『未来』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
アキレスに追われる亀のように、
明け方に白くかすむ月のように、
ずっと懸命に走り続けてみても、
僕の未来はいつも遥か先にある。
辿り着く日が来るかも判らない。
千年前のご先祖様が夢見た世界、
そのどれか一つが今だとしたら、
僕の今は誰かの未来といえるの?
もし千年後も世界があったなら、
そのどこか、その未来のどこか、
僕の想う未来を生きているひと、
居てくれたら嬉しいのだけれど。
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未来
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所感:
(6月17日のお題、書きかけでした)
はたして未来は誰かに託せるものでしょうか。
―未来―
もし未来を知っていることができたら
未来を読むことなんてできたら
きっと、ものすごく楽だ
何も苦労せずに済むんだろう
ただその未来を信じて行動すればいい
でも、分かりきった未来に向かって進むなんて、
友達にネタバレされたドラマを見るようなもの
きっと味気なく、本来の何倍だってつまらない
途中でどうでもよくなって諦めちゃうんだろう
そう思うと、世界ってよくできてるんだなぁって
それぞれが丁度いいバランスで動いていて
それぞれのメリットやデメリットなんかが
折り重なり合って世界が成り立ってる
夏の香りにつられて食べてしまった。
甘くて冷たい、魔法みたいなお菓子。
食べているときの幸福感!
なくなったときの喪失感…
小さな涼しさが残る。
氷菓。
そうだ、今日をアイスの日にしよう。
自分だけの、特別な。
もう来年の夏が楽しみだ。
【未来】
いつかは過去になること。
それが今、そして未来なんだろう。
「未来」
遥か未来、
誰にともなくこんな音声が流れるかもしれない。
「最後の1名の心肺停止を確認しました。
これより、発電所を最低限の機能で維持するダウングレードを実施します……………」
そしてさらに遥かな時が過ぎて、遠い遠い宇宙からやって来た旅人は、蒼い海と翠の森のうつくしい星と、人類の再来を歓迎する古い古いコンピューターに驚くんじゃないかな。
俺は隣の男が未来に不安を持っていることを知っている
俺の夢を叶えるために神輿へ無理矢理乗っからせた男
こいつはその夢が叶ったら、俺の隣にいる理由がなくなるんじゃないかとか、才能を抜いた自分はつまらなくて飽きられるんじゃないかとか
そういったことを悩んでる
なんで知っているかというと記憶をなくす勢いで飲ませたからだ
そうしたらさっきの悩みをお前そんなに喋れたのかと驚くほどに饒舌に打ち明けたのだ
翌朝は酷い頭痛と共に目覚めたようで何も覚えていないのだという
酒で潰したことはさておき、俺がそんな薄情な男に思われていたことが心外だった
確かに自分は飽き性だし、この先関わる大勢の人間の中には面白いやつは凄いやつ、もしかしたらこの男に似たようなやつと会うかもしれない
しかし、衝撃的な出会いに加えて、紆余曲折、複雑多岐あってそれでも一緒にいると決めた相手を、夢が叶った程度で手放す気などさらさらない
それくらいに俺はお前に惚れ込んでいるというのに、なぜ分からないのか
興味を持ってくれた奴が俺が初めてなんて言うけど、俺だって誰かにここまで心乱されるのはお前が初めてなんだけど
そもそも最後まで一緒にいてよって約束の前に、退屈しない人生に連れてってやるって俺から約束したし
夢が叶った後は俺の一生を賭けてどんなにこいつが凄いかをプロデュースしてやるつもりだ
そう俺が考えているとはつゆ知らず、今日も無表情で不安を抱えているであろう相棒に駆け寄る
此方を映す度に光を宿す双眸は、気づかない方が難しい
その裏に抱えているものも、分かりやすく伝えてくれても良いのに
シラフで一言悩みがあると言ってくれるまで、言葉が足りないとどうなるか思い知らせてやろうと思う
お前も少しは俺の苦労を味わえってんだ!
