『愛を注いで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ホームセンターで枯れた木を買った。自分の腰くらいの高さで、葉は1枚もついていない。ひょろ長く伸びた枝なのか幹なのか分からないのが1本立っているだけ。枯れてるのに値段がついてるなんてびっくりした。店の端の、もっと隅っこに邪魔に置かれてて、何故か分からないけど目にとまったんだ。だから、35円ならいっかって、軽い気持ちで購入したわけ。早速、家に帰って庭の1角に植えてやった。ホームセンターの隅っこより、ここのほうが広いし日当たりもいいだろう。
「きっとお前はお爺ちゃんだな。余生をのんびりここで過ごせよ」
僕はぼそぼそ小さい声で言った。木に話しかけてる現場をお隣さんに見られでもしたら変な噂がたちかねない。
そして次の日。すぐには事態が飲み込めなかった。朝起きて太陽の光を浴びるという、いつもの朝の日課をしようと窓を開けると、ピンク色した花びらが舞い込んできた。1枚だけじゃない。花吹雪のように次から次へと降ってくる。顔だけ窓から出すとありえない光景が広がっていた。うちの庭に桜が咲いている。
「なんで……」
庭の1角にそこまで大きくはない桜の樹が植わっていて、さっき舞い込んできた花びらはそこからのものだった。どういうこと?ここは僕んちだよな?一体いつ桜なんて植えたんだ僕は。そもそも、こんな時期に桜は咲かないぞ。ちょっと警戒しながら近づくと、周辺に土を掘り起こした跡が見られた。
「あっ」
そうだ、思い出した。昨日ここに枯れ木を植えたんだった。だが今あるのは立派な桜の樹。
「まさか……お前、桜だったのか?」
木に話しかけたところで答えは返ってくるわけがなく。僕はじっと、その桃色の花を見つめる。風がふわりと吹いて花がさわさわと揺れた。まるで踊ってるかのように。そうだよ、と、言っているように見えた。
「悪かったな、爺さん扱いして」
僕は水を汲んだジョウロを持ってきて、たっぷりと桜に与えてやった。太陽と水と風を受けて、その樹がまたひと回り大きくなった気がした。いや、錯覚じゃない。本当に大きくなっている。嘘だろ。こんな簡単に木って伸びるものなのか。
「まるで生き物みたいだ」
実際、それは間違っちゃいないんだけど。いったいどこまで成長するんだろうか。楽しみなような怖いような不思議な気持ちを抱えながらこの元気な樹を見上げる。もう既に、僕の背を越しているのだった。
「つ、疲れた…。」
私は疲労を抱えながら椅子にもたれかかる。
つい先週。魔術師である自分の住処の谷に痩せっぽちの子供がやってきた。そのボロボロの身なりを見て、子供が親のいない孤児とすぐに分かった。
ちょうど、自分の魔術の知識を誰かに受け継がせたくて弟子をとろうか考えていた所だったので、その子を拾った。
こうして弟子としてその子を拾ったが、今若干後悔しかけてる。
孤児として当たり前のことだが、この子は読み書きができないことは想定していた。
まさかこの子が犬みたいに皿に顔を突っ込んで食事したり、目を離した瞬間全身泥まみれになるほど遊び回る跳ねっ返りとは思わなかった。
もう魔術の勉強をさせるより先に、行儀作法の指導と汚れたこの子の衣服の洗濯を優先せざる他なかった。
「ねぇっ。これあげる!。」
件の弟子がまた服を泥まみれにして私の膝の上に飛びのった。差し出した手には可愛らしい野花が握られていた。
「はぁまた、服を汚して…。」
ため息をつくも、弟子の笑顔に思わず苦笑してしまった。
《愛を注いで》
愛を注いで
愛を注いで-二人で一緒に生活できるかな?
そんな日が、来ればいいな。
愛は、この世の無限大の人間が出せる、「魔法」なんだから。
何をするにも気持ちを込めてやらないといい加減な結果になるとは思います。しかしなかなか何かをする具体的なものが浮かびません。まぁ、命あるものを対し対象とするので、例えば犬の散歩、これなどは僕がやらないと犬のストレスが溜まってしまって、ちゃんと成長しません。
愛を注いで
日々沢山の愛を注いでいるつもりなんだけど、
でもそれをきっと愛だなんて
気づいてもいないだろう子どもたちよ
歯磨きは嫌がるから羽交い締めにして大泣きで
車道に飛び出しそうになったら鬼の形相で叱るし
夜寝る時間になったらテレビはおしまいだよと止めるし
お菓子むしゃむしゃ食べてたらもう止めなさいとおしまいにする
これは全部愛してるからなんだよ
大人になったときに、気づいてくれるといいな!
