『最悪』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
最悪
買ったばかりの服に染みがついた
最悪だと思ってたけど
家に帰る頃には忘れていて
そのまま洗濯機に放り込んだ
消えてよかった
あーあ最悪だ
君がそのことを知ってしまうなんて
君にだけは絶対バレたくなかった
今までの努力も
これからの未来も
迎えるはずのない運命も
全て無駄になった
あっはは
もう笑うしかない
だから僕は意志を捨てた
自らの責任の石も
自らの運命を左右する意思も
悪魔という名の川に落とした
お題『最悪』
生きていれば最悪だと感じることは多々ある
あの時の最悪に比べたら…
あの時よりも最悪だ…
しかし過ぎ去ると
どうでもよくなる
最悪。
ぼくにとっての最悪は、逃れられない記憶でも書いたがやはり家庭の事だと思う。
だからこれを見ていてくれている親世代の人に言いたい
虐待は駄目だと
そして今悩んでいる君へ何かあれば言って欲しい
難しいのは分かっている。
でも、これだけは言える。俺は君を拒絶しない
俺は君の味方でありたい
小さな頃に見た最悪の夢。
雪の降る寒い中母の棺を押す。
目覚めた時は真夏だったけれど、タオルケットをはねのけて寝ていたのだった。
横で寝ている母の顔を何度も確認した。
それから私はタオルケットや布団をしっかりかけて寝るようになった。
今母は高齢者と呼ばれる年齢になった。
最悪の夢が現実になる日が迫っているのを感じる。
今の私はその衝撃に耐えられるだろうか。
事実、顧客の意見によれば、あれは今までで最悪のキャンペーンでした。 彼女は心配性な人なので、いつも起こり得る最悪の状況について話す。 これは今までで最悪で最高の言い訳だ。 それは最悪の起こりうる事だ。
最悪
貴方は、「最悪」と思ったことはありますか?
怪我をしたか、何かを間違えたか、寝坊したか…沢山要因はあると思います。
では…
「最悪」と、何回言ったことがありますか。
私は数えられません。
そのくらい、最悪と思ったことがあるのです。
最悪って、最も悪いと書くのに、何回もあるなんておかしいと思いませんか?最も、になってません。
最悪って言うほどですが、何回もあるって、つまりそこまで最悪ってほどでもないのです。
気にしなくていいんじゃないですか?
伝えたいことは1つ。
人生、気楽でいいんです。
最悪
今日は最悪な事が起こった
ほんとにクソみたいなことまじで二度とないといいけど
『最悪』
''最悪な人生だった''と
後悔しないように
一生懸命、楽しく生きてるつもりなのに
結局は ''最悪な人生だった'' と
思ってしまうのかな
#14
うわ~最悪、
テスト期間中なのに風邪ひいちゃった…
あぁ、きょうは最悪だ、
コンビニバイトで責任押し付けられたし、
授業の内容ぜんぜん聞いてなかったし、
カノジョの思いも理解できなかった、
最悪
なんとなく……
考えてしまうことはあるけれど
そのシナリオを選ばないように
月あかりの下
キミとともに歩いて行く
テーマ“最悪”
何故か
最悪をさいやく
と書く人がいる。
最悪はさいあく
と読むのであって
さいやくではない。
こんにちわ!や
可愛そうと同じ様な間違いだけれど
最悪をさいやくと書くのは気持ち悪い。
口に出して言う場合
方言とか、訛りとかでそうなのかな?
