『本気の恋』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『本気の恋』
デートの待ち合わせをすっぽかされ、もう帰ってしまおうかと思っていたところに現れた彼は他の女とデートをしていた。
「でもほんとは今日、彼女さんとデートだったんでしょ?」
「あぁ、あれは遊びの彼女。本命はおまえだよ」
タイミングよく、あるいは悪く私のことを話題に出してくれたので私は自分の置かれた立ち位置を知るとともに、私と約束していたデートの場所にのこのこと現れた彼の浅はかな言動に大いに幻滅した。恋はいつでも本気で立ち向かうものだと思っていたから、なおのことだった。
「ねぇ、」
本気で立ち向かっていた私は彼の前にわざわざ現れた。薄笑いを浮かべた彼は私と付き合っている間に私がどういう女なのかをどこまで知っていただろうか。
「あれ、まだいたんだ。ごめん今日でわかれて、」
彼の頬を鷲掴み、それ以上の言葉を遮る。彼の前ではかよわい女を演じ通していたから、まさか片手で吊り上げられるとは思ってもいなかっただろう。恐怖に引き攣り、助けて、と言いたげな顔を見ているうちに、私も彼もお互い本当のことを知ってはいなかったのだとはたと気づいて虚しくなった。力が抜けたことで地面に崩れ落ちた元彼氏に駆け寄るような女はいなかった。
「本気の恋って難しいな……」
ひとつの恋が破れて、情けなさとも悲しさとも判別のつかない涙が一筋だけ流れた。
本気の恋
(本稿を下書きとして保管)
2024.9.12 藍
本気の恋、どんな感じだろう。
今まで流れで。なんとなくできたな。
後悔することでもないけど、なんか残念。
お題『本気の恋』
本気の恋なんてドラマでしか見たことがない。
まわりでゴールインした人の話を聞くと、正直「好きで好きでずっといっしょに居たいから結婚」じゃなくて、「何年も一緒にいるし、彼氏をつついてその気にさせた」だの「さめてたけど、こいつしかいないんだもん仕方ないじゃん」だの「相手、私のこと好きでいてくれるし、まいっか」だの……まぁ本気で恋して結婚した人なんていないんだなと思う。相手の男が気の毒だなとも思ったりする。というか、よくそういう相手といちゃいちゃできるよなぁと冷めた目で見てしまう。
私は、そういう同性達と同じわだちを踏みたくてなくて、「本当に好きになれそうな人」を探して恋人を探したり、結婚相手を探したりするが何年もかかってることを考えると「私にはそういう人がいなかったんだな」と本気で思うようになる。
ドラマみたいに喧嘩しあいながら最後は心から通じ合えるような恋愛に憧れていた。でも現実は「このひとでいいか」くらいでみんな付き合ったり結婚したりしてるんだ。
私もそういう人を探しては、近寄られる度「あ、ノーセンキューです、やめてください、きしょい」ってなるのを繰り返している。だが、私の場合、嫌いな食べ物を何度か口にしたら食べられるようになったのと同じようにしないと、人並みに恋愛することが難しいんだと思う。
なんだか、恋愛とか結婚って、我慢なんだなと思う。
あの人が好きだった…。
私を見て欲しくて
私の名前をよんでほしくて
彼を知りたくて、
私をしってほしくて いろんな話をした。
明るく気さくで優しい彼は誰に対しても平等 そんな彼は大勢の人達に囲まれる人気者だった。
常に人に囲まれるような彼の目に留まるよう 無造作に伸びた髪を切り毎日時間をかけヘアアイロンで整え、苦手な化粧を雑誌で勉強した。同じファッション雑誌に載っていたトレンドの服をチョイスしてみたり、ハンカチやティッシュ小物にも気を使うようにした。
彼とあるイベントのペアが同じになった際、
『最近おしゃれじゃん。似合ってるよ、』
と褒めてもらえた。嬉しかったがその気持ちを上手く言葉に出来ずに会話が弾むことはなかった。折角のチャンスをものに出来なかった歯痒さから私は内向的な自分の性格を恨んだ。
