『手ぶくろ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
手ぶくろ
いつもの習慣で、リビングに行くと「おはよう」と言ってしまうが、妻はもう居ない。ある冬の朝、キッチンで倒れていてそれっきりだった。当時は、その事実を受け入れられず、葬儀は長男が仕切り、私はただやり過ごした。
1年経って、春も夏も秋も妻が居ないことを実感し、やっと受け入れられたと思っている。
妻の分まで長生きしようと、健康のために毎日散歩をしている。齢(よわい)80、まだまだ頑張るつもりだ。天気予報で気温がマイナスになっていたので、コートを出して着た。幸い、近くに大きな公園があるので、そこまで行って一周するとちょうど良い。小さな子どもが遊ぶ様子とか、釣りをしている様子とか、寒いのにランニングと短パン姿で次々とランナーが行く様子とか、楽しく眺めながら歩く。
寒いな。大きめに振ってウォーキングしていた手を、ついポケットに入れると、手ぶくろが入っていた。
妻は、コートがクリーニングから帰ってくると、いつも手ぶくろを入れておいてくれるのだ。次の冬のために。そのとき、自分が居ないとは、本人も思っていなかったろうな。
その手ぶくろをしながら、久しぶりに涙が出た。
手ぶくろが落ちていた。
拾って少し、見やすいところに置いておいた。
次の日、手ぶくろはなくなって置き手紙が、
『 拾ってくださった方へ。
ありがとうございました。
とても助かりました。 』
だと、何故か清々しい気持ちになった。
❦
彼氏の手袋に穴があるのを見つけた。
手袋をあげたのはたしか2年前くらいだったかな。
ちゃんと使ってくれてて嬉しかった。
手ぶくろはいりません。
だって君が温めてくれるでしょ。
そう言っていた彼女は今どこにいるのだろう。
─────『手ぶくろ』
手ぶくろ。
手ぶくろはいいよね!
暖かくて、柔らかくて、もふもふしてて。
私の性格とは真反対だ
AirPodsはいつも片側だけ道に落ちているから
あれは実質手ぶくろだと思ってる
そう、私はただどこかに手ぶくろを落としただけ
白くて高級な
痒くなるから手ぶくろはしないと言ったら、えー、と唇を尖らせた。
「なんでよ」
「こっちがなんでよ」
「手ぶくろしたらいいじゃん。あったかいよ」
「毛糸とか、痒くなるんだよ俺」
「でも寒いんでしょ?」
「寒いよ」
だからポケットに手を突っ込んでる。
「あ! これは? 毛糸じゃないよ。レザー。かっこいいじゃん」
「痒くなるのも蒸れるのも嫌いだからいらね」
「もー」
「お前はしてるんだからいいじゃん。寒いのは俺だけなんだし」
そう言うと、アイツはレザーの手ぶくろを棚からぶんどるようにして突然レジに向かう。
会計したその場でタグを外して貰い、俺の元に戻ってくる。
「デートが終わるまででいいから、つけてて」
無理矢理つけさせられた手ぶくろは、少しきつかった。
降り出した雪の中、手を繋ぐ。
俺のレザーの手ぶくろと、アイツの毛糸の手ぶくろが重なる感触は、いつもと違ってなんだか変な感じがした。
駅が近付く。デートはもうすぐ終わる。
ぶっちゃけ痒くて、汗で蒸れる感じがして、今すぐ手ぶくろを脱ぎ捨てたい。
でも、俺が手ぶくろをした途端アイツがやたら上機嫌になったから、あと少しだけ我慢する。
「ありがとね、手ぶくろしてくれて。もう外していいよ」
待ち兼ねた、というように少し乱暴に引き抜くと――
やけに恍惚とした顔をしたアイツがいた。
END
「手ぶくろ」
手ぶくろ
子供頃は 手ぶくろがないかと
しもやけで 大変でした
母が編んでくれた 手ぶくろが
懐かしく 思い出します
寒いけど 外歩きたい 私です
寒いけど 落ち葉かたずけ すっきりと
ハッと目が覚める。
時計を見たら針が思いきり約束の時間を超えていた。
慌てて傍らにあるスマホを確認するとたくさんの着信履歴が残っている。
その履歴の着信相手に掛け直すも相手は出てくれない。
布団から飛び起き、顔を洗いながら再度電話を掛けるもやはり相手は出てくれなかった。
朝食をすっ飛ばし適当に身支度を整えて家を出る。待ち合わせの場所に全速力で向かう。
冷たい風が肺を冷やす。悴む手を温める手袋なぞ持ち出す余裕は無かった。
「手袋」
私が着けてる手袋は、黒色で腕に毛皮がついている、とても大人っぽいものだ。
冬に外出するときは、いつも着けている。
これは、彼氏だった人から貰ったものだ。
別れてから、もう3年も経っている。
貰った手袋はすでに、汚れもついて、ボロボロになっている。