と思うけれど
文字の場合は、ただ単に無知なだけなのかなと
認識されてしまう。
最悪
もうなんなの
好きな人がいるのにかっこ悪い
もう嫌だ
みんな嫌いだ
大嫌い
辛いよ
助けてよ
最悪だよ
全部
最悪
ぱちんこで7万負けた。今月の家賃払えんな。
丑の刻、妖共が浮足立つ重たい夜。
私は泥沼に沈んだような足を引きずって、街を歩いていた。時折、こちらを覗く何かがいるのだが、気にしている場合ではない。何もせずとも時は進む。
私は、ゆったりと黒い空を見上げて、音を立てて落ちる水滴に目を閉じた。その瞬間、まっくろけなものが私に纏わって、ぐるりと世界がまわった。
地面が解けて、空気は液体となり、私を闇へと引きずり込む。忍び寄る死の気配と共に、ずぶりずぶりと泥沼にはまる感覚が心地良い。
『最悪』
誰かの香の香りがして、眩しいものが私の中に流れ込んだ。そろっと目を開く。
雨の雫が、鮮やかな極彩色を含んで光っている。それも一つではなく、少なくとも私の周りはそれらに囲まれていた。ぼやけた視界でも判るほど、それは強く、濃く流れてくる。死の気配が遠のいて、足を絡めた泥沼は、ずるりと堕ちていった。
ぼうっとした意識の中で、君が浮かぶ。何故、此処にいるのだろう。
泣きそうな顔をした君は、私の無事を確認すると、ほうっと表情を緩めて私の頭を撫でた。優しくて、温かい気配は、泥沼の闇よりも深く沈んで私を守る。黒い雨は何時の間にか止んで、白い光が海の奥から顔を出す。私はかなり長い時を歩いていたようだ。ぷつん、と外界との通信が途絶えて、私は波に呑まれる。先程よりも幾分かましになった光は、私に纏わって消える。
外界との通信が戻ったら、彼に礼を伝えなくてはいけないな。そんなことを考えている内に、私の意識は完全に途絶えた。
今は我慢
そのうち風向きも変わるから
その繰り返しこそが人生ってやつだよ
#最悪
最悪
「あ〜!!!もう!!!!なんで出来ないの!!!」
家中に子供の泣き叫ぶ声が響き渡っている。
イライラが止まらない、産まれた時には全然そんなこと無かったのに。俗に言うイヤイヤ期が始まってからこの子のことが可愛いと思えなくなってしまった。
妊娠しているとわかった瞬間瞬く間に煙を巻いて逃げたあいつとの子供を愛せる自信がなくて不安だったけれど、生まれてきてくれたこの子の顔をみてそんな不安どこかに吹き飛んだ。この子は私の子だ、一生愛して見せるとか思ったのに
仕事の疲れも相まって本当に疲れる。夜は夜泣き、早朝に目が覚めて起こされる。朝ごはんはぐずって食べてくれないし保育園にもいきたくないと駄々をこねる。仕事中も体調が悪いから迎えの催促のお陰で肩身が狭い。
1度児相に通報されたこともあった。
全部この子が居なければこんな思いしないで済んだのに
こいつさえ居なければ
手をあげようとして、既のところでハッとした。
だめだ、1週間後には2歳児健診が控えている。
そのまま放置して眠りについた。
「発育が芳しくありませんね、体重も平均以下ですし…なにか心当たりはありませんか」
「その、イヤイヤ期になってしまったのか全然ご飯を食べてくれなくて。食べさせなきゃとは思うんですけど上手くいかなくて…」
「イヤイヤ期は精神発達の面において重要なことですので、お子さんともう少し向き合ってあげてください」
「…はい」
これ以上向き合うなんて無理
元々望まない妊娠だったわけだし、どんどん顔が彼そっくりになっていく
検診の時はすうすう寝てたのに、家に着いた瞬間大合唱
もううんざりだ
なんで私だけがこんな思いをしなきゃ行けないんだ
なんで同年代の子達は遊んでるのに遊べないんだ
なんであの男は今ものうのうと生きてるんだ
「どいつもこいつも…お前なんか、産まなきゃ良かったんだ!!!」
そう言って子供の首に手をかけた
ピンポーンと、間延びしたチャイムが室内に鳴り響いた
「今日遊ぶ予定だったんだけど連絡無かったから来ちゃった、あらあら子供ちゃんご機嫌ななめかな?」
玄関まで行くと、高校の時の友人だった。
もう限界だった。声を上げて泣いた。彼女の笑顔をみてほっとしてしまったのかもしれない
「もう私無理だ〜、母親失格なの、産まなきゃ良かったって毎日毎日思うの、子供を愛せないの」
「頑張ってるね、1人で子供育てるなんて並大抵の事じゃできないのに、周りの支えなしで立たなくてもいいんだよ。もっと甘えていいんだよ。どっぷり甘えなくたっていいの、周りで支えたいって思ってる人私含めているからほんの少し寄りかかってくれたら嬉しいな。仕事大変だったら喜んで面倒見たいと思うし、ご飯作るの億劫だったら一緒に作ろう。なかなか眠ってくれないのなら方法を一緒に考えさせてくれると嬉しいの。打ち明けてくれて、家にあげてくれて本当にありがとう」
