過ごしてるんだけど。
どうすればよいのかわからず
これが恋なのか、どうなのかもわからず
はっきりとさせないままに
そのまま置きっぱなしにしていた初恋
いつの間にか傷んでしまった
遠い思い出
どうすればよいか今ならわかる、それなりに
傷ませてしまうような、切ない恋を再び
雨に紛れた蛙のように
雨音に紛れて気付かれなかった蛙のように
私が、すうっと傷んでしまう前に
「梅雨」
梅雨の空
湿った空気に
澱む息
ため息のつど
どっと疲れる
シトシトよりももっと細かくて
傘をさしても意味がなくて
ミスト状の雨は
静かに僕らを濡らしていく
視線の先に
楽しそうに嫌がりながら
「この雨マジうぜぇ」
なんて笑いながら歩く君の後ろを行く
おもむろに立ち止まった君は振り返って
袖を捲くりあげ晒しだされたその腕を
こちらに伸ばす
「早く帰ろうぜ」
伸ばされたその手を取ることに
躊躇う僕の手を
彼は強引に、それでいて優しくとり、指を絡める
向けられた眼差しに
想いが溢れてしまうかのように
知らずキュッと力が入れば
キュッと握り返されて
一歩
踏み出し
同じ速度で歩きだす
近くて遠かった僕たちは
2023.6.20/梅雨
🫧梅雨🫧
雨のピアノを聞きながら
過ごす日々…
時に優しく
時に激しく
水の旋律は
どこまでも美しく〜
雨の日は…
ゆっくりと時間が流れてゆく
🫧✨🫧✨🫧✨
微睡の外で、ぱたぱたと窓を打つ雨の音が響いている。
かびやすいし、洗濯物は乾きにくいし、眠いし、だるいし、いいことなんてほとんどない季節だけれど、この音だけは好きだな。
ぼんやりとそう思って、布団の中で寝返りをうつ。
子守唄のような音に包まれて、また、眠りの中へ落ちていった。
//梅雨
梅雨、じめじめを連想するが 時折り雨上がりの虹に遭遇する。鬱陶しい日々にウンザリしているほど何気ない虹の光景がうわーっと言う感嘆をもたらしてくれる。恵みの虹と名付けたい。
洗濯物は乾かないし
湿気は、まとわりついてくる。
傘を持ち歩いての
外出も何かと気を使う。
けど…
静かな部屋で雨音を
聞くのは心地よい。
雨粒が、何かに落ちて
ポタポタと定期的なリズムを刻み…
様々な雨の日の音が
家を包み込んでいく…。
そうして、私も布団に包まって
少しだけ居眠り。
梅雨が明けたらまた
暑いだの、スーパーは寒いだの
言っちゃうんだから。
外出しなくて良い日は
少しだけ、休息というご褒美。
恵の雨にかこつけて、瞼を閉じた。
【お題:梅雨】