『時計の針』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
君と同じ空間を共有している。
まるで時が止まったかのように。ひたすら。
君とずっとこの場所で、同じ空気を吸い続けたかった。
君が吐いた言葉を飲み込んでは咀嚼し、伝わってきた空気をまた伝わせて返す。
そうして、君との間に見えない道ができる。
…「じゃ」
そう呟き、君は別の世界へと消える。
ああ、また、この空間に一人きりだ。
せっかく築き上げた道は途切れ、私の中に、
君の言葉だけが溶け残る。
ふと、時計を見上げた。
…なんだ。止まってなんかいないじゃないか。
お前のせいだぞ。私が一人になってしまったのは。
そんな言葉が、また響く。
受け取り手はいない。ただ空気が揺らぐばかりだった。
時計の針は、静かに時を刻む。
時計の針
その動きは成長の証
もっと自分を信じて期待しろ
徐々に動きが鈍くなっていくのが分かった。
傍にいた弟に手を伸ばすが、弟はジッと俺を見るだけだ。止まらずにゆっくり離れていく。
「もう、ダメかもしれない……」
薄々気付いてはいた。
もう5年になる。限界がきているのはとうに分かっていたのだ。それはきっと弟も。
何度も頭を打ち付けたり、叫んだりしたから、寿命なのだろう。
「せめて、最後の叫びを……」
離れていった弟が戻ってくる。
「兄さん」
「最後の仕事だ」
「うん」
カチリ。時間だ。
ジリリリリリリリリリリ!!
「んー……あと、5分だけ……」
バン!
俺たちの必死の叫びは、強制的に止められた。
「……おつかれ、兄さん」
「ああ。お前もよくやった。さあ、休もうか」
俺たちは、主が設定した時間を示したまま止まった。
また命を吹き込まれるまで、しばしのお別れだ。おやすみ、主。
時計の針が進むと
新しく何かが始まるんじゃないかとドキドキする
【時計の針】
進みゆく秒針に
祈りを捧げ またパレード
二人だけの行進
いつかは三人目が現れ
またも繰り返すよ
[人間失格]
【時計の針】
カラン-…。
乾いた音を立てて1人の男性が扉を開けて入ってきた。
「いらっしゃい」
室内はコツコツと色々なところから時を刻む音が聞こえる。ワタシは、この時計店の店主をしている。
「すみません、修理をお願いします」
そう言って、入ってきた男性は1つの懐中時計をカウンターへ置いた。
「結構年季入っていますね」
「えぇ、祖父から譲り受けたものなんですよ」
男性は答える。とても大切に扱われていたのだろう。傷は沢山あるが 、しっかりと磨かれていて大変綺麗だ。
男性が店を出たあと、修理に取り掛かる。慎重にパーツを外し、破損したパーツは新しく作って埋め込む。
繊細で器用さが問われるが、無事動き出した時計を見ると、達成感に包まれる。
そうして依頼主にお返しをする。男性は笑顔で受け取ったあと 、
「いい音だ」
ただ一言、そう言って丁寧に時計を耳に当てた。
そんな様子を見て、ワタシ自身も嬉しくなるのだ。
今日も、またお客さんが時が止まった時計を持ってくる。
-壊れた時間、動かします。
時計の針が進む音が、眠気を誘ったり、落ち着かせてくれたり、恐れを抱かせたり、
私をいろいろなところへ導いてくれる。
私の心を映す鏡なのかもしれない。
いや、針の進む音が聞こえちゃうくらい静かなところにいるから、いろいろ考えちゃうのかも。
でも、そんな時間も私には必要で。
また頑張れるようになるからさ。
今は針の音聞かせてよ。
【時計の針】
気にしなければいいのだ。
実際、朝や昼は気にならないのだから。
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
どこにでもある時計の音だ。
秒針がゆっくり回り、12を指して通り過ぎる。一分経過したことを告げた針はそれを六十回繰り返して一時間を、更にそれを二十四回繰り返して一日が終わることを告げる。
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
電池が切れるまでそれは続く。電池を交換すれば更に長く、繰り返し時を刻み続けるのだろう。
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
深夜。
家族が寝静まり、テレビも消えてリビングには私一人。時計の針がか細く鳴くのを聞きながら、私は読みかけの本のページを開く。
チッ、チッ、チッ、チッ……。
「·····」
数ページ進んだところでパタリと本を閉じる。
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
夜、一人でいるとそれは私をからかうようにやけに鮮明な音となって耳に届く。
ただの時計だ。時計はただ時を刻むだけ。なのにあの音は、私に何かを急かすように神経質な音を響かせる。
タイムリミットなど無い。(本当に?)
