私には、ふたりの母が居る。
ひとりは、産みの母。
もうひとりは、育ての母。
産みの母たる実母は、今思うと、大和撫子のような人だった。
私は、朧げで僅かながら、実母の姿を憶えている。
いつも父の三歩後ろを歩き、上品な着物姿に白い日傘を差しており、
いつも優しく私の手を握り、いつも優しく私を抱きしめてくれる、
その手には白いレースの手ぶくろをしていた。
育ての母たる継母は、朝顔の斎院ような人だった。
私たち前妻の子を実子のように、継母は心から愛し寄り添ってくれた。
とても教養のある聡明な人で、いつも冷静さと敬意と一線を忘れず、
少しの言葉と多くの行いで、私たちを導いてくれた。
実母のように抱きしめてくれることは無かったけれど、
不安な時は、いつも手を握ってくれた。
その手には、いつも実母の遺した、白いレースの手ぶくろをしていた。
実母と継母、ふたりの母から沢山の愛情を与えらて育った。
この白いレースの手ぶくろは、今では黄みがかった白色と変わり、
レースの手ぶくろは、妻が大切に使ってくれている。
改めて、妻と生涯をともに出来て、本当に良かった。
妻が帰ってきたら、そう伝えようと想った。
12/27/2024, 11:48:08 PM