人と関わるのが昔から苦手で、常に受け身で流されてきた。今更、〔親しくなりたい人との関係の構築〕なんてどうやってするのかわからない。でも、彼ともっと関わりたい。その気持ちは増すばかり。
ネットや本を使って参考にしようと色々調べていくうちに知識だけは増えた。彼や彼以外の人との挨拶を頑張れたが、コミュニケーションの実践が難しかった。
相手と目を合わせ、聞き手に回って、おうむ返しをして相槌を打つ。笑顔を作る。俯かない。
少しづづほんの少しづつ
変化は着実に。
彼が私を呼んでくれる事が多くなった。
業務に関する事や社交辞令ということには気づいていたが本当に嬉しかった。『明るくなったね。話しやすい』と言われれば、私の胸は高鳴り一層努力を続けようと思えた。
彼を好きになってから季節が一周する頃になると何かと彼と組まされる事が多くなり、必然と彼と話す事が多くなった。しかし、私には人に話せるような趣味も得意なこともなかった。そこで私は内面を磨き、いろんなことに挑戦して経験を身に付けた。
努力を惜しまなずに苦手な事でも一生懸命に取り組んだ
あんなに一途に人を想うこと
私は一年と数ヶ月の間に全力を尽くした。
本気で恋をした
本気ではない時点で「恋」とはいえないと思っているけど、仮に「本気ではない恋」というものがあるのなら、それは遊びでありゲームであり、相手を弄び欺くものでしかないと思う
本気の恋は崇高であるのに対し、本気ではない恋はとことんロクでもないものでしかない
本気以外は実にくだらないので、そんなものはなくていいと思う
君は私をキープとしてしか見てなかったよね?本気ってなんだったの?
本気の恋をしたことがあるか
恋焦がれて待ち遠しい、熱烈な愛を捧ぐ
もう死んでもいいほどに焼き切れるほどに好きな思い
その本気の恋を、したらどうなってしまうのだろう
本気の恋
本気の恋ほど相手を疑い、試したくなる
だから本気の恋ほど失う事が多い
恋なんてそんなもんだ
わかっているけど、また好きになる
最近沢山話してくれるようになったんですけど、脈ありますか?
無い?そう
#本気の恋
「そうそう。恋愛系も、お題の常連なんよ」
「初恋の日」、「恋物語」、「失恋」、「本気の恋」。「恋」だけでも3月から数えて4回目。
お前とも長い付き合いになった。
某所在住物書きはお題の、特に「恋」の字を見た。
「愛」も含めれば「愛を叫ぶ。」に「愛と平和」、それから「愛があれば何でもできる?」の7回目。
今後、更に増えるものと予想される。
「……そういや『本気の恋』、『愛があれば』とは言うけど、『本気の愛』とか『恋があれば』とかは、あんまり言わない気がするわな。なんでだろ」
そもそも「本気の恋」の反対とされる「遊びの恋」は、本当に「恋」であろうか。
物書きは首を傾け、黙り、視線を下げた。
――――――
昔々のおはなしです。まだ年号が平成だった頃、9年10年くらい前のおはなしです。
都内某所に、4年ほど前上京してきた珍しい名字の雪国出身者が、ぼっちで暮らしておりまして、つまり附子山というのですが、
田舎と都会の違いに揉まれ、打たれ、擦り切れて、ゆえに厭世家と人間嫌いを発症しておりました。
異文化適応曲線なるカーブに、ショック期というものがあります。
上京や海外留学なんかした初期はハネムーン期。全部が全部、美しく、良いものに見えます。
その次がショック期。段々悪い部分や自分と違う部分が見えてきて、混乱したり、落ち込んだりします。
附子山はこの頃、丁度ショック期真っ只中。
うまく都会の波に乗れず、悪意に深く傷つき、善意を過度に恐れ、相違に酷く疲れ果ててしまったのです。
大抵、大半の上京者が、大なり小なり経験します。
しゃーない、しゃーない。
「附子山さん!
