死にたい少年と、その相棒

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  /桜散る

桜の木の下には死体が埋まっている。
死体を栄養にうつくしい花を咲かせる桜の花の寿命は恐ろしく短い。

「綺麗なのはいいけどこんなにも短いなら、桜の栄養には、なりたくないなぁ」
「また死ぬ事かよ」
舞い散る花びらを楽しむこともしないアイツを見て、相変わらずかと呆れた。
「そもそも、僕が死んでもあんな綺麗な花は咲かないか」
「間違いねぇな」
ただふたりで笑った。
アイツは自殺をどれだけ言ったって辞めないし、俺はそれを否定しない。嫌いあっているくせに、互いにいなくてはならない、唯一無二の存在だとも認めている。
付かず離れずのこの絶妙な距離感が心地良い。

桜が散っていく。
アイツもいつかその命を散らすのだろうか。

「手前といると花見も満足に出来ねぇな」
「君が連れ出したくせに何さ。それ」
「次は夏の花火でも見に連れ出してやろうか?」
「なぁに?デート?」
ふざけたやり取りも冗談なのは半分だけだ。残り半分は、案外俺の本音だったりする。春が終われば夏が来る。夏には花火、秋には紅葉、冬には雪景色。
それらを見させる為に生かす。

アイツが居なきゃ俺の人生がつまらねぇからな。

4/17/2023, 12:21:42 PM