愛を注いで
チュ チュと 小さなリップ音
彼女は、愛情の印に 僕に小さなキスを
送る。
「チロ 可愛い!」
耳や口に愛情表現 チュっとまた一つ
キスを落とす。
肉球を 親指で グリグリと弄られた
時は、身体が ゾワッとして
しばらく 身体が 硬直して
擽ったさに 身を捩る暇も 無かった。
堪らず 僕は 彼女の腕から
逃げ出すと....
「あ~チロ 待ってよ~」彼女は
途端に僕を追いかけて来る。
いい加減 飼い猫離れして欲しい.....
とか言って 飼い主離れできないのは
僕の方....
僕は、大きくため息を吐いた。
「また 彼女から抜けだせなかったの?
いい加減 正体がばれるよ!」
仲間の猫又に 毎度 毎度 同じ事を
注意される。
そう 僕は、普通の猫じゃない....
猫又に分類される類の 所謂
妖だ...
だから 普通の猫と違って 寿命も
何百年 何千年とある。
だから 寿命が ばれない様に
そろそろ 今の住処を変える必要が
あるのだが.....
僕は今の飼い主 彼女の元から
なかなか離れられずに居た。
「君がまさか そんなに 人間に
入れ込むなんてね
一層の事 人型に なって仲良くなって
恋人関係を作れば良いのに...」
「ばっ馬鹿言うなそんな事....」
「今 僕の目の前で見目麗しい 人型に
なっているのにかい?
彼女の前でも そうやって人型に
なれば良いのに...
今 猫の姿の僕から見ても....
人型の君は、美しいと思うよ
彼女も君のその姿を見れば
君の虜になると思うよ!」
仲間に そう言われて 僕は、
顔が火照り 両手で顔を隠す。
「そっ そんな事できる訳ないだろう!!」
「何でさ?」仲間は、心底 不思議そうに
首を傾げる。
仲間のその質問に 僕は、
黙ってしまう....
だって.... 彼女が 僕を溺愛してくれるのは 猫の姿だからだ。
猫の姿だから 毎日 毎日 僕に口づけをしてくれ 愛を注いでくれるのだ。
それに下手に人間の姿になって
彼女の前に現れたりしたら...
「どうした?」仲間が 顔を赤くしながら
のたうち回る 僕を心配して声を掛けて
くれるが 僕は、それに答える事が
出来ない。
そんな事になったら 僕は、
もう 彼女から愛を注がれるのを待ってられなくなるだろう....
猫の姿のままの今だって...
必死に抵抗して逃げ出すのに
精一杯なのだから....
そんな事になったら
僕は自分から彼女に愛を注いでしまうから
彼女に溺れてしまうから....
私は、動物が大好き💕
愛するワンちゃん、猫ちゃんと生活する毎日が30年以上続いている今、この子達が居なくなってしまったら私は、どう生きて行けば良いのか分かりません。本当にどうしたかわいら良いのか😔この子達が居るから今の自分がある気がする、私も、もう若くないから一緒に付いて行こうかな~いや付いて行きたいな☺️生きる意味も無くなる感じがして可愛くて可愛くて♥️我が子より可愛いかも(笑)
目が覚めると柔らかい草の上に横たわっていた。とんでもなく晴れている。わ、日焼けしちゃう!と頭だけ起こすと、胸の上に麦わら帽子が乗っていた。なのですぐそれで顔を覆った。
視界を遮ると、今まで気づかなかった音が急に聞こえて来た。
水の音。サラサラ。
再び頭を上げて周りを見回した。
あった。頭の先30センチくらいの草の間に小さな水の流れ、澄んだ水が流れているのが見えた。
一瞬、服が濡れる?と思ったけど、濡れないって何となく分かって、また寝転んで帽子を顔に乗せた。
麦わら帽子の繊維の間から見える青い空。頭上を流れる水の音。体は柔らかい草の上。全てに降り注ぐ陽の光。全身を優しく包んでは去り、また吹いて包んでくれる温かい風。
ふと遠くから列車の音が聞こえてくる。ガタンゴトン。
起き上がって周りを見回す。
空だ。眩しくて思わず目を細める。
飛行機?いややっぱり列車だ。
はるか空中に繋がった客車が見える。中に人が乗っているのも見える。
一人の男の人がこちらを向いた。
あの有名な歌手にそっくりだ。
ワインレッドの。にっこり笑ってる。とても優しく楽しそう。白い手?手袋?が見えた。こちらに向かって小さく手を振ってる。
私はすぐに帽子を持った手で大きく振り返す。
おーい!ありがとう!ありがとう!そんな言葉が勝手に溢れてくる。