ケーキが美味しいカフェ見つけたの。行こうよ」
さて。そんなトリカブトの花言葉発症中の附子山に対して、まさしくハネムーン期真っ最中と言える者が、附子山と同じ職場におりました。
加元といいます。元カレ・元カノの、かもと。未来が予測しやすいネーミングですね。
「何故いつも私なんかに声をかける?」
絶賛トリカブト中の附子山は、「人間は皆、敵か、まだ敵じゃないか」の境地。
加元も敵と見なして、無条件に突っぱねます。
「あなた独りか、他のもっと仲の良い方と一緒に行けばいい。何度誘われようと私は行かない」
加元は附子山の、威嚇するヤマアラシのような、傷を負った野犬のような、誰も寄せ付けぬ孤高と危うさと痛ましさが大好きでした。
なにより附子山のスタイルと顔が、加元の心に火を付けたのでした。
このひとが、欲しい。
このひとを身につけたい。
恋に恋する加元にとって、この所有欲・独占欲の大業火こそが、すなわち本気の恋でした。
「だって、附子山さん、いっつも何か寂しそうな、疲れてそうな顔してるんだもん」
己の声、言葉、表情それら全部を使って、附子山の傷ついた心に、炎症を起こした魂に、
ぬるり、ぬるり、加元は潜り降りていきます。
「美味しいもの食べれば、元気になるよ。
ねえ。一緒に、カフェ行こうよ」
それは、表面的には附子山をいたわり、寄り添う言葉に聞こえますが、
加元の心魂の、奥の奥の最奥には、獲物の心臓に手を添える狩猟者、執着者の欲望がありました。
そして悲しいかな、附子山はそんな加元の「奥の奥の奥底」に気付くことが、
まったく、ちっとも、できなかったのです。
「……あなたが分からない」
何度突っぱねても、どれだけ拒絶の対応をとっても、こりずに優しく言葉の手を伸ばしてくる加元に、
ぽつり、怯えるように、少し懐いてきたように、でもまだ相手を威嚇するように、附子山は呟きました。
この数ヶ月後、加元は望み通り附子山を手に入れ、
しかし「実は附子山、心の傷が癒えてみたら、自然を愛する真面目で心優しいひとでした」の新事実発覚で地雷級の解釈違い。
無事加元にも、ショック期が堂々到来します。
「アレが解釈違い」、「これが地雷」、「頭おかしい」と旧呟きアプリに愚痴を投下していたら、
さぁ大変、その投稿が附子山にバレます。
元カレ・元カノの名前どおりの結末を歩んだ加元の本気の恋は結局、瓦解・崩壊・大失敗です。
一方、附子山は加元の執着から逃げるべく、合法的に名前を「附子山 礼(ぶしやま れい)」から「藤森 礼(ふじもり あき)」へ。
連絡経路を全部絶ち、就職場所も居住区も全部ぜんぶ変えて夜逃げを敢行。
スッパリ縁切りして、新天地で親友に助けられ後輩に恵まれて、友人とも再会して、
そこそこ幸せに、穏やかに、暮らしましたとさ。
本気の恋…
恋は落ちるものだと
認識していたので
本気かどうかは
深く考えた事が無かった…
気になる人を
無意識に目で追ってる…で
もう恋に落ちてる🤭
✴️148✴️本気の恋
本気の恋
①
「私、君のこと…好きかも…?」
私は、「微妙な恋だった」。
「私…好き、かも…」
私は、「曖昧な恋だった」。
「好きです、付き合ってください」
彼は私に、「本気の恋をした」。
「お願いします」
私は彼に、「お返しの恋だった」。
数ヶ月後。
「可愛いから、だから逃げちゃったんだよ」
