「つ、疲れた…。」
私は疲労を抱えながら椅子にもたれかかる。
つい先週。魔術師である自分の住処の谷に痩せっぽちの子供がやってきた。そのボロボロの身なりを見て、子供が親のいない孤児とすぐに分かった。
ちょうど、自分の魔術の知識を誰かに受け継がせたくて弟子をとろうか考えていた所だったので、その子を拾った。
こうして弟子としてその子を拾ったが、今若干後悔しかけてる。
孤児として当たり前のことだが、この子は読み書きができないことは想定していた。
まさかこの子が犬みたいに皿に顔を突っ込んで食事したり、目を離した瞬間全身泥まみれになるほど遊び回る跳ねっ返りとは思わなかった。
もう魔術の勉強をさせるより先に、行儀作法の指導と汚れたこの子の衣服の洗濯を優先せざる他なかった。
「ねぇっ。これあげる!。」
件の弟子がまた服を泥まみれにして私の膝の上に飛びのった。差し出した手には可愛らしい野花が握られていた。
「はぁまた、服を汚して…。」
ため息をつくも、弟子の笑顔に思わず苦笑してしまった。
《愛を注いで》
12/14/2023, 7:52:50 AM