人生どんなことが起きるかなんて誰にも予測できないけれど、
それでも僕は遠い未来の 歳を重ねた君の隣に居るのは変わらず僕であってほしいと
この指輪に願いを込めて
『未来』#23
これからプロポーズをしようとする男性の思いにしてみました。
未来のこと。
なんて、明日のことでさえわからないのに、わかるはずがない。
立てた予定も、その通りになるなんて確証はない。
確かなことが何もない、不安だらけの毎日だけど、それでも前に進むのは…
1日でも多く、愛するキミの幸せそうな笑顔を見たいから。俺の名を呼ぶキミの声を、何度も何度も聞きたいから。そのためなら俺は、先の見えない暗闇でも手を伸ばせる。だからキミは、笑ってて。キミがずっと幸せでいられるように、俺は頑張るから。
【未来】
未来は永遠に続いている。
自分勝手に終わらせられるなんて思い上がりだ。
今日のテーマ
《未来》
「もしも未来が分かったらどうする?」
読みかけの本を閉じて彼女が言う。
その手にあるのは流行りのライトノベル。
「今読んでるのは未来が分かる主人公の話なの?」
「正確には『死に戻り』かな。不遇な事態に見舞われて非業の死を遂げた主人公が、気がついたらなぜか過去に巻き戻っていて、そんな不遇な未来を回避するべくあれこれ頑張る話」
「ふうん」
それで『未来が分かったら』などと言い出したのか。
頷きながら彼女が示しているだろう前提を自分に置き換えて考えてみる。
「もしも未来に何か不遇な出来事が待ち構えているとして、それを回避できる手段があるなら、私もその主人公と同じように頑張ると思う」
「うん」
「逃げ出す手段があるなら逃げ出すのもありかな」
「それはお勧めしないな」
本を置いてにっこり笑う彼女に何だか嫌な予感を覚えて私は少しだけ身を引いた。
すぐに椅子の背もたれに邪魔されてそれ以上の距離は取れなかったけど。
まさかとは思うけど、もしかして彼女は何か私の未来に関することを知っているのだろうか。
そんな現実的じゃないことを考えてしまうくらい、彼女からは言い知れぬ圧のようなものを感じる。
私はごくりと唾を飲み込んで、そっと声を落として彼女に聞いてみることにした。
「何か、心当たりでもあるの?」
「……ないこともない、かな」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 私死んじゃうの!?」
「それは分からないよ。人間なんていつか死ぬものだし、それが明日なのか1年後なのか50年後なのかなんて分からないでしょ。病気で明日をも知れぬ状態なら別だけどそうじゃないんだし」
「それはそうだけど……」
だったら何でそんな思わせぶりな態度なんだと問いたい。
何か言いたげな表情は「本当に心当たりはないの?」と言っているようで、私は恐怖を感じながらそれを紛らわせるように二の腕を擦る。
思い当たること、思い当たること――
知らず知らずの内に、彼女の雰囲気に飲まれて心当たりを考える。
「じゃあ、ヒント。こないだの試験の結果」
「あ……」
言われてスーッと血の気が引いた。
そうだった、こないだの試験はヤマが外れて散々だったんだ。
「大丈夫、大丈夫」と高を括って前日も勉強せずに遊びにいったりソシャゲのイベントに夢中になって、試験直前に適当にヤマかけしてノートを復習っただけで挑んだ結果、今まで見たこともないような点数を取ってしまった。
当然親からはこっぴどく叱られてお小遣いも減らされた。
もしも次の試験でまた同じような成績を取ったら夏休みのお小遣いは完全にカットすると脅されている。
「前回に引き続き今回もあんな成績だったら、夏休みは補習必至だよね」
「う……」
「お小遣いもカットされるって言ってなかったっけ?」
「うん……」
「夏休み、みんなが遊んだり部活に打ち込む中、わざわざ登校して補習受けて。お小遣いもないからどこにも遊びに行けず。今夢中で遊んでるそのソシャゲが原因に違いないって、スマホ没収される可能性もあるよね」
「いや、さすがにそこまでは」
「スマホは没収されないまでもゲームはアンインストールしろって言われるかもしれないよね」
にこにこ笑いながら追い打ちをかけてくる友人に対し、私にできるのは唸り声を返すことくらい。