彼との初対面の話。
可愛いという言葉。好きという言葉。
私は、「いい人だから付き合った」。たったそれだけの理由。けれど、今では違う。
私は彼を、「前よりも」好きだと思っている。
私は彼に、「本気の恋で」、「彼にお返しをしたい」。
「」の中のみ読んでみても、物語が成立するお話。
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②
ああ、彼氏が居るのに。
あの友達のこと、どう思ってるのか自分でわからない。
もしかして、私…いや、私は彼が居る。彼は私の事を好きでいてくれているし、わたしも彼のことが好きだと思う。少なくとも、付き合った当初よりかは。
「本気の恋」って、なんだろうな。
自分の思いを代弁してくる人と話すと楽しい
価値観の共有が嬉しい
《本気の恋》
今日も私はいつものように、本部で政務に励む彼に連れて来られている。
私が闇の眷属に魅入られし者として、生活を共にしながら彼に監視されているから。
それでも私はこの世界に来る前からずっと彼のことが好きだったので、監視とは言え一緒に暮らせるのは物凄く幸せで。
その上、真面目で実直な彼はそんな私を人として丁寧に扱ってくれてる。
だから毎日、ますます彼のことが好きになっていった。
今は、お昼時。
彼と一緒に食堂でご飯を食べていると、テレビから観光名所特集が流れてきた。
その名所の中に、夏の初めに彼と一緒に行った蓮の池が紹介されていた。
夜明けから午前に、小さくてもはっきりした音を鳴らしながら花開く蓮の花。
向かいに座っているあなたも、その映像に目を止められている。
あの夜明けの光に包まれた池の畔であなたと一緒に見ていた蓮の花がポンと音を立てて咲いた瞬間、私はつい嬉しくなってあなたへ向き直りガッツポーズをしてしまって。
そんな女らしくない行動を取ってしまった私を見たあなたは、花開く蓮の邪魔をしないように声を潜めてくつくつと笑いだして。
そのあなたの無邪気な心からの笑顔を目の当たりにして、私の胸にもポンと新しい花がまた咲いた。
あの時は照れくさくて恥ずかしくて、思わず叫びそうになるのを下唇に力を入れる事で何とか堪えてた。
すると彼は笑顔のまま手を『すみません』の形にしたと思うと、また無言になり蓮の開花に目を向け始めた。
湿原地帯の視察がてらではあったけれど、着いてくる私のことも気遣って色々な場所を見せてくれたあなた。
いつもは人当たりのよい笑顔だけれど、不意に無邪気な笑顔を見せてくれるあなた。
今の自分の立場を考えれば、これだけでも幸福だ。
それでも想ってしまう。
もっとあなたの心からの笑顔が見たい。
あなたを喜ばせたい。
いずれ離れることになるだろうと分かっていても、ずっとあなたのそばにいたい。
テレビに映る池一面の蓮の花を見ながら自分の欲張りな願いに思いを馳せていると、向かいの彼が私を見て言った。
「この蓮の開花は見事でしたよね。また来年、次は視察抜きで一緒に見に行きましょうか。」
私は、息を飲んだ。
それは、世間話のようなさらりと何気ない一言のような口調で。
彼の表情は、ふわりとした優しい笑顔に満ちていて。
当たり前の事のように、あなたは私との未来を考えてくれている。
いいの?
ずっと、あなたのそばにいても。
私ばかりが嬉しくて、本当にいいの?