これはずいぶん昔に見た、忘れられない夢の光景、だと思ってた。
それ以来似たような風景を見るたび、ふと思い出すたび、あの人が歌う姿を目に耳にするたびに、
あれ?何か忘れてる、何だったっけ?って感じてた。
やっと思い出した。
私はそれを見なかったんだ。
ただ何となく、見なかっただけだった。夢みたいだし。夢で見ただけだし。んなワケないし。
でも思い出した。ハッキリと思い出した。胸に手を当てて。
あの愛でぎっしり充たされた世界は常にここに存在してた。ずっとここにあったんだった。
そのことを今やっと思い出した。
愛を注いで
動画サイトではまっているのが、大型犬の動画です。飼い主のお父さんが凄いの。愛を注いで、犬たちを世話する様子は、観ていてもう立派です。
このお父さん、家族にもそうしてきたのだろうな。ペットは、家族だって言うしね。労を惜しまず、家族のために働くって素晴らしい!犬たちも、のびのび暮らしてる。きっと幸せなんだろうな。
わたしも家族のために、一生懸命働かないとね!
愛が欲しかった
家族に愛されたかった
友達に愛されたかった
愛されたかっただけなんです
# 20
愛を頂戴
私以外に
注いじゃダメよ
#愛を注ぐ #アイブソク
いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてでしょうか。
ありがとうございます。当店は"お客様の愛を注ぐお手伝い"をモットーとした雑貨店でございます。一昔前までは1人1個、2つ使いだなんて…とよく言われたものですが最近は年齢、用途によって買い直される方や新たに買われる方も多くいらっしゃいます。たくさんご覧になって自分に合ったものをご購入くださいね。
では、各種商品の説明をさせていただきます。
まず、1度に沢山入る『バケツタイプ』こちらは多少溢れても気にしない、まとまった量を定期的に注ぎたい人へ需要が高いものとなっております。また複雑な操作を必要としないため初心者の方にもオススメです。
1番人気の『ポットタイプ』は庭で使うジョウロや日本ならではの急須や徳利まで多種多様に取り揃えております。カラーバリエーションも豊富ですので同じものを色違いで持たれる方もいらっしゃいます。…人で分けているのでしょうか …ん"ん"っ…バケツタイプより操作や加減が必要ですが拘りをお持ちの方でしたら、きっとご自身に合ったものが見つかるでしょう。
以上の2つが主に皆様がお使いになれるている物となります。
では、ここからは少し取り扱いに注意がいるものについてご説明させていただきます。
こちらにございますのが柄杓タイプのものです。
慎重にお使いになられても零れてしまうこともしばしば。
あまり容量も無いので毎日コツコツと。という方にはいいかもしれません。また痛みやすい素材ですので使用する前後でお手入れが必要になります。方法に関しましては付属の取扱説明書と当店のHPにもございますのでお読みいただければと思います。大変扱いにくいもののその不器用ながらもささやかに伝える様子が一定数の方に需要があるようです。
そしてお隣ですね。こちらはホース状になっております。汲み取る必要がございません。ただ状態に合わせて栓を緩めるだけでお使いいただけます。逆に言えば栓を閉じない限り心身の健康状態に構わずに流れ続けます。ご自身で管理できるという強い方のみのご購入を推奨しております。…しかし最近はインターネットで購入される若い方が後にトラブルを起こすという事態が目立っております。我々も販売数を減らせとお達しがありまして…笑 今年の4月からこちらの商品にのみお客様情報と同意書を控えさせて頂いておりますので、予めご了承ください。
長い説明になってしまい申し訳ごさいません。
最後の商品になります。こちらがライトタイプとなります。照明というよりは太陽光と言った方が近いのでしょうがスケールが大きく分かりづらいとのことでライトタイプと言われております。こちら広範囲に使用することを目的としております。そのため、一個人に対しては先程の柄杓タイプと同じかそれ以下かと。しかし、大多数へ均等にということであればこれに勝るものはありません。少々値は張りますが長くお使いいただけるものになります。…では何故、扱いにくいと言いますと使用される本人様の体調や精神とリンクして光の強さ、届く範囲が容易に変化してしまうのです。それでも購入を検討されるのでしたら、私共からも再三ご説明させて頂き、柄杓タイプとは別の同意書ご記入いただいて、やっとご購入という流れが確立しております。お手数お掛けしますがご理解の程よろしくお願い致します。