決して、未練があるわけではない。なんなら、私は今、付き合って1年になる彼氏もいる。
この手袋を着けていると、さまざまなことを思い出す。
私には、ふたりの母が居る。
ひとりは、産みの母。
もうひとりは、育ての母。
産みの母たる実母は、今思うと、大和撫子のような人だった。
私は、朧げで僅かながら、実母の姿を憶えている。
いつも父の三歩後ろを歩き、上品な着物姿に白い日傘を差しており、
いつも優しく私の手を握り、いつも優しく私を抱きしめてくれる、
その手には白いレースの手ぶくろをしていた。
育ての母たる継母は、朝顔の斎院ような人だった。
私たち前妻の子を実子のように、継母は心から愛し寄り添ってくれた。
とても教養のある聡明な人で、いつも冷静さと敬意と一線を忘れず、
少しの言葉と多くの行いで、私たちを導いてくれた。
実母のように抱きしめてくれることは無かったけれど、
不安な時は、いつも手を握ってくれた。
その手には、いつも実母の遺した、白いレースの手ぶくろをしていた。
実母と継母、ふたりの母から沢山の愛情を与えらて育った。
この白いレースの手ぶくろは、今では黄みがかった白色と変わり、
レースの手ぶくろは、妻が大切に使ってくれている。
改めて、妻と生涯をともに出来て、本当に良かった。
妻が帰ってきたら、そう伝えようと想った。
う〜ん
気分良き
清々しい朝
夢も見ずよく眠れた
うれしい
ストーブでしばらく手袋をあっためて
はめる
そして頬に温かさを伝える
うれしい
この開放感
誰にも囚われてない
もう囚われない
2024/12/28 手袋
手ぶくろ
手ぶくろ越しに
あなたと手を繋ぐ
素肌に触れたい
暗器ではなく
寒い時には手ぶくろを着ける。温かさを得るために。ホッカイロも良いけども、温もりが手ぶくろにはある。
昔、100円均一で買ったものだけども、物持ちが良いのか何年も使えている。
黒い手ぶくろやグローブも良いけど、コートに合わせたら全身黒尽くめになってしまう。
名探偵コナンに出てくる真犯人のシルエットじゃあるまいし。冬の夜だと見分けが付かない。
だから、白い手ぶくろを着けるのだ。スマホやタブレットに対応したものを。白と黒のコントラストとして。
冬の朝に、冬の夜に手ぶくろを着けて手足を温めながら歩いて行く。目的地へと向かいながら。
冬の風物詩。それが手ぶくろ。様々な色で手を寒さから覆うもの。寒さで赤くなった手を、肌色に戻し維持するためにーー。
これは私の両親との楽しいスキンシップの思い出のはなし。
幼い頃によく両親から
「手ぶくろを逆から言ってみて」と言われ
私は元気に「ろくぶて!」と返事をしていた。
そうすると頬を六回、とても軽くペチペチされるのだ。
それが楽しくてつい現を抜かしてしまった。
てぶくろを反対から読んで!
ろくぶて!
ハイ、1.2.3.4.5.6!
って言葉遊びを子供の頃やっていたことを思い出す
道端に手袋が落ちていた。赤茶色の毛糸で編まれているごくシンプルな冬の象徴。かなり年季が入ってるのか、黒ずんだ場所が散見される。今拾い上げて洗ったとしても元の輝きを取り戻すことは無いんだろうな。まるで、それは人生であるかのように思った。もう過去には戻れない。良くも悪くも過去の記憶は消すことが出来ない__この手袋の持ち主はそんなしがらみから解放されたかったのであろうか?とちょっと考えを飛躍させてみた。
寒かったので暖かな部屋に帰ろうと思う。手袋を拾うのはやめた。
手ぶくろを片方だけ失くす天才の手を、
自分のコートのポケットに捩じ込んだ。
分かってやってるんだか、分かってないんだか。
彼女の顔を見ると、嬉しいような、恥ずかしいような、
そんな絶妙なはにかみ顔をしているもんだから、
僕はいつも許してしまうんだ。
「手ぶくろ」 白米おこめ
「手ぶくろ」
今日の手ぶくろは白と黒の柄を着けたら
白と黒の猫に出会った。所謂ソックス猫。
今日の手ぶくろは三毛猫柄を着けたら
三毛猫に出会った。位置によっては悪役風
今日の手ぶくろは錆び柄を着けたら
錆び柄の猫に出会った。顔面がツートンカラー
今日の手ぶくろは白茶色を着けたら
白茶色の猫に出会った。尻尾が、鍵の形していた。
今日の手ぶくろは薄茶色を着けたら
薄茶色の猫に出会った。声がちょっとメロディー
今日の手ぶくろは何を着けていこう?
今日はどんな猫に出会うのだろうか?
妹から誕生日にもらったミント色の手袋。
下北沢のオオゼキで買い物中に落としたようで帰ったらなくなっていた。
後日カウンターへ行ったら落とし物として届いていて、無事手元に戻ってきた。今も大切に持っている。
久しぶりにお正月に着けて行こうかな。