思わず、私はこの気持ちを告げそうになる。
でも、本気だからこそ言えない。
その一言がきっかけで今の安らぎが壊れて、この幸せが取り戻せなくなるかもしれないから。
私はその言葉を飲み込んで、今伝えられる最大限の気持ちを彼に伝えた。
「はい。また来年、一緒に蓮を見に行きたいです。」
・本気の恋
大好きな彼にあえて連絡を素っ気なくしたり、曖昧な態度をとって不安にさせたり……。
振り向いて欲しくてこんな事を大好きな彼にしていたけれど、よくよく考えたら私が本気で好きだったのは彼じゃなくて「彼に追いかけられてる私」だったみたい。
私って、思ったより私のことが大好きなのね。
へー、本気の恋ねぇ。それは、何だと思う?そう言われると、それは、その人が関わることで、心に変化があり、自分から動こうと、全力で何かをしてあげたいと思えるか、どうかだろうね。
恋は取引なし、一方通行で、渡すだけの心、つまり、増やした心、思いの切り崩しである。
だから、切ないのだ。
そして、恋愛はお互いの育てた心の交換ですね。
どちらかが怠ると、無かったことになります。
ちなみに、愛はお互いに、育てて積み重ねて、共有し合う心だから「愛し合うって」認識です。
→『彼らの時間』7 〜タイマー〜
好きな人の側にいたいのに遠避けようとしてしまう。彼に悪いことをしているのはわかってる。でも、いつか来る「終わり」を僕は恐れている。
「んー、なぁんかイミフメイ」
杏奈ちゃんは腕を組んで天井を見上げた。
最近、杏奈ちゃんとカフェ時間を過ごすことが多い。初めはヒロトくんと3人で合ってだけど、近頃は来ないことが多くなった。
手帳の一件以来、僕たちの仲はギクシャクしている。杏奈ちゃんも僕たちが気になるようだ。
「綿貫くんは尋斗から名前で呼ばれたり、ペアグッズがイヤ、と?」
杏奈ちゃんの押しの強さに負けて、色々と話してしまった。両親のこと、ヒロトくんへの気持ち、などなど。話してないのは……、あのヒトのことだけ。これは流石に話せない。
「イヤっていうか、思い出の数が多いと関係解消のとき、お互いに辛すぎでしょ?」
「石橋、叩きすぎ!」
杏奈ちゃんにピシャリと言い切られて、僕は思わず背筋を伸ばした。
「そこまで行くと、慎重通り越して地雷系クサくない?」
「そ、そうかな?」
「だって、綿貫くんは尋斗を名前で呼んだり、自分の家に引っ越させて一緒に暮らしてる。でも尋斗からのオファーは何も受け取りたくない。これってどうよ?」
そう言われると確かにヒドイ……。ヒロトくんの優しさに甘えて彼を振り回してる。
「綿貫くんの恋愛観って、タイマーみたい」
「タイマー?」
「終わりに向かってカウントダウン」
杏奈ちゃんは、珈琲をビールのように飲み干した。「尋斗と綿貫くん、いい感じだと思うよ。本気の恋なら、タイマー切って、もっと尋斗に歩み寄ってやんなよ」
家への帰り道。杏奈ちゃんの言葉を考えながら歩いていた。
本気の恋かぁ。杏奈ちゃんの言う通り歩み寄ってみたいなぁ。でも歩幅を間違えたら、ヒロトくんは僕を鬱陶しく思って、消えちゃったりしないかな……。例えば、あのヒトみたいに。「寄りかかるなよ、重いヤツだなぁ」含み嗤い。イヤだな、今日はやたらと彼を思い出す。
「ん?」
スマホの呼び出し。ヒロトくんかな? 話し合いたいって言ってみようかな? それとももう少し自分の中でまとまってから――。
―昴晴、前見ろよ。
違う、ヒロトくんよりも低い嗤い声。これは……。
頭を上げる。今まで考えていたことがすべて吹っ飛ぶ。脈打つ鼓動。脈打つ頭。絞り出した声は僕のもの?
「司さん……」
思い出が実物となって、僕のマンションの前に立っていた。
テーマ; 本気の恋
本気の恋
「本気の恋がしたい」
先程彼女と別れたばかりの彼はそう言った。
「無理でしょ」
「そんなことないって」
隣に彼を好きな人がいるのに気付かず毎回他所に行く彼に、本気の恋なんてできるものか。
#本気の恋
帰り道、近所を車で通りすぎると、ジョギング中の夫を見かけた。
窓越しに手を振ったら、夫も気づいて笑顔を見せた。
あれっ?と思ってドキリとする。
大昔の若い頃の顔に見えたのだ。
どこにもいなくなったと思っていたのに、ほんの時たま夫の中に、本気で恋したあの彼がちらっと覗く。
ほんの時たま、ね。