彼女にあやされて落ち着いた子供は、キャッキャと笑いながら1人でえ本を読んでいた。
何時ぶりだろう、こんな笑顔見るの
確かに全部自分でやらなければと思っていた
一時も気が抜けなかった
周りに頼りたくなかった、弱い自分を見せたくなかった
完璧でいたい
それでもこのこの前なら、ほんのすこし寄りかからせてもらってもいいのかなと思った。
こんな存在になりたいな
現代社会人1人で抱え込んじゃう人多い気がするんです
子育てだけに限らず色んなことで大変なこととかあると思うんです、起きてるだけで丸儲けとか言うけど実は大損だったりするんじゃないかと錯覚してしまう時もある
潰れちゃう前に少しでも頼ってくれると本当に嬉しいの
同時に何も出来ない無力さに苛まれる
もっと色んな人支えられるように無力じゃなく在りたいです
最悪
「ちょっと聞いてよ! 朝から目覚ましかけ忘れて寝坊するわ、携帯は充電できてないわ、登校中は犬に吠えられるし、自転車にも轢かれそうになるし、昇降口では転びそうになるし、もー最ッ悪!!」
「ついてないねぇ」
「今日絶対占い最下位だったね! 見る暇なかったけど! ……あ」
「どした?」
「教科書入れ替えるの忘れた」
「それはあんたが悪い」
「ううう……てか今日人少なくない?」
「あ、うん。臨時休校だから」
「Why?」
[お題:最悪]
[タイトル:貴族と民主主義と宇宙人]
「はい、私は確かに、宇宙人に連れ去られました」
約五十年前に失踪した女性、神宮寺千鶴のインタビュー映像はその一言から始まった。
「はい、あっ・・・・・・まずは、私について、ですか? えと、私は神宮寺千鶴です。歳は二十四歳、あ、いや七十四? 二十四で大丈夫? 分かりました。あと、結婚はしていませんが、婚約者はいました。仕事は、まあ、事務仕事を。ええ、そうです。よく調べられてるんですね」
インタビュアーの声は聞こえない。音声ファイルの破損か、それともマイクを千鶴の方にしか付けていなかったのか。ともかく、このミスによって仕事がおれの元に入った。
おれの仕事は失踪したインタビュアーに変わってこの映像の質問部分を推測し、この映像と抱き合わせでどこかのエセ科学雑誌に売りつけることだ。
インタビュアーは知人であり、彼が消える直前にこのメモと共に映像が送られてきた。
『俺は消える。売るなり消すなり、好きにしてくれ』
その真意を確認するよりも先に、彼は音信不通となった。彼はその実、友人の多い人間であったので、その中からおれを選ぶ理由があるとすれば、金の無さしかない。ならばメモ書き通り売ってやろう、となるのは自然な事だった。
「私が宇宙人に連れ去られたのは早朝です。朝に一人で散歩をするのが日課で・・・・・・ええ、健康の為です。そこで、その二十分くらい、だったと思うんですけど、目の前に霧が掛かったんです。最初は朝靄だと思っていたんですが、どんどん深くなっていって・・・・・・気づいたら、目の前で動かしてるはずの自分の手も見えなくなるくらいで。はい、そこから晴れたら、もう宇宙船でした。
船内は一つの町のようでした。緑のある住宅街です。ただ、家の一軒一軒が全く同じ形で、地面はプラスチックのように妙に軽かったのを覚えています。はい、なんというか、歩いた時の感覚が。ヒールを履いていたら、そのまま突き抜けてしまうんじゃないかというほどでした。
それで、幾らかその町を探索すると、私以外にも人を見つけました。ええ、宇宙人じゃなくて、地球の人です。みんな日本人でした。いや、ちょっと勝手に名前を出すのは・・・・・・じゃあ、えと、適当に。
まず会ったのがニシジマという男です。彼は作業着を着ていました。工場勤務だったらしく、朝一番に職場に来たら、霧があってという事で。他にも大学生のサトウさん、保育園の先生をしていたハヤシさんも、やっぱり霧があって、と。
その場にいた人はもう六人くらい──私を含めて全員で十人いました。そして皆さんの名前を聞くよりも先に、舟の主が、宇宙人が現れたんです。
宇宙人は人類と同じ人形でした。緑色の皮膚で、背は二・五メートルはありましたけど、確かに二足歩行で、二本腕でした。周りは、特にハヤシさん辺りがパニックになってましたけど、私はちょっと感動しちゃって。ほら、人間が地球を支配できた理由って、二足歩行じゃないですか? これが出来たから、脳が活性化した。だから、私たちは間違ってなかった、私たちは解答を出していたって、そんな気分になったんです。ただ、彼らが日本語を話し出した時に、ようやくタチの悪いドッキリを疑いました。