伊達に小学校の頃から私の親友をやってない。彼女はうちの親の行動パターンをとてもよく理解している。
きっとこれは杞憂ではなく、今回も同じ轍を踏んだらたぶんきっと間違いなくそういう未来が訪れるだろう。
何が悲しくてそんな灰色の夏休みを過ごしたいと思うものか。
「私、今日はあんたの勉強を見るために来たはずなんだけど?」
「はい! すみません! ごめんなさい!」
私は慌ててゲームをセーブし、そそくさとスマホの電源を落とした。
そうだった。つい、いつも遊びに来た時と同じつもりで流しちゃってたけど、今日の目的はそれだった。
遅まきながらそのことを思い出し、大いに反省の意志を示して教科書とノートをテーブルに広げる。
成績の良い彼女は学校の先生なんかよりよっぽど教え方が上手い。
彼女に教われば、いくら頭の出来がイマイチな私でも期末試験できっと平均点以上を取ることが出来るはず。
非業の死を遂げるほどではないにしろ、どこにも遊びに行かれない補習で埋め尽くされた灰色の夏休みは高校生にとって充分すぎるほどの死活問題だ。
しかもお小遣い全面カット付きだなんて笑えないにも程がある。
私は姿勢を正して頼もしい親友に教えを請い、そんな不遇な出来事を回避するべく全力で勉強を頑張ることにしたのだった。
【未来】
「私、自分の未来を知りたいんです‼︎」
占い師という立場上、仕方がないとはわかっているが、ただ漠然と「未来を知りた」くて会いに来る人間がやたらと多すぎる。
特に最近、ある著名人からの依頼を受けたところ、「この人の占い、めちゃくちゃ当たる!」と依頼者自身がSNSに投稿したことでこのテの依頼が殺到してしまっているのだ。
「未来、といってもいろいろありますよね。仕事に関することや恋愛に関すること、あとご家庭に関することっていうのも。具体的には、どのようなことをご希望ですか?」
と、できるだけ占う範囲を絞ろうとしても
「とにかく自分がこれからどうなるか知りたいんです。人生、うまくいくのかダメになるのか、今のうちに知っておきたいんです」
という答えが返ってくる。要するに、自らの人生の行方をさっき会ったばかりの占い師に丸投げしようとしているにすぎないのだ。
「未来を知りたい、ですか。私の占いでは、残念ながらそれはできないですね」
「えっ⁈ どういうことですか」
「未来って、今の時点で決まってるもんじゃないんですよ。自分次第でいくらでも変えることができる。私の占いでできるのは、あなたが自分の未来をつくるお手伝いなんです」
「未来を…つくる?」
「はい。あなたが自分の運命のハンドルを握ることができれば、未来をつくることは可能です。私はその手助けとして占っているだけです」
「…私にも、運命のハンドルは握れるんですょうか」
どうやら、彼女は自分の人生を丸投げすることからは抜け出せそうだ。
「さぁ、一緒に未来をつくりましょうか」
ここから、私の本来の仕事が始まるのだ。
『未来哲学』
まだ来ぬ時を嘆くものがいる
現状から予想し得ることは
どれも不幸なことばかりだからだ
まだ来ぬ時を心待ちにしているものがいる
現状から予想し得ることは
どれも今とは違う世界が広がっていると
信じているからだ
まだ来ぬ時というものは
全て人間の産み出した世界である
十年後の未来はどうしてるかなんて
想像でしかみることはできず
実際に十年経ったら、未来ではなく今になるのだ
その想像の世界が人を生かしも殺しもする
人間が産み出したはずなのに
人間は未来という概念が操るカラクリ人形となる
未来のために努力したり
未来を嘆いて死んだり
未来に喜んだり
未来を恐れたり
まだ来てさえいないのに
人は未来に振り回されて生きている
勘のいい奴っていうのは偶にいる。
こちらの心を予め読んでいたかのように振る舞ったり、起こる出来事を事前に知っていたかのように対処する。
まさにそんな超能力みたいな力を発揮する奴が、俺がいま教育係を受け持っている職場の新人くんだった。新人くんはこちらが指導する余地もなく仕事の仕方も完璧で、俺は自分の存在意義を一瞬見失いそうになりかけた。そんな精神状態のせいもあってか、俺はつい新人くんに「君、いったい何者?」と、そんな冗談のような質問を本気でしてしまう。
