『最悪』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【最悪】
白い世界に取り残された。
何も見えない。
何も聞こえない。
手を伸ばしても、何も掴めない。
そしてふと気が付いた。
伸ばす手が、自分にはない。
あぁ
そもそも存在すら無かった。
何故個人と認識してしまったのだろう。
きっと、君の感情に触れてしまったからだ。
こんな想いを抱かせて。
ズルいズルいズルい。
#018 『安らかな眠り』
眠れないんだ、と少年は言った。半年ほど前、突然目の前に現れた魔物に不眠を願って以来のことだという。
眠らずとも体力が尽きることはなく、二十四時間を余すところなく使えるようになるはずだった。ゲーム、動画視聴、ジョギング、音楽鑑賞、筋トレ、時々勉強、しんと静まり返った深夜の一時。そのどれもが楽しく、これまでの睡眠時間のすべてを充ててもまだ時間ぎ足らないほどだと思っていた。
眠りたい。高校の修学旅行の二日目、二徹に挑戦した級友たちが全員脱落した部屋で、真摯に願った。眠りたい。
眠れないんだ、と青年は言った。すぐ隣では名前も知らない女が寝息を立てている。
足りなかったはずの時間をいつしか持て余すようになっていた。やりたいことがあるはずなのに、何もやりたいと思わない。
眠りたい。深酒をして酩酊しても眠気を感じることはなかった。ただただ流れる無為な時間は苦痛でしかない。眠りたい。あらゆる感覚を閉ざし、意識さえも手放してしまいたい。
眠れないんだ、と老人は言った。通常なら意識を失うような怪我をしても、完全に気を失ってしまうことはなかった。眠りとは気絶と同義なのだと思い知らされた。
眠りたい。もう何十年眠っていないのかさえ分からない。かつて眠らなくてよい肉体に変えてくれた魔物が実在していたのかどうかも分からない。
ただ、何もしない時間を何もしないままにやり過ごすことには慣れた。苦痛を感じないわけではないが、他にやりようがないだけだ。
始まったが最後、終わりのない時間を持て余すようになるとは思わなかった。なんて最悪な願いごとをしてしまったのだろうと何度も何度も考えた。
ある時、唐突に初めての感覚に襲われた。胸のあたりがざわつき、呼吸が苦しくなり、何かがいつもと違うと思った。
針先で突かれるような痛みが、やがて剣山でも押し当てられているような痛みへと変わっていく。これは初めてのことだと思った。わけが分からないままにうめき、背を丸め、その場に崩れ落ちた。
そして訪れた少年時代以来の眠りが、すべてを奪った。
お題/最悪
2023.06.07 こどー
最悪
「ほんと、サイアク〜!」
マンガで、ドラマで、ちまたのなにげない会話で、よく目にしたり、耳にしたり。
なにかと出会うことが多くなった「サイアク」という言葉。
でも、何について言ってるのかとよくよく観察してみると、そこまで大したことじゃないように思える事を形容している事が多い。
もちろん、本当に最悪な事件、事故は起こっている。
悲しいことに。
ただ、ちまたで「サイアク」と表現された出来事の体感70%くらいは生死に関わるものじゃない世界に、私は生きることができている。
それだけで、存外幸せなのかもしれない。
1945年を生きのびた祖父や祖母の世代と比べたら。
だから、
わりあい軽めの意味で使われた「サイアク〜」が、跋扈していても、まぁなんとなくいいのかなと思う。
短く吐き出すことで、明日を生きていけるなら。
嫌味を言われると、胃がきゅっとなって嫌なことしか考えられなくなる。
根がネガティヴだから、そんな最悪なことをいつも思い出してまた胃が痛む。
生きづらい。
はあ、もう死ぬほうがマシかもな。
って思ってたのに、日が経つとまた忘れて職場に戻ってしまう。
なんで嫌なのに、辞められないんだろう。
行動に移せない自分も、とことん嫌になる。
ぬか喜び。思わせぶり。いつだって親に期待などしてはいけない。
最悪かぁ。社会人10年目だけど、少なくとも120回は最悪が更新されていっているよ(笑)
雨が降って湿っぽい。部屋が汚くて狭い。
途中であること。終わらないこと。
何もすることがない。
