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愛を注いで

チュ チュと 小さなリップ音
彼女は、愛情の印に 僕に小さなキスを
送る。

「チロ 可愛い!」
耳や口に愛情表現 チュっとまた一つ
キスを落とす。

肉球を 親指で グリグリと弄られた
時は、身体が ゾワッとして
しばらく 身体が 硬直して
擽ったさに 身を捩る暇も 無かった。

堪らず 僕は 彼女の腕から
逃げ出すと....

「あ~チロ 待ってよ~」彼女は
途端に僕を追いかけて来る。

いい加減 飼い猫離れして欲しい.....




とか言って 飼い主離れできないのは
僕の方....

僕は、大きくため息を吐いた。

「また 彼女から抜けだせなかったの?
いい加減 正体がばれるよ!」

仲間の猫又に 毎度 毎度 同じ事を
注意される。

そう 僕は、普通の猫じゃない....

猫又に分類される類の 所謂
妖だ...

だから 普通の猫と違って 寿命も
何百年 何千年とある。

だから 寿命が ばれない様に
そろそろ 今の住処を変える必要が
あるのだが.....

僕は今の飼い主 彼女の元から
なかなか離れられずに居た。

「君がまさか そんなに 人間に
入れ込むなんてね
一層の事 人型に なって仲良くなって
恋人関係を作れば良いのに...」

「ばっ馬鹿言うなそんな事....」

「今 僕の目の前で見目麗しい 人型に
なっているのにかい?
彼女の前でも そうやって人型に
なれば良いのに... 
今 猫の姿の僕から見ても....
人型の君は、美しいと思うよ
彼女も君のその姿を見れば
君の虜になると思うよ!」

仲間に そう言われて 僕は、
顔が火照り 両手で顔を隠す。

「そっ そんな事できる訳ないだろう!!」

「何でさ?」仲間は、心底 不思議そうに
首を傾げる。

仲間のその質問に 僕は、
黙ってしまう....


だって.... 彼女が 僕を溺愛してくれるのは 猫の姿だからだ。

猫の姿だから 毎日 毎日 僕に口づけをしてくれ 愛を注いでくれるのだ。

それに下手に人間の姿になって
彼女の前に現れたりしたら...

「どうした?」仲間が 顔を赤くしながら
のたうち回る 僕を心配して声を掛けて
くれるが 僕は、それに答える事が
出来ない。

そんな事になったら 僕は、
もう 彼女から愛を注がれるのを待ってられなくなるだろう....
猫の姿のままの今だって...
必死に抵抗して逃げ出すのに
精一杯なのだから....
そんな事になったら
僕は自分から彼女に愛を注いでしまうから

彼女に溺れてしまうから....



12/14/2023, 6:35:59 AM