「あ、実は自分、未来から来ました」
しかし返ってきた新人くんの答えは、俺の質問なんか霞むほどに突飛なものだった。
「・・・・・・え、マジで?」
「はい、マジです」
目一杯に両瞳を丸くさせた俺に、「未来って言ってもほんの五十年後くらいからですけどね」と、新人くんは呑気に笑う。
「え、でも、何で君この会社で働いてんの?」
率直な疑問だった。
「実は僕、本当は今からその五十年くらい後にこの会社に入社したんですけど、やっと仕事にも慣れてきた頃、大きなミスをやらかしちゃいまして・・・・・・」
この会社の社員でやらかしたミスと聞いて、俺はまさかと考える。
「まだ試作段階だったタイムマシーン、間違って動かしちゃったんですよね」
それを聞いた瞬間、俺の中であることが閃いた。それは、会社の命運を左右するほどの閃きだった。
「いやー、未来に帰るのが怖くて。だったら運良く同じ会社に入れたし、このまま働いちゃおうかなって」
彼はその事実に気付いていないようだが、俺はこの会社に自分の人生を捧げることをひそかに決意する。
彼がいればいま我が社が壁にぶち当たっているタイムマシーン事業の道が開ける。なんせ彼は我が社のタイムマシーンで過去に来た実績を持ち、きっと時間を渡ることに成功した実物までもを、所持しているのだろうから。
【未来】
お題︰未来
今生きている、この末に未来がある。
末に来る。
苦しいと藻掻き嘆いた末に。
《未来》
不確定なことほど不安だけど
楽しみなことは他にない
過去の失敗を糧にして現在が苦しくても
未来には きっといい事があると信じて
未来の夢に向かって 前へ前へ進め!
若い時にできる事を夢に向かって進め!
未来
捨てた未来
夢見てた社会とは全く違うものだった。
人間関係はうまくいかず、上司は無能。
家出してうちにきた弟も賄うことにもなった。
正直、弟を賄うことなど出来ないくらいに生活が苦しかった。
弟が家に戻ってからはお金に余裕がでてきた。
けど、自殺願望があった。
上司からのパワハラ、後輩からのいじめ。
死のうと町を漂う。
男がふらりと近寄ってくる。
「お姉さん、君には前から目星をつけてた君は有能だ、うちの会社来ないか引き抜きに来たんだけど」
その言葉に涙がでそうになる。
未来を捨てずに生きてよかった。
俺は小学校の二年生の時に地元の学校に転入した。
言葉の発音がおかしいということで、俺の周りにはいつも俺の発音を真似して笑う男子生徒が取り巻く。女子生徒は遠くで取り巻いてくすくす笑う。
好きな子に罰ゲームで告白されて、笑いものになったこともあった。
中学は親の一方的都合で、私立ではなく公立に通うことになった。当然小学校からの繰り上がってくる奴らが多い。
俺の存在はたちまち広がり、いじめは激しくなった。
今日は英語の教科書がバラバラになっていた。
その前は国語である。
カバンの中身ごと、溝に捨てられていたこともあった。何かがなくなるのはよくあることだ。
俺の日本語の発音は相変わらずおかしいまま成長し、ずっと発音でからかわれた。
帰り道にこづかれたり、カツアゲなども当たり前。随分と搾り取られていた。俺のすべての小遣いは奴らのために消えていったと言っていい。
ただ、俺はスマホだけは死守した。持っていることすら悟られないように。そしてスマホすら持たされない貧乏人として、更に笑われることとなった。
そのなかでも、俺は成績は上位をキープし続けていた。それが気に入らずいじめがさらにエスカレートしていったが、少なくとも成績を落とすことはできなかったし、しなかった。なぜなら俺には目標があったから。
ある時、親に助けを求めたことがあった。親はその話を聞くと、怒りの形相を浮かべ、次に顔をしかめたあと、俺ににある提案をした。
その提案で励ましてくれただけで、俺は十分だった。
そして、ついにスマホを見つけられ、溝に捨てられてしまった。奴らは下品な笑い声を上げて、証拠は消えたと安心しきった顔で去っていった。
……とまあ、ろくでもない学生生活を送ってきた。我ながらよく頑張ったと思いたい。
ちなみにスマホはあと4台持っていて、動画や音声の証拠はバッチリ収めてあるので全く動揺はしなかったが。