けれど、それは違う。ドッキリなんかじゃない、と。そう気づいたのは、あまりに喚いて宇宙人の話を遮っていたハヤシさんが・・・・・・殺された時です。そして、偶数の方が都合がいいからと、知らない三十歳くらいの方も同じように。いや、それはちょっと・・・・・・すみません」
ようやく呆けから抜け出たおれは、秒数と質問文を書き記した。千鶴の困惑ぶりから「どんな風に殺されましたか?」といったところだろうか。千鶴の話を頭に落とし込むのに時間がかり、質問文が短絡になっている。
にしても、だ。この話にはあまりにもリアリティが無い。これは金にならないかも知れない、と感じながらも再生ボタンを押した。
「宇宙人はまず、私達を攫った理由を説明しました。それは至極単純で、ある意味、私はそれを聞いて彼らに協力する気になりました。
彼らは実験の為に攫ったと言いました。といっても試験管で薬品を混ぜたり、水素爆弾の威力を測ったりするようなものじゃありません。心理学実験です。彼らは、人間の心を知りたがっていました。そして、もし実験を無事に終えれば、特別な技術を与えると。
彼らはまず、私達を八人を四人ずつの二グループに分けました。片方を貴族、もう片方を奴隷として、好きに振る舞うように、と。貴族とは華やかで、富んでいて、傲慢である。奴隷とは見窄らしく、貧しく、使役されている。この役割を持ったままこの町で暮らす。それが、彼らの行った・・・・・・私達の参加した実験です。
環境と肩書によって、人の行動はどう変わるのか、という実験だと思います。この実験を私は知っていたので、きっと、だから生き残れたのでしょう。
はい、そうです。スタンフォード監獄実験と、それは酷似していました」
スタンフォード監獄実験、とおれはスマホに入力した。
出てきたのは『スタンフォード監獄実験』触れ込みは、史上最悪の心理実験。間違いなくこれだと思い、詳細を調べた。
それはアメリカのスタンフォード大学で行われた心理学実験である。平凡な大学生を看守役と受刑者役に分け、その役を実際の刑務所に似た施設で演じさせた。
実験の目的はだいたい千鶴の語っていた通りの──特殊な肩書や地位を与えられると、人はその役割に合わせて行動してしまうという事を証明しようとしていた──ようだ。
囚人役は足首に鎖をかけられ、ナイロンストッキングで作った帽子をかぶせられた。看守役には制服とサングラスが与えられている。そして、それぞれを演じた。
結果はどうなったか。スタンフォード監獄実験は数日で制御不能に陥る。
平凡な学生であった看守役達は囚人役を虐待するようになり、囚人を服従させる為のあらゆる手段を考え抜いた。辱め、監禁、暴力、にまで発展し、六日目にて実験は中止した。その間、精神を錯乱させた囚人が実験を離脱することもあったという。
これは環境と肩書で人は変わるという一つの例として広く知られる事になる。
「私は貴族でした。そして、ニシジマも。サトウは奴隷役になりました。決め方は恐らく、ランダムです。はい、宇宙人がその場で指名しました。
貴族には町の全ての区画を自由に出入りできる権利、そして法律を作る権利を与えられました。対して、奴隷にはたった一室のみと足枷が。彼らが許可なく外に出たら、罰を与えるように、と。
はい。私を見てもらえれば分かると思いますが、私達はあの町で一切歳を取りませんでした。何か、彼らの特殊な技術のようです。実験を長くできるように、と。
・・・・・・そうです。食事は娯楽としての食事以外必要としませんでした。きっと食欲があったら、もっと悪辣なものになっていたでしょう。
実験の終了条件? それは、宇宙人が満足したら、です。彼らを満足させる必要が私達にはありました。
そして、実験が始まりました。
開始と同時に、ニシジマが法律を作りました。法律は貴族、奴隷を合わせて民主的に決める、というものです。
ええ、私も驚きました。その場にいる誰もが、貴族としての振る舞い、奴隷としての振る舞いをするべきだと考えていましたから。
宇宙人を満足させる。環境と肩書によって人は変わるという証拠を見せれば、解放される。そう思うのは自然な事です。何せ私達はスタンフォードの学生とは違い、小遣い稼ぎでは無く、命を掛けていました。目の前で二人を殺されたんです。すぐに終わらせたいと思うのが、自然でしょう?