最悪について
もっともわるいことをしています こんな深夜にあなたとカップラーメンチーズのせ
昨日久しぶりにいなくなった先生と話せた。
まだチームスが残ってた。話せた瞬間なにか自分の中で頑張んないと。今のままじゃダメなんだって気持ちになれた。
やっぱり凄いよね
先生は毎回私をいい方向に変えてくれる。
ただ、いざ学校となるとそれどころじゃなくなってしまう。
自分の心の中の不安と葛藤してる。
昨日遅刻指導で反省文を書かされて。親にも先生にも自分の思ったことを書けばいいと言われたから思ったことをそのまんま言葉にして書いてだしたんです。2時間かけて。
なのに、反省してないじゃんみたいな。文章が。
とりあえず埋めろって言ったの誰ですかって感じですよね。
書き直しとか最悪。学校に辛くて行くのに時間がかかったり精神疾患のやつで色々あって遅刻したりなのに遅刻指導はおかしいって思った。
反省も何も...。
確かに社会に出たらちこくはゆるされないことだとはおもいます。
でも、今は違う。
上手くいかない事が多すぎて辛くなる
人生こんなもんかって、何か心で思ってることがあるのにそれを口に出して言うことが出来ない。
言いたいのに言えない。そんな自分も嫌になりそう
苦手な人が増えてく度私の周りからはどんどん仲良くなれる人が減っていって、人が怖くなった。
友達なんていらないって思ってたはずなのに。いざ、いなくなってしまうと、辛くて、孤独だった。
一人でいるのも好きだけど友達もひうようなんだってことに気がついた。
1人じゃできないことも沢山あって人の力を借りないと行けない時もあるってこと。
やっぱり体験してみないとわかんないよね。
でも、今日はなんか一人でいた方が楽だった。気分が良くなかったから。
1人でいればいるほど良くないことばかり考えてしまう。
今の状態で私は社会でやっていけるのか。色んな不安がある。
“最悪”
屋上。
大嫌いなアイツがフェンスの外に立ってる。
深呼吸をして、フェンスを乗り越えた。
フェンスを掴んだまま縁を進む。
「何してんだよ」
こちらに気がつくと顔を顰めて言った。
それに答えずじっと目を見つめると彼は舌打ちをして居心地悪そうに目を逸らした。
そう。
屋上は立ち入り禁止だ。
今は互いにルールを破っている。
ストン、としゃがみ込んだ彼の金髪を風が弄ぶ。
今日は雲ひとつない快晴で、夕陽に赤く染め上げられた空はなんだか幻想的だ。
何も言わずに、唐突に、飛んだ。
一瞬襟を引っ張られたような感覚があって、気がついたら彼が隣にいた。
右手で襟を掴んでいる。
「最っ悪…!」
「最悪だな」
言葉とは裏腹に彼はとても楽しそうに笑った。
ああ、最悪だ。
そんな事を思いながら屋上のフェンスによじ登り、そのまま腰を下ろしてプラプラと脚を揺れさせる。
ようやく決心した頃にはもう日が沈みかけていた。
屋上の縁に足をつける。
深呼吸をしていると視界の端に誰かの髪が映った。
小さい頃はよく遊んだのに、中学に入ってから会わなくなった幼なじみ。
「何してんだよ」
思わず顔を顰めてしまった。
真っ黒な瞳にじっと見つめられて、落ち着かなくて目を逸らした。
監視されてるならお預けかと、諦めてしゃがむ。
地面を蹴った音がして慌てて顔を上げると、幼なじみが地面に向かって落下していくところだった。
咄嗟に身体を乗り出して服を掴んだ。が、重力に引っ張られて一緒に落ちる。
「最っ悪…!」
「最悪だな」
自分のタイミングで飛べなくて最悪。
でも、幼なじみと一緒ならそれはそれでいいのかも
ちょっと水こぼしで「サイアク〜」
醤油が飛んで染付ついて「サイアク〜」
なんて日々の中で数ある小さな最悪な出来事は
今日も今日とで起きるものである。
ポチポチ ポチポチ
画面をタップしてフリックして文字を入力していく
行き当たりばったりの文字の羅列
好き勝手に薄ーい想像力を掻き立てて語彙力皆無の文を打ち込んでいて
なんかだんだんその入力方法に面倒くさくなってきたら
bluetoothでキーボード繋げてサクサクいきますか〜
なんて呑気に思って徐ろにキーボードを【on】にする
一瞬で切り替わって、さぁ続き続き!
