『桜散る』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
お題《桜散る》
美しい夢が終わる。
散ってしまうこともひとつの、舞台。
哀しいことじゃない。
寂しいことじゃない。
そこからまた、新しい夢が咲いて、また散る。
いつだって舞台は魅せるものだ。
〜桜散る〜
春になると、また桜が満開に咲きまして、
季節が変わろうとする頃にはまた桜が美しく散りました。
春になると、また恋を初めまして、
色が消える頃にはまた切なく恋が散りました。
夏になると、桜木の色が見えず、
散っても色を変え、葉が咲き誇っています。
夏になると、奥にある恋音は聞こえず、
散っても色を変え経験が咲き誇っています。
秋になると、葉が散り、桜木の色が切なく見えます。
秋になると、寂しくなり、人肌が恋しくなります。
冬になると、桜木は静かに生き、春を待っています。
冬になると、私の恋音は静かに落ち着き、春を待っています。
そしてまた春になり、夏になり、秋になり、冬になり…
私達はいつも何かを繰り返している。
桜散る
ふうっと溜息一つ。薄曇りの道を俯きながら、一人歩いている。時折やはらかな春風が吹いて、並木の桜が小さく揺れる。不図立ち止まると、視界の端で薄紅色の花片がそよいだ。そして、少し強い風が吹き、はらはら桜が溢れる。思わず顔を上げると、長い髪のあのひとの横顔が遠く見えた氣がした。
二人揃って歩く桜並木。
珍しく日本に訪れた兄は、不思議そうにその光景を眺めていた。僕とは違うサラサラな金髪に青い瞳を持つ兄は、この花見スポットと言われる桜並木では浮いて見える。
「日本人は、皆サクラが好きなのか?」
こちらに目を向けず、桜に釘付けになりながら兄は問う。
僕ら兄弟はバラバラに住んでいたこともあり、兄は桜というものがどれ程日本で愛されているか知らない。昔会った時に説明すると、たかが花に何故そこまで必死になる?と純粋に首を傾げていた。
確かにそうだなと思ってしまった自分は、かなり日本の考えが染み付いていたようだ。
「皆かは分からないけど、好きな人は多いと思う。」
ザーっと音を立てて吹く風に、誘われるように散る花びら。ふわふわと舞う桃色が兄の色白の肌と色素の薄い髪を際立たせ、美しい絵を見ているような錯覚に陥るほど綺麗だった。
「…確かに、君が言う通り綺麗だな。」
今まで桜に向いていた青がこちらに向き、兄は少しだけ口角を上げて笑う。
久しぶりに見た兄の笑顔に、ぴしりと固まってしまった体で、目だけがその美しい光景を焼き付けようと動く。僕の黒髪と濡羽色とは正反対な容姿を持つ兄を、密かに誇らしく思う。昔はそれがコンプレックスになったこともあったけど、兄が褒めてくれた瞳の色は今では僕の自慢だ。
突然、今までで一番強い風が低い音を立てて吹いてきた。思わず目を瞑り、強い桜の香りが僕の鼻を刺激する。風も強いし、そろそろ帰ろう。そう言おうとして薄目で兄を見た。けど、
「に、さ…」
声は掠れた。ふわりと舞った地面の桜と振り落とされた花びらに、兄は隠されたように姿を桜の吹雪の中へと消した。
目の前が桃色に染って、ふと昔の記憶を引っ張り出した。
『美しい人は、桜に攫われるんだねぇ。』
近所のおじいさんが優しく微笑んで言った言葉。
美しい人、兄にピッタリだ。
「兄さん!」
思わず桜の中に伸ばした腕が、空を切る。なんてことはなく、がっしりと誰かに掴まれた。風が止み、目の前に兄は現れた。なんとなく今まで考えていたことが恥ずかしくなってきて、誤魔化そうと頭の中に言葉を浮かべる。何を言おうか迷っていると、兄の方が先に言葉を紡いだ。
「桜の中に消えそうだったな。」
どうやら兄弟、同じことを考えていたようだ。
少しおかしくなって、笑ってしまった。