けれどニシジマは民主主義を掲げました。明らかに長期戦を想定しています。結果──ニシジマの想定は合っていて、私達は五十年目に解放されたわけですが。
けれど当時は、宇宙人すら反対していました。『それでは実験にならない』と。しかしニシジマはこれに毅然とした態度で応じていました。
彼は要求特性というものについて説明しました。何でも、被験者が実験の狙いを推測して、それに合った行動をとると、実験にならないと。だから、自分達の好きにさせろ、というのがニシジマに言い分です。
宇宙人もこれは認めざるを得ませんでした。何せ実験にならないなら、ただ人間を飼っているだけです。そんな無意味な事はない。
その結果、民主主義国家が樹立しました。投票は匿名で行われ、法を作る権利を奴隷にも与えました。私達にとって都合が良かったのは、貴族と奴隷が同数であった事。どちらかに有利な法は作れない。表面上は、ですが。
そうです。これはどちらか一人が裏切れば終わる平和でした。ニシジマが本当に想定していたのはそこです。ニシジマは、サトウに全区画を自由に動き回れる許可を与えました。その代わりに言う通りの投票をするように、と。
それが分かったのは、実験が始まって十年ほど経ってからです。気づけば私達の国は、貴族有利の法律だらけになっていました。暴力や窃盗を起こしても貴族の方が罪が軽く、奴隷が部屋の外で過ごせる場所が少しづつ狭まっていました。
それでも奴隷が反乱を起こさなかったのは、民主主義という前提があったからです。その実、中身は腐り切っていたわけですが。
それから私達はニシジマとサトウを裁判に掛けました。簡易的な、ですが。勿論、奴隷達は彼らに罰を求めました。けれど、私達は──
すみません。私達もスタンフォード監獄実験と同じく、役に成り切っていました。いや、十年間も貴族でいれば、それは立派な貴族です。私達はサトウにのみ罰を求めました。もしこれが通れば、これまでと同じです。サトウが貴族側についても、奴隷側から消えても、貴族の有利に変わりはありません。
貴族と奴隷の溝はそれ以降、埋まる事は決して無く、むしろ深まっていきました。サトウに求めた罰は投票への不参加。そしてニシジマには立法への不参加です。
はい、そうです。この罰は明らかに私達に有利でした。実験としてはここで終わっていたのでしょう。貴族は貴族であり、奴隷は奴隷のまま。ニシジマが居なくても貴族は自分達に有利な法律を掲げましたし、奴隷の扱いは年々酷くなるばかり。それからは何も変わらず、さらに四十年経ったあたりで、私達は解放されました。
この五十年で、宇宙人は一体何が分かったのでしょう? 人間のこんなものを見せられて、一体何になったのでしょう?
あなたはどう思いますか? ハヤシさん。あなたは一番のラッキーですよ。宇宙人の歳を取らない技術だけを掠めて、実験には参加しないで。羨ましい限りです。宇宙人は殺さずにそのまま家に帰したんですよね?
え? ああ、インタビューアーさんの事ではないですよ。分かるんです、私には。そういう技術を貰いました。
ねえ、ハヤシさん。そんなのズルじゃないですか? あなたが居れば、一体貴族と奴隷のどっちだったんでしょうね?」
インタビューはそこで終わった。
おれは──林鉄兵は即座に身支度を済ませた。この映像を見ているのは、とあるホテルの一室だ。
ドアノブに手を掛けたと同時、扉がドンドンと叩かれる。
特殊な技術を貰った──それがどんな技術なのかは分からない。しかし、それは不老を可能にする宇宙人の技術だという事だけは確かだ。
ところでスタンフォード監獄実験で、最初に精神崩壊を起こした大学生は、その実、実験に耐えられなかった訳ではない。実験中に宿題ができないと分かると、精神崩壊のフリをして実験を辞めたのだ。けれどその演技は世界中の誰もを魅了した。彼の叫びは今なお、多くの教科書に載っている。