って画面見て絶句。
お題の下は真っ白け。
マジかぁ~
たった数行だったけどさぁ、
そんな大した文でもなかったけどさぁ、
『さぁ!どうぞ!お書きください!』
なんて言葉聞こえては来ないけどね
うん、さっきまで書いたモノ、行き当たりばったりであんま覚えてないのよ。
バックアップ?なにそれ状態。
同じ文、書けないのよね、うん。
スクショしとけば良かったのよ、うん、今更ながら思いまふ。ちょっと反省。
うん、あーでもほんと最悪。
サ·イ·ア·ク。
無に帰してしまった画面上の文字の羅列たちよりも
記憶力悪すぎる自分が最悪。
だから今日は途中でキーボード繋げずに最後まで入力して、速攻で【OK】を押すことにする
「消える」「消してしまう」という最悪は回避できるかな
2023.6.7/最悪
今日から3日間テスト。これで赤点とったらバイトなし。
家に帰っても勉強してなかったし、学校でもそこまでしてない。
これからテスト。
無理だね。
バイトばいばい
#最悪
ボディーガードの方は、とても無口な方でした。
一国の時期女王になるわたくしは
紛争地域での和平交渉に訪れたました。
状況は最悪と言っていいほど惨状でした。
武装による警備、弾圧を嫌ったわたくしを見かねて
護衛になったのがその方です。
命がけでわたくしを守ってくださいました、
あの方がいなかったらわたくしは7日の間に82回は命を落していたと聞きます。
出会って7間目あの方と初めてお話しをすることがありました、少しぶっきらぼうでしたが、話してみて、とても優しい方なのだと、わかりました。
ただ、自分の身を案ずることは決してしませんでした、生きる目的があの方には決定的になかった、死に場所を探しているような、そんな瞳をしていました。
あの方と話し親睦を深めるにつれてわたくしはそれが時折とても耐え難いものに感じて仕方ありませんでした。
きっと僕にはこんな才能はなかったんだ
両親はきっと知ってた
僕が才能の一片すら持ってないことを
でも僕は辛い道を選んだ
両親はきっと知ってた
僕が何一つ才能を持っていないことを
けど両親は好きじゃない
だけどそれ以上に僕は
僕が嫌いだ
才能を持たず生まれてきた
僕は僕が大嫌いだ
最悪な気分だ
三年間二位の現代文のテスト。親と似つかない自分の外見。最低賃金のバイト。今の苗字。
私たちは両極端だから、最良以外は最悪にしたがる。
無い物ねだりが得意だから、最悪にしか目がいかない。
"最悪"
『最悪』
苦手な先輩が、どうも私が働いている方のアトラクションで来週も働くらしく、もう既に頭を抱えている。
先輩がこっちのアトラクションで働く姿を見掛けるようになってから、一日に1回は必ずポジションが前後になるのだ。もはや最悪である。
昨日だって、楽しみにしていた他部署のお手伝いが雨で立ち消えとなってしまった。これも最悪である。
でも、何より最悪なのは自部署の皆と仲良しでいたかったのに苦手な人という枠組みが出来てしまった自分自身である。
朝からツイてない。
悪夢にうなされ半泣きで起きたし、コンタクトつけようとしたら洗面台に落としたし、食パンは焦がしたし、星座占いは最下位だったし、電車は遅延しているし。
「おはよ」
乗り換え途中、後ろから声をかけられた。
振り向かなくても誰かなんてすぐわかってしまうから余計に厄介だ。
ああもう最悪。
「一緒に行こうよ」
今日はアイラインよれてるし、髪もうまく巻けていないし、顔も浮腫み気味なのに。
それに、この格好変じゃないかな。
汗くさくないかな。
的外れな会話になってないかな。
ああもう最悪だ、最高で最悪だ。
▷最悪
『ウォルターの冗談話』
昨晩のホラー映画の余韻が残る朝 意味もなく鳥肌をたてている 洗濯機が嘲笑う 不吉な予感だ 怯えるほど空が蒼い それは晴天だ ハンケチが仄かに赤い
それはケチャップだ 雨は降らない 降るのは鳥の糞
じつに華麗にそれをかわして 踏んづけたのは犬の糞
太陽は笑ってる 私もそうだ笑うしかない
#41 最悪
本当に最悪か、まだそうではないのか。
終わってみなけりゃ分からない。
-こんなに悪いことがあった今日こそ
誰かが迎えに来てくれる-
友達がそんな状態だから行ってみたけど
「あなたじゃない。迎えに来てくれるのは、
もっと違う、もっと凄い人じゃなきゃ」
と言われて断られる。
その後、場に相応しい人-ここでは生き別れの母親だった-が現れて、
主人公は、良かったねと祝福するのである。
とあるアニメの一場面。
空気、つまり人の微細な表情の変化が読めない、
ついでに行間も読めない私は思う。
主人公は、どんな気持ちだっただろう。
友達ってなんだろう。
最悪の状態かどうかは、
その日の最高気温みたいに測れるものではないし、
そもそも気温の感じ方にしたって人それぞれだ。
ただ、そうでないときとの落差が激しいほど、
強く感じるんだと思う。
そうか、私じゃ駄目かあ。
でも、それなら。
変な気を使わないでいいから、
もっと早く言って欲しかったなぁ。
息が浅くなる。
胸が、苦しくなる。
心が、ぐらぐらと揺れる。
『最悪』
ぽつりと頭の中に浮かんだ2文字。
でも今の私にはどうにもできないから。吐息と共に、暗い気持ちをふうっと吐き出す。
一回だけでは足りないこともあるからしばらくそれを繰り返して。
そうして心を落ち着ける。