桜が咲いたから見に行こう
そう言ったのに
すれ違いが続いた
やっと行けたのは満開が過ぎた頃
ところどころ緑の葉をつけた桜並木を
2人で歩く
少し肌寒い4月の夜
冷たい風が吹き抜けた
薄桃色の花びらが君の周りを彩る
桜の妖精になったみたい
そう言ってはにかむ君の笑顔は
なによりも綺麗だった
ひらひらと、桜が散る。
散る姿まで綺麗だ。
私もこんな風に、美しく散りたいな。
【桜散る】
重たい曇天から打ちつける雨が、満開に咲き誇る桜の花を散らしていく。道行く人々が残念そうに息を漏らすのを聞きながら、僕はビニール傘の向こうにべったりと貼りついた薄紅色の花びらを見上げた。
「何でそんな憂鬱そうな顔してるの?」
不思議そうに首を傾げた君が、僕の横でくるりと自身の差した空色の傘を回す。その足取りは、天候に似合わず軽やかだ。まるで君の周りにだけ、晴れた青空が覗いているかのように。
「もったいないなって思ってさ。せっかく咲いたのに、雨なんかで散っちゃって」
溜息混じりに応えれば、君は不意に足を止めた。傘を少しだけ持ち上げて、雨に打たれる花々を瞳を細めて眺める。
「でも、私は好きだなぁ。だってさ、雨が頑張ったねって言って、桜の花を包み込んであげてるみたいじゃない?」
その横顔に浮かんだ笑みの朗らかさに、息が止まるかと思った。天からこぼれ落ちる雨粒が君の笑顔を、満開の桜の花びらを、美しく飾り立てる。
――ああ。いつだって君の語る世界は、どうしようもなく優しく鮮やかだ。君の隣に立っていると、つられたように僕の世界までキラキラと輝いていく。
「……そうだね。桜雨も悪くない」
微笑んでくるりと、僕も自分の傘を回す。ビニール傘の向こうには、桜の花びらが雨の雫に包まれて、柔らかく透けていた。
今年は雨降りの時期に重なって、すぐ散ってしまった気がする。
桜は散る時、舞う時が美しいとされていて、
言わんとしていることはわかる。
でも、私は散り切って緑の葉をつけている、今の桜の樹の方が生き生きしていると思う。
生命力がみなぎっている、というか。桜の薄桃色の花びらは、あまりに儚くて見ているうちに不安になる。
散って根元に落ちた花びらたちは、すっかり茶色く変色していた。
桜は散る時が綺麗、と言った人は、終わった後の姿なんて見向きもしてないんだろうな。
自分だってその中の1人に過ぎないことは、うすうすわかっているけれど、見えないふりをして。
残酷だなあ、と思った。
『桜散る』
桜散る
あなたと観た桜は
毎年観る桜とは格別に違う景色だった
歳を取る幸せをあなたと噛み締めたい
桜散る景色すらもあなたと観たら美しい
【桜散る】
「桜の樹の下には死体が埋まっている、って……よく言うじゃない?」
「……それが、どうかしたのか?」
「どうして、わざわざ死体なんて埋めたのかな? それに誰が埋めたの? どんな得があるわけ?」
「知るかよ。だいたい、それは文豪が書いた短編の有名な一文であって、本当に死体が埋まってるわけじゃない」
「そうなの?」
「そうだよ。短編の内容だって、ほとんど主人公の妄想だし」
「ふーん……すごい想像力だね。その主人公は」
「美しく咲き誇る桜に不安を感じて、そんなことを考えたらしい」
「……あぁ、それなら少し分かるかも」
「なにが分かるんだ?」
「だって完璧なものって、見ていて憂鬱にならない?」
「…………」
「まあ本当に埋まってたら、それはそれで感動的だと思うけど」
「そうか?」
「うん。ほら見てよ、あの桜」
「散ってる」
花筏が流れていく。
三枚、四枚、寄り集まった薄紅色。
あんな小さく儚い舟に、わたしは乗れない。
だからただ、そうっと祈る。
わたしのこの気持ちを連れていって。
散った想いと、未練の種を乗せていって。
それとも、涙のひと粒くらいなら、一緒に旅立てる?