以上が商品の大方のご説明になります。それぞれ大小・容量別で取り揃えております。本日、こちらに在庫が無い場合も取り寄せてご自宅に配送することが可能です。具体的なご希望や質問等ございましたら私を含めお近くのスタッフにお声がけ下さい。失礼致します。
めいっぱい、愛を注いで
枯れてしまいそうな君と出会ってから、毎日、毎日
僕は言葉を、温もりを、与え続ける
少しずつ柔らかくなる、その笑顔
少しずつ増えていく、君から触れてくれる時間
貰っているのは、もしかしたら、僕の方なのかもしれない
(愛を注いで)
12/13「愛を注いで」
ミニサボテンを買った。
前回は枯らしてしまって弟に散々からかわれたけど、今回はちゃんと調べた。案外、水を多めにあげてもいいものらしい。
小さなじょうろも買った。これで水をやって、ゆっくりと愛を注いで、花を咲かせるんだ。そうしたら、今の彼氏ともきっと一生上手く行く!っていう願掛け。
「楽しみだな〜」
にこにこしながら水をやる毎日は、あっという間に過ぎ去って―――
「…根腐れ…」
「愛が重いんじゃない?」
(所要時間:5分)
12/12「心と心」
葬儀が終わり、片付けをしている時、孫の一人が話しかけてきた。
「おじいちゃん、大往生だったね」
「そうだねぇ」
「おばあちゃん、あんまり気を落とさないでね」
心配そうに身をかがめて、孫が顔を覗き込む。
「大丈夫。片方が天国にいても、心と心はつながってるものですよ」
「そっか…。じゃあ、私はこれで戻るけど、元気でね」
孫の背中を見送り、窓の外を見る。
「夫婦ですもの、心と心はつながってるものです。…ねえ、おじいさん?」
『ああ。なにせ、お前さんはエスパーだからな』
「あら、天国でも余計なことバラしちゃ嫌ですよ?」
(所要時間:7分)
“愛を注ぐ”という言葉が最近のわたしのお気に入り。
お水を注ぐみたいに愛情をたっぷりかけるのって素敵じゃない? だからお水はたっぷり。わたしの育てたお花は……ダメになってしまった。
「どうして? お水をちゃんとあげたのに!」
「根腐れしてるな。根が水に溺れた状態になって、呼吸ができなくて死んでしまったんだ」
「お水のやりすぎで、溺れちゃったの?」
「水のやり方にはめりはりが必要なんだ。土がしっかり乾いてから、水をたっぷりやる。まだ土が乾かないうちに水をどんどんあげてしまったら、根が窒息してしまう」
「そんなぁ」
「溺れるほどの量は毒にもなる。甘やかすばかりじゃ成長しないんだ。時には厳しく接するのも愛だよ」
『愛を注いで』
愛を注いで
きみ、本当にわからないのかい?
ベシーが持ってくるチキンスープは、きみに捧げられた聖なる特別なスープだということを。
『フラニーとゾーイー』サリンジャーより。
人生に悩んで食べられなくなった妹のフラニーに、心配した母ベシーが何度もしつこく持ってくるスープ。いらつくフラニーに兄のゾーイーが言った言葉です。
うろ覚えですが、こんな感じだったかと……。
忘れられない小説の一つです。
――その器に注がれているのは愛だよ――
#118
注いでも注いでも満たされないものな〜んだ」
「え〜なんだろ?わかんないなぁ……みゅぅたん、ボクに教えて欲しいなぁ」
「もぉ〜!たぁくんってば、もう少し真面目に考えて欲しいんだけどな〜。でも良いよ!正解は……愛情でした!」
パチパチパチ。
胸の前で小さく手を叩いて見せる。目の前の小太りで脂汗を掻いてる男性は「え〜!じゃあ、僕の愛でみゅぅたんは満たされて無いって事?」と聞いてくる。
「みゅぅは別!たぁくんにいっつも沢山愛情貰ってるから、満たされてるよ〜!」
満面の営業スマイルに手のハートも付けた。男は満足気に笑っている。バカバカしい。嘘に決まっているだろう。こっちは仕事でやっているだけで、お前達の様なキモく汚くて社会のモテない要素を煮詰めて作った男共の相手から向けられる好意で、満たされる訳がない。