そんなことが中学の三年間続いた。
卒業まで長かった。
進路については一番信頼できる先生と、家庭教師にのみ話してある。
海外でトップレベルの高校にいくことを。
なぜなら俺は英語のほうがスムースに話せ帰国子女だ。
社会勉強とやらで、日本での生活をおくらせた親には一時的に恨みもあったが、今となってはそこそこ許せるようになった。
今までの日本での思い出したくない不愉快な生活など、思い出とやらで振り返ってしまうものなど、さくっと捨ててしまうことにする。
俺は卒業アルバムを他の教科書と一緒にくくって、資源ごみに分類した。
そして8年後。
奴らが成人し、就職先が決まる頃。
親の提案通り、すべての証拠とともに奴らの名を伏せて、何があったかをノンフィクションとして出版した。
その後、ネットの正義感あふれる特定班が動き出したそうだ。
奴らがどうなったか、俺をかばうこと一つしなかった同窓生がどうなるかなど、俺にはどうでもいいことだ。
スッキリした俺は海外で有名大学院に入り研究に忙しい。そんな未来を掴み取るまで、頑張ったかいがあった。
お題:未来
ー未来ー
何が起こるか分からない未来に、
「絶対」を使うのは信用できない。
誰かに言われたことがある。
私も未来が怖い。
でも、だからこそ
私は私に「絶対」を言う。
ほんの少しでも、勇気をつけるために。
お題:未来
今まで、目の前にはレールがあって、未来に不安などなかった。
そのレールはどこまでも続いていて、自分はそれに沿って生きていけばいいのだと思っていたし、そんな生き方に不満もなかった。
だというのに、それは急に目の前からなくなった。
親の会社が倒産し、両親が自殺した。
親戚や知人は掌を返して離れていった。
大学には奨学金でなんとか通い続けられているが、生活費を切り詰めないとならず、付き合いにもいけず、友人は少なくなった。
とりあえず学校にも通えているし、生活もなんとかできてはいるが、これからどうしたらいいのか、途方に暮れていた。
「先が見えないなんて、何を当たり前のこと言ってんだ」
そう、心底呆れたと言うのは離れていかなかった数少ない友人。
バイトを紹介してくれたり、食事に誘ってくれたりと、何かと気にかけてくれる、面倒見のいいやつだ。
「お前みたいに何もかもが決まってるようなやつのほうが少数派なんだよ」
「それは、分かってるつもりだけど。正直、先が見えない状態で歩いていける皆が凄いと思う」
「俺は何もかも決まってるほうが窮屈でやだわ」
「俺は、これからどうするべきなんだろう」
ぼんやりとそんなことを呟くと、友人が肩をすくめた。
「考え方変えてみりゃいいだろ。これまでの考え方を変えるなんて簡単なことじゃねぇんだろうけど、何もないなら何でもしてみりゃいいだろうが」
「なんでも?」
「生き方は何も一つじゃない。真っ暗なのはお前がそう思い込んでるだけだろ。道はないんじゃなくて、何本も、どこへでも続いてるんだよ。分かれ道もあれば細い脇道だってある。そういったところを覗いてみて、色々試してみて、何がしたいのか見つけりゃいいんだよ」
「けど、その先どうなるか分からない」
「約束された未来なんてねぇんだよ。失敗することなんて成功することより多いだろうし、会社が倒産することだってあるだろうし、突然事故に巻き込まれたり病気になって死ぬかもしれない。そんなこと言ってたら生きていけねぇわ」
当たり前のことのように友人は言う。
そんな友人が、酷く強く、輝いているように見えた。
「まぁ、あくまで俺の考えだし、それを押し付ける気はないし、お前の場合は色々壮絶だからすぐに切り替えろってのは無茶なのは百も承知してる。立ち止まってこれからのことを考える事が必要なんだろ。いつか進む気になったら考えりゃいい。話くらいなら聞いてやるし、相談なら乗ってやる」
本当に、この口の悪い友人は面倒見がいい。
友人は随分と減ったが、彼が友人として残ってくれたことを、感謝せずにはいられない。
「あぁ、その時は頼む」
結局、何も解決なんてしていない。
相変わらず目の前は真っ暗のままで、右も左も分からないけれど。
それでも、ほんの少しだけ、一歩を踏み出せるような、そんな気がした。