#桜散る
―桜散る―
さよならと手を振って
繰り返す季節に別れを告げる
来年また会いましょう
小さな花びらたちは
瑠璃色の空に消えていった
#桜散る
桜が咲けば春が来る。
新しい人との出会い、お世話になった人との別れの季節。
桜の雨が降る。
まるで優しく降る雪のように。
桜の花びらが散れば、夏への準備が始まる。
葉桜から、夏の太陽に輝く美しい深緑の木へ。
桜が散ると、なぜだか悲しくなる。
私たちの心と似ている、そう思えなくもない。
年に一回しか見せない、''桜''からのメッセージ。
それはきっと、あなたの背中を押すメッセージだろう。
『桜散る』
サクラチル。
滑り止めの大学からの不合格通知を手に、僕はため息を付いた。
本命の国公立より少し偏差値の高い大学とはいえ、滑り止めに落ちていては話にならない。
奮起して机に向かう――という気にもなれず、ベッドに体を投げ出したところにスマホに着信が来た。
「はいはい〜」
『よぉ、どうだった』
相手は一つ年上の幼馴染。僕は起き上がらぬままに答えた。
「だめだったー」
『まじか。あー、まぁ、今年はあそこ倍率上がったって話あったしなぁ』
「やめてよー僕が行く年に上がんなくてもいいじゃんー」
模試の結果で倍率はある程度わかっては居たが、実際上がったらしく僕はぼやいた。
『他の大学で受かってるとこはあるんだろ? 気楽にいけよ』
「あるけど、都内だもん。そっちに行くには国立かここしかないのにさ」
僕が拗ねた声を出すと、電話の向こうで笑う気配がした。
『そんなに俺に会いたい?』
「会いたいよ。…………その、今まで毎日顔合わせてたのに、半年に一回しか会ってないしさ」
即答して、すこし恥ずかしくなって、言い訳がましくごにょごにょと言葉を続ける。
『はは、嬉しいよ。俺も、いつお前が来てもいいように部屋引っ越したんだから、ちゃんと合格しろよ』
「え、なにそれ聞いてないんだけど」
『俺と一緒に住むならっておふくろさん折れたんだけど、知らなかった?』
「そんな事一言も聞いてないんだけど!? だから急にOK出たの!?」
『俺、めちゃくちゃお前のおふくろさんに信頼されてるからな』
最初、家から通えるところでいいだろうと反対されていたのが、急にOKが出たのはそういうことだったのか。
『親公認で同棲出来るんだから頑張れよ』
「……ん、頑張る」
それから少し雑談してから通話を切って、僕は机に向かった。現金なもので、勉強するやる気が出てきた。
4月、桜咲く中で幼馴染と一緒に歩くために、頑張ろう。
サクラチルのはこれが最後だ。
2023.04.17
付き合ってます。
桜散る
桜散る
美しく
またね
来年も
ここで
会おう
力強い反面、とても繊細で。
破天荒なくせに、温かな優しさがあって。
無茶ばかり仕出かすくせに、誰よりも気遣ってくれる人。
そう言えば、よく花に例えられる人だった。
纏う色からそう呼ばれるようになっていたけれど、こちらも似合うんじゃないかなぁ、なんて。
”桜散る”中で振り返ったあの人は。
誰よりも力強くて、誰よりも繊細な、桜のような人だと思った。
桜散る
#桜散る
もう桜の時期は終わってゆく___。
満開だった桜が、
そよ風に吹かれ、
ヒラヒラ舞って、桜散る。
その中でも、
桜吹雪ほど美しいものは無い。
桜、
散って終わりを告げる。
今年も素敵な思い出を作ってくれてありがとう。
来年もよろしくお願いします─────。
好きなタイプ
僕がもし突然いなくなっても
ちゃんと自分で生きていける人
/桜散る
桜の木の下には死体が埋まっている。
死体を栄養にうつくしい花を咲かせる桜の花の寿命は恐ろしく短い。
「綺麗なのはいいけどこんなにも短いなら、桜の栄養には、なりたくないなぁ」
「また死ぬ事かよ」
舞い散る花びらを楽しむこともしないアイツを見て、相変わらずかと呆れた。
「そもそも、僕が死んでもあんな綺麗な花は咲かないか」
「間違いねぇな」
ただふたりで笑った。
アイツは自殺をどれだけ言ったって辞めないし、俺はそれを否定しない。嫌いあっているくせに、互いにいなくてはならない、唯一無二の存在だとも認めている。
付かず離れずのこの絶妙な距離感が心地良い。
桜が散っていく。
アイツもいつかその命を散らすのだろうか。
「手前といると花見も満足に出来ねぇな」
「君が連れ出したくせに何さ。それ」
「次は夏の花火でも見に連れ出してやろうか?」
「なぁに?デート?」
ふざけたやり取りも冗談なのは半分だけだ。残り半分は、案外俺の本音だったりする。春が終われば夏が来る。夏には花火、秋には紅葉、冬には雪景色。
それらを見させる為に生かす。
アイツが居なきゃ俺の人生がつまらねぇからな。
今年も、桜の季節は終わった。
毎年、あっという間のように思う。
あまり見上げることはしなかった。
きれいだとは思うのだけど、
いろんな事がスタートするこの季節とセットの
ように咲くのが、この季節を苦手とする私の
気持ちがあまり動かないのだ。
満開も素敵だが、それよりも散っていく様が
私は好きだ。
はらはらと散るその姿がきれいに思う。
儚さや一抹の寂しさを感じながら、
その中を歩いたり運転したりする。
その時間が好きだ。
きっと来年も、散っていくその姿に
心を奪われたりするのだろう。
「桜散る」