そんな事を腹の底で考えながら、今日も営業成績トップクラスの私はしっかり仕事に徹するのだ。
歯の浮くような甘い言葉、思ってもない褒め言葉、中身のない好きの二文字を口にしては、その意味を知りたかった。
コンカフェバイトの大学生。時給の良さと、可愛い制服に惹かれて入ったバイトは、知らないおっさんの相手ばかりで疲れてしまう。
全く面白くない会話に相槌を打ちながら、自分へ向けられている好意を糧に今日もおっさんの相手をする。
あのなぞなぞは私が考えた。面白いか面白くないかは知らない。なぞなぞのクオリティは置いといても、その後の流れが良いらしくお客には好評だ。私は思ってもない好きを言うだけで人気が高まるならそれでも良いと思っている。
お客に対して本当に好意的なメイドはごく一部だ。好意的と言っても恋愛的な意味ではない。アイドルがファンに向ける様な「私の為にありがとう!感謝してる!応援してね!」という、巻き散らかすだけの好意だ。それ以上でもそれ以下でもない。そこに愛があると言う人間も居るが、あったとしても薄ペラなものなんだろう。
私にはわからないけど。
愛というものは満たされる物だと誰かが言った。
コップかボウルか、もっと大きいものかもしれない。
そういう器みたいなものが人間には備わっていて、愛される事でそれが満たされていく。
愛が満たされると人は幸せな気分になるらしい。
私のコップは壊れている。注いでも注いでも、いつみでも満たされずに溢れていってしまうんだ。
元々壊れていたのか、壊されてしまったのか。それとも自分で壊したのか。
***
「貴方の事、こんなに愛してるのに。こんなに愛情を注いでるのに。なんで貴方はママに応えてくれないの!?」
覚えているのは痛みだけだ。苦しみだけだ。
出来ないと打たれた。頬を叩かれ、胸ぐらを掴まれて投げられた。外に出され、家に入れて貰えない事も、押し入れに閉じ込められた事だってある。
でも、母にとってはそれも愛情だった。出来ない私が悪くて、出来る様にする為のお仕置きなんだって。「愛してるから……貴方を思ってやっている事」が母の口癖で、父はいつも母を打っていたから同じ事なんだろうと思っていた。
愛は痛みだ。痛いから愛されているとわかるのだ。痛みがない愛なんて愛じゃないいんだ。
そう思おうとしていたのに……。
「貴方はどれだけ愛しても、私を愛してくれないじゃない!貴方の心は壊れてるのよ。欠陥品よ。どれだけ愛しても満たされないのは貴方が悪いのよ!!」
あれはいつだったか。ヒステリックを起こした母が私に叫んだ。
愛されてるから、愛だからと、どんな痛みにも耐えてきたのに。愛していたから、どんな仕打ちも受け入れたのに。それは愛じゃなかったらしい。
伝わらないなら意味が無い。愛じゃ無いなら意味が無い。
あの日私は家を出た。
どんな形でも良かった。痛みじゃないならなんなのか。愛されたかった。愛したかった。愛を知りたかった。
***
コンカフェバイトを始めて、愛してるの言葉の軽さに驚いた。
客も店員も簡単に愛を口にする。「愛してるよ、愛してる」「大好きだよ。私も大好き」ほら。すぐまた横でも………。
愛されたくて、満たされたくてバイトを始めた。みんなに良い顔を振り撒いていたら人気が出た。たくさんのお客に「愛してる」と言われた。君が一番だと。
だけど満たされない。全く満たされない。私のコップが壊れているから。私が欠陥品だから?
この先もあの痛みだけが私にとっての愛なの……?
私はただ、愛で満たされて幸せになりたいだけなのに。
#愛を注いで
#愛を注いで
そのバス
愛を注いで
みんなを運ぶ
感謝と責任を担いでみんなを運ぶ
けれど今はもう動かない。
シュグラーは愛を知らない男だった。
形の見えないもの、証明できないもの全てを信じないという意味で、愛はその筆頭でもあった。
シュグラーはそこそこの容姿ではあったが愛想はなく、自ら人との距離を取りたがったため、よほどの物好き以外は彼に近寄らなかったし、まして彼に愛を教えたいと焦がれる異性もいなかった。
そう、この日までは。
愛を注いだ花は、鮮やかに咲くと言う。
科学的には信用ならないが、大事に育てた花はより美しく見えるだろうなのは確かだとは思う。
我々も花を大切にできるだけの、心の余裕と愛する心をいつも持っていたい。