この家であと何度二十四回を繰り返すのか。(永遠に?)
壁にかかったあの時計のように、このままこの家で朽ちていくのか。(それが人の生でしょう?)
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
時計の針が更に私を追い詰める。
――決行の日を、決めなければ。
深夜。
一人で本を読む私は、時計の音を聞く度にこうした昏い妄想に取り憑かれている。
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
妄想で済んでいるならまだ大丈夫だろう。
「決行の日を決めなければ」
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
少しずつ音は大きくなっている。
昏い妄想はやけにリアルな夢になり、言葉と行動で私を突き動かす。
あぁ、時計の針が、聞こえてこなければ··········。
END
「時計の針」
#時計の針
秒針の色が澄んだ夏空にそっくりで、気づいたらレジにいた
あなたの好きだった澄み切った濃い青
あの頃の記憶をこの身に纏う
いつでもあなたがそこにいるようで
お題:時計の針
もし時計の針を使って時間を巻き戻す事ができたら
僕はもっと自分の意思で生きてみたい。
今まで誰かの言う通りにして生きてきた。
ほんと馬鹿みたいだよな、今だって自分の意思を全部
無視して人の言う通りにして生きてる。
明日こそは、明日こそは、って言って結局できてない。
そして僕はまた繰り返す。
「明日こそは自分の意思で生きるんだ」
人は死ねば消えていくけれど
止まってなお唯一の時を指し示す
彼はわたしの時計の針
時計の針
12時を指し
日付が変わる
鐘の音が響く
その瞬間
時刻は朝に戻った
何かある
時が戻った
その理由に
心当たりはなく
戸惑うしかない
何度も何度も
時は戻り理由も判明
知らぬ所で
事故にあった
恋仲を救うため
戻ったのだった
刻々と 刻む時間は まだ1人
いつかふたりで きざめたらいいのに
時計の針
時計の針が戻せたなら、一体私は何がし
たいだろう。きっと1つになんか絞れや
しない。でも今だったら子どもの頃の私
に会ってみたい。会ってどうするのだろ
う。こうしなかったから、大人になった
私が苦労をしているだとか、子ども相手
に文句を言うだろうか。いや、たぶんそ
んな事はしない、出来ないと思う。子ど
もの私に罪はない。ただ遠くからその姿
を見てみたい。きっと泣けてくるだろう
なぁ....。色んな思いが、入り混じって。
時計の針が戻せるなら又、あの頃の子ど
もに帰りたい。
『時計の針』
最近、私の中の時計の針は速く動いている。
24時間が、たった3分のように。
1週間が、たった1日のように。
よく、「人生は短いんだから、大切に生きなさい」と言われる。「そうだね」って答えるけど、やっぱりなんか違う。今は、このままでいい。せっかちな私の時計のままで。
結構、この時計 気に入っているんだ。
おばあちゃんになったとき、後悔するかな。あんなに時間があったはずなのにって。それとも、良い生き方したなって 誇らしいかな。
時計の針は、一度通ったところは二度と通らない。この針が戻ることがないように、私もやり直すことはできないのだから。
ねぇ。80歳の私は、時計の針を巻き戻したいなんて思ってないよね?
夜中の3時が朝になった時君はきっと仕事を休むだろう
短針と長針と秒針と
それぞれの役割がある
私には私の役割がある
《時計の針》
「止まってる」
「うそ」
「さっきも同じ時間だった」
「いやいや、濃厚な時間を過ごしてるから時が経つのが早いだけ…」
「早くねーから、薄っぺらな時間を過ごしてるってことだな」
「……あー…?」
「とにかく時計止まってる」
「なら帰るの忘れても仕方ないじゃん」
「……まいっか」
次の巻かして、と伸ばされた手に持ってきたマンガを渡す。
まだまだあるから、マンガも時間も。
2024/02/06 時計の針
#時計の針
いつから、その刻む針を
無意味と感じるようになっただろう···
彼女が眠るように時を刻むのを止めてからだろうか?
ちょうど目線の高さにある時計を眺めても
秒針の音さえ聞こえない。。。
買い取ってくれるなら売ってやるよ··········こんな人生
彼女が愛した街
彼女が好んで使っていたマグカップ
彼女がいつも座っていたイス
彼女が愛してくれた······自分
彼女だけが取り残されて
重ねていく時間
憎くて、憎くて、憎くて、、、愛しい
今日もまた時を刻む
いつでもどこでも
誰が決めたかもわからない規則で
回り続ける
時間の奴隷みたいで可哀想ね
たまには止まって一息ついたらいいのに
“時計の針”